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不倫「20年愛」の末… 遺体に鉄アレイくくり川に遺棄 元銀行マンの“多重債務地獄”

 

 【法廷から】

犯行現場となったのは、20年を超える不倫の末に築いた“2人の城”だった-。妻を自宅で絞殺し、遺体に鉄アレイをくくりつけ川に捨てたとして、殺人と 死体遺棄の罪に問われた男性被告(64)の裁判員裁判。「嘘」と「多重債務」に彩られた愛の軌跡が、法廷で明らかになった。(時吉達也)

起訴状と検察側の冒頭陳述によると、被告は平成23年9月、東京都江東区の自宅マンションで妻=当時(51)=の首を電気コードで絞め殺害。数日後、遺体を車いすに乗せて運び、鉄アレイをつけたひもをくくりつけて川に遺棄したとされる。

22日の初公判で被告は起訴内容を認め、犯行の動機が争点となった。弁護側は被告が消費者金融などの借金に苦しんでおり「自殺しを考えたが、被害者を1 人で残せないと決意した」として、心中目的の犯行だったと主張。検察側は「真の動機は分からない」と述べた上で、犯行前後に妻の口座から現金を引き出し借 金返済にあてていたことや、逮捕まで自殺を図った形跡がないことを指摘。「『心中』は罪を軽くするための嘘」と訴えた。

傍聴席はほぼ満席。21日に制度施行3年を迎え、裁判員裁判への関心が高まっている様子がうかがえる。約50人の傍聴人が見守る中、弁護側の被告人質問では被告が被害者と歩んだ25年が明らかにされていった。

2人の出会いは昭和61年にさかのぼる。被告が当時勤務していた大手銀行に、27歳の被害者が就職。同じ部署で働きはじめると間もなく、交際が始まっ た。弁護側の被告人質問で、被告は当時について問われ「2人が出会った部署への発令日が彼女の誕生日で、交際後に『赤い糸で結ばれていると感じた』と言わ れた」というエピソードを紹介した。

しかし、12歳年上の被告は当時すでに、別の女性と結婚し3人の子供がいた。翌62年には被害者が被告の子供を身ごもり中絶する苦難もあったが、関係は続いたという。

被告は平成10年に銀行を早期退職、民間企業に再就職したのを機に家族と別居、被害者との“愛の巣”となるマンションを購入した。さらに10年以上が経過した21年、ようやく離婚が成立し、2人は出会いから20年以上を経て入籍を果たした。

被告は法廷で、ここ数年糖尿病を患い入退院を繰り返したことを明かし、被害者の存在について「食事、運動を常にサポートしてくれる看護師、栄養士でもあり、『命の恩人』だった」と説明。昔と変わらない円満な関係を強調した。

しかし、証拠調べや検察側の被告人質問では、被告が仲睦まじいパートナーにも、借金の存在をひた隠しにしてきた実態があらわになる。「生活費に加え、被 害者との交際費に充てるためサラ金に手を出した」(捜査段階の供述)と、銀行員時代から消費者金融などで借金を重ねた被告。銀行を辞めた際の退職金でいっ たんは完済したものの、その後再び借り入れがふくれ上がり、犯行当時は住宅ローンを含め借金が4千万円超に。毎月50万円以上の収入があったにも関わら ず、返済額が上回っていたという。

20年越しの“新婚生活”の陰で、「火の車」状態の被告はなりふり構わず金策に走る。元妻が暮らすマンションを無断で借金の担保にあて、別の消費者金融の借り入れの際には弟の保険証を偽造。被害者の貯蓄500万円も、無断で使い切った。

さらに、被告が被害者のクレジットカードを不正使用した記録が自宅に届いた際には、契約していた警備会社職員の住居侵入を匂わせ、ごまかしたこともあったという。

殺害前後の被告の言動からも、「カネ」と「嘘」ばかりが浮かび上がる。犯行当日にも外出中の被害者の銀行カードを使いキャッシングを試みるなど、複数回 にわたり銀行口座から無断で現金を引き出し、借金返済にあてた。殺害後は被害者宛てにメールや電話を残すなど隠蔽工作を疑わせる行為に及んでいた。

