起承転結


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1.

ピンポーン

起子「初めてお目にかかります」
男 「うお」
承子「私達、四人で一つ、一心同体」
男 「は、はあ」
転子「でも好みのタイプは人それぞれ」
男 「えっ」
結子「なにとぞよろしゅうおねがいします」
男 「あ、あの……どちら様で?」

2.

男 「部屋間違えてないか?」
起子「お間違えではないのです」
承子「私達今日からここで暮らします」
転子「あなたは浴槽で寝てもらいます」
男 「えっ」
結子「どうぞよろしくおねがいします」
男 「は、はあ……」

男 「ってなんだいそりゃ」

3.

男 「宿を探しているのか?」
起子「宿を探していたのです」
男 「なら近くにホテルが──」
承子「お金が掛かります」
転子「だから寄生します」
結子「なにとぞ、よろしくおねがいします」
男 「何が何やら……」

起子「起子です」
承子「承子です」
転子「転子です」
結子「結子です」
男 「聞いてません」

4.

男 「なんで俺の家なんだ?」
起子「とてもお腹がすいて」
承子「フラフラと彷徨っていたら」
転子「青いキャンパスに描かれた一筋の綺麗な虹を」
結子「見かけたのです」

男 「は?」

5.

男 「で、どうするんだ。居座らせはしないが──」
男 (結構可愛い四人組だし)
男 「ファミレスで飯くらいなら奢ってやるぞ」
起子「それはそれは」
承子「私達、お腹ぺこぺこなので是非」
転子「遠慮させて」
結子「頂きます」
起子「……」
男 「……」

6.

◆ ファミレス「ジョニィ」

男 「腹減ってるなら素直に言えばいいのに」
起子「たまには私達も」
承子「意思の食い違いというものが」
転子「あるの」
結子「です」
男 「今のは普通だったな」
起子「たまには私達も」
承子「意思の疎通というものが」
転子「出来ないの」
結子「です」
男 「どっちなんだよ」

7.

男 「というか、お前達の意思決定、転子に委ねられてないか?」
起子「!」
男 「一番大事な所が転子に捻じ曲げられてるじゃないか」
承子「……確かに」
転子「そんなことはない」
結子「のです」
男 「……」

起子「承子が結論を」
承子「付けてしまえば」
転子「私の出る幕は」
結子「ないのです」
男 「ほう?」
起子「私達はお腹が空いたので」
承子「ご飯をご馳走になります」
転子「が、あなたに奢ってもらうのはイヤ」
結子「です」
男 「だめじゃねーか」


8.

男 「で、何頼む?」
起子「サラダ」
承子「スープ」
転子「ハンバーグ」
結子「フルーツパフェ」
男 「フルコースだな」
起子「……」
男 「本当にそれでいいのか?」

9.

起子「というのは冗談でですね」
承子「私達、皆で一緒に」
転子「おうどん」
結子「を食べたいと思います」

起子「……」
承子「……」
結子「……」
転子「?」

男 「すみませーん」

10.

起子「そして運ばれてくる」
承子「おうどん四つ」
転子「私やっぱりハンバーグにする」
結子「無理だと思います」

男 「あ、一応会話も出来るんだな」

11.

男 「四人は姉妹なのか?」
起子「そういうわけでもないんですが」
承子「あえて言うなら」
転子「穴姉妹」
結子「ではありません」
男 「そこは流石に否定するんだな」
起子「同じ施設で生まれ」
承子「同じ施設で育った」
転子「穴姉妹」
結子「ではありません」
男 「……」

12.

起子「お腹いっぱいです」
承子「起子、おつゆは飲まないの?」
転子「飲まないなら結子が飲みます」
結子「飲みません」

男 (仲はいいんだな……)

起子「あ、あの」
男 「うん?」
承子「見ず知らずの私達にご飯をご馳走してくれて」
男 「ああ、いいよいいよ」
転子「礼は言わないぜ」
男 「いや、言えよ」
結子「次会う時は敵同士だ」
男 「えっ?」

13.

チュンチュン

男 (結局泊めてしまった……)
起子「おはようございます」
承子「おはようございます」
転子「おはようございません」
結子「おはようございます」
男 「ああ、おはよう」
起子「私、朝ごはんの材料を買いに行ってきます」
男 「金あるのか?」
承子「もちろん」
転子「ありません」
結子「ください」

男 「やれやれ……」

14.

男 「他の三人は付いてこなくて良かったのか?」
起子「ええ、大丈夫です」
男 「一人でも喋れるんだな」
起子「ええ、勿論です」
男 「仲、いいんだな」
起子「そうでもありません。たまには姉妹喧嘩とかもす」
男 「ん?」
起子「文字制限です」
男 「なんだそりゃ」

15.

