男 「ツン子…ツン子ぉぉおお!」
燃え盛るホテル内を這い蹲るように、男はツン子を探していた
男 「足痛ぇぇ…止まれよ…血ぃ」
燃え盛るホテル内を這い蹲るように、男はツン子を探していた
男 「足痛ぇぇ…止まれよ…血ぃ」
横には焼けたむき出しの鉄筋、ごうごうと焼ける鉄筋にぐいと血の流れる太ももを押し付ける
ジャーっと炒め物のような音と苦い匂いが広がる
ジャーっと炒め物のような音と苦い匂いが広がる
男 「ぎぃいいぃ!止まれぇぇぇ!」
何度も何度も地面を地団太のように叩きつける
痛みが功を奏したのか、それとも何か違う力が働いたのか、男の意識が戻ってくる
何度も何度も地面を地団太のように叩きつける
痛みが功を奏したのか、それとも何か違う力が働いたのか、男の意識が戻ってくる
男 「この辺なんだ…この辺に落ちていったはず…」
それでも動かない足に苛立ちながら、男は歩いていく
男 「好きなんだぞ…これでも…ずっと、ずっと好きだったんだぞ…」
引きずる足に大き目の建材がかかる、バランスを崩し男は再度倒れる
引きずる足に大き目の建材がかかる、バランスを崩し男は再度倒れる
男 「ツン子ぉ…」
クー「男っ!男ぉぉ!!起きてくれよ!なぁ!男ぉぉ!」
頬を何かが叩いている、男はうっすらと目を開けると
泣きじゃくり胸元にすがりつくクーの姿があった
頬を何かが叩いている、男はうっすらと目を開けると
泣きじゃくり胸元にすがりつくクーの姿があった
クー「男ぉぉ!!!」
猫 「おい!起きろ!このサル!」
犬 「さるなの!かむぞ!」
鮫子「クー!落ち着いて!動かしちゃ駄目!」
シュ「とりあえず、ゆっくり運ぼう」
猫 「おい!起きろ!このサル!」
犬 「さるなの!かむぞ!」
鮫子「クー!落ち着いて!動かしちゃ駄目!」
シュ「とりあえず、ゆっくり運ぼう」
男は宙に浮いた自分の体を確かめる、動く動く
足は、凄い痛い…がさっきほどじゃない、手は、大丈夫
目は…見える
足は、凄い痛い…がさっきほどじゃない、手は、大丈夫
目は…見える
男 「だ、大丈夫だ…動けるから」
鮫子「その足じゃ駄目よ、肩貸しなさい」
男 「俺は…探さないと」
鮫子「その足じゃ駄目よ、肩貸しなさい」
男 「俺は…探さないと」
その言葉を聞き、胸元にクーがしがみつく
クー「だ、駄目だ!行かせない!早く逃げないと…」
そのしがみつく手を弾く
男 「ツン子がまだ見つからないんだっ!!見つけないといけないんだ!」
クー「だ、駄目だ!行かせない!早く逃げないと…」
そのしがみつく手を弾く
男 「ツン子がまだ見つからないんだっ!!見つけないといけないんだ!」
窓際に立つ佐藤
ここは何階なのだろう?下から舞い上がる火の粉と風に少しバランスを崩す
背中には傷ついた渡辺さん
その肩口にもたれかかった渡辺さんの頬に軽くキスをする
ここは何階なのだろう?下から舞い上がる火の粉と風に少しバランスを崩す
背中には傷ついた渡辺さん
その肩口にもたれかかった渡辺さんの頬に軽くキスをする
佐藤「これくらいは…今までのお駄賃としてお釣りがくるわよね…」
下を見据えながら佐藤はこれからしようとする事をイメージしてみる
下を見据えながら佐藤はこれからしようとする事をイメージしてみる
バクチだ、これは
そう思いながらもこれ意外に何も考え付かない自分に苦笑する
そう思いながらもこれ意外に何も考え付かない自分に苦笑する
二人して飛び降りよう
そして私がクッション代わりになろう、もちろんこの高さだ
渡辺さんにもそれなりの衝撃はあるだろう。最悪私はともかく渡辺さんも…
それでももしかしたら…渡辺さんは生き延びれる…私よりは可能性がある
そして私がクッション代わりになろう、もちろんこの高さだ
渡辺さんにもそれなりの衝撃はあるだろう。最悪私はともかく渡辺さんも…
それでももしかしたら…渡辺さんは生き延びれる…私よりは可能性がある
足がガクガクと震える、二人を押し戻そうと強い風が吹きすさぶ
苦い唾液が口の中に走る、それをぐっと歯でかみ締める
苦い唾液が口の中に走る、それをぐっと歯でかみ締める
佐藤「一番好きな人なんだもの…幸せを願って何が悪いのよ…」
佐藤「そして…一番幸せになって欲しい人なのよ…頑張れるよ、私」
佐藤「そして…一番幸せになって欲しい人なのよ…頑張れるよ、私」
佐藤さんのショートカットが揺れた瞬間だった
