登場人物
ユカ:アイドル事務所『サブマリン』社長。裏の顔は、怪異事件専門の探偵 よくジャーキーチップ入りのパイプを加えている  通称、「Jerky」
混沌:ユカの相棒で、西洋産まれの怪異。性質は『影男』。「アカギ」「ニャル子」として具現化することもある 通称、「Chaos」
(アカギ:混沌の姿の一つ。イクのマネージャー。主に対外的に使われることが多い。
(ニャル子:混沌の姿の一つ。事務所内では基本的にこの姿でいる。潜入操作など、アカギの姿で行いにくい作業をする時に使われる
最上:事務所『サブマリン』の事務員。探偵事務所の事務も兼任している。ハッキングも出来たりするスーパー女子大生
イク:事務所『サブマリン』所属のアイドル。非常に耳がいい。噂話などを集め、ユカに提供している。

響子:女性警官。優秀だが、思い込みが激しく、空回りすることが多い。ユカを一方的にライバル視している
白戸:犬の姿をした元人間。響子のお目付け役。車で犬を誤って轢いてしまったことが原因で、怪異に憑かれ、犬の姿になってしまった。鼻が非常に利く
メタリカ:占い師。裏の顔は、情報屋。情報の信憑性は高いが、その分値段も高いことで有名。占いの腕も一流。


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第一話
主要登場人物:混沌・イク


(とある小劇場にて)

イク「みんなー 今日は楽しんでくれたかなー」
客「オーー!」
イク「イクはね、すっごく興奮しちゃったの! いひひっ」
客「ヒュー!」
イク「それじゃぁ皆、まったらーいげーつーなの!」
客「ワーー!!」

(そういい残し、ステージを去るイク 毎月19日に行われるイクの単独ライブは、今日も盛況に終わった)
(鼻歌を歌いながらステージ裏を歩くイクに、一人の男が近づく)

アカギ「今日も大成功だったみたいだな」
イク「あっ、プロデューサー。今回もバッチリなの!凄かったでしょー」
アカギ「あぁ、確かに 凄い熱狂ぶりだったな」
イク「むぅ・・・そっちじゃないの。まぁ、いっか。それよりご褒美ご褒美ー」
アカギ「はいはい。さて、何か希望は?」
イク「たまにはお寿司がいいの!事務所で皆でいーっしょに食べたいの!」
アカギ「くくっ、『スシ』ね。分かった。最近食べてなかったし、社長もOK出すだろ」
イク「やったの!想像するだけで、うずうずしてくるのー。プロデューサー、サッと着替えてくるから、待っててなの!」
アカギ「はいはい、手早く頼むよ」

(さらにご機嫌になったイクは早歩きで着替え室に向かい、アカギは事務所と連絡を取る)
(どこからどう見ても、普通のアイドルとプロデューサーであるが、見る人が見れば気づくかもしれない)
(『スシ』と言ったときのイクの表情が、何故か営業スマイルであったことと、聞いたときのアカギの口元が、微妙にゆがんだことに)

アカギ「もしもし、最上か。社長は?・・・そうか、とりあえず、イクが寿司を食べたいって言い出したんだが・・・ あぁ、頼む。」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第二話
主要登場人物:混沌・最上・イク


(場所は変わって事務所『サブマリン』にて)

(撤収作業が終わり、事務所へ帰ってくる二人)
(二人が帰ってきたことに気づいた最上は、仕事を中断して、笑顔で手を振る)

最上「イクちゃんおっつかれー。プロデューサーさんも、お疲れ様」
イク「もがみんもお疲れさまなの!」
アカギ「ところで、準備は出来てるか?」
最上「うん、『特上』握り4人前、既に『冷蔵庫』の中に入ってるよー ただ・・・社長が書庫から戻ってこないんだよねぇ・・・」
アカギ「あぁ、また本に囲まれて寝てるのか・・・」
イク「全く、社長はおねぼうさんなの!」
最上「イクだって朝に弱いじゃないか。まぁ、それはさておき、ボクも含めて4人とも、事務所内に居る事になるよー」
アカギ「それなら問題ない。では、始めようか」
最上「了解ー」

(そう言って、最上がパチパチとキーボードを操作すると、建物自体の出入り口を含め、全ての扉のロックがかかる)
(全てのロックがかかった事を確認した最上は、アカギに向かってOKの仕草をする)

アカギ「よし、それじゃ、イクはユカを起こしに行ってくれ」
イク「はーい! 任せといてなの!」
アカギ「最上は食事の準備を任せていいか? ちょっとこの姿は窮屈だからな」
最上「うん、僕に任せて。それより・・・その・・・『着替え』は別の部屋でやってもらえると・・・」
アカギ「うん? 特に問題は無いのではないか? 今の姿は確かに男性だが、私という存在に性別は無いのだし」
最上「そ、それでもっ、ちょっと抵抗あるんだよぅ・・・ 特にここで着替えなきゃいけない理由も無いしさぁ・・・」
アカギ「ふむ・・・そういうものか 分かった、隣の部屋にでも行ってくる」
最上「うん、ありがと・・・ さて、3人が戻ってくる前に準備しておかなきゃ・・・」

(ユカを起こしに行くイク、『着替え』をしに行くアカギもとい混沌、準備をする最上)
(3人それぞれが動き始め、アイドル事務所『サブマリン』は、探偵事務所『C&J』へと様変わりしていく)


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第三話
主要登場人物:ユカ・イク


(混沌に言われ、ユカを起こしにいくイク)
(ユカの書庫の扉を開けると、そこには大量の本の山に囲まれた中で、仰向けに眠るユカが居た)

イク「あっ、ユカさん居たの! おーーい、早く起きるのー!」
ユカ「ZZZzzz...」
イク「うーーん、全然起きないのね。ユ・カ・さーん、起きなかったらイクがいたずらしちゃうよー!」
ユカ「ZZZzzz...」
イク「むぅ・・・こうなったら、イク、やっちゃうの!」

(そういって、おもむろに本の山を一つをポンと押すイク)
(その山は二度三度前後に揺れた後、バランスを崩して寝ているユカの方へと倒れていく)

