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昔々、とある村に、太助というやんちゃ小僧が居ったそうな。 太助は好奇心が非常に強い少年で、人の言うことを聞かずに、大人たちを非常に困らせておった。 ある日、太助は大人たちに「決して入ってはならぬ」と言われた森へと向かった。 森は薄暗く、道も平坦では無かったが、太助は構わず奥へ奥へと進んでいった。 どれだけ進んでいったか分からなくなった頃、 太助の耳に何やら祭囃子のような楽しそうな音楽が聞こえてきた。 「おや、これは楽しそうな予感がするぞ?」 太助はそう呟きながら、音のする方へと歩いて行った。 音は大きな洞穴の奥の方から聞こえてきていた。 好奇心の強い太助は、全く恐れることなく、その洞穴の中に入っていった。 音を頼りに何度か道を曲がり、坂をどんどん下っていくと、やがて広い場所に出た。 そこでは、たくさんの小鬼たちと、一人の少年が楽しそうに遊んでいた。 その光景に流石の太助も驚いていると、 「やぁ、君も一緒に遊ばないかい?」 と、少年の方から太助に声をかけてきた。 太助はその少年の顔を見ようとしたが、明かりが少ないせいか、 はっきりとは見えなかった。 太助は少し首をかしげたものの、楽しそうな遊びをしたいという好奇心がゆえに、 深く考えようとしなかった。 そこでの遊びはとても楽しいものであった。 太助の知らない遊びもたくさんあった。 今までやってきたことがつまらなく感じるくらい、 この世のものとは思えないくらい楽しい時間を過ごした。 「どうだい、ここでの遊びは楽しいかい?」 太助が遊び疲れて休んでいたころ、少年が太助に尋ねた。 「もちろん楽しいさ。もう、ずっとここに居たいと思うくらいさ」 そう太助が満足そうな笑顔で答えると、少年の口元が歪んだ。 「そう、それじゃぁ、君がここに居てよ」 「えっ、どういう・・・ ・・・!?」 少年の言葉の意味を理解しかねた太助は、思わず少年の顔を見てぎょっとした。 その少年の顔は、太助そっくりの顔であった。 「その言葉のとおりさ。僕が『太助』になって村に帰るから、君はこのままここに残ればいい」 「ま、まってくれ。僕だって村に戻りたい」 「ダメだ。『太助』はこの世に一人。君はこれから『ななし』として、ここで生き続けるのさ」 『太助』は、涙目の『ななし』を冷酷な目で見つめる。 それに耐えきれなくなった『ななし』は、外へ駈け出そうとするが、小鬼たちに抑えられてしまう。 「嫌だ。もう勝手なことはしないから、大人の言うことはちゃんと聞くから、だから帰してくれぇ」 「大丈夫。そういった演技も僕がちゃんとやっておくから。だから、君はずっとここで楽しんでいるといい」 「それじゃぁね、ななし。楽しかったよ」 「い、いやだあぁぁぁぁぁ!!」 泣き叫ぶななしを見ることなく、太助は迷わず洞穴を出て、村へと帰って行った。 その頃、村では、一日たっても帰ってこない太助のことを心配して、 村人が総出で村中を探し回っていた。 そして、夜が更け、村人たちも諦めてた頃、 森の方から、涙で顔を濡らした太助が歩いてきた。 村人や家族は大層怒っていたが、 何時になく涙を流して謝る太助を見て、あまり叱ることはしなかった。 それからというもの、太助は人が変わったかのように真面目で、 大人の言うことをちゃんと聞く少年になった。 村人も、家族も、その太助の代わり振りを見て、 「あぁ、森で怖い思いをしたおかげで、太助も改心したのか」 と、大層喜んだ。 やがて太助は大人になり、村一番の器量よしとして、妻をめとり、 幸せな家庭を築いたのであった。 おしまい #region() ちなみに、その後ななしがどうなったかを知る者は居ない。 #endregion