屋上
鯨 「後何分くらいじゃ?アレが落っこちるまで」
シオ「あ、ああ…後10分といったところか…」
その会話の最中、ホテル屋上のヘリポートにヘリが下りてくる
鯨 「後何分くらいじゃ?アレが落っこちるまで」
シオ「あ、ああ…後10分といったところか…」
その会話の最中、ホテル屋上のヘリポートにヘリが下りてくる
橘 「早く!時間ありませんよ!古風様!」
古風「さぁ…お嬢に和嬢様、あちらに…」
和嬢「ええ、お嬢!そのような男など置いていきなさい!」
古風「さぁ…お嬢に和嬢様、あちらに…」
和嬢「ええ、お嬢!そのような男など置いていきなさい!」
太田「うえぇへへへ…へへ」
貧嬢「なりません、どうか橘様太田様もぜひ…」
橘 「…人数的には問題ありませんが、そこの三人は…?」
橘 「…人数的には問題ありませんが、そこの三人は…?」
シオンにカレン、金星人の三名は顔を見合わせ、クスリと笑う
シオ「私たちが居なくてあの船を止めることはできんだろう」
カレ「ですわよ、気にしないで」
シオ「私たちが居なくてあの船を止めることはできんだろう」
カレ「ですわよ、気にしないで」
橘は歯を食いしばる、判っている、もう船は止められない事を
そしておそらくヘリの往復している時間はもう無いということも
そしておそらくヘリの往復している時間はもう無いということも
鯨 「ふん!ワシの事は気にするな!小僧!」
橘は一瞬理解が出来なかった。鯨の叫んだ小僧という言葉に
橘 「あ、ああ…私のことですね、はは、この歳で小僧呼ばわりは恐れ入りました」
鯨 「ワシのいとしいいとしい鮫子がこのホテルにおるかもしれんのにのぅ!」
かっかっかと豪快に笑う鯨
橘は一瞬理解が出来なかった。鯨の叫んだ小僧という言葉に
橘 「あ、ああ…私のことですね、はは、この歳で小僧呼ばわりは恐れ入りました」
鯨 「ワシのいとしいいとしい鮫子がこのホテルにおるかもしれんのにのぅ!」
かっかっかと豪快に笑う鯨
橘は深く頭を下げる、そして全員を無理やりにヘリに乗せ空へ舞い上がる
古風「た、橘!貴方あの4人を!!!い、今すぐ降りるのです!」
橘 「なりません、古風様…あの方々の思いを無碍になさらぬよう…」
古風「そ、それでも」
古風「た、橘!貴方あの4人を!!!い、今すぐ降りるのです!」
橘 「なりません、古風様…あの方々の思いを無碍になさらぬよう…」
古風「そ、それでも」
その瞬間、橘はばんとコックピットの器具を叩く、その肩は震えている
橘 「私は…たとえ世界を敵に回しても…貴方を守りたいのです…」
古風「橘…おにいちゃん…」
橘 「私は…たとえ世界を敵に回しても…貴方を守りたいのです…」
古風「橘…おにいちゃん…」
呆然とする古風の肩を貧嬢がそっと抱きしめる
貧嬢「…古風さん、一番悔しいのは、橘さん…ですよ」
古風「判っています!判っては…いるんです」
貧嬢「…古風さん、一番悔しいのは、橘さん…ですよ」
古風「判っています!判っては…いるんです」
ふと下を見ると、笑顔で見送るシオンにカレン、金星人と鯨の姿があった
古風はただ、胸元の両手を強く握り締めた
古風はただ、胸元の両手を強く握り締めた
鯨 「さあて…そろそろ上がってくるじゃろう」
そう喋りながら鯨はその場で屈伸をし始める
そう喋りながら鯨はその場で屈伸をし始める
シオ「鮫子の父だったな…すまない。我々の、その」
そこまで喋った所で、鯨はその大きな手をばっとシオンの頭に乗せる
そこまで喋った所で、鯨はその大きな手をばっとシオンの頭に乗せる
鯨 「知っておるか?男の体が頑丈な理由をな」
わしわしと掻き毟るようにシオンの頭を撫でくる
シオ「え、え?」
わしわしと掻き毟るようにシオンの頭を撫でくる
シオ「え、え?」
その瞬間屋上の壁伝いに二人の男が現れる
軍父「ふん、いい運動であった!」
荘父「ビカーーーー!!!!」
荘父「ビカーーーー!!!!」
カレ「え?ミリ子の父に…?荘厳さんの父まで?」
鯨はその二人に一瞥をくれ、ふんと鼻を鳴らし
上空の船を見据える
その横にいつの間にか荘厳父に軍父
鯨はその二人に一瞥をくれ、ふんと鼻を鳴らし
上空の船を見据える
その横にいつの間にか荘厳父に軍父
鯨 「女子供の為じゃわい!」
そう叫ぶと親父三人は、異星人三人に笑顔を向けるのだった
そう叫ぶと親父三人は、異星人三人に笑顔を向けるのだった