予告編
「まおーさま、お茶」
「はいはい、どうぞ」
「まおーさま、おやつ」
「はいはい、どうぞ」
「まおーさま、アイス」
「はいは・・・って、私は小間使いか何かですか!?」
「ん、そんな感じだろ ほら、飴やるよ」
「酷い! 私、由緒正しい魔王なのに!  あ、飴はいただきます」

魔王と呼ばれた少女と
かつて魔王だった男が繰り広げる
ハートフルコメディ短編集

「まお×まお」
不定期連載予定!



登場人物
魔王:正真正銘の魔王。ただし、今は王ではない(自称はしている)。色んな事情によって、現在は自らが設計した地下都市で暮らしている。
名瀬:人間。肉体の温度を自由に変化させることができる能力を持つ。一時期『魔王』と呼ばれていた(あくまで呼ばれていただけで、魔のものを使役したりした訳ではない)。魔王の地下都市の唯一の住「人」。
天子:デリバリーサービスの宅配員。「ワタクシ、ニンジャデハナイデスヨ」。罠の100や200くらいは簡単に突破でき、侵入できないところはないと自負している。魔力のこもったリュックを持ち歩いている(四次元ポケットみたいな能力)。




第一話:魔王とティータイム

出演:魔王、名瀬


魔王「ふはははは!ついに、ついに完成ですぞ!」
名瀬「なんだよまおーさま、朝からいきなり・・・」
魔王「ふっふっふ、これが騒がずに居られますか! ついに完成したのですぞ!」
名瀬「完成・・・って、あぁ、自動紅茶入れ器だったっけ?」
魔王「そうですぞ! 完璧なタイミングで!完璧な量を!完璧な速度で入れてくれる、スバラシイ機械なのです!」

名瀬「・・・力説してるところ悪いんだけど、ちょっといいか?」
魔王「何でしょうか? クレと言われてもあげませぬぞ? これはワタクシのワタクシによるワタクシのための機械ですからな! ぬはははは!」
名瀬「・・・電力計算とかちゃんとしたか?」
魔王「ぬはは・・・は?」
名瀬「この地下迷宮、電力供給量少ないからな そんな精密機械動かす電力、どこから取ってくるつもりなんだ?」

魔王「・・・名瀬さま、あらたな発電機の購入とか・・・」
名瀬「却下。 唯でさえお金ないのに、まおーさまの娯楽のために追加予算出せないって」
魔王「・・・ワタクシの、この発明品は・・・」
名瀬「お蔵入りか、地上で売りさばくかだな」
魔王「・・・すいません、ワタクシちょっと仮眠してきます・・・」
名瀬「おー、いってらっしゃい 泣くなら奥の部屋で泣いてくれよ。五月蝿いし」
魔王「気遣ってくれてるのか、追撃されてるのか、いったいどっちなんでしょうかっ!」



第二話:魔王と訪問販売

出演:魔王、天子、名瀬


名瀬「それじゃ、まおーさま 俺が留守の間、留守番頼むぞ」
魔王「ふはははは! どーんと任せてくだされ!」

魔王「・・・というわけで、今! この空間は! 私だけのものである!!」
魔王「っと叫んでも、誰からも怒られない! ぬはははは!なんと素晴らしい世界か! 吾輩大満足である!!」
魔王「10日に1回の買い出しの日。前回はゴロゴロしてたらうっかり昼寝をしてしまい、何もせずに終わってしまったのですが・・・」
魔王「今日の私は違いますぞ! 前もって念入りに建てた計画をもとに、遊びつくすのです!」
天子「計画って、全部ぷよぷよじゃないですかー」
魔王「それがよいのです。6時間もかけてひたすらぷよぷよを遊ぶ。この時間の贅沢な使い方こそが、王の休暇のあるべきすが・・・って、貴方どなた!?!?」
天子「あっ、おじゃましてまーす」

天子「初めまして。私、『ナイト運送』クラニッツ支部所属の天子といいます。
今日は世界に名高き魔王様に、素晴らしい商品をお届けしようと参上いたしました」
魔王「いや、ワタクシ通販には興味ありませんので 名瀬様に『通販の類は使ってはいけない』と言われていますし」
天子「まぁまぁ、とりあえず話だけでも聞いてくださいよー 帰りしなにコーラ1ケースをプレゼントしますからー」
魔王「ふむ、では話だけでしたら・・・」