検察側は被告人質問で、被告が警察から事情聴取を受けた当初、「妻が行方不明になり、電話をかけても連絡がつかない」などと説明していた点を追及。被告は「子供じみた嘘をついた」と言葉を濁した。

審理を通し、借金苦の状況は明らかになっていく。しかし、そもそもいったんは債務を完済した被告が、再び借金地獄に陥るきっかけは何だったのか。再就職の数年後、突如給与が半減したことを理由に挙げる被告に対し、検察官が質問する。

検察官「再就職後の給料が60万円で、半分になっても30万円。会社とは別のコンサルタント業を含めれば50万円の手取りがあったんですよね」

被告「はい」

検察官「なぜ借金が必要になるんですか」

被告「返済するだけで毎月100万円近くなり、収入の倍になっていました。バクチも一切やっていません。生活費の充当と借金返済だけでした」

借金生活が始まった理由についての答えにはなっていないが、検察官は追及しないまま質問を打ち切る。

また、借金を被害者に打ち明けることもなく殺害した理由についても、被告は不可解な弁解に終始する。

被告「借金を打ち明ければマンションを手放すことになり、『2人でマンションに住む』という彼女の夢を壊すことになる。マンションを残すには自分が死ぬ しかないが、借金を残したまま死ねば、風評被害で彼女もマンションを追われるかもしれない。2人で死ぬしかないと思いました」

検察官「元銀行員なんだから、自己破産についても当然知っているわけですよね。なぜ利用しなかったんですか」

被告「マンションから出ていかなければならなくなるので。当時は彼女の夢をつぶしてはいけない、としか考えていませんでした」

被害者の「夢」、という言葉を繰り返す被告。犯行の数日後、室内で腐乱した遺体にかぶせていたシーツなどを勤務先で捨てていた点を問われると、さらに住居の意義を繰り返す。

被告「マンションは彼女が作り上げた『城』。城の中に置いておくのはよくないと思いました」

検察官「じゃあ、『城』の中で殺しはやってもいいの?」

被告「身勝手で、申し訳ありません」

裁判員も疑問が尽きない様子で、積極的に質問を重ねていく。女性裁判員は夫婦関係について尋ねる。

裁判員「一貫してよく分からないんですが。非常に長く不倫をしていて、本当にトラブルがなかったんですか? 私なら諦めますけど」

被告「子供を中絶した時の一度きりでした。私からも彼女からも、問題になることはありませんでした」

被告は、老人ホームに暮らす実母のお見舞いから帰宅した直後の被害者を絞殺していた。男性裁判員は犯行の計画性について尋ねる。

裁判員「お母さんのお見舞いから帰ってきたところを殺した、というのは計画していたんですか。衝動でしたか」

被告「前もって考えていません。夕方に彼女が帰ってきて、衝動的でした」

裁判員「本当に理解できないんですが。母親のお見舞いから帰ってきたばかりの奥さんを、突然に? しかもたまたま手元に電気コードがあったんですか」

被告「はい、衝動的です」

裁判員らは終始険しい表情で、発言する被告を見つめていた。

検察側は25日の論告で、犯行動機として(1)被害者の財産を奪う目的だった(2)借金や被害者名義のカードの不正使用が発覚し、口論になった-などの 可能性を挙げ、「被告が嘘をついているのは明らか」と主張。懲役17年を求刑した。弁護側は最終弁論で「仲の良い夫婦だった。借金を苦に心中を図り、死ね なかったのが真相」として犯行の悪質性を否定、懲役8年が相当とし、結審した。判決は29日に言い渡される。

家庭を犠牲にし、20年以上を共に歩んだパートナーを失ってなお、被告が守ろうとしたものは何だったのだろうか。元銀行マンらしい丁寧な言葉遣いと淡々とした表情から、読み取ることはできなかった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120527-00000562-san-soci