ユカ「ZZZzz..ぬわーー!」
イク「いっひひひひ、大成功なの!」
ユカ「いつつ・・・って、その声はイクか?」
イク「大当たりなの!目が覚めたでしょ?」
ユカ「いや・・・目は覚めたが・・・これは酷くないか?」
イク「声かけても起きなかったユカさんが悪いの! それより、早く皆でお寿司食べるの!」
ユカ「寿司・・・か、いいな。んで、社長呼びじゃないってことは、もう準備は済んでるってことでいいのか?」
イク「勿論!なの みんな用意して待ってるの!」
ユカ「分かった。5分くらいで準備するから、待っといてくれって最上に伝えておいてくれないか?」
イク「りょーかいなの!そのままもがみんのお手伝いしてるなの!」

(そう言って、パタパタと駆け出すイク)
(その後姿を見送った後、ゆっくりと起き上がり、首を鳴らすユカ)

ユカ「『コッチ』の仕事は2ヶ月ぶりか・・・ さて、今回は何があるのやら・・・」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第四話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


(準備を終えて応接室に向かうユカ)
(そこには最上とイク、そしてニャル子の姿に着替えた混沌が居た)

イク「あっ、ユカさんとーちゃくなの!」
ニャル子「おっそーい。遅刻する男の人は、女性にモテないぞっ」
ユカ「お前に女性の何が分かるってんだよ・・・ったく、とりあえず、遅れてすまんな」
最上「まぁ、ユカさんの寝坊はもう慣れっこだから大丈夫だよ」
ユカ「それはそれで傷つくが・・・ ま、それより食べ始めようか」
イク「わーい。いっただっきまーーーす!なの」

(とりあえず、机に並べられたお寿司を食べ始める4人)
(ある程度お腹を満たしたところで、ユカがイクに尋ねる)

ユカ「で、今回はどんな噂を拾ってきたんだ?」
イク「ふふー、聞いて驚くの!今回の噂は、『切り裂きパンプキン』についての噂なの!」
最上「切り裂き・・・パンプキン?」
ニャル子「ほほーう、中々洒落た噂ですなぁー。しかも、事件のにおいがプンプンするし!」
ユカ「楽しそうな顔をするな・・・全く。で、続きを頼む」
イク「はいなの!噂によると、この近辺で1週間ほど前から、女性が切り裂かれる事件が3件起きてるらしいの。」
最上「1週間で3件・・・別々の事件なら、そう多い数字ではないけれど・・・何か共通点とかあるの?」
イク「全員が背中に2本の傷を負っていることと、死体の横には泣き顔のジャック・オー・ランタンが並べて置かれてる・・・って聞いたの!」
ユカ「なるほど、それで『切り裂きパンプキン』か・・・ それにしても、泣き顔・・・ねぇ・・・」
最上「ふーーん、大体分かった。それじゃ、ひとまず情報集めてみるよ。」

(そういって手元のノートPCに向かい、すばやく何かを打ち込む最上)
(一方のユカは、ジャック・オー・ランタンの泣き顔の意味について、考えをめぐらせていた)

ニャル子「サーモンお代わりいっただっきまーす」
イク「あっ、それイクのー!」
ユカ「・・・おまえらもうちょっと緊張感を・・・いや、いい・・・」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第五話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


(イクとニャル子がサーモンの争奪戦を繰り広げる中、真剣な表情でPCを操作する最上)
(数分後、作業が終わったらしい最上は、目をつぶったまま上を向いて、ふぅっと大きく息をついた後、何時ものにこやかな表情に戻る)

最上「ほいっと。とりあえず、警察のサーバーから情報引っこ抜いてきたよー」
イク「さっすがもがみん!なの」
最上「えへへー、それほどでもぉー」
ユカ「相変わらずすげぇな・・・ で、内容はどんな感じだった?」
最上「うーーん、半分はイクちゃんの拾ってきた噂の裏づけって感じかな。勿論、興味深い話もあるよー」
ニャル子「ほほーう、それは気になりますなぁー」
イク「もがみんの『興味深い』って、結構いい所ついてるから、必見なの!ユカさんのやつより信憑性ずっと高いの!」
ユカ「確かにそうだ・・・ってちょっと待て。俺が間違えたのって、あの1回だけしかないぞ?」
最上「まぁ、ユカさんが情報収集すること事態少ないから、印象に残りやすいとかそういう・・・。っと、話がそれたね。じゃ、本題いくよ」

(そう言いながら、部屋の壁にあるリモコンに手を伸ばす最上)
(スイッチを押したと同時に、天井の一角からスクリーンが降りてきて、最上のパソコンの画面を映し出す)

最上「えーっと、まず、被害者が死亡したとされている時間帯は、全てが夕方から夜の間。まぁ、この手の事件にはよくある話だね」
ユカ「確かにそうだな。出歩く人間が少なくなる時間帯だし」
最上「で、ちょっと不思議なのが、死亡した場所が全て路地裏の行き止まりなんだよねー」
イク「ほぇ?それの何が不思議な話なの?」
ユカ「死体があった場所・・・なら、何の不思議も無いさ。ただ、ここで殺されたってことは、被害者はここに連れてこられたのか、それとも自分の意思で来たのか・・・」
ニャル子「自分の意思の筈がないでしょー。そんな逃げ道も無い、助けも来ないような所に好き好んでいくはずないもん」
最上「ところが、縛られた形跡とか、薬を飲まされた形跡とかが、遺体からは一切見つからなかったらしいんだよ」
ユカ「ふぅむ・・・好き好んでくる場所じゃない所に、自分の意思で移動した・・・ということは、そこに誘導された可能性が高いわけだな」
最上「そう。警察は、複数の犯人によって退路を限定され、殺しやすい場所へ誘導された上で殺された・・・と推測しているみたいだけど・・・」
イク「だけど・・・って、他の可能性があるの?」
ユカ「まぁ、普通なら無い・・・な。ただ、これに怪異が絡んでいるとすると、可能性は色々膨らむ」

