※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ディーテ城砦攻略戦 援護・探索1

最終更新: 2009年04月17日 (金) 23時44分27秒 ;

  • ■■=PCの名前
  • ○○=使用アイテム
  • 通常は消費しないアイテムでも消費してしまうことがあります
  • 武闘大会参加中はアイテムの使用不可
  • 今回はアイテムを獲得することがあります(法則性がある模様)
スキルまとめ
アイテムまとめ
悪魔情報
カオスの魔物情報


救護

【前回参照】
  • 奸智に長ける上~
  • 「大丈夫ですか、怪我の具合を~

モレクを倒し、ディーテ城砦を奪えた事は僥倖であった。
デビルの造った建物でも、頑丈な設備の中で治療が行えるのは簡易テントで寝かせるより都合がいい。
苦しい戦火を物語るように、今だ痛みに喘ぐ声は絶えない。
そういった者たちを■■は丁寧に看護して回る。
「畜生! 来るな!! てめぇらは地獄でくたばってればいいんだ!!」
「■■、来てくれ! 例の患者がまた暴れてるんだ!!」
傷の他にも、デビルの攻撃で精神を病んだ者もいる。
心の傷は外傷より、遥かに厄介だ。治ったように見えても、何かの拍子でまた表面に浮かび上がってくる。
バードや陰陽師が心鎮めるメロディーを奏でる中、■■も苦しむ仲間たちを○○で落ち着かせた。

モレクとの戦いは終わった。激闘を制したのは剣の力だけではない。後方にあって仲間達を援護し続けた力、救護に当たっていた冒険者達の力なくして、あの戦いを生き抜くことは出来なかっただろう。
■■は今日も仲間達の手当てを施しながら彼らを地獄に送り出していく。
彼らが向かう先は地獄の大城砦ディーテ。いまだ陥落したわけではないこの大城砦には、地獄の奥からまたしても増援がやってくると噂であった。すでに魔王クラスのエキドナがゲヘナの丘を制圧し、攻勢に転じている。
「気をつけて、敵の戦力はどれほどなのか‥‥想像もつきません」
冒険者たちは戦地に向かう仲間を見送りながら、彼らの無事を祈るのだった。

運ばれて来たばかりの怪我人が、自分はまだ戦えると言い張る。手当ても不十分なまま飛び出していこうとするその人を■■は問答無用で押さえつけた。
「仲間の足手纏いになりたいか」
言い放てば、相手はキッと■■を睨みつけた。
そうだ、判っている。
誰一人仲間の足手纏いになどなりたくない、役に立ちたいと思うから戦場を離れたくないのだ。しかしそれも体が万全であればの話。
「怪我をきちんと治さなければ、そうなる」
静かに言い聞かせると、相手はようやく治療される気になったようだ。 ■■の手当てを受けながら、その人はぼそりと一言。
「‥‥すまない」
自分の短慮を反省したのだろう言葉に■■は笑んだ。
「前線は頼む」
「――ああ」
そうして交わされる力強い笑みは、きっとこれからの力になるだろう。

「いだだだっ」
大袈裟に思えるくらい痛がる相手に■■は手当てを施す。数人の仲間達と一緒に確実な作業を行っている内、押さえつけられていた怪我人が静かになる。
「‥‥?」
不思議に思って見遣ると、その人は静かな寝息を立て始めていた。
「‥‥やっぱり、お疲れですよね」
体の内に溜まっていた疲れが、動きを封じられた事で彼を眠りに誘ったのだろう。■■は呟き、周りの皆に怪我人が眠った事を伝える。
「ほんの少しでも‥‥ゆっくりと休んでもらいましょう」
■■の言葉に皆が頷き、静かに笑んで見せた。
戦い続ける彼らに、僅かな一時でも穏やかな眠りが訪れますように――。

「出口はもうすぐだぞ」
「頑張って!」
ディーテ砦内部で勃発した戦闘。■■たちは負傷した仲間の救援に当たっている。砦の内部は闇が深く感じられ、空気も血の臭いに染まっている。
死亡だけはさせないと■■は決意する。死んだ兵士が瘴気に取り憑かれたのを昨日■■は見た。カオスの気配を色濃く感じるこの土地で死ぬ事は禁忌なのである。
デビルの追撃を振り切って■■らは仲間を救うために治療を開始する。荒かった呼吸は弱々しく体温は既に冷たい。
「死なせるものか」
■■の腕に力が籠もる。

次から次へと運ばれてくる怪我人の姿に■■は顔を歪めた。
「ひどい‥‥」
こんな事が、一体いつまで続くのだろう。
終わりの見えない戦は、ただそれだけで心を挫きそうになる。――だが。
「‥‥大丈夫」
■■は握った拳を胸に置き、自身に言い聞かせるようにその言葉を紡いだ。仲間は大勢いるし、傷付いた分だけ、その成果は確かに表れている。だからこそ自分も此処でこうして生きている。
「大丈夫」
繰り返す言葉を、今度は目の前の怪我人に向けた。
大丈夫。自分達は、決して一人ではないのだから。

