限定イベントテキストまとめ3

醜聞のおはぎ祭り

  • 発生(前日夜、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『ミッション:醜聞のおはぎ祭り』を発見しました
醜聞のおはぎ祭り
 ラ・オハギーナと呼ばれる祭りがある。
 それはラボラーナと言う村で始まった、おはぎを用いたお祭りである。
 
 おはぎというのは、蒸したもち米を丸めてさらにあんこをまぶした団子のことで。
 ラ・オハギーナとは、このおはぎを人に向けて投げて互いにぶつけ合う祭りだった。
 先祖の霊を敬い、偲ぶために始まったお祭りではあるが。
 何がどうなったのか、おはぎを投げ合うのが現在のスタイルとなっている。
 
 おはぎをぶつけられた人は今後一年は無病息災であるとか。
 結婚できるとか。宝くじが当たるとか。
 要するに、当たればいいことがあるから、どんどん人に当てようと言うことである。
 元々は村人だけで行われていたお祭りなのだが、ある時からそれが変化する。
 おはぎをぶつけ合うという奇妙な祭りが面白かったのか、観光客が集まり始めたのだ。
 年を追う毎にそれは倍々に増えていき、わずか数年で参加者の数は村人を観光客が上回った。
 
 会場の規模も大きくなり、作らなければならないおはぎの量も増えていく。
 村人は参加者から運営者へと次々と転身し、いつしか完全に参加者のほぼ全てが観光客となった。
 祭りとはそもそも神聖なものであり、神事である。
 それがたとえ、おはぎを投げ合うトリッキーなお祭りであってもだ。
 大騒ぎするためのアテにするなど、以ての外なのである。

 というのが、未だ祭りへの参加を続ける少数の村人たちの意見だった。
 彼らはお祭りを、元の形に戻すことを目的としている。
 そのために彼らがやろうとしているのが、観光客の排除である。
 
 事前準備したおはぎの中に、石が混ぜられているものがいくつか見つかっている。
 それは彼らの仕業であり、おそらく彼らの用意した手はそれだけではないはずである。
 この祭りによってもたらされる観光収入を、村は失うわけにはいかない。
 すでにそれをアテにした暮らしをしているのだ。今更昔には戻れない。
 
 原理主義者の彼らの手から、ラ・オハギーナと観光客を守って欲しい。
『マップ:ラ・オハギーナ会場』を発見しました

  • 当日朝(食事およびマップ移動処理後)
ラ・オハギーナ会場
 ラボラーナという村は、村という名にふさわしい規模の村である。
 老人から赤子まで含めても百人を少し上回る程度であり、村人の家の数も28軒しかない。
 全員が顔見知りであり、共同体としての輪は固いと言っていいだろう。

 その中で意見が分かれ、このようになってしまうのは悲劇である。
 村というものの一つの特徴として、ここラボラーナもその例に漏れることなく。
 土地だけは無駄に広く、数千人、あるいは一万を超す人間を収容することは容易だった。
 
 村の隅っこに作られた宿泊施設群は立派なもので、ある意味異様でもある。
 田園と木造のボロ家が並ぶ村の風景に対し、その佇まいは余りに豪華すぎだった。
 別世界どころか、異次元感がとてつもなかった。
 おはぎを互いにぶつけ合うお祭りであるラ・オハギーナ。
 
 もち米、小豆、砂糖。おはぎは基本的にこの三つで作られる。
 全てこの村で収穫されたものであり。
 お祭りに使う大量のおはぎを用意するために、村人たちは一年を費やすとまで言われる。
 
 現在の規模であれば、それはまったく大げさではない表現だった。
 ぞろぞろと、豪華なホテルから観光客があふれ出してくる。
 汚れてもいいようにラフな服装の者がほとんどであり、中には水着もちらほらと見れた。
 
 肩を回したりほぐすような動きをしながら、楽しそうにわいわいがやがや。
 ホテルから、ラ・オハギーナのメイン会場であるログローニョ広場への道を歩いていた。
ラ・オハギーナ会場
 正午を少し過ぎた辺り。
 ログローニョ広場には、すでに多くの人が集まり祭りの始まりを待っていた。
 
 広場には1メートル四方ほどの木箱が等間隔に並べて置かれ。
 その中には、村人たちが数日間徹夜して握ったおはぎが山盛りに入れられていた。
「えー。ではですね。今年のですね。ラ・オハギーナをですね。始めたいと、思います」
 おはぎの入っていない木箱を逆さにした台の上で、村長が祭りの開始を宣言する。
「じゃあ、ルーゴ君、お願いします」
 そして、村の若頭がオープニングおはぎを村長のみぞおちに投げ込むことで。
 
 ついに、村長の小さな悲鳴をホイッスルに今年のラ・オハギーナが始まった。
 参加者たちが、一斉におはぎの詰まった木箱へ向かう。
 一つ二つと掴み、近くにいた誰かに向かって投げつけた。
 一つは当たり、一つは外れて斜め後ろにいた人の肩に当たる。
 いちいち狙いを付けずとも、適当に投げれば誰かしらには当たるような状況だった。
 
 歓声と悲鳴。
 きゃっきゃうふふと楽しげな声が広場を包み込む。
 それをかき消したのは、一つの爆音だった。

  • 当日昼(戦闘直前)
ラ・オハギーナ開幕
 おはぎを満載した木箱。
 そのうちの一つが突然、爆発した。
 
 爆発は木箱の中で起こったが、その外枠を吹き飛ばすほどではないようだった。
 噴火した火山のように、おはぎが大量に空中に吹き上げられる。
 一瞬の静寂。そして、大歓声が上がった。
 木箱の近くにいた人に、頭からおはぎの雨が降り注ぐ。
 それをサプライズ演出と受け取った参加者たちは、そろって大きく歓声を上げた。
 彼らにとっておはぎで汚されることは喜びであり、そのために集まっているのである。
 
「ちっ」
 大きな舌打ちが、すぐ近くから聞こえてきた。
 見ないようにしながら、そちらへと注意を向ける。
 舌打ちをした男は隣にいた男になにやら耳打ちし、人混みの中を広場の外側へと下がっていった。
 耳打ちをされた男が別方向へと消えるのを見送った後、ルシエは最初の男を追った。
 
 おはぎの木箱へと向かう人々の流れに逆らって、外へ外へと人混みを縫っていく。
 そんな人間はこの中で一人だけであるので、遠くからでも見失うことはなかった。
 最後の人波を抜けて、広場から延びる東通りへと入っていく。
 走りたい衝動を抑えながらというのが明らかな早足で、周囲へ気を配る余裕はなさそうだった。
「なんなんだありゃ!? 祭りを盛り上げてどうする!」
 通りの奥で男の怒鳴り声が響く。
 男の前には6人ほどの若い男女が立ち、しょぼくれた様子で下を向いていた。
「他の木箱も同じ仕掛けか?
「くそっ。だったら他も爆破したってやつらを喜ばせるだけじゃねえか!」
 ぐちゃり。持っていたおはぎを壁に投げつける。
 潰れたおはぎがゆっくりと壁を伝い、あんこの跡を残しながら地面に落ちた。
 
「こうなったら次の作戦だ。今年の祭りは諦める」
「あいつらがこっちに集中してる間に、田んぼとサトウギビ畑と小豆畑を焼き討ちだ!」
 かなりあっさりと諦めて、かなり過激な作戦を発表する。
 リーダーと思われる、その男の目は血走っていた。
「誰だぁ!?」
 こちらの気配に気付いて、というよりも道を塞いで立っていたルシエに向かって叫ぶ。
「さっきの話、聞いてやがったな?」
「集合!」
 男の声に、人が集まってくる。
 そのほとんどが若い、ラボラーナの村人たちだった。
 
「聞いちまったからには帰すわけにはいかねえ」
「しばらく眠っててもらうぜ!」
 リーダーである彼の号令が響き渡り、周囲を囲んだ男たちは一斉に武器を抜いた。
(PT名)は『戦闘』を選択しました (行動ポイント-3 / 残り2ポイント)
原理主義者に遭遇した!

