協同組合


柄谷行人・西部忠・高瀬幸途・朽木水=柳原敏夫『NAM原理』(太田出版)から引用する。

マルクスは、『ドイツ・イデオロギー』において、エンゲルスの書いた文章に、次のように書き加えている。

《共産主義とは、われわれにとって成就されるべきなんらかの状態、現実がそれに向けて形成されれるべきなんらかの理想ではない。われわれは、現状を止揚する現実の運動を、共産主義と名づけている。この運動の諸条件は、いま現にある前提から生ずる》

マルクスはこの姿勢を貫徹している。そして、その二〇年後に、彼は幾つかの「現状を止揚する運動」に共産主義の可能性を見いだしている。それは生産と消費の協同組合である。マルクスは、株式会社を「資本主義的生産様式そのもの限界内での、私的所有としての資本の廃止」として見た(『資本論』第三巻5-27)なぜなら、株式会社は、資本と経営の分離によって、それまでの「資本家」を消滅させるからである。しかし、株式会社は資本制の「消極的な揚棄」にすぎない。彼は、労働者が株主であるような生産協同組合にその「積極的な揚棄」を見出す。

《資本主義的生産様式から生ずる資本主義的取得様式は、したがって、資本主義的私有は、自分の労働にもとづく個人的な私有の第一の否定である。だが、資本主義的生産は、一つの自然過程の必然性をもって、それ自身の否定を生み出す。それは否定の否定である。この否定は、私有を再建しないが、おそらく資本主義時代の成果を基礎とする個人的所有をつくりだす。すなわち、協業と、土地や労働そのものによって生産される生産手段の共同所有を基礎とする、個人的所有をつくりだす》(『資本論』第一巻7-24)

とはいえ、理論的にはどうあれ、現在、協同組合は非常に厳しい局面に立たされている。それは、市場において資本制企業と競争しなければならないため、没落するか、或いはそれ自身が資本制企業に似たものにならざるを得ない。NAMは、協同組合を健全に育成するため、LETSによる無償金融を実現しようとしたが、その試みも行き詰まり、NAMそれ自体が解散した。現状を打開し新たな社会的現実を切り開くためには、私達一人一人の発意と創造が必要である。



Linda

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最終更新:2006年08月23日 11:07