(最上が入手した情報から、ユカと最上を中心に、情報の分析を行う)
(アイドル事務所『サブマリン』の裏の仕事は、まだ始まったばかりである)


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第六話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


(引き続き閉鎖された事務所で話し合う4人)
(固くはならず、されど砕けすぎない程度にしながら、事件についての分析を進める)

ユカ「怪異が絡んでいるとした場合、一番可能性が高いのは、被害者が操られていた、もしくは幻覚を見せられていた、というパターンだな」
イク「幻覚・・・って、こないだのセイレーンさんみたいなの?」
ユカ「アレは正しく言うと魅了になるんだが・・・まぁ、相手の視覚を弄って思い通りに動かすって意味では、似たようなものだな」
ニャル子「ちょっとタイプは違うけど、ぬりかべなんかもアリだよねー。本当に壁そっくりになるんだから、ホント困ったさんだよー」
ユカ「困ったさんはお前の方だろ・・・ メンドクサイとか言って片っ端から壁ぶっ壊しやがって。最上が領収書見てマジ泣きしてたんだぞ・・・」
最上「ホント、桁一個間違ってるんじゃないかなって何度見直したか・・・アレは精神的にキツかったなぁ・・・」
ニャル子「あー、うー、ご、ゴメン!今は本当に反省してるからっ!だから・・・その・・・明日のオヤツ抜きとかは・・・」
最上「しないって。だって昔のことだもん。今やったらそうしちゃうけど、ね。それはさておき、本題に戻そうか」
ユカ「そうだな。で、さっき言った可能性以外だと、遠隔系の攻撃手段を持っているやつ、それから、自分の傀儡を保有する奴による手も考えられる」
イク「でも、遠隔攻撃なら、怪異じゃなくても出来るの。手裏剣しゅばばばーって投げちゃえばOKなの!」
最上「そこで銃が出てこないのが、イクちゃんらしいよねー。でも、そういう遠隔攻撃はダメなんだよ」
イク「ほえ?どうしてなの?」

(次はオヤツ抜きと言われ、この世の終わりかのように頭を抱えながらブツブツ喋るニャル子)
(一方の三人は本題に戻り、他の可能性について話を続ける)

最上「今回、被害者が殺されたのは路地裏の行き止まりだって話は覚えてるよね?」
イク「うん、勿論覚えているの!でも、この話と何か関係があるの?」
最上「大アリなんだよねー。ところで、イクちゃんは路地裏とかに行ったことがある?」
イク「何回もあるの!よくニャル子さんに連れて行ってもらってるの!」
ユカ「・・・って、ちょっと待て!ってことは、アイドルデビューした後にも行ってるのか?」
イク「勿論!たまに即興でダンスとか踊ってるの。時々、変なおじさんに声をかけられることもあるの」
ユカ「ニャル子、どういうことだ、コレ・・・」
ニャル子「てへっ、ばれちゃったー」
ユカ「ばれちゃったーじゃねぇよ!・・・ったく。すまん、最上。続きを頼む」
最上「はいはいー。あ、ニャル子ちゃんは明日のオヤツ抜きね!」
ニャル子「そ、それだけは勘弁してくだせぇ、お代官さまぁーー」
最上「で、路地裏なんだけど、結構グネグネしていない?」
イク「うん、いっぱい物があって、道もすっごく入り組んでて、中々まっすぐ進めな・・・あっ!」
最上「そう、あそこでは直線的な軌道を進む遠距離武器は、すごく使いにくいんだ。それを使って相手の逃走ルートを絞るのは、恐らく無理だと思う」
ユカ「一方で、鬼火みたいに、軌道を描かずに着弾点に直接攻撃できるタイプの怪異は、そういった場所でも上手くやれるってことだ」
イク「なるほど、よく分かったの!もがみんはやっぱりすごいの!」
最上「えへへー、それほどでもぉー」

(イクに褒められ、ニコニコしながら手を横に振る最上)
(一方、最上にオヤツ抜きを断言されたニャル子は、まるで燃え尽きたかのようにぼーぜんと座っていた)

ユカ「なぁ、イク。俺も褒めてくれても良くないか?」
イク「うーーんと。ユカさんは怪異関係だけはすっごく詳しくてすごいの!」
ユカ「おぅ、ありが・・・って、『だけ』は余計だ!」
イク「いひひっ♪」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第七話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


(その後も議論(半分は雑談)をし、ある程度情報がまとまってきた所で、ユカが「それじゃぁ・・・」と話し始める)

ユカ「とりあえず、今ある情報は大体整理できたし、そろそろ動こうか」
最上「だねー。もう夜も十分更けてきたし、ユカさんやニャル子ちゃんが動くにはいい頃合だと思うよー」
ユカ「そうだな。とりあえず、混沌。イクを自宅まで送り届けてきてくれ。イクはとりあえず今日は休んで、明日からこの件中心で情報収集を頼む」
イク「はいなの!色々噂話を聞き集めちゃうの!」
ユカ「あぁ、よろしく頼む。混沌・・・は、完全に気を失ってるか・・・」
最上「あちゃぁ・・・流石にちょっと厳しかったかなぁー。仕方ないや。僕が送っていくよ」
ユカ「あぁ・・・スマンな。変わりに片付けとかはコイツにやらせておくから。ところで明日は大学は?」
最上「代返頼むからだいじょーぶ!レポートだって、ちゃちゃっと書けるし」
ユカ「いいのか、それ・・・。いや、仕事頼んでる俺が言うのもなんだけどさ・・・」

(堂々とサボる宣言をする最上に、若干呆れ気味のユカ)
(結局、大丈夫と言い張る最上に押されてしまう)

最上「それじゃ、今日はイクちゃんを送ってそれで終わりで、明日からお仕事だね」
ユカ「あぁ、主に監視カメラを重点的に頼む。現場には混沌を行かせるから、そっちには行かなくていいぞ」
最上「うん、荒っぽいことは二人に任せるよ。それじゃ、気をつけてねー」
ユカ「あぁ、そっちもな」
イク「また明日ーなの!」

(事務所のロックを解除した後、ニコニコと笑いながら手を振り、事務所を出て行く最上とイク)
(その二人を見送ったユカは、再度ロックをかけた後、放心状態の混沌の頭に空手チョップを叩き込む)

