第6話(本編) 「九尾よりご挨拶。お土産には恐怖!?」

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 夏休み最終日、普段は誰も入らないはずのかぐら寮の地下から二人の声が聞こえてきた。

「いかがですか、金剛さん」

「うーん。こいつはひどいですなぁ。御影先生、見てください」

 金剛がライトで照らしたあたりを、紗月は凝視した。

「これは……」

かぐら寮の地下には、要石がある。そこだけで見ると無造作に置かれているように見えるが、かぐら学園全体を守るために作られた結界のネットワークをつなぐ重要な石のため、意味を持った配置となっている。紗月が驚いたのは、その大事な要石に、正体不明の赤い塊が付着していたからだった。

「こいつが微妙に邪魔をして、結界を狂わせている。それでも、寮の結界はすぐに張りなおせるでしょう。石のクリーニングは私と鈴置先生でやれば、それ自体はたいした仕事じゃない。まぁ、中までやられていなければの話ですが……」

 金剛は要石を触ったり、叩いたりしながら慎重に確認する。

「その時は、蘭に頼んで早急に浄化してもらいます。でも問題は、学園全体のシステムのほうですね?」

「はい。こちらは全体のバランスを取るため、細かい調節が必要でしょう。クリーニングによって出来た要石のひずみを考えると、最悪、一から練り直しになるかもしれませんな」

「仕方ありません」

「石を抜いている間の結界も臨時にこしらえなければならない。御影先生に負担がかかってしまいますな」

「お気になさらず。もともと、そろそろ構築しなおす時期だとは思っていました。最近、このシステムでは対応できない新たな怪異が頻発していました。さらなやささな、生徒会の子たちにもその度に迷惑をかけているし」

 徐々に沈んでいく紗月の声。金剛は立ち上がって膝をはたいた。

「殺生石を狙っている者が、少し本気を出してきたと言うところですかな。早急に手を打つことにしましょう」

「殺生石……取り返しのつかない事にならなければ良いのですが」

?

 しかし、紗月の心配をよそに事態は進行していた。

世間的には2学期の始業式の日、いつもどおり学校をサボって町をぶらぶら歩いていた美雀姉妹の前に黒フードの男が現れた。

「……んだよ、おっさん」

「なんか用かい? あたしらは見ての通り、ふふ、忙しいんでね」

 二人はあからさまに不快な顔をして立ち止まった。朱理の方は苛立ちを隠すことなく、浅黄はバカにした態度を取った。

「美雀姉妹よ。かぐら学園へ来い」

 黒いフードの男はまったく動じなかった。

「その命令口調が気に入らないんだよ!」

「何度も言ってるように、アタシらはやりたいようにやる」

 凄みを効かせる美雀姉妹。しかし、なおも黒いフードの男は微動だにしない。

「こんなところで退屈しのぎに忙しいと言っているくらいなら、かぐら学園に来た方がよほど面白いものを見られるぞ」

 そう言うと、男は姿を消し、布だけがばさりと地面に落ちた。

「け、また消えやがった。おっさん、この仕掛け好きだな」

「ま、しょうがねぇ。つきあってやろうぜ。どうせ、さらなたちとやり合おうってんなら、うちらも出なきゃだしな」

 美雀姉妹はきびすを返し、かぐら学園に向かって歩き始めた。その後ろで、ぼろ布が動いた。ヂヂュッと声をあげて一匹のネズミが出て行ったのを美雀姉妹は見ていなかった。

 同じ頃、かぐら学園の裏にも黒いフードの男が立っていた。

「ふふ、使いは役目を果たしたようだな。美雀姉妹め、もっと使えるやつらかと思ったが。まぁよい。何度も邪魔をしてくれた耳巫女姉妹へのご挨拶じゃ。やつらにも立ち会ってもらわなければな。わしの怒りがどの程度のものか、教えてやる必要がある。きはははは!」

 黒いフードの男が高笑いをすると、身にまとった布が足元に落ちた。布が落ちたところに脚はなかった。黒い煙のようなものが抜け出すように空中に浮かび上がる。

「あの姿は窮屈に過ぎる。だが、結界のなくなった今、真の姿で堂々とかぐら学園の敷居をまたげるというもの」

それはみるみるうちに巨大な獣の影になった。そしてその尻尾は、9本!

「耳巫女姉妹よ、貴様らには二度と立ち上がれんほどの恐怖と絶望を味わってもらおう。わしの手土産としてな!」

?