  • 当日昼(戦闘勝利後)
ラ・オハギーナ会場
 通りの壁や地面を、彼らによって投げつけられたおはぎが汚す。
 その跡だけを見れば、そこではおはぎ祭りが行われただけのようにも考えられる。
 だが、おはぎをぶつけられただけではない傷を負って転がる、若者たちの姿がそれを否定していた。
 すでに、騒ぎを聞きつけた村長と村人数名が通りに集まってきていた。
 もう彼らの計画は終わりだった。
 
「レガネス、やはりお前か。皆を焚き付けて、こんな大事にしおって」
 おはぎと一緒に地面に転がるリーダー格の男に向かって、村長が話しかける。
 レガネス。それは村長の息子の名前だった。
 村長の息子であり、おそらくは次期村長でもある。
 世襲が絶対というわけではないが、反対の声を上げる者はいないだろう。
 その程度には現在の村長は好かれ、目の前にいる次期村長は嫌われてはいない。
 
 つまり、いずれ彼がこの村の実権を握るわけで、このようなことをする必要はなかった。
 今となっては、その未来もどうなるかは分からないが。
「気に入らないなら気に入らないと、直接言いなさい」
「何がどう気に入らないのか。だからどうしたいのか。そのために何が問題なのか」
 親による子への説教。
 成人を越えた身で行われるその姿を見るのは、なかなかに忍びないものがあった。
「要求を通したいなら、その前に筋を通しなさい。レガネス。さあ、顔を上げて」
 おはぎ祭りを元の形へと戻そうと画策する集団、そのリーダーとしての風格はすでになかった。
 親に怒られた子供。それはそれそのものだった。
 
「ガキの頃、祭りはこんなじゃなかった。あの頃は楽しかった」
「俺はただ、あの頃に戻したいだけだ。ガキの頃に、戻したいだけだ」
 顔を上げることはできず。地面に落ちたおはぎを見つめながら、ぽつぽつとつぶやく。
「まったく。若い奴が懐古主義にはまってどうする」
「昔はこんなじゃなかった、昔はよかった、ってのは呆けた老人の定番台詞だろうに」
 子供の後頭部を見下ろしながら、村長はため息を落とした。
 頭をかきながら、考える。この問題の落とし所、子供の尻をどう拭くか、を。
イベントマップ『ラ・オハギーナ会場』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た

醜聞のおはぎ祭り
「あの爆破装置、他の木箱にも仕掛けたんだろう?」
 爆発のことを思い出し、訪ねる。
 この男の性格を考えれば、きっちりと全ての木箱に全く同じ火薬分量のものを仕掛けているはずだった。
 
 男は答えない。だが、黙って視線を横へと動かす仕草が肯定を意味していた。
「起爆装置を貸しなさい」
 もごもごと口を動かして独り言を口の中だけでつぶやいて、男はポケットからスイッチを取り出した。
 キっと父親を睨み付けてから、それをふわりと投げてよこす。
 
 村長は受け取った起爆装置のセーフティを外し、そのスイッチを躊躇なく押していた。
 そして、いくつも付いているスイッチをばんばん押していく。
 
 その姿を呆然と見つめる息子。
 そして、この通りからは少し離れた広場から、複数の爆音と歓声がここにまで流れてきていた。
 まだ祭りは始まったばかりで、どの木箱もおはぎが山盛りに近い状態にある。
 つまり、今ならば最初の爆発とほとんど同じ状況が再現されるはずだった。
 ここからは見えないが、現におはぎの山は噴火して火山灰を観光客たちにまき散らし。
 体をおはぎで汚された彼らは、今日一番の大歓声をあげていた。
 
「祭りを盛り上げるために、お前たちが仕掛けた花火が上がった音だ」
「そういうことは、実行委員会に報告してからやりなさい」
「確かに実行委員は年齢層が高く、君らには近づきがたい場所かもしれんがな」
 若干棒読みにも近い口調で。
 それがとりあえず、彼が考えたシナリオらしかった。
「んな。ふざけんなよ! それで全部なかったことにする気かよ!」
 息子のレガネスが叫ぶ。
 彼以外の若者たちは流れを察し、安堵の表情を浮かべ始めていたが。
 彼にとってはそれは、屈辱以外の何物でもなかった。
 
「まあ、聞きなさい」
「祭りを二つに分けよう。一つは観光客用のオハギーナ。これは今までのまま、金儲けのためだ」
 はっきりと、それを口にする。
「もう一つは、村だけでやる小さなラ・オハギーナ。これは君らに任せる」
 そしてこれもまたはっきりと。息子と、その場にいる村の若者たち全員に向けていた。
「我々にはもはや、神事を取り仕切る資格はないだろう」
「ただの村人として、ラ・オハギーナには参加させてもらう」
「皆も喜ぶだろう。昔を懐かしむ者も意外に多い。懐古主義は老人の特権だからな」
 息子はうつむいたまま動かない。その頭に、最後の言葉をかける。
 
「ところで、原材料は同じだ。我々が作っているものをわけてやってもいいが、欲しいか?」
 挑戦的な口調で、言葉を投げつける。
 レガネスはその言葉をはねつけ、
 
「ふざけんな。いるか、んなもん。祭りは俺たちだけの手でやる」
 顔を上げ、父親の顔を睨み付けていた。
 おはぎまみれの観光客たちが、楽しそうにおはぎを投げつけあっている。
 今年はサプライズがいくつかあったせいか、例年以上の盛り上がりのようだった。
 
 木箱が空になれば、祭りは終わる。
 祭りが終われば彼らは去り、村は再び静寂と平穏を取り戻す。
 のどかで退屈な、そして来年のオハギーナの準備が早くも始まるのだ。
 だが、それにはもう少し時間がかかる。
 祭りはまだ終わっていない。おはぎはまだぶつけ終わってはいない。
 
 全てのおはぎを、全ての人にぶつけるまで、オハギーナは終わらないのだ。
 彼らが誰一人、無病息災や幸運を願わずとも。
 ただのお祭り騒ぎでしかなかったとしても。
 
 おはぎを一つ一つ握った村人の祈りは、全てのおはぎに込められているのだ。
ミッション『醜聞のおはぎ祭り』をクリア!