ニャル子「ふぎゃっ!!」
ユカ「何時までぼさっとしてるんだ、お前は・・・。仕事するぞ、仕事」
ニャル子「だ、だって、お菓子抜きだよ!私にとっては死活問題なんだよ!ユカにとってのジャーキーみたいなもんなんだよ!!」
ユカ「あー、うん・・・。言いたいことは何となく分かった。だが、決定事項は決定事項だ」
ニャル子「そ、そんなぁ・・・。私とお前の仲じゃないかぁ・・・」
ユカ「・・・ただし、今からお前が最上の変わりに事務所の片づけをやるのなら、お土産を買ってきてやらんでも・・・」
ニャル子「雪の宿とぽたぽた焼きをよろしく!!」
ユカ「変わり身はえぇな!・・・まぁ、いい。それじゃ、頼んだぞ。俺はちょっと、警察に行ってくる」
ニャル子「はいはーい。こちらはお任せください、ご主人様ー♪」

(お菓子を食べれると聞いて、一気にテンションが上がる混沌)
(猫なで声で見送る混沌、もといニャル子に呆れつつ、二人が出て行ったときと同じようにして、事務所を出て行くユカであった)

ユカ「さて・・・と。あいつらに会うのも久しぶりだな。何か差し入れでも買っていってやるか」



『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第八話
主要登場人物:響子・白戸


(場面は変わって、警察署のとある一室にて)

(署の一角、ほとんど人がやって来ないような場所に、対怪異操作本部という看板が掲げられた一室がある)
(一人の女性と一匹の喋る奇妙な犬が、山のように積み上げられた資料に囲まれて、今日も地道に雑務をこなす)

響子「ふぅ・・・慣れてきたとはいえ、この経歴表の打ち込みは肩が凝るわね・・・」
白戸「すまんな、代わってやりたい所だが、この手では時間がかかってしまうからな」
響子「構わないわよ、その分、写真のチェックとかをやってくれてる訳だし」
白戸「まぁ、それくらいはな。しかし、そろそろ休憩したらどうだ。もう3時間もぶっ続けでパソコン触ってるぞ」
響子「あら?ホントだ、もうこんな時間・・・。でも、まだ仕事が・・・」
白戸「休むのも仕事のうち、だ。無理に続けてミスをしてしまったら、それこそ大変なことになってしまうぞ」
響子「・・・そう、ね。分かった、ちょっと休憩してくるね。次郎も適当な所で休みなさいよ」
白戸「あぁ、分かってる」

(そういって席を立ち、フラフラっとしながら部屋を出て行く響子)
(その覚束ない足取りを見てため息をつきつつ、独り言を喋りながら仕事に向かう白戸)

白戸「まったく、無理はするなとあれほど言ったのに・・・」
白戸「それにしても、こういう時は特に、この体は不便だって思うなぁ・・・ まぁ、自業自得だから仕方ないのだが」
白戸「っと、これはこっちで・・・と 全く、こんな若い子が犯罪か・・・遣る瀬無いなぁ・・・」
白戸「さて、次っと・・・ ・・・ん?」

(ブツブツ言いながら、写真のチェックと整理を行う白戸)
(テキパキと仕事をこなす最中、ある写真に目が留まる)

白戸「この写真・・・変・・・だな・・・」
響子「どうしたの?何か気になるものでも見つかった?」
白戸「あぁ、それが・・・って、もう休憩終わったのか?」
響子「えぇ、顔洗ってコーヒー飲んだら目が覚めたわ。これで仕事に支障が出なくなるはず」
白戸「・・・それは休憩と言わんぞ」
響子「いいじゃない、後でゆっくり休むわよ。で、気になるのはこの写真?」
白戸「まったく、倒れても知らんぞ。で、この写真なんだが・・・こことここに、猫が居るだろう?」
響子「えぇ、確かに居るわね。猫が・・・いや、違うわね」
白戸「・・・久々の『本業』かもしれないな。この匂い、どうやらヤツも来ている様だし」

(鼻をヒクヒクさせながら、何者かの来訪を察知する白戸)
(それを聞いた響子は、露骨にいやそうな顔をする)

響子「それって・・・やっぱりアイツよね・・・ 全く、何でいっつもアイツのほうが一歩早いんだか・・・」
白戸「まぁ、アイツには強力な『目』と『耳』がついているからな 悔しい気持ちは分かるが、手は抜くなよ」
響子「言われなくてもっ!」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第九話
主要登場人物:ユカ・響子・白戸


ユカ「さて、何時もだとそろそろ電話が入るタイミングなんだが・・・っと」

(そう言って、警視庁のそばの路地で、携帯をチェックするユカ)
(その直後、ピロリロリロっという着信音が鳴り響く)

ユカ「もしもし、次郎か?」
白戸「あぁ、俺だ。来ているんだろ?」
ユカ「流石に察しがいいな。その鼻、今日も健在のようだな」
白戸「当たり前だ。こんなにジャーキーの匂いを垂れ流すヤツはお前しか居らん。・・・で、何時もの件か?」
ユカ「それ以外の理由で俺がお前らに接触するはずないだろ?差し入れもちゃんと買ってきたから、入れてくれないか?」
白戸「分かった。何時ものルートを通ってくれ。こっちも情報が欲しい」
ユカ「あいよ。ところで、響子もそこに居るのか?」
白戸「あぁ、居るには居るが・・・まぁ、何時もの感じだ」
ユカ「全く、変わらないな・・・ 分かった。それじゃ、今から向かうわ」

(「気をつけてな」と最後に言った後、携帯電話の通信を切る白戸)
(電源が切れたのを確認した響子は、口を膨らませてブツブツ文句を言い始める)

