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男が記憶喪失になったようです(仮)57


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 母校へ足を運んだのは実に十数年ぶりだった
 校舎も校風も変わり映えしていなかったが、内部の人間の顔ぶれだけが見知らぬものとなっている
 当然と言えば当然の話であるが、その事実に心動かされる自分がいた事に少なからぬ戸惑いを覚えていた
 良い思い出など何一つないはずの学園生活も、ある意味では私の大切な一部となっていたのかもしれない

 そんな思考を携え、古い記憶を味わうようにして母校の各所をふらついていると、奇妙な出し物に行き当たった

 出し物は白雪姫をもとにした演劇で、奇妙なのはその登場人物の数だった
 普通、一人しかいない白雪姫が七人もいて、原話では継母にあたる魔術師も五人に増量されている
 そこに七人の小人と、どこから湧いたのか七人の『諸侯』まで加わっていて、ずいぶんと騒がしい劇であった
 筋書きは、一人しかいない王子との結婚を望み、諸侯たちとの婚約を厭んで出奔した七人の白雪姫が
 森で眠らされる小人を起こし、それぞれの婚約者と力を合わせ、諸悪の根源である魔術師を倒すという物だ
 原話と違いなんともパワフルな白雪姫の姿には、私も含めたかつての級友の姿が重なり、一人苦笑を禁じ得なかった

 最後に白雪姫たちは、王子と結婚する事だけが幸せではないと気付き、婚約者である諸侯たちを認め、終幕となる
 劇が終わり教室を後にする人の群れに混じりながら、ふとした考えにとらわれる
 仮にあの頃の私たちが、劇中の彼女たちと同じように気付いていたのなら
 あんな悲劇は回避出来たのではないだろうか、と

 それはすでに終わった物語への無意味な回顧と後悔で
 私はやはり一人で苦笑していた



登場ジャンルより表記一例


※注意:多少ゆがんだ観点多いです

新ジャンル「やる気のない古本屋の女店主」=店主

新ジャンル「淡白」=淡白

新ジャンル「鬱デレ」=鬱

新ジャンル「ハイテンション静」=静

新ジャンル「元気な司書さん」=司書

男の父親=父親

新ジャンル「うつしゅにん」=うつ

新ジャンル「姐御先生」=姉御

新ジャンル「霊姉」=霊姉

新ジャンル「ザルクール」=ザル

ツンの母親=ツン母

新ジャンル「アンニュイサド」=アサ

新ジャンル「通訳」=通訳

男の母親=母親



 喫煙所

店主「……スパ」

店主「ん、奇遇ね」

淡白「………」スタスタスタ

店主「ってコラコラ。無視しなさんな」

淡白「別に無視はしてないわ」

店主「無視してただろ」

淡白「聞こえないフリをしてただけ」

店主「だったらそっちから話しかけなさいよ。顔見知りなんだし」

淡白「いやよ。大して親しくないし」

店主「ヤレヤレ……そんなにキツい顔つきかね?私は」

淡白「顔つきは関係ない。私が話したくなかっただけ」

店主「タバコ、吸わねぇの?」

淡白「吸うわけないでしょ」

店主「ここ、喫煙所だけど?」

淡白「それにしたってこんな所でどうどうと吸うわけない」

店主「正論w」

淡白「それじゃさよなら」

店主「まぁたそういう素気ない反応する……お茶とお昼ご飯くらいオゴるから」


店主「少し付き合いなさいよ?」


淡白「………」



 図書室

扉 ガタガタ……シーン

鬱「?」

静「………」パッ

鬱「あっ、私の本……返して……」

静「………」返す

鬱「ふぅ……あ、返して………ふぅ……あ、返し……ふぅ……あ、返…ふぅ」




店主「――っと。そうだった。図書室は飲食禁止だったな………」

淡白「古本屋の女店主とは思えない台詞ね」

店主「やる気ないしな。
    ま、いいや。司書教諭室はっと……よしよし、開いてるな
    こっちでお昼食べよっか。飲食オッケーなはずだよ。昔と変ってなけりゃ」

