「次は誰に聞きましょうか」
顔を手でパタパタとあおぎながら、黒子が辺りを見回す。
「あそこにいる二人でいいだろ」
青峰が、ステージでくっついて座っている人物を指差した。
「・・・それもそうですね。ていうか、暑くないんですかね、あの二人」
黒子は暑さで霞む目をこすり、信じられないといった様子でつぶやいた。
それに、めんどくさそうに青峰が返す。
「あちーよ、俺が」
「誰も聞いてませんよ君のことは」
はあ、
そうため息をつくと、青峰もまた、ため息をついた。
「ったく、めんどくせー」
「・・・まだ言ってるんですか」
いい加減に諦めたらいいのに。
黒子は心の中で思った。
*
「え、アイスー?俺別になんでもいーよ。あ、でも」
綺麗な紫色の髪が揺れる。
「できれば、アイス●ロックの濃いやつ。白桃と巨峰五本ずつ~」
片手を上に挙げひらひらとさせる。
青峰と黒子が、そんな紫原に抗議した。
「全然なんでもよくねーじゃねーか!」
「一人で十本食べる気ですか?お腹壊しますよ」
「え~・・・」
二人に言われたことが気に食わなかったのか、紫原の表情が曇る。
だが、しかし
「別に悪いことじゃないだろう。それに敦は食べ盛りだから、二十本ぐらい食べなきゃな」
紫原の膝の上に、足を組んで座っていた赤司が口を開く。
「わーい、赤ちん大好き~」
ぎゅう。
真夏だというのに、べったべたとくっつく二人に、怒りすら覚える。
しかも赤司にいたっては、暑さなど微塵も感じていないような顔をしている。
「あ、そういえば・・・赤司くんはなんのアイスが良いんですか?」
黒子が聞くと、あいも変わらず涼しげな顔で、赤司は答えた。
「うーん、そうだね。いちご練乳バー十本入りを、二袋買ってきてくれ」
「え、二袋ですか?」
黒子が思わず聞き返すと、赤司の顔が渋る。
「なんだ、文句でもあるのか」
「いえ、そういうわけでは・・・でも、なぜ二袋なんですか?」
黒子は、控えめにそう言う。
すると赤司はキョトン、と首を傾げた。
「そんなの、食べるからに決まってるだろう?」
そう言われ、一瞬思考を放棄する。
そして、我に返った黒子が口を開いた。
「え、でも赤司k「テツ待て言うな!!」」
慌てて黒子の言葉を遮った青峰が、かがんで耳打ちする。
「確かに俺だって、『なんでお前がいちご練乳?』とか、『食えんのかお前ww』とか、言ってやりてぇけどよ。我慢してんだよ。死にたくねぇし」
その言葉を聞いて、黒子は初めて青峰に感謝した。
そう、彼のおかげで僕は、オヤコロを喰らわなくて済んだのだ、と。
先ほどからこそこそと話している二人に、おおよそ察しがついたのか、赤司がため息混じりに言った。
「・・・お前たち、俺が少食だと思うなよ」
「「っ!!!」」
バレていた。
二人の顔が硬直する。
しかし、しばしの緊張は、紫原によって解かれた。
「あ~、赤ちんお弁当大きいもんね~」
「ああ」
答えながら、赤司が紫原に頭を撫でられる。
そんな光景を見て、「人は見かけによらないものだな」と、二人は改めて感じていた。
二つ目オーダー:アイスブ●ック巨峰×5、白桃×5
三つ目オーダー:いちご練乳バー(×10)二袋