響子「全く、次郎はアイツに甘すぎない?一様アレ、不法侵入者よ?」
白戸「俺から見たら、お前のほうが厳しすぎると思うんだがな。それに、俺たちにとって重要な情報提供者なんだ。邪険に扱うほうが変だと思うが」
響子「だけど、外で会うことだって出来るじゃない!それをしようともしないし、そもそも自分から電話をせずに相手にかけさせるって、どういう神経の持ち主よ!」
白戸「電話の件は、こっちが好きなタイミングでかけれるようにって配慮だろう。お偉いさんが来てる時に、アイツから電話があると色々不味いだろうからな」
響子「でも・・・でもっ・・・」
白戸「・・・響子。お前、何時もの悪い癖が出てるぞ。負けたくないという気持ちはいいと思うが、だからといって・・・」
響子「『相手を貶めようとするな』でしょ。分かってるわよ。分かってるんだけど・・・うー、モヤモヤする! ちょっと顔洗ってくる!」
白戸「はいはい。早めに帰ってこいよー」

(見るからにイライラしたまま、部屋を出て行く響子と、ため息をつきながらそれを見送る白戸)
(そうしてトイレへと向かう響子だったが、道中で部屋へと向かうユカと遭遇する)

ユカ「あれ?何してるんだ、響子?」
響子「・・・トイレに行くのよ。何か文句ある?」
ユカ「いや・・・文句とかは無いが・・・まぁいいか。次郎は部屋に居るのか?」
響子「居るんじゃない?行けば分かるでしょ」
ユカ「まぁ、そうなんだが・・・ ・・・とりあえず、先行ってるぞ」
響子「どうぞお好きに!」
ユカ「(今日は一段と機嫌悪いなぁ・・・ 残業でもやってたのか?)」

(もともとユカに対しては愛想悪い響子ではあったが、今日は一段と悪く、何故だろうといぶかしむユカ)
(結局答えが思いつかないまま、部屋についてしまうのであった)

ユカ「・・・入っていいか?」
白戸「あぁ、いいぞ ・・・ん?どうした、何か悩んでいるような顔をして」
ユカ「いや、な。さっき響子とすれ違ったんだが、何時も以上にイライラしてる感じがしててな。・・・何かあったのか?」
白戸「あぁ、雑務に追われてたんだよ。最近事件が少なかったから、暇そうに見られたのか、他所からいっぱい回されてしまってな・・・」
ユカ「それはご愁傷様・・・と言っていいのか?暇なほうが世間的にはいい訳だし・・・」
白戸「ま、確かにそうだな。俺たちが本業やらずにすむ世界が一番いい ま、世間的な話はここら辺にして・・・」

(一息ついた後、ニヤリとした顔をする白戸)
(それに答えるかのごとく、ニヤリとした顔で返すユカ)

白戸「で、今回はどんな情報を持ってきて、どんな情報が欲しいんだ? Jerky」
ユカ「この事件に関する、ありとあらゆる情報さ。 White」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十話
主要登場人物:ユカ・響子・白戸


ユカ「・・・という感じで、明日から本格的に動こうと思っている」
白戸「なるほどな。『切り裂きパンプキン』・・・か。」

(とりあえず、自分の持つ情報を粗方説明するユカ)
(それを聞いた白戸は、頭の中で情報を整理しながら、さっき見つけた写真をスッと差し出す)

ユカ「この写真は?」
白戸「あぁ、さっきたまたま見つけてな。この写真、どう思う?」
ユカ「どう思うって、よくある路地裏の写真だよな。ガレキの上には猫が二匹・・・いや・・・猫じゃない?」
白戸「流石にお前なら気づくよな。この猫、『影が無い』んだ。生き物なら必ずあるはずの・・・な」
ユカ「ふぅむ・・・なるほど、確かに『コイツ』なら、こういった事件も起こせるよな ただ・・・厄介だな」
白戸「そうだな。人の社会で生きているやつなら、ある程度捜査で炙り出せたりするものだが、おそらくコイツは闇の方の住人だ。簡単に尻尾は出してくれないぞ」
ユカ「となると、アイツの出番だな。(後は・・・頼りたくないが、あの情報源を使うか・・・)」
白戸「ふむ、ある程度やることは定まったみたいだな。それじゃ、そろそろ分かれるか」

(そういって、白戸は首を時計のほうに向ける)
(侵入してから2時間、そろそろ出て行かないと、万が一の事がありえるということで、ユカは立ち去る準備をする)

ユカ「しかし、本当は合同で捜査とか出来ればいいんだがなぁ・・・」
白戸「まったく・・・無理な事だって分かってるだろう? 警察側のメンツもあるし、それに、アイツが嫌がるだろうが」
ユカ「あぁ、すまんすまん。それにしても、お前も大変だな・・・」
白戸「なに、そうすると覚悟を決めてしまえば、大して不便は無いさ。この生き方も、この『体』も」
ユカ「そうだな。それじゃ、無事を祈ってるぜ」
白戸「おう、そっちこそ不覚を取るなよ」

(そういい残し、素早く警察署を後にするユカ)
(それと入れ替わるように、響子が部屋の中に入ってくる)

白戸「全く、部屋の外で聞いていたなら入って来い」
響子「気づいていたのね・・・ 入ってこなかったのは悪かったとは思うけど・・・でも、彼とは極力話したくなかったから・・・」
白戸「全く・・・腐っても命の恩人だろう?まぁ、今日2度目だからいいか。それより、準備の方を・・・」
響子「ねぇ、次郎。その・・・ごめん・・・」
白戸「な、なんだ唐突に?何か謝らなきゃいけない事でもしたのか?」
響子「いえ、私のせいで、合同捜査を諦めてるっていうこと。本当はそうした方が、次郎の負担も減るし、早く事件解決できるんだと思う。分かってる。分かってるんだけど・・・」
白戸「あぁ、その件か。それなら問題ないさ。別に響子や上のせいだけじゃない。言ってしまえば、俺だって悪い」
響子「え?」

(わがままにつき合わせてると思い、意を決して謝った響子は、白戸の予想外の返事に戸惑う)
(そんな姿を見た次郎は、自嘲気味に笑いながら、響子に言う)

白戸「俺だって、『自分達の力だけで解決したい』って思っているから、な」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十一話
主要登場人物:ユカ・最上


(二人と別れた後は、混沌への差し入れだけ買って、そのまま事務所へと帰ったユカ)
(そして翌日、事務所にて)