クリアボーナス
 (PC名)は魂塵を△△Ash得た
 (PC名)はSPを1得た
 (PC名)は『銘菓おはぎの月』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『おはぎの精』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
醜聞のおはぎ祭り
 
今回のイベントは終了しました
 
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
 

ハロウィンパーティ第二幕

  • 発生(前日夜、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『ミッション:ハロウィンパーティ第二幕』を発見しました
ハロウィンパーティ第二幕
 ハロウィン。
 本来は秋の収穫を祝う宗教儀式であるが、その意味は失われて久しい。
 現在においてはすでにただの、楽しい楽しいコスプレパーティである。
 今年も楽しいハロウィンコスプレパーティは始まった。
 
 お菓子を手にした子供たちは眠り、大人たちによる夜が更けていく。
 朝日が昇り、新たな一日が始まり。
 そして、パーティは終わりを告げた。
 
 だが、全てが終わったと思われたその時、一部の人々は異変に気付き始めていた。
 頭にかぶったカボチャが脱げなくなっていたのだ。
 中身をくりぬいたカボチャを頭にかぶっていた、カボチャ頭の人々。
 実のところ、その異変はもっと早くから起こっていた。
 だが、ほとんどの人が気付かなかった。
 全てが終わり、カボチャ頭を脱ごうとした、その瞬間まで。
 
 何事においても大抵はそうだが、気付いたときには全てが遅すぎた。
 首が絞まらない程度に、だが決して抜けはしないほどの力できっちりと固定されている。
 かぶるときは頭を通したはずの穴が、首ぴったりのサイズになってしまっていた。
 次々と仮装をやめ多くの人が日常へと戻っていく中、街にはカボチャ頭だけが取り残された。
 
 無理矢理引き抜こうと、頭を抱えてのたうち回る。
 壁や地面に頭を打ち付ける。
 友人に斧を手渡し頭を差し出す。
 
 だが、いかなる方法を持ってしても、カボチャ頭からの解放は叶わなかった。
 そしてそのカボチャ頭たちの行動に変化が生じる。
 いつしか彼らは自らの頭部への攻撃をやめ、その攻撃対象を周囲の者へと移していった。
 
 それは、ハロウィンパーティの第二幕の始まりだった。
『マップ:早朝ハロウィンパーティ』を発見しました

  • 当日朝(食事およびマップ移動処理後)
早朝ハロウィンパーティ
 ハロウィンパーティのために着飾られた街。
 歩行者天国となった大通りに、紅葉したイチョウの木が両脇にずらりと並んでいる。
 それら木々の間にはカボチャを象った灯籠が置かれ、その中では大きめの電球が光っていた。
 昨夜まで、あるいは今朝までそこではパーティが行われていた。
 仮装をした人々が歩き、酒を飲み、楽しそうに騒いでいた。
 
 夜が更けるにつれ家路につくものたちが増えてゆき、人の姿は減っていく。
 闇は色濃く、街を覆っていった。
 
 どこかで何かが変わってしまったのか。
 忍び寄っていた真なる闇が、誰にも気付かれないまま、街を完全に包み込んでいた。
 最初に異変に気付いたのはバーの店員だった。
 アルバイトとして働いていた彼は、カボチャの中身をくり抜いて目と口の穴を開けたものを頭にかぶって酒を運んでいた。
 これはもちろん彼の趣味ではなく、店長からの命令である。
 
 他のバイト仲間には、猫やら吸血鬼やら魔女やらのコスチュームがあてがわれる中。
 彼に渡されたのはカボチャ。八百屋で買ってきたばかりのカボチャだった。
 今日の彼に与えられた最初の仕事は、このカボチャをヘルメットに改造することだった。
 
 シフトが終わると同時、彼は控え室ですぐさまカボチャ頭を脱ごうとしていた。
 他の人たちは仮装した格好のまま打ち上げに行くとか話をしていたが、彼にその気はない。
 なし崩しに参加させられる前にさっさと帰ろうとしていた。
 
 だが、カボチャ頭に手を掛けた瞬間、彼の頭の中から打ち上げの話などは消し飛んでいた。
 意識と記憶が混濁している。
 気がついたとき、彼は街を彷徨っていた。
 カボチャ頭の中から見える限られた視界では、カボチャの形をした灯籠の光が怪しく揺れていた。
 
 似たような仮装をした人たちが、同じ大通りを歩いている。
 彼らの多くはまだハロウィンパーティを楽しんでいる。
 自身の身に起こっていることを、彼ら自身でさえまだ気付いていなかった。
 かぶったカボチャ頭に全く違和感がないのだ。
 むしろ、最初にあったはずの窮屈さや重量感など、そういった不快なはずの感覚が消えていた。
 まるでそれが初めから自身の頭であったかのような。
 
 そんな一体感が、異変の発覚を遅らせているようだった。

  • 当日昼(戦闘直前)
ハロウィンストリートの行進
 朝日が昇り、スズメが鳴き、カラスが生ゴミをつつき始める。
 昨日までの喧噪は綺麗さっぱり忘れ去り、街は日常を取り戻す。はずだった。
 
 だが、仮装パーティは、百鬼夜行は今もって続いていた。
 カボチャ頭たちは集まり、街の大通りをぶらぶらと歩いていた。。
 彼らの間には個人的なつながりはなく、共通点はただ一点。
 カボチャを頭にかぶっている、ということだけである。
 
 大通りを歩きながら灯籠を破壊し、イチョウの木を蹴りつける。
 銀杏の実が落ち、それを追いかけて紅葉した葉っぱがぱらぱらと舞い散っていた。
 目的は分からない。どこかに向かっているのか、群れることそのものが狙いか。
 彼らは周囲に攻撃を加えながら、一塊になって北上している。
 
 その影響で、彼ら以外に街に人の姿はなかった。
 他の仮装をした者も、日常に戻った姿をした者も。
 彼らの存在を恐れ自宅へと逃げ込み、もしくはすでにやられて病院送りになっていた。
 移動を続ける彼らの足が止まる。
 その目の前にいたのは(PC名)だった。
 
 カボチャ頭の中の頭が何を考えているのか。
 それを知る術はない。あるいはたった一つ、その頭をかち割って問いただす。
 
 考え得る方法は、それしかなかった。
(PT名)は『戦闘』を選択しました (行動ポイント-3 / 残り2ポイント)
カボチャ頭に遭遇した!

  • 当日昼(戦闘勝利後)
早朝ハロウィンパーティ
 祭りというものは刹那的な大騒ぎであり、期限が区切られているからこそ盛り上がる。
 終わった後でも祭りを引きずる者に、祭りを楽しむ資格はないのである。
 死屍累々と横たわる、割れたカボチャと頭を失った人々。
 
 とはいえ、本当の頭がなくなったわけではない。
 首なし死体が転がっているわけではなく、あくまで彼らが失ったのは"カボチャ頭"である。
 
 だが彼らの多くは本当の頭を失ってしまったかのように。
 倒れ込んだまま気を失い、中には大いびきなどかきながら眠りこけていた。
 その中の一人が、むくりと上半身を起こす。
 (PC名)も知れないし、誰も知らないが、彼は最初に異変に気付いたバイト君だった。
 
 濁った意識に、柔らかな風が吹いて靄をゆっくりと払い去っていく。
 全てが明瞭になる、と言うわけではない。
 靄と一緒に消えていく。カボチャだった頃の意識や記憶が流れ出していく。
 
 一つになるというあの一体感。頭と体、だけではない。
 全てのカボチャ頭が意志を共有する、個を失い全に身を任せる安心感と高揚感。
 心地いいあの感覚が、もうほとんど思い出すことさえできなくなってしまっていた。
 けして楽しみになどしていなかった祭り。
 それが終わってしまったことが、とにかく哀しかった。