男 「おーい、帰ったぞ」
起子「ただいま」
承子「おかえり」

男 「……あれ?後の二人は?」
起子「転子と結子は」
承子「散歩に行った」
男 「そうか」
起子「朝ご飯の準備をします」
男 「お、朝ご飯、作ってくれるのか!ってまあそのくらいはやってもらわんとな」
承子「気をつけたほうがいい」
男 「ん?」
起子「どういうことかな?」
承子「どうでもいいこと」

男 「うーん……?」

16.

男 「君も別に一人で喋れるよね」
承子「当たり前ですが」
男 「四人とも、趣味も同じなの?」
承子「同じだったり違ったりしますが」
男 「転子が好きな男のタイプは違うって言ってたけど」
承子「違ったり同じだったり」
男 「どっちつかずだなあ」
承子「受け渡す役ですから」

男 「ところで、俺の事がタイプな子は」
承子「いない」
男 「そこだけきっぱりかよ!」

17.

起子「おかえり」
承子「おかえり」
転子「おかえり」
男 「ただいま、だろ。結子は?」
起子「転子と結子が散歩に行くと」
承子「必ず転子が先に帰る」
転子「そして結子は水の底」
男 「んな馬鹿な。まあじきに帰ってくるかな」
起子「多分」
承子「恐らく」
転子「きっと」

起子「では朝食作りを続行しますので」
承子「くれぐれも転子を来させぬよう」
転子「なんてひどい」
男 (なんとなくわかる気がする……)
起子「だってあなたお味噌汁の中に」
承子「大福餅入れるじゃない」
男 「よし、俺が命に代えても抑えているから安心して作ってこい!」
転子「むぐぐぐ」

18.

男 「んで君が四人の意思決定役か」
転子「そうではない」
男 「ひねくれものだなぁ」
転子「そうでもない」
男 「他人と違うことを言わないと気がすまないとか?」
転子「それでもない」
男 「日本の首都は」
転子「名古屋」
男 「アメリカの大統領は」
転子「ワシントン」
男 「初めてのキスの味は」
転子「歯磨き粉」
男 「したことあるのか?」
転子「ない」
男 「胸のサイズは?」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「え?」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「いや、すまんかった」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「……まあ、どちらかというと」
転子「F65」
男 「うそをつけ」


19.

男 「そういえばさ」
転子「なんだ」
男 「誰が一番年上なの?」
転子「私」
男 「え、そうなのか」
転子「起子は承子より年が低い。私と結子は同い年だ」
男 「ふむふむ」
転子「結子は起子より年が低い」
男 「つまりみんな同い年なんだね」
転子「そういうこと」
男 「ひねくれものだなぁ」

20.

男 「帰ってこないな」
起子「結子は」
承子「いつも」
転子「帰ってこない」
男 「んな馬鹿な。探しに行ってくる」
起子「ご飯」
承子「までには」
転子「戻らなくていい」

男 (三人だと何か調子狂うな)

21.

男 「おーい……いたいた。何やってんだ?」
結子「……」
男 「花を眺めているのか?」
結子「ではありません」
男 「ああ、蝶々か」
結子「です」
男 「なんで延々と蝶を眺めてるんだ」
結子「飛び立ったら行こうと思ったのです」
男 「……で、いつまで経っても飛び立たないと」
結子「そういうことです」

22.

男 「いい天気だな」
結子「そう思います」
男 「散歩は日課なのか?」
結子「でもないです」
男 「天気がいいからか」
結子「です」
男 「四人はどこから来たんだ?」
結子「西の方からです」
男 「西の方っていうと……関西か?」
結子「そうでもありません」
男 「名古屋あたり?」
結子「そうかもしれません」
男 「何で来たんだ?」
結子「電車です」
男 「はるばる東京まで?」
結子「そうです」
男 「……」
結子「……」
男 (話題が続かねえ……)


23.

男 「いただきます」
起子「いただきます」
承子「いただきます」
転子「いただいてます」
結子「いただきます」
男 「やはり四人だな」
起子「何がですか?」
男 「いや、なんでも……ぐふっ」
承子「当たりましたね」
転子「起子の料理は必ず一人分罠がある」
男 「な、なぜそんなことを……」
結子「知りません」
男 「知らないのかよ!」

起子「だって聞こうとしても」
承子「四人で一セットですから」
転子「前の人に質問するまもなく」
結子「話題が終わるのです」
男 「めんどくさい奴らだな」

男 「それで、何で爆弾作るんだよ」
起子「何となく」
男 「なんだそりゃ」

24.