最上「こっちも特に無し・・・と 中々見つからないなぁ・・・」
ユカ「どうだ? 何か見つかりそうか?」
最上「あ、ユカさん。えーっと・・・今の所は収穫無しだね。犯人も被害者も全然見つからない」
ユカ「どれどれ・・・って、これ、ほぼ真っ暗じゃないか」
最上「そうなんですよー。一様、音声を頼りにしながらやってるけど、そんなに質のいいマイクを使ってるわけじゃないみたいだし・・・」
ユカ「まぁ、こんなところの監視に高性能カメラ使ってたら、最悪持ってかれて売りさばかれるだろうからなぁ・・・」
最上「場所に合わせた配置ってことなん・・・」

(そう言いかけた最上が、突然モニターの方を振り向く)
(そして、再生されていた動画を一時停止し、30秒ほど巻き戻してもう一度再生する)

ユカ「ん?どうした最上」
最上「・・・ユカさん、『お茶』、入れてきてくれませんか?」
ユカ「・・・何分後に持ってこればいい?」
最上「5分後で」
ユカ「分かった。最上ほど上手くは無いが、出来る限りいいやつを準備しとくわ」

(そういって、部屋を出て行くユカ)
(先ほどと同じ動画を『聞いた』後、天井を一度見上げ、ふぅと一つため息をつく最上)

最上「どうやらビンゴ・・・かな」
最上「あとは、この付近の監視カメラの、この時間の映像を、片っ端から集める・・・と」
最上「音声が綺麗に入ってたらラッキーだけど・・・最悪イクちゃんにも手伝ってもらうかなぁ・・・」
最上「まぁ、いいや とりあえず、ボクはやるべきことをやるだけだ」
最上「さぁ・・・始めるよ」

(そうつぶやいた後、愛用のPCに向かい合う最上)
(その表情は、何時もの優しい表情から、獲物を狙う肉食獣のような表情へと変貌していた)


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十二話
主要登場人物:ユカ・混沌・イク


ユカ「さて、と。お茶を入れる前に、あいつらに電話入れとくか」

(そうつぶやいた後、事務所に常置してある電話を使って混沌、もといアカギに電話を掛けるユカ)
(一方、アカギはイクと共に、タクシーで事務所へと移動していた)

アカギ「もしもし、あぁ、社長ですか。最上はどうしました? ・・・あぁ、それで。
アカギ「今・・・ですか?今はイクと二人でタクシーで移動中ですね。あと1時間もすれば帰れると思います」
アカギ「分かりました。では、イクにも伝えておきます。それでは、失礼します」
イク「プロデューサー、事務所から電話なの?」
アカギ「あぁ。それで、社長から連絡だ。事務所に帰り次第、『新曲』の試し聞きをして欲しいそうだ」
イク「んふー、楽しみなの! どんな曲なんだろーなー♪」

(『新曲』と聞いて、一気に表情が明るくなるイク)
(ご機嫌な様子で自分の持ち曲を鼻歌で歌っていたイクは、突然ピタッと歌うのを止め、小声でアカギに話しかける)

イク「プロデューサー、ちょっと聞きたい事があるの」
アカギ「ん、どうした?」
イク「最近社長さんが読んでる本、名前とか分かったら教えてほしいの」
アカギ「ん?あんなのを読みたいのか?」
イク「だって、いっつも面白そうに見てるから、興味あるの」
アカギ「あぁ、それでか。確か、『ずっこけコボルト奮闘記』だったかな?」
イク「何その名前・・・なの」
アカギ「そんなこと言われてもな。社長にとっては面白い本なんだろう。もっとも、イクにとっても面白い本なのかは分からないがな」
イク「ふーん、分かったの プロデューサー、ありがとなの!」

(小声で何気ない会話をする二人は、まるで『タクシードライバーにも聞かせられない、イクのプライベートの話』をしているだけのように見える)
(恐らく、知っている人しか気づかないであろう イクが車の外の、歩道の向こう側の路地裏から聞こえてくる『声』を聞いていた事に)


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十三話
主要登場人物:ユカ・最上


最上「ふぅ・・・こんな所・・・かな ・・・うぅ、目が痛い・・・」

(PCから目を離し、一息つく最上 痛む目を何とかしようと、瞬きを繰り返す)
(そこに、一杯のお茶と目薬を差し出す影が一つ)

ユカ「お疲れ。注文のお茶と、目薬だ。・・・ちょっと冷めてしまったがな」
最上「あ、ユカさんありがとう。・・・って、あれ?何時の間にそこに・・・」
ユカ「5分ほど前、だな。時計見てみろよ」
最上「へ? ・・・うわっ、11分も経ってる! そうか、それでこんなに目が痛いんだ・・・」
ユカ「全く、『10分が限度』って言われてたんじゃないのか? 無茶してくれるなよ、頼りにしているんだからな」
最上「えへへ、そうだね。 心配してくれてありがとっ」
ユカ「あいよ。・・・で、無茶した分の成果は得られたのか?」
最上「勿論!あとは二人が帰って来るのを待つだけだね」
ユカ「そうか。それじゃ、先に準備を進めとくか。最上も、そのお茶飲み終わったら手伝ってくれよ」

(そう言いながら、応接室へと向かうユカ それを見送った最上は、ユカが持ってきたお茶が、すぐには飲めなさそうなレベルの熱さであることに気づく)
(「あの人らしいや」と苦笑しながら、言外の意味を汲み取って、最上はゆっくり休息を取る)

最上「ふはー。たまには他人に入れてもらったお茶も良いものですなぁー」
ユカ「・・・お年寄りかよ、お前」
最上「いやいや、こういうのって、ホントに性格出るよなーって思ってね」
ユカ「ま、確かにそういう話もあるよな。俺は最上が入れてくれるお茶が好きだけどな」
最上「おっやぁ?ひょっとして僕を誘ってる?」
ユカ「違ぇよ!俺よりも茶を入れるのが上手いって言っただけだっつの。俺以外だと、イクは茶葉の量とか大雑把だし、混沌のは飲めたもんじゃないし・・・」
最上「あはは、確かにそうだね。いやしかし、ホントに美味しいなー」
ユカ「まぁ、そう言ってもらえると、色々考えて入れた甲斐があるってもんだ。そういや、アカギらは今何処にいるか分かるか?」
最上「えっと・・・ちょっと待ってねっと」