イベントマップ『早朝ハロウィンパーティ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを21得た

ハロウィンパーティ第二幕
 一人、また一人とカボチャ頭から解放された人々が起き上がり、この場を去っていく。
 皆一様に表情は沈んでいた。
 
 だがその中にも、ちょっとした充足感のようなものも見える。
 疲れと眠気も入り交じり、頭はほとんど動いてなさそうだった。
 カボチャ頭の暴動鎮圧に少し遅れて、街も動き始めていた。
 いよいよハロウィンが終わり、日常が戻ってくる。
 
 いつのまにか大通りに、ぞろぞろと集まってきていた人々。
 彼らは皆、その手にブルーのゴミ袋を持っていた。
 その袋に、散らかったゴミを片付けていく。
 
 そのゴミには、道路に転がったカボチャの破片も含まれていた。
 人々を狂気に追いやる呪いの仮面である。
 だがそんなことは関係ないとばかりに、淡々と彼らはゴミを片付けていく。
 ほんの短い間に、見渡す限りのゴミは綺麗になくなっていた。
 そして、満タンになったゴミ袋を両手に抱え去っていく。
 
 祭りの前夜、その時よりも大通りは綺麗に生まれ変わっていた。
 
 ハロウィンの祭りがあり、その第二幕があり。
 それら全てが夢の中の出来事であったかのように、全てが日常へとリセットされていた。
「コーヒーはいかがですか」
 不意に声を掛けられる。
 そこには一台の屋台があり、エプロン姿の青年がカウンターの中に立っていた。
 
 コーヒーのいい香りが頭と胃を刺激する。
 それはとても、魅力的な誘いだった。
「今なら、カボチャのカップケーキをサービスで付けますよ」
「昨日の残りでよければ、ですけど。少し、売れ残っちゃいまして」
 コーヒーとカボチャのカップケーキ。
 
 ハロウィンの終わりとともに価値を大幅に失ったそれを口にしながら。
 日常へと戻っていく街を、(PC名)はしばらくの間眺めていた。
 
ミッション『ハロウィンパーティ第二幕』をクリア!
クリアボーナス
 (PC名)は魂塵を△△Ash得た
 (PC名)はSPを1得た
 (PC名)は『かぼちゃのカップケーキ』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『カボチャ頭』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
醜聞のおはぎ祭り
 
今回のイベントは終了しました
 
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
 
イベント挑戦ボーナス
(PC名)のコスチューム『かぼちゃ』系のステータス補正値が強化されました


世界最速ジーパンカップ

  • 発生(前日夜、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『ミッション:世界最速ジーパンカップ』を発見しました
世界最速ジーパンカップ
 極東の海に浮かぶ、複数の島からなるジーパン諸島。
 かつては黄金の国と呼ばれる金満国家が存在していたが。
 その業から、自ら滅びの道を一直線に進んで豪快に事故って消えた。
 大きな混乱が長い間続いたが、今では一人の巫女を元首とする神権国家が成立している。
 過去の失敗から学び、財産を棄てることこそ美徳、お布施こそ正義、お賽銭は万札で、と。
 そういった国家方針で、とりあえず今のところはうまく行っているようである。
 
 そういった大きな変化の中でも、変わらないものもいくつかあった。
 伝統や文化と呼ばれるそれらは、何とか失われずに今日まで伝えられている。
 とはいえ、100%そのままで、というわけにはいかなかったものも多い。
 
 化け物の仮面をかぶって女子供を一昼夜追いかけ回し。
 最終的には、米を固めて固めて鉄よりも硬くなった棒でボコボコにされるという儀式。
 もはやその由来も意味も何も分からないが、とにかく続けられている。
 
 それほどまでに、徹底的にこの国は一度死んだのだった。
 それもまた、大きく形を変遷した儀式、あるいは娯楽の一つである。
 
 かつてそれは、サラブレッドと呼ばれる種類の馬たちが走るレースだった。
 サラブレッドとは、より速く走るために何世代もかけて改造された馬のことである。
 
 一年に一度行われる、現役最速サラブレッドを決める戦い。
 それこそが、ジーパンカップである。
 しかしこれもやはり、変化の渦に飲み込まれてしまう。
 混乱の中で、世代を重ねることで洗練されてきたサラブレッドたちの系譜は途切れてしまったのだ。
 
 そうなれば、レースの意義そのものがなくなってしまう。
 最も速いサラブレッドを決める、そのサラブレッドがいないのだから。
 
 だがそれでも、レースは、ジーパンカップは続いた。
 サラブレッドがいなくなっても、別のものが走りその速さを競う、と言う形で。
 サラブレッドという規定が取り払われ、その門戸はあらゆる者に開かれた。
 とにかく速ければいい。
 スタートからゴールまで、一番速く駆け抜けた者が勝ちなのである。
 
 そして大事な要素が一つある。
 これは純粋な徒競走ではなく、障害物競走であるという点である。
 異種混合バトルロイヤル障害物競走。
 
 このレースにはさまざまな障害が用意されている。
 それらは毎年違う、趣向を凝らしたものであるらしい。
 唯一毎年変わらず存在し続けるのは、優勝者に与えられる"最速"の称号である。
 このレースに参加したければ、その方法は簡単だ。
 スタート地点に立つ。それだけである。
 そして優勝したければ、誰よりも速くゴールテープを切る。
 
 たった、それだけのことである。
『マップ:旧帝都競馬場』を発見しました

  • 当日朝(食事およびマップ移動処理後)
旧帝都競馬場
 一度は更地となったかつての帝都。
 都は遙か西方へと移され、現在では広大な農地が広がっている。
 
 栄光の影はわずかもなく、昔話にさえ語られることはない。
 それはまるで禁忌であるかのように、人々はそれらを語ろうとはしなかった。
 旧帝都の中心部からは離れた場所に、それはあった。
 
 スタンドなど観戦用の施設はすでに破壊されて跡形もなく。
 巨大な芝生と砂のトラックだけが、その広大な空き地に残されていた。
 
 何日も前から入念に準備され、すでにさまざまな障害物がトラック上に置かれている。
 半分ほどはどういうものか見れば分かったが、全く想像も付かないものもいくつか見られた。
 メインレースであるジーパンカップ。
 レースはそれ一つではない。
 
 ジーパンカップデーとして、さまざまなレースが行われ会場を盛り上げていた。
 年齢制限や体重制限などの条件付きのレース。
 そして砂コースを使ったビーチフラッグス、芝コースを使ったグラススキーなど。
 
 前座と言うには豪華なレースが、一日を掛けて朝から行われていた。

  • 当日昼(戦闘直前)
スターティングゲートの攻防
 ただただ広い空き地に芝生のトラックがあり、その内側にもう一つ砂のトラックがある。
 仮設のスタンドすらないため、観戦に来た人たちはトラックの周りにブルーシートやゴザを敷いていた。
 敷物の上にビールなどの飲み物や食べ物を広げ、それらをつまみながら野次や声援を飛ばしている。
 
 そんなこともあって、ノリは完全に運動会だった。
 さまざまな前座レースが終わり、いよいよジーパンカップの発走が近づいてきていた。
 
 流石のメインレースとあって出場者は多く、午前中に予選レースが行われた。
 それによってずいぶんと数は減ったものの、それでもまだまだ多い。
 スターティングゲートの周りには、(PC名)を含めて百人近い数が集まってきていた。
 