淡白「………」

店主「なによ?」

淡白「信じられない」

店主「そういう反応もやむなし、か
    言っとくけどここの司書は顔馴染だから。
    昔から勝手にカウンターから奥へ部外者引きずりこんでたよーな奴だぞ?」

淡白「だから?」

店主「だから私の無断侵入もアイツの責任だってこと」

淡白「信じられない」

店主「じゃあやめる?」

淡白「もうここでいいわ」

店主「ククッw」




店主「ごちそうさま」

淡白「食べるの遅いわね」

店主「そりゃぁ、アンタ
    アンバタと学園文化祭名物弁当『テンプレ・オブ・テンプレート』ツンギレ風とじゃな
    っていうか本当にコンビニまでパシらせるとは恐れ入ったよ。風情とかないの?」

淡白「アンバタ好きだから」

店主「ヤレヤレ……お茶入れよっか」

淡白「厚かましいってレベルじゃねーぞ」

店主「はいはいわかりましたよ」

  pi

店主「――あーもしもしー?私。あーそう。来てるよー。ってか今お前んトコ
    そそ。司書教諭室。ん。待ってるー
    ――あ、お茶入れてるけど良いよな?うんうん。
    はーい」

  pi

店主「これでドーダ」

淡白「よろしい」

店主「どーもっ、と……お茶は……あったあった
    ホント、変わらないな。位置から何から昔のままか……」

淡白「OGなの?学園の」

店主「んー?まーね」カチャカチャ

淡白「…………」

店主 カチャカチャ

淡白「好きな人とか…いたの?」

店主「……」カチャカチャ

淡白「変なこと…聞いちゃったわね」

店主「いなかったよ」カチャカチャ

淡白「そうね…」

店主「……」カチャカチャ

淡白「……」

店主「緑茶で良い?」

淡白「ええ」

店主「お茶うけいる?」

淡白「いい」

店主「全部話して良いよ?」

淡白「―――」

店主「ずっと前から哀しい事が続いてた。違う?」

淡白「…………」


 コポコポコポコポ…

 コト


店主「はい、お茶」

淡白 ズズッ…

淡白「……」

淡白「店主さん」

店主「何かしら?」

淡白「人を好きになるって、どういう事?」

店主 ズッ…

淡白「恋をするって、どういう事?」

店主「難しい質問ね」

淡白「私には解らない――解らなかった」

店主「……」

淡白「クラスで、周りの子たちがそういう話をしていても、そういう事をしていても
    何一つ理解できなかった」

淡白「この前、クラスで人気の男の子が記憶喪失になって…」

淡白「何か変わると思って皆のマネをして、男に近づいたりした…
    でも、何もかわらない、何もわからない…………なにもかんじない
    けっきょく、まねはまねだった…」

淡白「……」

淡白「感情が死んでいく」

店主「………」ズズッ

店主「『感情が死んで行く』
    NHKにようこそでそんな台詞あったね。漫画版」

淡白「そうね」

店主「…………」

淡白「…………」

店主 スッ




     店主 淡白 抱き





淡白「――――っ?
   放……して……?」





     泣いて、いいよ






淡白「――――っ」

淡白「…………」

淡白「泣けない」

店主「泣きな。無理して良い事なんか、有りはしないよ」

淡白「……私もあなたと同じ」

店主「ん?」

淡白「好きな人とか……いなかった
    ただ、好きなんだって、思い込もうとしてただけ」



淡白「昔からそうだった」

淡白「喜んだり、悲しんだり、怒ったり…
    熱くなったり、冷静になったり、素直になれなかったり……できなかった
    感情の実感がなかったから、自分が何者でどんな人間か、何が好きでどんな事をしたいのか
    わからなかった」

淡白「思い出したように感じない自分をなんとかしないといけないって考えて
    でも行動に移そうとした時には、そんな感情は消え去って、動かずに終わってしまう
    そしていつの間にか、それでも良いって気持ちが芽生えている。その繰り返し
    今までずっと、そうして生きてきた」

淡白「何とかしたかった」

淡白「だから男が記憶を失った時には、『もしかしたら』って思った。
    いえ……正しくは思おうとしていた」

淡白「感情が空っぽの私と、記憶が空っぽの彼
    ……確証なんて無かったけど、うまくいくんじゃないかって
    もしかしたら、何も感じない私を変えてくれるんじゃないかって……

    ……本当は、ただ今の自分から逃げたかっただけなのに
    そんな言葉で自分を騙して近づいた」

淡白「結局……っ、何も変わらなくて……っ
    それどころか、彼を大切に思ってる人まで傷つけて……っ」

淡白「本物と偽物の違いを見せつけられてっ」

淡白「もう私っ――どうしてっ…どうして良いかっ、解らなくってっ」



店主「泣いていいよ。誰も見てないし、私も見ない」

淡白「……ごめんなさい。それでもこれは、自分のための感情だから」

店主「泣き顔は…隠してあげるから」ギュウゥ…   

淡白「―――っ」

淡白「…………」すぅ


図書室「……………」


     男ぉぉぉお!                                  