昔々、とある村に、太助というやんちゃ小僧が居ったそうな。 太助は好奇心が非常に強い少年で、人の言うことを聞かずに、大人たちを非常に困らせておった。 ある日、太助は大人たちに「決して入ってはならぬ」と言われた森へと向かった。 森は薄暗く、道も平坦では無かったが、太助は構わず奥へ奥へと進んでいった。 どれだけ進んでいったか分からなくなった頃、 太助の耳に何やら祭囃子のような楽しそうな音楽が聞こえてきた。 「おや、これは楽しそうな予感がするぞ?」 太助はそう呟きながら、音のする方へと歩いて行った。 音は大きな洞穴の奥の方から聞こえてきていた。 好奇心の強い太助は、全く恐れることなく、その洞穴の中に入っていった。 音を頼りに何度か道を曲がり、坂をどんどん下っていくと、やがて広い場所に出た。 そこでは、たくさんの小鬼たちと、一人の少年が楽しそうに遊んでいた。 その光景に流石の太助も驚いていると、 「やぁ、君も一緒に遊ばないかい?」 と、少年の方から太助に声をかけてきた。 太助はその少年の顔を見ようとしたが、明かりが少ないせいか、 はっきりとは見えなかった。 太助は少し首をかしげたものの、楽しそうな遊びをしたいという好奇心がゆえに、 深く考えようとしなかった。 そこでの遊びはとても楽しいものであった。 太助の知らない遊びもたくさんあった。 今までやってきたことがつまらなく感じるくらい、 この世のものとは思えないくらい楽しい時間を過ごした。 「どうだい、ここでの遊びは楽しいかい?」 太助が遊び疲れて休んでいたころ、少年が太助に尋ねた。 「もちろん楽しいさ。もう、ずっとここに居たいと思うくらいさ」 そう太助が満足そうな笑顔で答えると、少年の口元が歪んだ。 「そう、それじゃぁ、君がここに居てよ」 「えっ、どういう・・・ ・・・!?」 少年の言葉の意味を理解しかねた太助は、思わず少年の顔を見てぎょっとした。 その少年の顔は、太助そっくりの顔であった。 「その言葉のとおりさ。僕が『太助』になって村に帰るから、君はこのままここに残ればいい」 「ま、まってくれ。僕だって村に戻りたい」 「ダメだ。『太助』はこの世に一人。君はこれから『ななし』として、ここで生き続けるのさ」 『太助』は、涙目の『ななし』を冷酷な目で見つめる。 それに耐えきれなくなった『ななし』は、外へ駈け出そうとするが、小鬼たちに抑えられてしまう。 「嫌だ。もう勝手なことはしないから、大人の言うことはちゃんと聞くから、だから帰してくれぇ」 「大丈夫。そういった演技も僕がちゃんとやっておくから。だから、君はずっとここで楽しんでいるといい」 「それじゃぁね、ななし。楽しかったよ」 「い、いやだあぁぁぁぁぁ!!」 泣き叫ぶななしを見ることなく、太助は道を迷うことなく洞穴を出て、村へと帰って行った。 その頃、村では、一日たっても帰ってこない太助のことを心配して、 村人が総出で村中を探し回っていた。 そして、夜が更け、村人たちも諦めかけてた頃、 森の方から、涙で顔を濡らした太助が歩いてきた。 村人や家族は大層怒っていたが、 何時になく涙を流して謝る太助を見て、あまり叱ることはしなかった。 それからというもの、太助は人が変わったかのように真面目で、 大人の言うことをちゃんと聞く少年になった。 村人も、家族も、その太助の代わり振りを見て、 「あぁ、森で怖い思いをしたおかげで、太助も改心したのか」 と、大層喜んだ。 やがて太助は大人になり、村一番の器量よしとして、妻をめとり、 幸せな家庭を築いたのであった。 おしまい #region() ちなみに、その後ななしがどうなったかを知る者は居ない。 #endregion

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