男 「ご馳走様でした」
起子「ごちそう」
承子「さま」
転子「ぢぇし」
結子「た」
男 「……今噛んだだろ」
転子「……」
起子「今」
承子「噛んだでしょ」
転子「噛んでない」
結子「だそうです」
男 「へえ」

起子「じゃあ、片付けは」
男 「俺がやれってか?」
承子「他に誰がやる」
男 「誰がってお前達四人も」
転子「手伝わない」
結子「です」
男 「あっそう」

25.

──

男 「かれこれ三日も経ってしまったがいつまで居座るつもりだ」
起子「そりゃ永遠に」
承子「あなたが死ぬまで」
転子「あなたが死んでも」
結子「私達は居座ります」
男 「いや、そうしたいのは山々なんだけど……俺も金ないし」
起子「金ならある」
男 「は?」
承子「ほら」
男 「うお、どこに隠してたんだ。ってか何で持ってるんだ」
転子「昨日施設から送られてきた」
男 「マジで?」
結子「マジで」

男 「アテがあるなら最初に言ってくれればよかったのに……」
起子「だって言わなかったじゃない」
承子「お金のことなんて」
転子「エロ本のこともね」
男 「そりゃ言わなかったけど……って何勝手に引き出し開けてるんだ! やめろ!」
結子「けがらわしい」

男 「ん? なんで金あるのに居候されてんだ? 俺」

26.

明くる日

起子「……」
男 「どうしたんだ? 塞ぎ込んで」
起子「……」
男 「他の三人は?」
起子「……散歩」
男 「置いてかれて拗ねてんのか?」
起子「ちがう」
男 「三日連続で爆弾当てられた事は別に恨んじゃいないぞ」
起子「ちがう」
男 「まったく。どうしたってんだ」
起子「ちなみにそれわざと」
男 「あ?」

27.

男 「ただいま。起子は?」
承子「あのまま部屋に引きこもっている」
転子「でも食事は食べてる」
結子「食いしん坊ですから」
男 「参ったな。何かあったのか?喧嘩とか?」
承子「してない」
転子「媚びない」
結子「顧みない」
男 「何を言ってるんだ何を」

男 「っていうか俺の部屋なんだが……」

28.

男 「こういうの、よくあることなのか?」
承子「めったに」
転子「ないね」
結子「おまえのせいだ」
男 「お、俺のせいか?」
承子「うん」
転子「まあ、違うけど」
男 「え?」
結子「おまえのせいだ」
男 「はあ」

29.

男 「おーい、入るぞ」
起子「駄目」
男 「着替えてんのか?」
起子「そうじゃない」
男 「俺の部屋なんだが」
起子「扉の所にドミノがある」
男 「うそをつけ」

ガチャ

バララララララララララララララ

男 「……」
起子「……」
男 「い、いや、すまんかった」
起子「……」

30.

男 「で、どうしたんだ」
起子「……」
男 「話さないと何もわからんぞ」
起子「話したくない」
男 「何か深刻な悩みなのか?」
起子「そう」
男 「うーん……」
起子「でてってよ」
男 「話してくれたらアイスパフェおごってやる」
起子「いらない」
男 「じゃあこの携帯に付いてるゲコ太ストラップでどうだ」
起子「話す」
男 「えっ」

31.

起子「……喋りたいんです」
男 「ん?」
起子「私だって! 最初以外の台詞を喋りたいんです!」
男 「……はあ?」
起子「いつも私は冒頭の台詞ばっかり」
男 「うん」
起子「みんな後ろに続くだけ」
男 「まあそうだが」
起子「自分の始めた話がどこか知らない結論に達す」
男 「それもかなり変な場所に」
起子「その不安、あなたに分かりますか?」
男 「すまないとは思うが、まったく分からん」
起子「私だって話の腰を曲げたい。結論を話したい」
男 「承子は?」
起子「別にいいです」
男 「あ、そう」

32.

男 「別に、話せばいいんじゃないか?」
起子「だめです、秩序だから」
男 「そんな堅く考える必要もないと思うがなあ。さっきだって三人でやってたし」
起子「それでも順番は守るものです」
男 「別に年功序列ってわけじゃないんだろ」
起子「それはそうですけど」

男 「しかし、そういうこと考えるんだな」
起子「きっとツンデレだって普通にデレたい時もあるし、
   クーデレだって熱血漢になりたい時があるし、
   ロリ校長だって校長やめたい時があるんです」
男 「怒られるぞお前」
起子「そういうものなんです」
男 「お前文字制限は?」
起子「そういうものなんです」
男 (いいのかよ)

33.

承子「どうだった」
男 「お前達に言えないような悩みがあるんだとさ」
転子「珍しい」
結子「ですね」
男 「珍しいのか?」
承子「私達、秘密なんて無いですもの」
転子「好みのタイプ、性癖、体重、へそくりの在り処まで」
結子「えっ」
男 「えっ」

34.