天子「・・・というわけです いい物でしょう?」
魔王「ぬはははは! 確かにすばらしいですな! ですが、ワタクシ、娯楽品をホイホイ買い集めるのを禁止されていますので」
天子「いやいや、それはもちろん存じておりますとも。そこでですね、耳を拝借・・・」
魔王「ふむ・・・ふむ・・・おぉ! なるほど、あくまでこれを『日用品のオマケ』という形で頂けるわけですな!」
天子「そうですそうです。日用品はいずれ買わなければいけないもの。どうせ買わなきゃいけないものを、魔王様が買うことの何が悪いことでしょうか!」
魔王「ぬはははは!確かにそうですな! わかりました、買いましょう!」
天子「お買い上げありがとうございまーす♪」


名瀬「・・・で、結局何を買ったって?」
魔王「こ、コーヒー3年分と、ティッシュ&トイレットペーパーを10年分・・・」
名瀬「なるほどなるほどぉ、確かに消耗品で日用品だな。確かに必要なものだ」
魔王「あづづうあぁ!! で、ですから名瀬様、ワタクシはこの家のために・・・」
名瀬「いずれ腐るコーヒーに、ボロボロになりやすい紙製品を、しかも正規の2割増しの値段で買っておいて、家のため・・・ねぇー」
魔王「あづぃ! あづぃですって名瀬様! ワタクシ、ミディアム風に焼きあがってしまいますぞ!?」
名瀬「いいじゃないか、俺はウェルダンとか結構好きだぜ」
魔王「もっと酷いことするつもりですか!?」
名瀬「いいじゃないか、一緒にいてやるから、二人で熱くなろうぜー」
魔王「名瀬様が熱いのは足の表面だけじゃ・・あづづうあぁ!! ちょ、直接踏むのはやめてくだされぇぇぁぁああ!!」



第三話:魔王とぷよぷよ

出演:魔王、名瀬


魔王「ふはははは、五連鎖完成!」
名瀬「ヘールファイアー」
魔王「うぎゃあぁぁぁぁ!? も、もう一戦ですぞ!」
魔王「よし、完璧なカウンターを組み上げましたぞ! これで名瀬様のヘルファイアは・・・」
名瀬「キルアーイス」
魔王「うぎゃあぁぁぁぁ!? 強い! 名瀬様強すぎますぞ!?」

名瀬「まおーさま、あまり上手じゃないのに、何でカウンター型なんかやってるんだよ」
魔王「だって・・・動画サイトで見たアレが凄くかっこよかったので・・・」
名瀬「しかも、このカウンター、四連鎖シングルだぜ もうちょっと練習した方がいいんじゃないか?」
魔王「だって・・・名瀬様がこんなに強いなんて思ってなかったですからっ!」
名瀬「知り合いに天才少女が居たからな 相手やらされてたら強くなったんだぜ」

魔王「ぐむむ・・・私も強くなりたいですぞ・・・」
名瀬「なら、丁度いい方法があるんだが、試してみるか?」
魔王「何でしょうか 怪しい系の薬を注射とか、ワタクシは嫌ですぞ」
名瀬「ちげーって 連鎖に必要なおじゃまぷよ算を教えてやるってだけだ」
魔王「ほう、そのようなものがあったのですか 是非とも教わりたいですぞ」


魔王「・・・で、これはどういう状況なのでしょうか」
名瀬「ん? 授業の体制だぞ」
魔王「えーっと、何故ワタクシはうつ伏せで、かつ足を乗せられているのでしょう」
名瀬「単純な話だ 私がお邪魔ぷよ算について説明し、問題を出す まおーさまはそれに○か×かで答える」
名瀬「正解なら次へ、不正解なら罰ゲームをする  そういうことだ」
魔王「えーっと、聞きたくないのですが、罰ゲームとはいったいどういう・・・」
名瀬「この体制でこの状況なら・・・言わなくても分かるだろ 一問間違えるごとに、足の裏の温度がもれなく一度UPだ」
魔王「や、やっぱりですか!? まさか、これが名瀬様の言う・・・」
名瀬「知ってるか? 人間、追い込まれると超人的な能力を発揮できるようになるらしいぜ」
魔王「だ、誰か助けてくだされええぇぇーーーー」