                                                    ふふん    



                                          ぶぉんぱっぱ!        


                        デュクシ!                             




                                   米                      


                あれれー?                             



                                             ブーーン  

                                ウヒョヒョー                  

               どすこい!                                    



                                                 男、君が好きだ   



淡白「店主さん…」

店主「んー?」

淡白「いつかなれるかな……幸せに」

店主「さぁね。それは…私にもわからないね」

淡白「そうね」

店主「でも…………いつか見つかるよ                  男
    どんな関係であれ、一緒にいることのできる、アナタだけの相手が……私が保証する」

淡白「気休めでもありがとう」

店主「そうだな。でも一割くらいは本気で言ってるよ?
    こんな私にだって…………―――――――いや」

店主「いや成る程…そういうことなら……もしそうなら…」

淡白「どうしたの?」

店主「二割だな。本気度は
    あるいは君は既に出会ってるかもしれない。太陽が雲に覆われ淡く輝く空の下で」

淡白「どういうこと?よく……解らないわ…」

店主「救い主は必ずしも外からやってくる訳じゃないってこと
    いい?一度でいいから自分の周りをよく見渡してみなさい
    もしかしたら………本当に、もしかしたら」

淡白「…………………そうね」

店主「………」

淡白「………」






店主「さて、と」

店主「タバコ、吸って良い?」

淡白「校内は禁煙」

店主「あーそういやそうだったね。やれやれ。世知辛くなったわよねぇ…いつの間にか」

窓 ――ガラ


店主「でも、まぁ良い眺めだし、良しとするか
    こっち来る?司書教諭室から外なんて見たこと無いんじゃねぇの?」

淡白「そうね」

    ・
    ・
    ・
    ・
    しばらくの間、私と彼女はそうして外を眺めていた
    傷心の彼女に言うには軽薄な話題であるように思えたので口には出さなかったが
    彼女が自分を指して言った『空っぽ』即ち『うつろ』という語。
    古い意味においてそれらは『中が充ちた状態』を指していたと言われている
    意味が人の抱く幻想であるのならばその逆もまた然りということか
    無意味であるという事は、転じればそこに全ての意味を見出し得るのかもしれない
    といった所で、そんな真実を語ってどうなるとも私には思えなかった
    意味と言う物は、現実を積み重ねたその先にしか、存在し得ないのだから
    ・
    ・
    ・
    ・
店主「・・・・・・ふぅむ」

淡白 ………

店主「お、オナモミ見っけ」

淡白「目、良すぎだから」

店主「意外と判るんだ。つけてる奴」

淡白「うそつき」ガタ

店主「んぉ?」

淡白「そろそろ行くわね」

店主「ん。うちの店、来たかったらいつでもいらっしゃい。待ってるよ」

淡白「ええ」



  扉 ガラガラガラガラ



司書「ありゃ?淡白ちゃんもいたんだー
    大人ばっかりだけどもうちょっとゆっくりしてく?」

淡白「いいえ。今日はこれで」

父親「おや、淡白ちゃんじゃないか」

淡白「こんにちは。男のお父さん」ペコ

父親「あぁ。これはご丁寧にどうも(ペコ)
    この前はうちの息子が迷惑掛けたみたいで。
    そのうえ目を覚ますまで何度も見舞いに来てくれて…」

淡白「いいえ、こちらこそ
    失礼をしてしまったかもしれないのに」

父親「それじゃあここはお互い様ってことでw――もう行くのかい?」

淡白「ええ。
    司書さん、失礼しました」

司書「うん。またねー」



司書「それじゃあ皆行こっか。古本屋さんも待ち侘びてるんじゃないかなぁ?」

 ゾロゾロゾロゾロ......

