「さて、次は黄瀬くんですね。そこにいるので」
黒子が遠目に見ながら当人を指差すと、隣の青峰が顔を歪めた。
「あいつアイスいんの?」
別にいいじゃん、買いたくねーよあんな奴の。
そう言って青峰がおもむろに踵を返す。黒子は慌てて青峰の腕を掴んだ。
「待ってください青峰くん。今回の罰ゲームの考案者が誰だか覚えてないんですか」
その言葉に、青峰の表情が引き攣る。
そして、一瞬固まった後、控えめな声で黒子の言葉を訂正する。
「あれは考案者じゃねーよ。主犯だよ主犯」
青峰は、心底嫌そうに首を振ったあと、黒子の頭に腕を乗せる。
不機嫌そうな声色のまま、青峰は続けた。
「だってよぉ、黄瀬だぜ?絶対うぜーよ。パ●ッテとかそんなん選ぶぜ、アイツ」
「・・・確かにそれはウザイですね。僕としてはクーリ●シュとかを選びそうな感じがしますが。ウザイに越したことはないですよね」
あのチャラモデルのことだから、きっと腹立つくらい似合うアイスを注文するだろう。
というのが、今の二人の予想だった。
二人はノリノリで黄瀬を罵倒しながら、当人のところへ足を進めるのだった。
*
「ハーゲ●ダッツのストロベリーが良いっス!」
嬉しそうにダムダムとボールをつき、黄瀬はにっと笑った。
その様子に、青峰は一度挑戦的に笑って、
「おい黄瀬そのボールかせ。お前の顔面にめり込ませる」
とドスのきいた声を響かせた。
「ぇぇぇえ?!なんでっすか!!」
黄瀬は驚嘆の声を上げると、ボールを握り締めたまま後ずさった。
しかし青峰も瞬時に反応し、じりじりと黄瀬との間を縮めていく。
誰がどう見てもただの1on1。数秒前の会話がなければ。
「せ、せめて顔面はやめて欲しいっス!明日モデルの仕事なんスよ!?」
「あれ、お前モデルだっけ?ま、良いだろ。俺の気分では今日は顔面セーフだ」
「最低っス青峰っち!!それセーフじゃないっス死ね!」
パシッ。
「?!なっ、」
―迂闊だった。
黄瀬は自分の手元からボールがなくなる感覚でハッとした。
「黒子っち――!!!」
「甘いです黄瀬くん」
爽やかな微笑。直後顔面を襲う激痛。
なんて卑怯なんだ。
黄瀬はじんじんと痛む顔面を手で覆いながら、二人を睨みつけた。
「痛いっスよぉ!どうしてくれるんすか特に青峰っち!!」
黄瀬が青峰を指で指す。
それを聞いて、青峰はしれっとした態度で言う。
「やったの俺だけじゃねぇしー、テツも共犯だしー」
黒子の肩に手を置き「な、テツ」などと言葉をかけている。
「ガキっすか!!?」
突き出した指をそのままに、黄瀬は腕をブンブンと縦に振る。
ぎゃあぎゃあ喚き散らす黄瀬に流石にイラっときたのか、青峰が黄瀬の頭を叩いた。
「痛っ!!」
「うっせーんだよ黄瀬。ぎゃあぎゃあ喚くんじゃねーよバーカ」
青峰の言葉に、黒子がすかさず反論する。
「青峰くん言い過ぎです。そしてバカは君もです」
「なんだとテツ!?」
ぎゃあぎゃあ。
さっきまでの仲の良さは何処へ行ったのやら、口喧嘩を始めた二人に、黄瀬はため息を漏らした。
「一体何しに来たんスか、アンタら」
その言葉に一瞬止まった二人は、次の瞬間には口を揃えて、
「お前をいびりに来たに決まってるだろ」
「君をいびりに来たんですよ。決まってるじゃないですか」
と言うなり、黄瀬の両脇腹をどついた。
四つ目オーダー:ハ●ゲンダッツのストロベリー