中州の日々~亜鳥紫音 業務日誌~

その執事、金色

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shion-atori

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朝起きると部屋に金執事がいた。
何故かテキパキと俺の今日着る服を準備している。
叢雲さんに聞くと「今日だけは好きにさせる」と憮然とした顔で返された。
どうやら何かの約定が結ばれたと見える。
いつもながらこいつらは勝手に俺を契約事項に入れる、困ったものだ。

その後も金執事は一日その有能執事っぷりを発揮し続けた。
見苦しいほどには俺の視界に入らず、必要な時にはすぐ傍にいた。
俺の要望は先回りして準備し、さりげないフォローもしてくれた。
一緒にいたルセリアにも非常によくしてくれていたようで
いつの間にかルセリアは金執事を尊敬の眼差しで見つめるようになっていた。

紅蒼メイドが何故あれほど警戒していたのかが少しわかった。
たしかにこいつ一人いれば他にいらないと思っても仕方が無い性能だ。
俺は完璧であること、絶対であるということがどれほど危険で悲しいものか
前の記憶で理解しているつもりなので、逆に金執事のことを少し可哀想に思ったが。

一日の終わりに礼を述べると金執事は何も言わずに立ち去った。
特に表情を変えなかったがその口元、目元に満足感と寂しさが滲んでいたように見えたのは
俺の目の錯覚だったのだろうか。

追伸:後で叢雲さんに話を聞いたところ、主を持たぬままの稼働時間が長いので
性能試験を実施されていたそうだ。朝に紅蒼と行われたであろう取引については
教えてもらえなかった。


カテゴリ: [来訪] - &trackback() - 2010年09月18日 00:13:06

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