第四話:魔王と立ち幅跳び

出演:魔王、名瀬、リリス


リリス「第一回!」
魔王「地下帝国、大運動会ですぞ!」
リリス「わー、ぱふぱふー!」
魔王「ぱふぱふー!」
名瀬「おい、何だよこれ・・・」
魔王「というわけで、早速競技を始めますぞ!」
名瀬「聞けよ!」


名瀬「・・・で、地下にこもって運動しないのはどうなのか・・・と考えたわけか」
魔王「そ、そうですぞ・・・ ですから、そろそろ足を除けてもらえると・・・」
名瀬「あと一回だけ踏む! っと、ふぅ、すっきりした」
魔王「ぐふぅ、肉体的ダメージよりも、ワタクシ精神的ダメージの方が辛いです」
リリス「何時ものことですから、気にしちゃだめですよ、魔王様!」
魔王「慰めになってませんよ、それ!?」
名瀬「で、競技は何をするんだ?」
魔王「立ち幅跳びです」
名瀬「他は?」
魔王「立ち幅跳びです」
名瀬「・・・」
魔王「ちょ、もう一回踏むのは止めてください!」

リリス「ほら、ここ狭いですからー 出来る競技が限られてくるんですよー」
魔王「それに、参加者二人ですから、騎馬戦とかも出来ませんしな」
名瀬「トカゲーズ呼べばいいじゃねーか」
魔王「トカゲおとこ達だと、ワタクシを乗せれませんからな うはは」
リリス「まぁ、そういうわけで、場所も道具も人員もいらない、立ち幅跳びでもしようって結論になりました!」
名瀬「うーん、イマイチ納得できないけど・・・まぁいいや とりあえずサクッと終わらせて、テレビ見ようぜー」
魔王「名瀬様、テンション低すぎですよ!?」


リリス「それじゃ、準備も完了しましたので、まずは名瀬様よろしくお願いします」
名瀬「運動は得意じゃねーんだけどな  そーれ、よっと」
魔王「ほう、なかなか・・・」
リリス「えーっと、記録!175cmです!」
名瀬「んっ、結構いい記録じゃねーか?」
魔王「平均より上らしいですな お見事ですぞ、名瀬様」
名瀬「何かすっげー余裕だな、まおーさま そんなに自信あるのか?」
魔王「ふっふっふ、まぁ、みててください」


リリス「それじゃ、魔王様よろしくお願いします」
魔王「ふっふっふ、必殺!高速スクワットオォォ!!」
名瀬「なっ、何だこのスピード・・・」
リリス「魔王様が分身してます!?」
魔王「ふはははは、まだまだスピード上がりますぞ! ぬおおぉぉぉっ!!」
名瀬「なっ、なんというバネだ・・・」
リリス「・・・あっ」
魔王「ぬはははは! ではいきますぞ! とおぅっ!!」


名瀬「たっ、高い! そして、距離も・・・」
魔王「・・・シュタッ ふはははは! 見ましたか、この魔王の本気!」
名瀬「ちょ・・・これ、10メートルを明らかに超えてるだろ まおーさま、まさかこの競技だけを選んだのって・・・」
魔王「ぬはははは! これだけは名瀬様に負けない自信がありましたからな! ワタクシの作戦勝ちですぞ うははははは!」
名瀬「くっ、見事にしてやられた・・・俺としたことが・・・」
魔王「ふはははは! さぁ、リリス! ワタクシの素晴らしき記録、高らかに盛大に発表してくだされ!」
リリス「えーっと、記録!1cmです!」
名瀬「えっ?」
魔王「はっ?」


魔王「リリス、ワンモアプリーズ」
リリス「1cmです」
魔王「リリス、ワンモアプリーズ」
リリス「icmです」
魔王「リリス、ワンモア・・・」
名瀬「しつこい ・・・で、どういうことなんだ、リリス 俺も何が何だかさっぱりなんだが・・・」
リリス「えーっと、魔王様、先ほど高速スクワットやってましたけど、その時に少し浮いていたんです」
名瀬「ふむふむ、で、小さくジャンプしたときにラインを1cmだけ踏み越えてしまってた、と」
リリス「そうです ですので、その時の記録が魔王様の記録になります」