 数える単位が、人、でいいのかは大いに疑問な参加者も多かったが。
 この人数では、全員が同じスタートラインに着くことはできない。
 すでに決まっていたかのような謎の選考により1列目、2列目、3列目と大会役員により決められ。
 (PC名)はその後ろ、列をなさないその他群衆の中でのスタートとなった。
 
 スタートの号砲を待つ間も、すでにレースは始まっていた。
 スタート位置が決められたにもかかわらず、それでも有利な場所をと位置取り争いが始まる。
 
 一つでも前の列へ、一つでも内枠へ。
 あまり派手な動きはできない中、主に足下での熾烈なバトルが行われていた。
 ゲート横にある台に、スターターが赤旗を持って上がる。
 彼が旗を頭上に掲げると、その後ろに控えていた楽隊が演奏を始めた。
 勇ましい楽曲で、ラッパを高らかに吹き鳴らす。
 
 その曲が終わると同時、スターターが赤旗を振り下ろし。
 ゲットが一斉に開いて、異種混合バトルロイヤル障害物競走が始まった。
(PT名)は『戦闘』を選択しました (行動ポイント-3 / 残り2ポイント)
障害物に遭遇した!

  • 当日昼(戦闘勝利後)
旧帝都競馬場
 大歓声の中で、トップ選手がゴールする。
 (PC名)はスタート位置の悪さも響き、結局トップ争いに加わることはできなかった。
 
 健闘はしたものの、結局は上位入賞にとどまる結果となった。
 ちなみに、優勝者はマンモス使いのムトゥルバ・スルタンである。
 マンモスに乗って障害物とライバルを踏みつぶし、真っ直ぐゴールへと辿り着いた強者だった。
 
 これについては他の参加者から、反則ではないかとの抗議があったが。
 ルールでは、全ての障害物を乗り越えて一番速くゴールしたものが優勝、となっている。
 だが、この『障害物を乗り越える』という文言について細かな規定がなく。
 マンモスを使って確かに障害物を乗り越えてはいる、という判断が大会役員により下された。
 
 ルールの盲点を突く、ムトゥルバ選手の好判断だった。
 彼はこの国出身ではない、初の優勝者となったらしい。
 これもまた、この国に起こった変化の一つになるのかもしれない。
 
 破壊され、再生した。
 そして今もまだその再生の途上にある。変化の中にある。
 
 受け入れるべき変化、受け入れてはいけない変化。
 それらの取捨選択は難しいが、真の再生のためには避けては通れぬ道である。
イベントマップ『旧帝都競馬場』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
世界最速ジーパンカップ
 ムトゥルバ選手が好きだというアイドルグループの代表曲が流される中。
 表彰台に乗った彼とマンモスが、優勝賞品としてさまざまなものを受け取っていった。
 
 お米やら巨大な車のキーやらカップラーメン十年分やら。
 一つ一つ受け取りながら、集まったカメラマンたちのシャッターに笑顔を向ける
 
 なお、野菜や肉などは、そのままマンモスが強奪して直接胃袋に放り込んでいた。
 そして、その名の通り、ジーパンカップという巨大な杯が会長から手渡される。
 それこそが、優勝者に与えられる名誉の象徴である。
 それを受け取る瞬間、観客たちから聞こえてくる声はブーイングと歓声が半々だった。
 
 最後の賞品はジーパン。デニム生地のズボンである。
 これを優勝者であるムトゥルバ選手が壇上ではき、その姿に満場一致の大拍手が贈られて。
 
 表彰式、そしてジーパンカップは幕を閉じた。
 観客たちがブルーシートやゴザを片付けて、それぞれに家路につく。
 その表情は一日のイベントを思い切り楽しんだ、非常に満足げなものだった。
 
 ムトゥルバ選手もジーパン姿のままマンモスに乗り、のそのそと帰って行く。
 ブーイングもあったが、それでも優勝者であり、本日の英雄である。
 その姿に向かって手を振るものたちに、彼は笑顔で手を振りかえしていた。
 ジーパンカップ。
 おそらく来年にはまた色々とルールや形が変わってしまっているのだろうが。
 それでも、レースは行われるはずである。
 
 伝統とは続けることに意味がある。続けることで文化となる。
 サラブレッドの血脈は途絶えたが、それは歴史になるのである。

ミッション『世界最速ジーパンカップ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『一本にんじん』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
世界最速ジーパンカップ
 
今回のイベントは終了しました
 
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
 
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『サラブレッド』が修得可能になった

クリスマスフォレストの抵抗

  • 発生(前日夜、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『ミッション:クリスマスフォレストの抵抗』を発見しました
クリスマスフォレストの抵抗
 正式な名前は別にあるが、その森は一般的に『クリスマスフォレスト』と呼ばれている。
 クリスマスツリーとして用いられるモミの木。
 森を構成する樹木のほとんどがこれであることが要因ではあるが、それだけではない。
 聖なる夜に食されるシチメンチョウや、サンタクロースの足となるトナカイなどが数多く生息しており。
 
 そのような理由から、クリスマスフォレストという名が付けられていた。
 クリスマスが近づくと、森に人の気配が徐々に増え始める。
 木こりと、猟師と、サンタクロース。
 それぞれに必要なものを手に入れるため、森へと足を踏み入れる。
 狩るものと狩られるもの。両者の関係性ははっきりとしていた。
 
 だがそれが、いつまでもそうあり続けると思い込むのは大いなる勘違いである。
 シチメンチョウたちが作る労働組合『七頭会』。
 彼らは種としての絶滅を免れるため、一定数の仲間を差し出すことを受け入れてきた。
 天敵であるオオカミや野犬の退治を猟師たちが行うことなどが、そのための条件である。
 
 しかし、彼らはこれにもう一つの条件を新たに提示してきた。
 実のところ、それは昔から彼ら『七頭会』で議論され続けていた問題ではある。
 
 その問題とはつまり、感謝祭&クリスマス問題である。
 感謝祭、そしてクリスマスは二ヶ月連続で行われる。
 つまり一ヶ月という短い期間に二度、シチメンチョウは皿の上に飾られるということである。
 
 このヘビーローテーションはあまりにあまりだ、と言うのが彼らの主張である。
 そして、どちらかを半年ずらす、もしくはどちらかは別のものを食べるようにする。
 というのが、彼らが新たに付け加えるように言ってきた新たな条件だった。
 
 これに、トナカイたちの組合である『角々鹿々亭』、モミの木たちの『きのせい連絡会』も便乗。
 彼らは結託し、ストライキという名の闘争を開始したのだった。
 クリスマスフォレストに引きこもった彼らは、森に入り込んでいた猟師たち人間を排除した。
 森には当然他の動植物も大勢いたが、その全てを巻き込んで守りを固めてしまう。
 
 『きのせい連絡会』の木々によるバリケードで森を覆い。
 『角々鹿々亭』のトナカイたちは角先を削って鋭利な武器を作る。
 『七頭会』のシチメンチョウたちは体に巻いていたハーブを、鉄の味しかしない鎧に替えた。
 
 森は要塞と化し、動物たちは兵士となった。
 猟友会としては、話し合いの場を設けたかったのだが。
 『七頭会』だけでなく他の組合が出てきたせいで、話が最初からこじれてしまっていた。
 
