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幸せの在り処


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「知ってた? 山の彼方ってあなたって読むんだよー」
と。俺も知っている(つか、クラスメートなら誰でもだ)知識を嬉しそうに語る優。
購買部で売っていた紙パックジュースのストローから口を離すと
じゅこ。とまあ何とも間抜けなサウンドが昼休みの教室に響いた。

「知ってるよ。ブッセの詩だろ」
「凄いね知識人だー。けどちょっと残念だなー」
「…………」
これはどう言う反応をすればいいんだろうか。
俺はおちょくられてるのか、なめられてるのか、天然なのか。天然だな。

「や、今日の授業で習ったろ」
「…………」
沈黙。いや、静かになったのは俺たちの間だけか。教室は相変わらず騒がしい。
荒鷹さんが渡辺さんと佐藤さんにポーズの指南してる。いつ見ても素敵な腕の角度ですね。

「……あー、そんな気もして来たねー」
「おま」
「うー……始めての知識だったから男君にも教えたかったんだよ」
「おま」
そっか。そう言えば授業で習ったっけ。盲点だった。
呟く彼女にため息一つ付き、間延びした節で、何となく俺はあの詩を読み上げる。

「山のあなたの空遠く幸い住むと人の言う、か」

幸せってそんなして見つけるもんかね。まあ努力しなきゃな。
付言する俺。
「え。それは違うと思うなぁ」
珍しく反論してきた優。紙パックに力が入る。

「じゃあ何処にあると思う、幸せ?」
形の崩れた紙パックをゴミ箱へと投げる。
放射線を描いて落ちていく色鮮やかな紙パック。見つめながらやはり何となく優の発言を待った


「私の幸せは今ここにあるよ?」


その発言。しかも極上の笑顔と来たもんだ。
ゴミ箱にゴミがストライク。俺の心にもストライク。
……敵わないなぁ。呟いてみたり。


山のあなたの空遠く
 「幸い」住むと人のいう。
ああ、われひとと尋(ト)めゆきて
 涙さしぐみかえりきぬ。
山のあなたになお遠く
 「幸い」住むと人のいう。