魔王「・・・ということは、つまり・・・」
リリス「魔王様の負け、ですね!」
魔王「ガーーン」
名瀬「ってことはさ、まおーさまは自分が勝てると思ってた勝負で負けたってことだよな」
魔王「ガガーーーン」
名瀬「あれだけ威張っておいて、しかもこんな女の子相手に完敗とか、まおーさまハズカシー(棒)」
魔王「グフッ・・・」
リリス「ま、魔王様!?」
名瀬「ほっといていいよ、どーせ時間がたてば勝手に復活してるし それより、リリス 一緒にチーズケーキ食べようぜー」
リリス「あっ、食べたいです! 食べましょう!」
名瀬「よっしゃ、さっさと食堂行こうぜー
リリス「ラジャーです!」

魔王「・・・ワタクシ、リリスのマスターですよね・・・ なぜこんな扱いに・・・」
トカゲーズ「(自業自得だと思うなぁ・・・)」


第五話:魔王と冷房空間

出演:魔王、名瀬


魔王「あーつーいー」
名瀬「まおーさま五月蠅い」
魔王「そんなこと言われても暑いのは暑いんですぞ・・・」
名瀬「全く、魔王のくせに情けねーなー」
魔王「しかし、名瀬さまは涼しそうですな」
名瀬「まぁ、俺は変温動物だからなー」

魔王「そういえばそうでしたな しかし暑い・・・はっ、ワタクシいいこと思いつきましたぞ!」
名瀬「却下」
魔王「まだ何も言ってないのに!?」
名瀬「まおーさまの思い付きなんてロクなもんじゃないだろ 聞くだけ無駄だって」
魔王「酷くないですか、その言い方 ワタクシ泣いてしまいますぞ」
名瀬「それ脅しにならねーと思うけどな まぁいいや、ダメ元で言ってみろよ 3秒以内で」
魔王「聞く前から断る気満々じゃないですか、それ!」


魔王「ところで一つ聞きますが、名瀬様は以前氷を作ってましたよな」
名瀬「ん? あぁ、まおーさまが『かき氷を食べたいー』ってダダこねてた時の話か」
魔王「人聞きの悪いことを言わないでくだされ・・・ ワタクシはかき氷を買いに行こうといっただけですぞ?」
名瀬「あんまり変わんねーと思うけどな それで、俺が『氷なんか金出して買うもんじゃない』って言ったんだっけ」
魔王「そうそう それで、名瀬さまが水に手を触れて一気に冷やして、氷を作られてた時の話ですぞ」
名瀬「それと今回の件、何か関係あるのか? ・・・まさか・・・」
魔王「さすが名瀬さま、理解が早いですな」
名瀬「今度はアイスクリームが食べたいとかそういう・・・」
魔王「なぜお菓子方面に行ったのですか!?」

魔王「名瀬さまの能力を使って、この部屋の床に氷を張ってしまおうと考えたわけです」
名瀬「えー、めんどい」
魔王「気持ちは分かりますけど・・・でも、少し凍らせるだけですから、協力してほしいのですぞ・・・」
名瀬「といわれてもなー 何かご褒美がないとやる気がなー」
魔王「・・・分かりました ワタクシが昨日作ったとっておきのバケツプリンの半分を渡しましょう」
名瀬「全部で」
魔王「オールはやめてくだされ!? ワタクシこれでも楽しみにしてたんですから!」
名瀬「ちぇー、まぁいいや ちなみに、プリンはどこに入ってるんだ?」
魔王「冷蔵庫の3段目ですな」
名瀬「ふむ、りょーかい んじゃやるか」


魔王「・・・で、何故ワタクシはこうなったんでしょうか」
名瀬「俺は床を凍らせただけだぜー 何故かまおーさまの足も凍ってるけど」
魔王「ワタクシが部屋から出る前に床を凍らせたからですよね!? これ、完全に床にくっついてしまって居るのですが・・・」
名瀬「まぁ、たまにはそういうこともあるさー」
魔王「た、たまにはって・・・」
名瀬「さーてと、任務終了したし、プリンでも食べるかー」
魔王「いや、その前にワタクシを解放してから・・・はっ、まさか・・・」
名瀬「確か、冷蔵庫の3段目だったっけなー」

魔王「まさか、名瀬さま、こうなることを予測して・・・」
名瀬「あ、そうそう その氷結構薄いから、1時間もしたら壊せるようになると思うぜー」
魔王「1時間とか長すぎますぞ! 名瀬さま、後生ですから、せめて4分の1、いえ、一口だけでも・・・」
名瀬「んじゃ、ドア閉めとくから、冷房効いた部屋でゆっくりしてなよ」
魔王「わ、ワタクシのバケツプリンーーーー!」