 クリスマスフォレストにて防衛戦を始めた彼らに話を聞く気はない。
 ストライキであるはずが、なぜか彼らは勝手に戦争をしているつもりのようだった。
 
 話を付けるために必要なことは、彼らの防衛線を突破して森の中心へと進むこと。
 そこにいるはずの、『恩赦七頭』と会うことである。
 『七頭会』を束ねる七匹のシチメンチョウ、『恩赦七頭』。
 交渉はおそらく、彼ら以外には不可能と思われる。
 
 しかし、彼らの姿は前線にはなく、こちらからのアプローチにも返答はない。
 そもそも伝わっているかどうかさえ怪しいだろう。
 
 そこで、猟友会が放ったスパイのキジが命がけで掴んできた情報によれば。
 『恩赦七頭』は森の奥に囲われ、身動きがとれない状況に追い込まれているという。
 話を付ける必要がある。
 そのためには『恩赦七頭』と直接会談しなければならない。
 
 要するにしなければならないことは、クリマスフォレストへの侵攻である。
『マップ:クリスマスフォレスト』を発見しました

  • 当日朝(食事およびマップ移動処理後)
クリスマスフォレスト
 事情を知らなければ、それはとてもメデタイ光景だった。
 
 大きく育ったモミの木によって作られた巨大な森。
 その外周を太いロープのようなツタでグルグル巻きに囲い、内外の行き来を禁じている。
 
 ただそのツタというのが、そういう種類の植物という話なのだが。
 等間隔に蕾のようなものが並び、それが赤青緑に黄白とやたらカラフルに発光し明滅を繰り返していた。
 モミの木と言うよりも、天然のクリスマスツリーと言われた方がしっくり来る。
 綿毛のような花の種子が風に運ばれ枝葉にとりつき、それらが無数に集まっている姿は雪のようである。
 そして煌びやかな発光器を持つ蔦はバリケードとしてだけではなく。
 ふわりと乗りかかるようにツリーにまとわりつき、それぞれ好きな色にキラキラと光っていた。
 
 他にもいくつかの動植物がモミの木を彩っており。
 やはりそれは、クリスマスツリーと言う以外にはなかった。
 煌びやかであっても、蔦の強度は蔦を超えるものではない。
 何重にも巻かれているため抵抗は強かったが、(PC名)はそれを断ち切った。
 
 ぴんと張ったロープが切られれば、弾けるように両側へと一気に引かれていく。
 それらが幾本も一斉にとなると、互いにぶつかり合うなどして大暴れだった。
 勢いよく水を流したホースのようにのたうち回りながら、その切り口から放電のような現象が起こる。
 
 そして、バリケードとして森を囲っていた蔦の発光器が、一斉にその全ての光を消していた。
 バリケードが破られたことを察知することが目的だったのかどうか。
 それは疑問だが、あれだけ派手だった照明が消えたのだから、知られたことに違いはないだろう。
 
 どういう構造なのか、しばらくするとまた蔦が発光を始めていた。
 綺麗なイルミネーションが緊張感を奪い去っていく。
 どこか歓迎されているような気もしていた。
 ともあれ、道が開けたことは事実である。
 クリスマスフォレストと呼ばれる森、その住人たちのストライキパーティ。
 
 バリケードが破られたことに気付いた猟師や木こりたちがガヤガヤと集まってくる。
 彼らより少しだけ先んじて、(PC名)は森への第一歩を踏み入れた。

  • 当日昼(戦闘直前)
クリスマスフォレスト侵攻開始
 にわかに森がざわつき始めていた。
 (PC名)によってバリケードが破られ、すでに多くの侵入者が森に入り込んでいる。
 
 どうするべきか決めあぐね、森の前でなんとなく話し合いだけしていた彼らだったが。
 その入り口が開かれ、ついに決断したらしい。
 クリスマスはもう目前に迫っていた。
 クリスマスフォレスト陣営もまた、迎え撃つ準備は万端だった。
 こうなることを望んでいた、待っていたような印象さえ受ける。
 最初の要求以降、一切の交渉を受け付けなかったことから、それはおそらく正しいだろう。
 
 木が根本から抜かれ、開けた場所に出る。
 後ろからきた猟師たちが猟銃を手に、(PC名)を追い抜いて次々とその場所へと飛び込んでいく。
 
 その向こうに、鉄の壁があった。
 軍馬のように武装したトナカイが横一列に、隙間なく並んでいる。
 それはまさに鉄の壁と呼ぶにふさわしいものだった。
 
 ただし、ただの壁ではない。
 そこからは凶悪な棘が飛び出している。
 鉄板で補強し、穂先を鋭利に尖らせた彼ら自身の角が翼のように広がっていた。
 
 その姿を見つけた猟師たちの足が止まる。
 思わず銃を撃つ者もいたが、むなしく鋼鉄の鎧にはじき返されるだけだった。
 猟師たちが無防備に飛び出していく程度には遠くにあったトナカイの壁が、ついに動き出す。
 地響きとともに砂埃を巻き上げて、一斉行軍が始まっていた。
 
 何のひねりもない、ただの突進である。
 だがそれだけに、対処の方法も限られる。避けるか受けるか、それしかない。
 
 逃げ出す猟師たち。
 横へと、後ろへと。唯一の逃げ場はおそらく上だけだったが、彼らに翼はなかった。
 鉄の壁に蹂躙されていく猟師たち。
 ある程度進んだところでトナカイたちは足を止め、そのまま後ろへと下がっていく。
 トナカイたちの背にはシチメンチョウがそれぞれ乗っており、彼らが指示を出していた。
 
 後退する彼らと入れ違いに、別の部隊が壁の間から出てくる。
 トナカイたちの突撃と後退。おそらくそれは、何度でも繰り返される悪夢である。
 その間を埋める、時間を作るそのための部隊のようだった。
 あの壁が後退し終え、トナカイたちの息が整えばまた突撃してくるだろう。
 
 避けるか受けるか、手はそれしかない。
 だが、迂回して進むにしても目的地はこの壁の向こうなのである。
 
 『恩赦七頭』がいるはずの敵本陣はもう目前のはずだった。
(PT名)は『戦闘』を選択しました (行動ポイント-3 / 残り2ポイント)
クリスマス連合に遭遇した!