(飲みかけのお茶を一旦置き、PCをカタカタと触る最上)
(数十秒後には、事務所周辺のマップと、そこを移動する丸い点が移る)

最上「うん、位置的にあと十数分って距離かな」
ユカ「あいよ。それじゃ、ちょっと急ぎますかねっと」


『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十四話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


イク「ただいまなの!」
最上「イクちゃんおっかえりー。それじゃ、始めよっか」
ユカ「そうだな。アカギもさっと着替えてきてくれ」
アカギ「はいはい、と。全く、人使いが荒いものだ・・・」

(二人が帰ってきたのを確認してすぐ、準備を始めるユカと最上)
(イクは鼻歌を歌いながら、アカギは溜息をつきながら、着替え始める)
(そして、準備が整ったメンバーから順に、応接室へと向かっていく)

イク「皆さんお待たせ、なの!」
ユカ「うし、これで全員揃ったな。それじゃ、始めるか」
イク「あ、ちょっと待って欲しいの。ちょっとイクから報告があるの!」
最上「あれ?もしかして何か『聞いた』とか?」
イク「そうなの!えーっと・・・場所は・・・どこだっけ?」
にゃる子「えーっと・・・どこだっけ?」
ユカ「お前らなぁ・・・ 何か手がかりとかないのか?」
にゃる子「あっ、そうそう。ユカと電話し終わってすぐ後のことだったから、きっとそこらへんだよー」
ユカ「・・・またアバウトだな。最上、調べれるか?」
最上「多分大丈夫だと思う。ちょっと時間貰うねー」

(そういってパソコンを操作すること数十秒)
(プロジェクターには、ユカが電話を切ったときのイク達の場所を中心にした周辺マップが表示される)

最上「ちょうどユカさんが電話を切った時がこの位置で、その後ここの信号で一時停止してるから、多分そこらへんの場所だと思う」
イク「さっすがもがみん!仕事が早いの!」
最上「えへへー。褒めても何も出ないよー」
ユカ「さて、位置が分かった所で・・・何を聞いたんだ、イク?」
イク「えーっとね、呪いの唄なの!」
ユカ「呪いの・・・唄?」
にゃる子「ほほーう、何か面白そうな話になってきましたねぇ~」
ユカ「事件に面白いもクソもあるかよ・・・ で、最上。そういう話とかについて、情報とかキャッチしてるか?」
最上「うーーん、僕が調べた範囲では無かったなぁ・・・ 流石に噂とかそういうのまでは調べ切れなかったし・・・」
イク「それなら、イク、大手柄なのね!ご褒美はチョコレート1ダースをお願いするのね!」

(最上にも見つけられなかった情報を見つけた事を喜ぶイク)
(そんな大手柄の報酬にあえてお菓子を選ぶイクに苦笑しつつ、ユカはイクに尋ねる)

ユカ「ところで、その唄の歌詞とかって分かるか?」
イク「うん、ちゃんと覚えてきたの! 確か・・・」


Trick or treat. Trick or treat. お菓子を一つ、くださいな
Trick or treat. Trick or treat. お菓子をも一つ、くださいな

Trick or treat. Trick or treat. まだまだ沢山、くださいな
Trick or treat. Trick or treat. お菓子をくれなきゃ・・・殺っちゃうぞ♪



『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十五話
主要登場人物:ユカ・混沌・最上・イク


最上「また・・・ずいぶんと物騒な唄だねぇ・・・」
にゃる子「あれ? でも、これだとお菓子さえ持っていれば安全ってことになっちゃうんじゃ・・・」
ユカ「時間を稼げるだけだな。その隙に逃げ切れればいいんだが・・・なるほど、こいつは酷いな・・・」
イク「へ?いったいどういうことなの?」

(イクが歌った歌詞を最上が打ち込み、ディスプレイに表示する)
(その歌詞を改めて見返したユカは、溜息をつきながら話を続ける)

ユカ「まず、お菓子を持っていれば安全かどうかだが・・・まぁ、持ってるうちは安全だろう それを渡せばいいんだからな」
イク「そうなの!だから、お菓子を沢山持っていれば・・・」
ユカ「だが、この唄を聴く限り、貰うお菓子の数に『上限』はない そして、この唄は『ループ』出来る」
最上「つまり・・・手持ちがあるならそれを渡せばいいんだけど、いずれ無くなっちゃうってことかな?」
ユカ「そう。だから、『時間を稼げるだけ』だ。そして、いずれ手持ちが尽き、言霊に襲われる」
にゃる子「言霊って・・・どんなんだっけ?」
ユカ「まぁ、要するに、使い手の『命令』に反する行動をした相手に、幻覚や幻聴等を与えやすくなる呪術だ」
最上「そういえば、イクちゃんはさっきの唄を聞いた後、特に何もなかったの?」
イク「うーーん、多分無かったの。少なくとも、幻覚とか幻聴とかは無かったの」
ユカ「言霊は、使い手が対象としている相手以外には効果が出ないからな。イクが聴いた唄は、別の犠牲者へ向けた唄か、ただの独り言だったのか・・・ ・・・前者だと最悪だがな」

(ほんの少し前に犠牲者が出たのかもしれない そんな現実に直面し、言葉を詰まらせる一同)
(特に、その時現場に居たイクは、すごく落ち込んでしまう)