「そこに誰かいるのか」
ディーテ砦。デビルとの衝突、そして交戦は突発的だった。一度はデビルに押し切られ後退を余儀なくされたが騒ぎを聞きつけ集まった冒険者の増援でなんとか戦線の維持、そして前進はできた。だがその爪痕は大きい。行方が判らなくなった仲間を捜しに行った■■は暗い通路の中で大きな血溜まりを見た。そこには人が倒れている。
「しっかりしろ」
急ぎ■■は傷を見る。どうやら致命傷は免れたらしい。■■は○○を取り出して仲間に差し出す。

ディーテ砦の前に広がる荒野。空は血の色で染まり大地は暗黒でねっとりと体に絡みつく。
「こんな場所で治療しなきゃいけないなんてね」
■■の隣で治療に当たっているハーフエルフの女性が呟く。額には汗が滲んでいる。■■がそうであるように一人でも多くの負傷者を元の世界に戻そうと、皆必死なのである。
「■■さん、○○を貰えるかしら?」
■■は○○を差し出す。自分が見ていた負傷兵はどうにか命を取り留める事ができた。すぐさま次の負傷者の元へ行く。血の臭いが鼻につく。そう、ここは地獄なのである。

ここは空気が悪い。酷く澱んだ空気が充満している。
地獄なのだから、爽やかな風が吹いていたら逆に怖いのだが、それにしても空気が悪すぎる。
「(こんなところじゃ治るものも治りません――)」
■■は救護所に並べて寝かされている患者たちの間を縫って歩きながら溜息をついた。幸い容態が急変したものはいないようだが、野戦病院さながらのその場所では苦しげに呻く声がいたるところから聞こえていた。
「■■さん、新しい怪我人だよ!」
新しい怪我人――その響きが何となくおかしく思えたが、笑っている場合ではない。■■は急ぎ怪我人の下へと走る。
もう少し環境が改善されれば――その心は傷への対処を行ないながらも消える事はなかった。

武器手入れ

【前回参照】
  • 戦いの合間を縫って~

「頼む」
刃毀れした武器を手渡された■■は勿論だとそれを受け取るが、やはり一言くらい言ってやりたい衝動に駆られる。
「‥‥こんなになるまで手入れを怠っていては、いずれは自分の身が危くなる」
前線で懸命に戦っていると判るからこそ、受け取った武器の姿に、‥‥哀しくなる。
「武器の状態が命を左右する事もあるんだ、気をつけてくれ」
尚も言い募れば、笑う相手。
「怪我をしても、後方には仲間がいる」
「それが武器の手入れを怠る理由になるか」
「そうじゃない。君達がいるから多少の無理は利くという安心感がある。だからこそ、俺達は限界まで戦える」
武器も、己も。
「な?」
そうして微笑まれると、誤魔化された気がしないでもないけれど。
後方にいる自分達も一緒に戦っている、頼りにしているのだとも取れるその言葉には、決して悪い気はしなかった。

山と詰まれた武具を前に、■■が手入れを行っている時だった。
わっと湧き上がる歓声。
何事かと■■が顔を上げれば、空からアトランティスからのフロートシップが降下。程なく、ゴーレム兵器が物資を地獄に下ろしだす。
「ジ・アース側でも作れないか、探っている者もいるそうだ」
「元々ゴーレム技術はジ・アースの物だからな。出来てもおかしくなさそうだが‥‥」
「でかい埴輪を中から動かせばいいだけでは?」
「では船をどうやって浮かせる?」
好奇心か羨望か野心か。周囲でひそひそと囁き声。
「何、手を止めている。いい兵器があっても整備不良じゃ意味が無い。それは剣でも鎧でも同じだぞ!」
声を聞きつけたか、担当官が鬼の形相で一喝。
■■も持っていた○○で慌てて武具を磨き出した。

手入れを終えた■■が預かっていた武器を素振りすると、それまで錆付いていた重しが取り除かれた甲斐あってか、刃は風を切り裂くような音を立てて軌跡を描く。
「ん、完璧」
己の腕を自画自賛する■■に、武器を預けていた相手は失笑。
「ありがとう、助かったよ」
「どういたしまして」
笑顔と共に手渡す武器に、添える激励の言葉。
「頑張れ」
「ああ」
そうして送り出す。
自分が蘇えらせた武器が、今一度敵を討つ瞬間を願いながら。
いつかは敵将を討ち滅ぼすその時に立ち会える事を、信じながら。
「頑張れ」
■■は繰り返す。自分も此処で頑張るからと――。

思った以上に刃こぼれがひどいと■■は思った。
仲間の話によると地獄で現れるデビルは黒い煙を纏っているらしい。通常の武器はもちろん、地上ではデビルに効果がある銀製の武器でさえ効果がない。
そこで魔法武器の必要が生まれる。
エチゴヤで鍛える、あるいは名匠が打った武器はデビルにもダメージを与えることができた。しかしデビルの中にあっては堅い防御力を持つ者もいる。
■■は仲間から託された剣を丹念に研ぎ直す。こぼれた刃はその跡さえ判らないように再び輝きを取り戻していった。

