「さて、次は黄瀬くんですね。そこにいるので」

黒子が遠目に見ながら当人を指差すと、隣の青峰が顔を歪めた。

「あいつアイスいんの?」

別にいいじゃん、買いたくねーよあんな奴の。
そう言って青峰がおもむろに踵を返す。黒子は慌てて青峰の腕を掴んだ。

「待ってください青峰くん。今回の罰ゲームの考案者が誰だか覚えてないんですか」

その言葉に、青峰の表情が引き攣る。
そして、一瞬固まった後、控えめな声で黒子の言葉を訂正する。

「あれは考案者じゃねーよ。主犯だよ主犯」

青峰は、心底嫌そうに首を振ったあと、黒子の頭に腕を乗せる。
不機嫌そうな声色のまま、青峰は続けた。

「だってよぉ、黄瀬だぜ?絶対うぜーよ。パ●ッテとかそんなん選ぶぜ、アイツ」
「・・・確かにそれはウザイですね。僕としてはクーリ●シュとかを選びそうな感じがしますが。ウザイに越したことはないですよね」

あのチャラモデルのことだから、きっと腹立つくらい似合うアイスを注文するだろう。
というのが、今の二人の予想だった。

二人はノリノリで黄瀬を罵倒しながら、当人のところへ足を進めるのだった。



「ハーゲ●ダッツのストロベリーが良いっス!」

嬉しそうにダムダムとボールをつき、黄瀬はにっと笑った。
その様子に、青峰は一度挑戦的に笑って、

「おい黄瀬そのボールかせ。お前の顔面にめり込ませる」

とドスのきいた声を響かせた。

「ぇぇぇえ?!なんでっすか!!」

黄瀬は驚嘆の声を上げると、ボールを握り締めたまま後ずさった。
しかし青峰も瞬時に反応し、じりじりと黄瀬との間を縮めていく。
誰がどう見てもただの1on1。数秒前の会話がなければ。

「せ、せめて顔面はやめて欲しいっス!明日モデルの仕事なんスよ!?」
「あれ、お前モデルだっけ?ま、良いだろ。俺の気分では今日は顔面セーフだ」
「最低っス青峰っち!!それセーフじゃないっス死ね!」

パシッ。

「?!なっ、」

―迂闊だった。
黄瀬は自分の手元からボールがなくなる感覚でハッとした。

「黒子っち――!!!」
「甘いです黄瀬くん」

爽やかな微笑。直後顔面を襲う激痛。

なんて卑怯なんだ。
黄瀬はじんじんと痛む顔面を手で覆いながら、二人を睨みつけた。

「痛いっスよぉ!どうしてくれるんすか特に青峰っち!!」

黄瀬が青峰を指で指す。
それを聞いて、青峰はしれっとした態度で言う。

「やったの俺だけじゃねぇしー、テツも共犯だしー」

黒子の肩に手を置き「な、テツ」などと言葉をかけている。

「ガキっすか!!?」

突き出した指をそのままに、黄瀬は腕をブンブンと縦に振る。
ぎゃあぎゃあ喚き散らす黄瀬に流石にイラっときたのか、青峰が黄瀬の頭を叩いた。

「痛っ!!」
「うっせーんだよ黄瀬。ぎゃあぎゃあ喚くんじゃねーよバーカ」

青峰の言葉に、黒子がすかさず反論する。

「青峰くん言い過ぎです。そしてバカは君もです」
「なんだとテツ!?」

ぎゃあぎゃあ。
さっきまでの仲の良さは何処へ行ったのやら、口喧嘩を始めた二人に、黄瀬はため息を漏らした。

「一体何しに来たんスか、アンタら」

その言葉に一瞬止まった二人は、次の瞬間には口を揃えて、

「お前をいびりに来たに決まってるだろ」
「君をいびりに来たんですよ。決まってるじゃないですか」

と言うなり、黄瀬の両脇腹をどついた。

四つ目オーダー:ハ●ゲンダッツのストロベリー

最終更新:2012年08月14日 20:40