病床にて
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
明治三十三年五月
病状が最も悪化した皐月に詠んだ歌。
杉垣をめくらす庭の狭けれと春も花咲く秋も花咲く
明治三十二年 垣 竹の里歌
亡き母の西にいますと聞きしより夕つつこひし我も行くべく
明治三十一年
垣の外に猫の妻を呼ぶ夜は更けて上野の森に月朧なり
明治三十一年
夕立のはるる跡より月もりて又色かふる紫陽花の花
明治二十六年
海原は見渡す限り山もなしいづこをさして白帆ゆくらん
明治二十五年 大磯
最終更新:2006年11月02日 15:26