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挑発編


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荘厳さんの笑みを受け、構えを解くヴァルキリー。
「……貴様、どこまで読めている」

「最低でも全部。もしくは……」
「もしくは?」
「それ以上ってところでしょうね」

肩をすくめ、おどけてみせる荘厳さん。

「最初は握りの違いで生まれたリーチの差を使ってけん制でしたね?
 後、接近戦を挑んで来られましたが技量は私の方が上。全て防がせて頂きました。

 機転を利かせたあなたは距離を置き、
 人間である私が受けたことの無いであろう、上空からの攻撃に転向。
 それも避けられ、不意を突こうと唯一の武器である槍を投げるが失敗。
 さぁこれは大変ヴァル姐さん。武器を失い、攻め込めない。

 ……普通に考えればこうですか。まぁ特に違和感はありません」

飄々と語る荘厳さんを見据え、ヴァルキリーはニヤリと口角を上げる。

「朝から貴女は護符とやらの製作に没頭し、先刻も手ぶらで教室を出られましたね。
 短いとはいえ槍一本隠すスペースは教室には御座いませんし、
 第一、この学校で武器を隠す必要なども御座いませんし。

 貴女は魔法か何かを使い、武器を転送できるのではないか。
 ……と推測が可能です。
 このまま私が攻め込めば貴女はその足で逃げ、稼いだ時間で2本目以降の槍を転送。
 向かってきた私に向け、不意打ちでそれらを連投でもするつもりだったんでしょう。

 はっきり言いましょう。時間の無駄です。
 何を何本投げてこようが今の私には通用致しません。」


ヴァルキリーは浮かべた笑みを崩さぬまま、首を鳴らす。

「さらに当てましょうか。
 試合前の口上で貴女はおっしゃいました。
 "第一槍兵部隊 ゲイレルル"、と。
 意味は確か、槍を持って進むもの、でしたよね。
 第一部隊ということも相まって、あなたの部隊は切り込み隊の可能性が高いです。

 そしてその割りに槍が細く、短く、しなりやすい。
 今見て解りましたが、刃の部分も造りが甘いです。
 打ち合いよりも量産に重きを置いたように見受けられました。

 第一部隊、と言われれば、第二部隊が存在する可能性も高くなります。
 後続が無いのでしたらわざわざ"一"と名付ける必要は御座いませんもの。
 第一部隊が前衛ならば、第二部隊は後衛ではないでしょうか。

 神話には確か、ゲイルスレグル 槍の戦 という戦乙女も登場していました。
 貴女の持っている武器は本来、この第二部隊が使用している投げ槍ではないのですか? 

 ……続けます。
 あなたは人間と違って体が軽いのですね。
 普通なら蹴りを押し返したぐらいでは間合いは開きませんもの。
 もともと空を飛ぶ身ですものね。当然と言えば当然でしょうか。

 二度目の打ち合いの前、槍の刃を返しましたね?
 貴女はその軽さ故に、刃を舞台に突き立ててしまっては空中で引き抜けなかったのでしょう。

 そんな体重で接近戦で相手を倒すとなると、あの短い槍ではいささか力不足です。
 人間相手なら問題ないかもしれませんが、あなたは戦乙女。
 異形との戦闘も想定して装備を選んでいるはずです。

 あなたの本当の武器はこの様な代物ではなく、
 その腕力を生かした大槍なのではないですか?」

「……」

無音の舞台上。殺し合いの場。
にもかかわらず、笑みを崩さぬ二人。

賭けだった。
いくら私が "異能" の者だとしても、
人間と天界人という種族の差は埋められない。
まして相手は戦乙女。
神話の時代から、ひたすらに戦争のために鍛え続けて来た存在。

幼いころから鍛錬を続けてきた槍技に加え、
"これ" のおかげで受け切れているが、それも今だけ。
けん制を続けていれば先に体力が尽きるのはこちら。
攻め込むには足の差が大きすぎる。
私が全快であるうちに、ヴァルキリーの目がこちらの槍技に慣れるまでに。
こちらの切り札を隠したままで、
相手の「力」と、こちらの「技」のぶつけ合いに持ち込まなければ、私は負ける。

ガタガタの推論だったが、部隊名や武器選びにひねりを加えるケースは少ない。
当たらずとも、遠からず的を射た感触はある。
ヴァルキリーも解っているんはずだ。
このままにらみ合っていれば、いずれ自分が勝つことを。

もう一押し。引っ掛けなければ、負け。

「大方 "人間相手に本気を出すなど"
 といった下らないプライド故の手加減なのでしょうが……
 この学校はそれほど甘くはありません。

 いかがですか?驕るつもりは御座いませんが私も武人の端くれ。
 退屈は、させませんよ?」