こんにちは。設楽かが美です。再びお会いしましたね。私はただ今、御影先生に用事があって職員室へ向かっているところです。今回は別に皆さまへのレポートをしようというわけじゃございません。普通に用事があるだけです。
あら? だれかが向こうで手を振っている気がするけど。
「あ、設楽さん。こんにちは……どうしたんですか? 不思議そうな顔して」
ささなです。でも、今日はいつもと違って、隣にさらながいない。
「え、いえ。ささなが一人でいるなんて珍しいなって思ったの」
「いやですねぇ、私だって一人でいる事くらいありますよ? どこ行くんです?」
「私? 私は、これからちょっと届けるものがあって御影先生のところへ」
「あ、私もちょっと紗月お姉さまに用事があるんですけど。一緒に行きません?」
紗月、お姉さま……か。
「……たしかに、うらやましい」
「はい?」
「いえ、こっちの話よ。さ、行きましょう」
私が職員室の方向へ歩き出そうとすると、ささなが慌てて袖を引っ張りました。
「どうしたのよ、ささな?」
「設楽さん、そっちじゃないですって。今、お姉さまは保健室にいるみたいですよ」
「ほ、保健室ですか……」
「どうしました?」
どうしたもこうしたも。先日、保健室のご紹介はしませんでしたね。実は意識的に避けたのです。あそこは生徒会室に並ぶ魔窟です。なぜなら、本当にどうしようもない不良保健教師、凰蘭に占拠されているのですから。なぜあんなぐうたらで卑猥な人間が、この学校で教師をしているのか? そのうえ、なぜうちの学校のOGで、我がかぐら女子寮のOGで、しかも……あの御影先生と大親友なのか? 理解が出来ません!
「私、凰先生って苦手で……」
「そうなんですか? まぁ、わからなくもないですけど。でも大丈夫ですよ。今日はお姉さまと、それに鳳先生もいますから、いざとなったら力ずくでも止めてくれます」
鈴置鳳先生。私は彼女もどちらかというと苦手です。悪い先生ではないのですが、どうにも思考が単純な気がして。授業も自分の興味のある範囲とそうでない範囲の内容に差があるし、社会科担当のくせに体育の方が得意だし。基本的に体育会系の人って、合わない。
「そ、そう? ま、でも、行かないと御影先生には会えませんしね。行きましょう」