イク「・・・あの時、すぐにでも連絡すればよかったの そうすれば・・・」
最上「い、イクちゃん、まだ犠牲者が出たって決まったわけじゃ・・・」
にゃる子「それに、例え連絡できたとしても、事前準備をしてないユカが行った所でどうにも・・・」
イク「でも、にゃる子さんが先に向かって時間稼いでるうちに、ユカさんが向かうとかすれば・・・」
ユカ「・・・その場合、誰がイクを守るんだ?」
イク「えっ・・・ それは・・・何とか・・・する・・・の・・・」
ユカ「何とか出来ねぇ、だろ 普通の人間相手ならさておき、今回の相手は怪異だ。それに、たとえイクが何とかなったとしても、にゃる子一人で誰かを守りつつ怪異ととやりあうのは無理だ」
にゃる子「私はユカと戦闘スタイルが違うから・・・ それに、一般人が私の姿を見たら、それこそパニックになって、万に一つの脱出の可能性も潰しちゃう・・・」
イク「でも・・・でも・・・」
最上「イクちゃん、『でも』はダメだよ。それで以前どうなったか・・・覚えてるでしょ?」
イク「うん・・・ ゴメンなさい・・・なの」

(一気にしんみりとする応接室内)
(はぁ、と一つ溜息をつき、ユカが席を立つ)

ユカ「ちょっと時間を置くか。丁度調べたいものもあるしな 最上とイクはここで待機。混沌はついてきてくれ」
イク「でも、早くやらないと・・・」
ユカ「いいから休め。最上、後は任せたぞ」
最上「うん、分かった。こっちは任せて」
にゃる子「それじゃ、もがみん、イクちゃん、また後でね~」



『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十六話
主要登場人物:ユカ・混沌

(イクと最上を応接室に残し、奥の書斎へと向かう二人)
(書斎に着くなり、ユカは本棚にあるこの街の詳細地図を取り出す)

ユカ「さて・・・最上の情報だと、ここらあたりの区画か・・・」
にゃる子「・・・ねぇ、ユカ」
ユカ「ん? どうした、混沌」
にゃる子「イクちゃんも言ってたけど・・・本当にあの対応でよかったのかな?」
ユカ「・・・まぁ、ベストではないな あの時点でお前が俺に連絡して、俺がダッシュでイクを迎えに行って・・・」
ユカ「それで、俺が合流したら、お前が現場に先行。俺はイクを事務所に届け次第、そっちに合流する・・・って手順を踏めば、可能性はあったかもしれない」

(そう一気に話した後、「だが・・・」とユカは続ける)

ユカ「だが、あの時点でそれだけの思案をするのは無茶だろうし、俺だって即座に対応できたとは思えない」
にゃる子「・・・そう、だよね」
ユカ「あぁ・・・ でも、お前はベターの選択肢を取った イクを危険に晒さなかったし、周囲の一般人に不信感を与えることもしなかった」
にゃる子「・・・そう・・・なんだけどね 何だろう、もやもやするって言うか・・・」
ユカ「言うなよ 俺だってそうなんだ  事件自体は結構前に知ってたし、犯人も大体分かってた でも、時間が足りなかった・・・」
にゃる子「時間・・・か 私にもどうしようも出来ないものの一つだよ・・・」
ユカ「誰にもどうにも出来ないさ 出来るやつが居たら、そいつは神様だろうな」

(やるせない現実に対して、同時に溜息をつく二人)
(ぶんぶんと大きく頭を横に振り、雑念を無理やり吹き飛ばした混沌は、にゃる子の姿であることも忘れて、真剣な目つきでユカの方を見る)

にゃる子「・・・で、ここに呼び出したってことは、『仕事』始めるんだよね」
ユカ「あぁ。しかし、何時に無くやる気だな」
にゃる子「イクちゃんの涙を見ちゃったもん それに、心の中もやもやしてるし・・・ 犯人一発ぶん殴らないと、気が済まなさそう」
ユカ「お前の場合、まとめて数十発殴るだろ・・・ まぁ、いい とりあえず、逸りすぎてミスするなよ」
にゃる子「勿論 ユカも2ヶ月ぶりだからって、テンション上げすぎてミスしないでよね」

(そして、これからの動きの確認と、携帯する装備のチェックを行う二人)
(準備を終えた二人は、最後に何時もの会話を交わす)

ユカ「それじゃぁ、行こうか、Chaos」
にゃる子「りょーかい、Jerky」



『ジャック・オー・ランタンは笑わない』第十七話
主要登場人物:ユカ・メタリカ


(もう少しで深夜になろうかという時間、一人夜道を歩くユカ)
(スラムに住む子供たちですら近寄らないような道を歩き、一軒の家へと入っていく)

メタリカ「キヒヒヒヒ、ようやく来たか、異端者」
ユカ「あぁ、結局来る羽目になっちまったよ、化け物」
メタリカ「キヒヒヒヒ、化け物とは酷い言いぐさだねぇ。私にはメタリカという、親から与えられた素晴らしい名前があるんだよ」
ユカ「そう思うなら、お前も俺をちゃんと名前で呼べ、全く」
メタリカ「いやはや、お前は本当にからかい甲斐があっていいよ 最近の客は皆こういう冗談を言うと怒るやつばっかりでねぇ」
ユカ「普通は怒るだろうさ。っと、雑談してる場合じゃねぇ」
メタリカ「『さっさと切り裂き魔の情報をくれ』だろ?探偵さん」

(ニヤニヤと笑いながら、ユカが言おうとしたことを先回りして話すメタリカ)
(やれやれという表情とジェスチャーをしながら、ユカは話を続ける)

ユカ「流石に、調べは付いてるか」
メタリカ「キヒヒヒ、私の情報網なら簡単な話さ で、どこまで絞れているんだい?」
ユカ「あぁ、この地図を見てくれ」

(そう言って地図を広げながら、今までで得た情報を簡単に説明するユカ)
(話を聞き終わったメタリカは、ちょっと待ってろとユカに言い残し、足元の紙束を漁り始める)

ユカ「何を探してるんだ?」
メタリカ「んー、死体の写真」
ユカ「おい、何で持ってるんだ 今更だが」
メタリカ「キヒヒヒヒ、出典は内緒だねぇ」
ユカ「『情報屋は情報源を誰にも漏らしてはいけない』だったっけか まぁ、確かに信用問題に関わるからな」
メタリカ「そういうことさ っと、あったあった」

(そういいながら、数枚の写真と書類を机の上に置くメタリカ)
(メタリカのどうぞという仕草を受け、ユカは一枚一枚目を通していく)