  • 当日昼(戦闘勝利後)
クリスマスフォレスト
 武装したトナカイが横に並んで壁を作り、突撃と後退を繰り返す。
 そこに綻びを、風穴を開ける必要があった。
 
 広場を見下ろすモミの木を上まで登った猟師が、高角度からトナカイを狙撃する。
 だが、狙いは全身を鉄鎧で覆ったトナカイではなかった。
 
 その背に乗り指示を出す、シチメンチョウたちだった。
 トナカイの背から、次々とシチメンチョウが落ちていく。
 混乱は簡単に起きた。
 陣形は崩れ、突撃も後退もせずにその場にとどまり続ける。
 
 集団における混乱は伝播し、感染していくものである。
 シチメンチョウの騎手を乗せたままのトナカイでさえ、すでに混乱に冒されていた。
 戦場を駆け抜けていく。
 トナカイはただ、その場に捨てていけばいいだけだった。
 視界に入った者を次々と追いかけては、息を切らして動けなくなっていく。
 トナカイの壁はもはや、ただの鈍重な鉄の塊にすぎなかった。
 
 状況としては、駆けっこに近い。
 誰が最初に本陣に到達するか、早い者勝ちの徒競走。
 各所で戦闘はまだ続いていたが、もうこの戦いそのものの決着は付いてしまっていた。
 陣幕に囲まれた本陣。
 駆けっこに勝って、最初にそこに到達したのが誰かは分からない。
 その誰かは陣幕を猟銃で撃ち、穴だらけになった場所を掴んで無理矢理引き裂いた。
 
 中にいた動物たちに銃口を向ける。
 遅れて到着した他の猟師たちも、彼に習って猟銃を構えていた。
 中にいたのは七匹の年老いたシチメンチョウと、若い二頭のトナカイ。
 そして人形のような整いすぎの顔をした小人が一人、それぞれに少し距離を取りながら立っていた。
 
 陣幕を破って入ってきた猟師に対し、若いトナカイは角を向けて威嚇する。
 小人は飄々とした表情のまま、すっと下がってトナカイやシチメンチョウの後ろに隠れた。
 
 角先と銃口が交差し、今にも暴発しそうな雰囲気である。
 その間に黙って立ったのは、年老いたシチメンチョウのうちの2匹だった。
 背を向けて立つ2匹のシチメンチョウ。
 一方は猟師、一方はトナカイをそれぞれ正面から睨み付ける。
 
 トナカイの方はそれで少し引いていたが、猟師の銃口は動かなかった。
 張り詰めた緊張、その壊し方を間違えればどうなるか分からない。
 そのためのピースはまだ一つ足りていなかった。
 
 猟師の銃口を引かせるもの。
 それは彼らのリーダー、猟友会の会長サイモン・サンダースの登場だった。
イベントマップ『クリスマスフォレスト』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

クリスマスフォレストの抵抗
「ゴブゴブ」
「ケンケン」
「ふむふむ」
 シチメンチョウが話し、それを猟友会のキジが通訳し、会長であるサイモンの耳へと届く。
 逆もまた同じである。
 
 キジとの会話が可能ならシチメンチョウとも行けるだろうと思ったが、口には出さなかった。
 どのような形にせよ、これ以上話がこじれるのは勘弁である。
 『恩赦七頭』と『猟友会会長』との労使交渉。
 その横で面白くない顔を続けていたトナカイも、その邪魔はできないようである。
 状況が出来上がってしまえば、直接どうこうする権限も度胸も彼らにはなかった。
 
「個体数減少の件、了解した」
 サイモンの言葉が、キジを通してシチメンチョウへと伝えられる。
 それに満足したように、『恩赦七頭』は互いに顔を見合わせながら頷いていた。
「最初の話だが、感謝祭もクリスマスも、どちらも大切な儀式だ」
「それを半年ずらすなど、サンタがサーフィンするほどあり得ん話だ」
 その話に、シチメンチョウが言葉を返す。キジの鳴き声を会長は聞いて、
「ああ、そうだ。だから、シチメンチョウを食うのは感謝祭のみしようと思う」
 2匹のトナカイが、分かりやすく落胆して首を落とす。
 条件を飲んだ、そうなればもはや彼らを理由に抵抗を続けることはできない。
 彼らの組合である『角々鹿々亭』だけでは戦えない、ということは彼ら自身がよく分かっていた。
 
 また、紅白の服を着ためでたい爺さんを乗せて夜な夜な走らなければならない。
 最後の希望を込めて『きのせい連絡会』のヨギを見るが、その小人は肩をすくめてみせるだけだった。
 もうこのお祭りは終わり。彼には元々、退屈しのぎ以外に抵抗する理由などなかった。
 クリスマスフォレストから人々が帰っていく。
 
 木こりはクリスマスツリーを、サンタはトナカイを引き摺り。
 そして猟師たちは、シチメンチョウではない別の鳥を背負っていた。
 
 足を縛って逆さに吊って、十匹ほどをまとめて背負う。
 その鳥は、どうやらニワトリのようだった。
 感謝祭にはシチメンチョウを、クリスマスにはニワトリを。
 労使交渉でまとまった話によって、森に生息していたニワトリが連れられていく。
 
 彼らは丸焼きにされたり唐揚げにされたりなどして、クリスマスの食卓に並ぶことになる。
 それは今年に限った話ではなく、これから先もずっとである。
 
 ちなみにだが、この数日後に森にもう一つ労働組合が誕生することになった。
 『フライドケンタ同盟』、それはニワトリたちの組合である。
ミッション『クリスマスフォレストの抵抗』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリスマスボックス』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『恩赦一頭』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
クリスマスフォレストの抵抗
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)のコスチューム『トナカイ』系のステータス補正値が強化されました

オニゴロシで鬼退治

  • 発生(前日夜、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『ミッション:オニゴロシで鬼退治』を発見しました
オニゴロシで鬼退治
 『オニゴロシ』という酒がある。
 鬼を虜にするほど美味く、酔いつぶれたところを討たれたという伝説から銘打たれた。
 
 酒好きの間では有名で、だが飲んだものはほとんどいないという幻の名酒である。
 とは言え本当に幻などではなく、きちんと存在している。
 この『オニゴロシ』、『大江山』という酒蔵が製造している。
 けして大きくはないこの酒蔵で、ごく少数のみが作られ出荷される。
 
 製造数の少なさ、これが幻の幻たる所以である。
 だが、それだけではない。実はもう一つ、大きな理由があった。
 
 ある一人の鬼が、この『オニゴロシ』を独占しているというのである。
 酒好きの代名詞である酒呑童子という鬼。
 彼は『オニゴロシ』のヘビーユーザーである。
 
 あらゆる手を尽くし、出回った『オニゴロシ』を回収しては飲み干す。
 その方法は合法的なものばかりではなく、力に頼ることも少なくない。
 そこはやはり、鬼なのである。
 大きな問題として、彼が必要とする酒量は生産量を上回っている。
 つまり、出回っている入手可能な『オニゴロシ』を飲み終えてもまだ足りないのである。
 
 そうなれば、もう次の出荷を待つしかない。
 しかし、そこはやはり鬼である。
 
 彼は待てないのだ。
 
 鬼だから。
 酒呑童子は部下を連れ、自らの住み処である伊吹山を出立した。
 目指すはもちろん、酒蔵『大江山』である。
 
 待てないなら、こちらから行く。
 出来上がったばかりの『オニゴロシ』を取りに行く。
 急かせばもっと速く、多く作れるかも知れない。
 
 酒呑童子は燃えていた。
 鬼の到着の時は迫る。
 『オニゴロシ』を一本もらって大人しく帰るなんてことはありえない。
 貴重な『オニゴロシ』、貴重な『大江山』が今日をもって消えてしまうこともあるだろう。
 
 鬼は後先考えない。
 『オニゴロシ』を守るため、鬼退治である。
『マップ:酒蔵『大江山』』を発見しました

  • 当日朝(食事およびマップ移動処理後)
酒蔵『大江山』
 酒蔵『大江山』。
 清らかな水が流れ落ちる山の麓にあり、人里からは少し離れた場所になる。
 
 ここで働く人たちはそこから通っているが、時期によって泊まりが多くなるという。
 今はその中で忙しい時期、らしく。
 昼夜問わず、蔵の中で大勢の人間が働いていた。
 鬼の到来が迫るが、危機感のようなものはない。
 ここの人間は完全に無視を決め込み、酒造りを続けているからである。
 