男 「ところでお前達、本当はなんで家に来たんだ?」
承子「実はこの世界、悪魔の力に蝕まれつつあり」
転子「今こそ魔道をもう一度目覚めさせなければならない」
結子「私達と貴方は、前世で共に戦った五人の勇者なのです」
男 「はいはい。で、なんで家に来たんだ?」
承子「なんとなく」
男 「なんとなくなのか?」
転子「なんとなく」
男 「んな馬鹿な」
結子「小説は事実より偶なり」
男 「え?」

35.

男 「おーい、晩御飯だぞ。ここに置いとくか?」
起子「……」
男 「ったく、置いとくぞ。風呂入る時言えよ」
起子「ちょっとまって」
男 「ん?」

ガチャ

起子「入って」
男 「ん、ああ」

バタッ

起子「やっぱり、話そうと思うんです。三人に」
男 「おお、そうか。そいつはよかった」
起子「それで、もし良かったらあなたに付いていてほ」
男 「ん」
起子「しいと思って」
男 「別に構わないが」
起子「良かった」
男 「うん」
起子「じゃあ出てって」
男 「マイペースだなおい」

36.

起子「ねえ、みんな。聞いて」
承子「あら起子、久しぶり」
転子「五年と四ヶ月ぶり」
結子「随分と痩せ細ったね」
男 「朝会ったばかりだろうが。んで、起子が話したいことあるってさ」

起子「あのね……わ、私も、最後に話してみたいの!」
男 (別に俺いなくていいんじゃないか……?)
承子「最後?」
転子「私や」
結子「私みたいに?」
起子「そう!」

37.

承子「なんだ」
転子「そんなことで」
結子「悩んでたのね」
男 「おいおい、そんなことはないだろう」
起子「そ、そうだよ! 私、どんなに悩んだか」
男 「それもどうかと思うが」
承子「別に」
転子「話したければ」
結子「話せばいいじゃない」

38.

起子「だって私達話す時は」
承子「『順番』が必要だと思っているようだが」
転子「別になくても話せる」
起子「!」
男 「!」
結子「そしてお前の両親はやせてきたので最寄りの町へ解放しておいた」
男 「何の話だ」

起子「順番、いらないの?」
承子「そもそも私達」
結子「誰か欠けてても」
転子「問題なく話せるじゃない」
起子「そっか……」
男 「いや気付けよ」

39.

承子「全くそんなことで悩むだなんてかわいいこね」
転子「食べちゃいたいくらい」
起子「うう」
結子「あ、今のは比喩よ」
男 「いや誰も本当とは思わねえよ」
起子「ってことは私も」
承子「結子みたいに」
転子「最後を締められる?」
結子「それは駄目よ」
起子「えっ」
男 「えっ」

40.

承子「だってあなたが最後を締めたら」
転子「結子は職を失い橋の下で夜露を過ごすことになる」
男 「起子の代わりに最初を話せばいいんじゃないか?」
結子「私が最初に話し始めることなんてないと思うけど」
男 「確かにずっと沈黙が続くだけだな」

起子「え、じゃあ永遠に私は」
承子「最後の台詞を」
転子「喋ることなんて」
起子&結子「で──」

起子「……」
結子「……きないのよ」
男 「……」

41.

起子「つまり転子が二番目に話したり」
承子「結子が三番目に話したり」
転子「あるいは承子が最後を締めることが出来ても」
結子「起子以外が最初の台詞を喋ることは出来ないということ」
起子「そんな……」
承子「だから多分私達は」
転子「結局いつも同じ順番で」
結子「話してきたのね」
男 「なんか分かった気になってきたが実際なんだこれ」

42.

起子「でも……なんだか、それでいい気がしてきた」
男 「ん? 最後を締めたいんじゃなかったのか」
承子「ずっと慣れ親しんできたものだもの」
転子「嫌なはずはないし」
結子「心地いいものだもの」
起子「人は誰しも役割を与えられている」
承子「私達はただそれが」
転子「昨日のレールガン予約し忘れた」
結子「人より顕著に現れているだけなのね」
男 (ん…?)

43.

起子「わかった。私、これからも『最初』を喋り続ける」
承子「私は次を」
転子「私はその次を」
結子「そして私が締めるのです」
男 「めでたしめでたし」
起子「そしたらなんだか」
承子「お腹が空いたね」
男 「いや、さっき食べたばかりだろう」
転子「お腹が」
結子「空いたね?」
男 「……分かったよ、何か作ってやるから」

起子「でもたまには」
承子「やってもいいかも」
転子「気が向いたら」
結子「風が向いたら」

44.

結子「そんなこんなで、この話は一旦おしまい」
転子「けれど、まだまだ受難は続く」
承子「問題山積み、苦労は尽きず」
起子「私達の物語は、今始まったばかりなのです!」


起子「……あれ?」


~完~