 一方、学園では始業式、ホームルームと本日のスケジュールを全て終了した学生たちが、帰宅をしたり、お昼を食べたりと自由な時間を満喫していた。さらな、ささな、由葉の三人も外にいた。三人はお弁当の包みを手に、三人だけで食べられる場所を探していた。

「結構、歩くね。やっぱり広いんだ、この学校」

「そうね。良さそうな場所はみんな先に取られちゃってるし、なかなか見つからないわね」

「ま、広い分だけ、空いてる場所はいっぱいあると思うから。のんびり探そう」

 由葉ののんびりとした声に、さらなとささなはそれぞれ答えた。

幸いにも天気は晴れだった。ぬけるような秋晴れ、と言いたいところだが、今年も厳しい残暑がなかなか終わらず、2学期の始業式の今日でも、お昼どきに歩いての移動は少しつらいほど暑かった。三人は日差しが避けられて、少しでも空いている場所があればと、林の中へ入った。

「さすがにここは無いか」

「ちょっとスカートが汚れちゃうかもね」

「ちっちゃい虫とか出てきそうだよ~」

「それは、森林じゃなくても、外ならどこでも一緒だと思うけど……あれ?」

 さらなは急に視界が開けたので驚いた。ぽっかりとそこだけ木の生えていない草原に出たのだ。

「ふーん、こんな場所があるんだねぇ」

 2番目に外へ出た由葉が相変わらずのんびりとした声を出す。

「わ、広い。さらな、ここで御弁当食べようか?」

「うん。でも、なんか、アレが気になるんだけど……」

 ささなに促されたさらなが指差した方向に社が建っていた。

「まさか、私たち、入っちゃいけないところに入っちゃったわけじゃないよね?」

「大丈夫だよ、さらな。この学校は入っちゃいくない場所は本当に厳重に封印されてるってパパ言ってたもん。立入禁止の場所に何にも仕掛けがしてない事はないよ」

「そうだよ、さらな。心配しすぎよ」

 2人にそう言われたものの、さらなはどうしても気になって仕方が無かった。

「うーん。ねぇ、2人とも」

「なに? さらな」

「やっぱり、ここはやめよう。ここは何かが祭ってある神聖な場所なんだと思うの。そんな場所でお昼を食るの、なにか気が引けない?」

 さらなの言葉にささなと由葉は顔を見合わせる。

「うん。そりゃ、ねぇ」

「私たちも見習いとは言え、巫女さんだものね。行こうか、さらな」

「うん」

 3人は社に一礼をすると、そのまま脇を抜けて反対側へ歩いていった。

林を抜けると、高等部の裏手に出た。高等部は第2グラウンドが少し低くなっていて、広い斜面があることを思い出した3人は、そこでお昼を食べる事にした。3人は斜面に敷物を敷き、第2グラウンドを見渡す形で並んで座った。

「それ、由葉のお弁当? 随分かわいい絵柄ね」

 さらなは由葉の弁当箱がキャラクターグッズなのに気がついた。

「えへ、今日はね、せっかくみんなで御弁当食べようってことだったから、ちゃんと選んできたんだよ。中も自分で作ったし」

「えー、偉いね、由葉。由葉んちならみんな用意してくれるだろうから、こんなおっきなの持ってきちゃうかと思ったよ」

 ささなの言葉にさらなも頷いた。2人は、天然お嬢様の由葉のことだから、驚くほど立派なお重でも持ってきてしまうのではないかと思っていた。

「そうなんだよー。黙ってるとメイド長の吉崎さんに全部用意されちゃうから、昨日も、これとこれとこれを作るって宣言して、全部自分で用意したのを見せてから寝たんだよ。吉崎さん、最後まで用意したそうだったよ」

 由葉は少し困った顔をしていた。由葉の言い回しよりも少し大変な事になっていたらしい。

「うん。これがね、みんなも来るって言うんなら用意させたんだけど、せっかくさらな、ささなと3人だけなんだから、普通の女子中学生みたいなこともしてみたかったんだ」

 本当に楽しそうな由葉の表情に、さらなとささなは、自分達が知る好もない親友の苦労を垣間見た気がした。

「で、玄麻ちゃんとトリーは?」

「うん。玄麻は、この間話した妖貝との戦いでちょっと無理しすぎたみたいで、少し具合が悪いんだって。お昼でまっすぐ寮に帰ったはずだよ」

「トリーは、どうしても外せない買い物があるんだって、学校終わったら飛んで帰ったわよ」

「そう。残念だねー」

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