父親「んぉ、彼女も来てたのかい?いやぁ~♪こりゃぁいよいよ昔に戻ったみたいだなぁっと」

うつ「ホントこのまま昔に帰りたい……」

姉御「確かに、こうまで勢揃いするなんて、あの頃からすれば信じがたい話ですからね」

霊姉『ていうかアタシは姐御が教師やってる事の方が驚きだよ。一番有り得ないキャラだったじゃん』

姉御「何かな?霊姉。よく聞こえなかったな」

霊姉 ヤベヤベ『ザル!あとは任せた!!』

ザル「っと…まあ先生だってお世辞にも教師らしいとは言い難かったからなぁ」

ツ母「あらあら。言われてますよ?」

父親「んー、まあ間違っちゃいないかな?」

アサ「そうねぇ。確かに良い反面教師だったわぁ」


 ...ゾロゾロ


 扉 ガタッ……ガタガタ―――ガララララ


淡白「………」


―― やふー!久しぶり♪女店主さんっ♪

―― おー。御無沙汰………ってなんで先生がいるんですか…

―― ん~?ここ、うちの息子の学校だからね
     しっかし君、雰囲気変わったねぇw一瞬誰だか解らなかったよ

―― まあ紆余曲折ありましたから…

―― っていうか私たちもいるぞぉ!飲み友ぉ!

―― んぉー。霊姉にザルな。それから姐御にうつしゅにんにツン母さんと……

―― はぁい

―― さてザルに霊姉、また三人でノミニイクカー

―― 私も混ぜろー……

―― 四人でイクカー

―― ちょっと。久しぶりに会っていきなり無視ぃ?相変わらずねぇ

―― るせっ!こっち来んな!疫病神!!(シッシッ

―― ふぅ。疫病神とはあんまりねぇ
    ホラ。霊姉?アンタを殺した相手が目の前にいるわよぉ?

―― えー?ていうか私が死んだの古本屋のせいじゃねーし

―― アサのせいだもんねー?

―― それもちげー

―― ほらほらー。喧嘩はそこまでだよっ

―― そうだぞ?せっかくの再会なんだから昔の事は忘れて仲良くしなさい

―― 簡単に忘れられてしまうくらいなら、喧嘩でもしてくれた方が嬉しいがな。私なら、ね
    なんにせよ彼の野暮天を挟んではそうも行くまい

―― ホンっと親子二代に渡って鈍感が原因で事件に巻き込まれる
    …っていうか事件を巻き起こすんですもの
    男くんの家系は末代まで祟られてるのかしらねぇ?

―― ちょっ、それは流石に濡れ衣…
    あれ?なーんでみんな顔を背けるのかなぁ?
    『ツン母』さーん?
    『姐御』さーん?
    『アンニュイどサド』ちゃーん?
    『親が古本屋の女店主』さーん?
    『ザルクール』さーん?
    『元気な図書委員』ちゃーん?
    『霊じゃない姉』さーん?
    『うつしゅせき』ちゃーん?

    おーい、もしもーし?





淡白 ん?

通訳「こちらです」

母親「おー、やってるやってるwアンタも案内してくれてアリガトな?

      さ、て、と」


 扉 ガラララララララララ!!


母親「久しぶりー!ただいまー!っていうかお帰りマイハズバンド!!」

父親「お、おおおおお、お、オマエヘェッ!!」

母親「聞ーたぞー?息子が記憶喪失してたんだってー?
    んな面白そうなこと、なぁーんでもっと早くアタシに知らせなかったんだよぉ!?」ウリィ

父親 ヒーーーー!!

司書教諭室 ギャーギャー ワイワイ ガヤガヤ ワハハハハ




淡白「………」

淡白 クスッ

通訳「………」

通訳「あの…」

淡白「あなた…」

通訳「その…」おず...

淡白「何かしら?」

通訳 ―――……

淡白「人のあとをつけたりして、ストーカーが趣味なのは構わないけど、やりすぎたら捕まっちゃうわよ?」

通訳「あのっ!

通訳・淡白「『古本屋でよく見かけますが、アナタも本好きなのでしょうか?それで、、、』」

淡白「『もし良かったら、お話でも』って言いたかったのかしら?」

通訳(///)「あ…う、あ……………はい」

淡白「私のこと、ずっとつけてたのは、つまりたったそれだけのことが言えなかったから…か。」

通訳「その、あの…」

淡白「意外と、カワイイ所あったのね?」クスッ

通訳 ボンッ(赤面爆発

通訳(///)チ、チガイマスッ!イエチガイマセンケドモソノアノ…イキナリズルイトイウカソノツマリ


―― ところでその古本屋さん、今この部屋にいるのだけど…一緒に行く?

―― ………………………はい…

―― そう言えば、名前、まだだったわね。

―― 『通訳』…………と…

―― そう。それじゃあこっちも名乗らせていただきます
    私の名前は――――――――――