 たった一人を除いて。
 少し離れた里から皆が通っていると言ったが、正確に言うと皆ではない。
 この酒蔵に住み、生活している人がいる。
 それはこの『大江山』の蔵元である、坂田一家だった。
 
 蔵元一家の長女、亜酒里。
 彼女は(PC名)の隣に付いて、酒呑童子の到着を待ち構えていた。

  • 当日昼(戦闘直前)
酒鬼 酒呑童子
 寒くないのか虎柄のビキニを着て、肩に巨大な斧を担いだ金髪娘。
 あの細腕のどこにそんな力があるのか疑問であるが。
 その斧は張りぼてなどではなく、重厚感が半端なかった。
 
「いい度胸よ。あたしの酒に手を出そう、ってんだからね」
 そばかすの浮き出た幼い顔立ちで、不敵に笑ってみせる。
 
 ここの人間に危機感がないのは彼女が原因なのだろうかと思わせる。
 そんな、妙な力強さがあった。
 ここへと向かってくる鬼。酒呑童子。
 大勢の部下を引き連れ、百鬼夜行がごとくぞろぞろと歩いてきている。
 その姿がいよいよ、酒蔵からも見えるようになっていた。
 
「ふんっ。いよいよおいでなすったわね」
 いちいち不敵な空気をまき散らしながら、亜酒里が鬼の一団を睨み付ける。
 その頭目、酒呑童子の首を。
 大男。
 とにかく大きい。
 腕も足も太く、何も身につけていない上半身には分厚い胸板の上にもっさりと胸毛が乗っかっている。
 
 鬼という割りに、その姿形は大きさ以外は亜酒里ら人と変わりなかった。
 違いがあるとすれば、お面によって隠された素顔だろうか。
 
 男の顔を隠す、二本の角を生やした赤ら顔の鬼面。
 お面は顔の上半分、口のすぐ上までをすっぽり隠していた。
 右手にぶら下げたロープの先に括り付けた徳利。
 その中に当然のように入っている酒を、歩きながら豪快にあおる。
 鬼面が口元まで覆っていないのは、そうやって絶えず酒を飲むためだった。
 
「ぶふわああああああああ」
 ごくごくと喉を鳴らし、アルコールをたっぷり含んだ息を吐き出す。
 その酒臭い息は、遠くからは色が見えそうにさえ思えた。
「あれが酒呑童子ね。あいつはあたしがやるわ」
 亜酒里は肩に担いだ斧を軽々と振り、差し棒のようにその先を鬼の頭目へと向ける。
 腕を真っ直ぐに伸ばし、柄の一番端を片手で握り。
 それでも、斧がぶれることは全くなかった。
 
「露払いはよろしく。あの数だと、そっちのが大変だと思うけどね」
 駆け出す。
「あたしの酒が飲めると思うなよ!」
 そして、吠える。
 彼女の狙いは酒呑童子、ただ一つだけだった。
(PT名)は『戦闘』を選択しました (行動ポイント-3 / 残り2ポイント)
酒呑童子一味に遭遇した!

  • 当日昼(戦闘勝利後)
酒蔵『大江山』
「はーっはっはっはっはっはっ!」
 高笑いを響かせる蔵元の娘、坂田亜酒里。
 
 酔っ払ってふらふらの酒呑童子を倒し、倒れ込んだ彼の顔のすぐ横に斧を突き立てる。
 その斧に片足を乗っけて、酒呑童子を見下ろしながらの先ほどの高笑いである。
 
「かーっかっかっかっかっかっ!」
 その姿はまさに鬼だった。
 頭目の敗北に、百鬼夜行は総崩れとなっていた。
 
 鬼の一団の中には、元々酒呑童子の仲間だった者も多いが。
 彼によって倒され、手下となった者も含まれている。
 それは恐怖による支配であり、忠義や恩義の類ではない。
 
 恐怖の対象でなくなれば、彼に付き従う理由は全くなかった。
「豆喰え豆! 酒はやらん! 豆喰え!」
 だらしなく開いた酒呑童子の口に、煎った大豆をぽいぽいと放り込む。
 遊技場にそんなゲームがありそうな気もするが、現実にやると少し痛々しい光景だった。
 
「酒は飲んでも飲まれるな、ってことわざ知らないわけ?」
「もぐもぐばりばり」
 説教とともに、大豆を放り込む。
「酒は百薬の長とも言うけど、過ぎたるは及ばざるがごとし、なんだからね」
「ばりばりむしゃむしゃ」
 もはややってることは餌を使った調教にしか見えないが。
 
「もしゃもしゃむばりむばり」
 塩気の効いた炒り豆は美味いらしく、酒呑童子はそれなりに満足そうだった。

イベントマップ『酒蔵『大江山』』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

オニゴロシで鬼退治
「終わったのか……」
 蔵の扉を押し開けて、中から老人が姿を見せた。
 威厳に満ちた顔で、いるだけで空気をぴんと張り詰めさせる。
 
「あ、おじいちゃん。そっちも一段落? こっちも今終わったとこ」
 亜酒里が老人に向かって、張り詰めた空気を意に介さずに軽く答える。
「もしゃもしゃ」
 彼女に付き従うように、餌付けの完了した酒呑童子は彼女の後ろで炒り豆を食っていた。
 酒蔵『大江山』の蔵元、坂田家当主である坂田豪酒。
 それが彼の名であり、亜酒里の祖父という肩書きでもある。
 
「それが鬼か」
 孫の斜め後ろに立つ酒呑童子に視線を送る。
 鬼の面をした男は突っ立ったまま、時折口に放り込まれる豆をむしゃむしゃ食べていた。
「シュテンっていうの。今日からここで働かせるわ」
「酒飲みはいい杜氏になる、っておじいちゃん言ってたよね」
 
「飲まれるやつは役に立たんがな。使えるのか?」
 孫の言葉を否定せず、その目を真っ直ぐ見つめて聞く。
 亜酒里もまた、それに習って目をそらすことなく見つめ返し、
「今のが抜ければ問題ないよ。大丈夫。あたしの目に狂いはないよ」
 目を見つめ合って、互いに確かめる。
 その目に宿る光、その輝きを。全く鈍っていない、それを確かめ合っていた。
「分かった。酒が抜けたら連れてこい。仕事はいくらでもある」
 そう言い残し、老人はこちらに背中を向けて再び蔵の扉を開く。
「ありがと! おじいちゃん大好きっ!」
 孫の真っ直ぐな言葉を背中に受けながら、蔵元の当主はまた仕事へと戻っていった。
 祖父を見送って、亜酒里は振り向き酒呑童子と目を合わせ。
「シュテンはお酒好きだし、お酒造りに興味あるでしょ?」
 理解のために少しの間を置いて、二度ほどこくこくと頷く。
 
「じゃあ、美味い酒作って、美味い酒飲むよ」
「おじいちゃんの『オニゴロシ』を超えるようなね」
 弟子のような子分のような。
 そんな存在のシュテンの、ちょうど彼女の目線にある腹筋をばしばし殴りながら。
 
 亜酒里は酒造りに燃えていた。

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『オニゴロシ』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
オニゴロシで鬼退治
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)のコスチューム『小鬼』系のステータス補正値が強化されました

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最終更新:2015年03月07日 06:34