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ねこつん62


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「せんせえ」

少し白髪の、しかし上品な歳の取り方であろう
一人の女性が木の下の木陰に座り込み目を閉じて微笑んでいる

「ん・・・なぁに?---ちゃん」

「まいせんせえが、おひるにしましょうって」

「・・・先生、ここでちょっと休んで、後から行くわ。まい先生にちょっと休んで・・・・
後から行きますって伝えておいて。」

「うん!わかった」

「---ちゃん?」

「んー?」

「---ちゃん、先生の言うこと聞いて良い子になるんですよ・・・・」

風が髪を撫でるようにふわりと少女の髪を撫でる

「うん!」

「じゃあ・・・またね」

ふうと一息つく、この場所は相変わらず優しくこの老女を労る
「あれは…」

孤児院とは違う方向から、小さな少年と少女がこの木の下に向けて走ってくる
美しい金色のツインテールをふわふわとさせる少女
少女は黒髪の少年の手を引っ張りながら丘の上へと走ってくる

「早くっ!早く行こうよっ!!」
「その前に…手ぇ放して、その、恥ずかしいし…」
「べ、別に好きで繋いでる訳じゃないわよっ!アンタが鈍くさいからでしょっ!」
「はいはい、お願い少し休…」

その二人は老女の姿を見かけるとふふっと笑いかける
少女の白いワンピースがきらきらと光っている

「…こんにちわ」
「あ、こんにちわっ!!」
「うぃーす」
「二人とも元気ね…お名前は?」
待っていた、ずっと待っていた。この孤児院を作ったもう一つの理由、そう、ここは

「えっとね!ツン子!」
「うんとね「男」っての」

この二人の帰る場所を作るためのもの
あの日が帰ってきた、約束を守れたのだ
忘れえぬ二つのうちの一つの約束

「そう、いい名前…ツン子ちゃん、男君」
白い鮫子の手がそっと二人の頭を撫でる
風がふわっと吹き抜ける

「おかえり…二人とも」
その言葉にきょとんとする二人
その表情にまた少し笑った

「で、どうしたの?こんな所まで…」

「えっとね…なんだっけ?男っ!」

「おい!もう忘れたのかよ!えっとね…友達に会いに来たの!」

「へー…なんていう名前の子なの…ここは子供が沢山いるから」

二人はきょとんとしながら、頭を抱える。うーんうーんと唸りながら
その時少年がおお、という表情で

「皆!!!」

老女はそれを聞くと、苦笑しながら二人の手をしっかりと握る
「あいかわらずね…アンタって男は…ふふふ」
「?」
「ツン子ちゃん」
「なに?おばあちゃん?」
「今度はハンデ無しみたいだから、気合入れなさいよ」
「へ?なにが?」
「早いとこ、誰かに決めちゃいなさい」
「ん?何のこと…?」
「なんでもないわ、さあ、向こうには私の大切な宝物が沢山あるわ、きっと貴方たちも気に入るからね」
「ふぇ?」

そう囁くと、老女は二人の背中をそっと押す

「ホラ、行きなさい。」
「うん!」
「うん!」
同時に二人が返事する、そしてまた手を繋ぎ丘を駆け下りる
ふと二人が振り返り、笑顔で叫ぶ

「ありがとう!!」
老女は微笑みながら軽く手を振った、その眼に沢山の涙を溜めて

「ふう・・・歳のせいか疲れが取れないのかしらね・・・少し眠いわ・・・・」
少し寝ちゃおうかしら

「ふふ・・・ここで貴方が居眠りした事覚えてるかしら?私がそれを見つけて
勝手に膝枕して・・・そして・・・」

不良「鮫子とここでキスしたんだよな」
鮫子「あ・・・・・随分遅かったのね」
不良「ああ、でも鮫子は変わらないな」
鮫子「そんな事無いわ、もうすっかりおばあちゃんだもの。貴方はあの頃の学生服のまんま」
不良「そうか?鮫子もあの頃のまんまだぜ」
鮫子「あら?・・・・ふふ、長い夢を見ていたかのようね」

長い黒髪の女性がゆっくりと立ち上がる
そして風に黒髪はまるで女性のマフラーのように首に少し巻きつく

不良「相変わらず綺麗な髪だな」
鮫子「・・・そんな事無いわ、そろそろ行きましょう。時間に遅れるわ」

不良「ああ、ようやく迎えに来れた」
鮫子「手・・・繋いでいい?嫌なら」
不良「ずっと・・・一緒にいよう」

鮫子「・・・はい」

光の中を歩いていく二人とすれ違うように
もう一人、ショートカットの背の低い女の子が歩いてくる

鮫子「…」
すっと手を掲げる鮫子、そして対面より歩いてくる少女

ぱぁん

鮫子「今度はアンタが幸せになる番、ハンデ無し」
優 「…うん、鮫子さん…こんどはここが『すたーとらいん」だね、それと…」
鮫子「あー礼はいいわ、私はこいつを待ってるついでみたいなもんだから」
不良「うわ、ひでぇ」
優 「…ありがとう」
鮫子「こっちこそ…ありがとう、さあ行きなさい」
不良「頑張れよ」

二人の言葉ににこっとする優
もう赤い目は無かった

優 「またね、鮫子さん」
鮫子「ふふ、じゃーまたね」
不良「はは、じゃあまたな」

一人の初老の女性。少し切れ目の優しげな目をした女性
丘の上の大きな木の下でひとり穏かに、微笑みながらその最後の時を迎えた

丘の上の大きな木から少し離れて
ここにこの女性の創った孤児院がある

その女性の告別式は、この孤児院の卒業生と近隣の方々に溢れ帰り
夜まで人の列が絶えることは無かった。この女性の人柄なのであろう

「さめ子園長先生・・・うっ・・うっ・・ひぐ」

「まい先生、もう泣いちゃダメよ。さめ子園長先生あんなに穏かな顔で・・・」

「さめ子園長先生・・・結局最後まで独身だったね・・・・なんでだろう」

「結構昔からモテてて、プロポーズ何回も受けた事あったみたいよ」

「初恋なんだって、大切な大切な。その想いと・・・一つの約束なんだって」

「へぇ・・・園長先生らしいね・・・」


告別式の会場と少し離れた所で一人の少年が少女に話しかけている
「ねえ」
「・・・何?」
「あの丘の木の所に行かない?名前なんていうの!!?」
「・・・さめな」
「さめな!!!かっこいいねーーーー!」
「そう」
「ねぇ!さめなちゃん!丘の上まで行こうよ!・・あ、僕の名前は‐‐‐‐‐‐良!」

返事を待たず良はさめなの手を引っ張る、あの丘に

あの丘の木に向かって

その良とさめなの前を、後ろを沢山の子供たちが走っている

髪の長い冷静そうな子、物凄い大きな声で元気な子
周りにタンポポの花のオーラを携えた子、ゴムの銃を構えた子
少し目元の切れ長の子、モノをよく無くしちゃう子、その横のボーイッシュな子

沢山居た、女の子みたいな少年、そいつと走り比べしている短髪の少年
沢山居る、賢そうな子、ちょっとおとなしい子、口の悪い子、上品に喋る子



そしてその先頭に金髪のツインテールの少女、その横には黒髪の少年




そう、今度はここが『すたーとらいん』

孤児院の屋上には二匹の猫、その口元には名も無き白い花
猫はその少年少女に向けてその花を宙に飛ばす
きらきらと、光が彼らを照らし、花は二人を祝福するかのように風に舞い上がる

ツン「わぁ…綺麗」
少女はそのきらきらと光る花の下

男 「あ…」
ツン「どうしたの?男?」
男 「な、なんでもねーよっ///行こうぜ!!」

わあっと叫ぶ少女の手を少年はしっかりと握り締める、その手に力が入る
もう二度と離さぬように、離れぬように

猫 「…もう二度と離したらいかんぞ…」
そう呟くと猫はふわあっとあくびをし、前足で顔を洗う

男 「ほらほら!しっかり捕まってろ!!」
ツン「うん!!!」
屋上の猫が少し笑いながら背を向け、歩き始める。
しっぽが右、左。そしてもう一度右-----バイバイ

優しく吹き抜けていく風-----あの丘の木は優しくこの校舎を見下ろしていた

 -終-