いつ何時でも戦えるように、武具の手入れはしておかねばならない。
■■は武器を取り出し、柔らかい布で拭く。武器は敵を倒すだけのものではなく、その身を守るためのものでもある。
「‥‥」
「■■さーん!」
黙々と手入れを続けていたその時、後ろから声がかかった。■■は肩越しに振り返り、その姿を目に入れる。それは冒険者の少年だった。
「一緒に、いいですか?」
にかっと笑みの浮かんだその両手には、剣が握られていた。そして手入れ用の布もしっかりポケットに突っ込まれているようだ。
「どうぞ」
■■が承諾すると少年は嬉しそうに隣に座り、剣の手入れを始めた。
「戦いに勝つ為にも、生き残る為にも、武器の手入れは怠ったらダメですよね!」
少年の言葉に頷き、■■も手入れを再開した。

「‥‥ぁ」
■■は荷物をあさった。だが、ない。
手入れに使おうと思っていた○○がないのだ。
おかしい。確かに入れたはずなのに。
ごそごそ。
ごそごそ。
ごそごそ。

‥‥ない。

「あの、これ」

ごそごそ。
ごそごそ。
ごそごそ。

「落としましたよ!」
「わぁっ!」
いきなり背後から肩を叩かれて、■■は驚いて振り向いた。そこに立っていたのは一人の女性。
「さっきから呼んでいたんですが」
これ、と差し出されたのは探していた○○。
「落としてましたよ」
■■は○○を受け取り、丁寧に礼を述べた。
落としていたなんて不覚だ。だがこれで無事に武器の手入れが出来る。
■■は○○手に、武器の手入れを始める事にした。

「こうやって武器を研ぐと、この武器を作った名匠と対話しているみたいな感覚になるの」
人間の女性が刀を研磨している。ジャパン出身の鍛冶師と聞いていたが研磨しているのはロシアの名匠ノヴァクが打ったヴカシンの剣である。ジャパンの刀は一風変わっている剣に見えたが、話を聞く分に鍛冶師にとって剣に違いはないようだと■■は思った。
「あなたの技も素晴らしいわ。刃紋が綺麗‥‥」
女は■■が火入れし打ち直した剣の一振りを手に取り光にかざす。
「相鎚を入れさせて貰っても構わない」
女は小振りの槌を手に取ると■■が打つ槌に相鎚を入れた。きんこんきんこん。乾いた鎚の音が鳴り響く。目の前の女も炭が上げる熱気に汗だくとなり、身に纏う白装束が体に密着している。女の色香に男たちが集まって来たが、鬼気迫る鍛冶場の迫力に圧されて自分の武器を手入れするために戻っていった。

激闘を制したとは言え、戦いはまだまだ続く。ディーテ城砦は陥落したわけではなく、地獄の奥地からはさらなる敵の増援がやってくるらしい。
次なる戦いに向けて、また不測の事態に備えて、■■たち冒険者は武器の手入れに余念がない。
「頼むよ相棒、敵はごまんといるみたいだし、まだまだお前さんの力が必要なんでな。敵さんは幾ら倒してもきりがない‥‥」
冒険者たちは半ばぼやきながら武器を磨いている。刀使いは剣を磨き、弓使いは弓の張り具合を確かめたり矢を丁寧に一本一本並べては刃の切れ味を確認している。
敵は圧倒的な大軍、倒しても倒しても途切れることのない地獄の兵士たちが相手では、冒険者にもぼやきが出ようと言うものだ。
「さて‥‥行くか」
入念な手入れを済ませると、冒険者は立ち上がった。

慰労会

「まぁ、ひとまずはお疲れさま!」
音頭の言葉に合わせて、■■らも手にした飲み物を軽くぶつけて互いを労った。
大きな戦いはひとまず終結したが、まだすべてが終わった訳ではない。それでも、だからこそこの勝利を思う存分祝い、明日からの英気を養いたいところ。
炊き出し以外にも各々が持ち寄った品が場に並ぶ。■■が提供した雛あられもその一つだ。酒や飲み物、食材におやつも。
「目を見張るほどのご馳走、ってわけには行かないけど‥‥」
「何、立派なもんさ。ありがたい」
仲間の言葉に、腕によりをかけた者も嬉しそうな笑みを浮かべる。
慰労会は、まだまだ盛り上がるようだ。

日差しも薄暗く、陰鬱な雰囲気の漂う、地獄の奥底。
そんな場所だからこそ、一時の勝利とこれからの勝利を願うかのように、誰が言い始めたのでもなく、慰労会が開催されていた。
楽しむは持ち寄った酒と料理、それに戦友との気の置けない会話や、あるいは故郷でも戦う仲間たちのこと。
■■はそういったことに思いをはせながら、今日という日を無事に終われたことをうれしく思う。%br()「おい、そこで何やってんだよ、こっちに来いよ!」
そう、■■を呼ぶ声がする。見れば、先日鞍を並べた奴らが、面白そうに杯を上げ、焚き火の前で手を振っていた。
■■はその声に応じるよう、やや小走りに走ると、その輪の中に加わった。

地獄の一角で、祝勝会が開かれていた。モレク撃破を祝う慰労会だ。
わざわざ地獄で宴会とは物好きな‥‥下級悪魔たちは上空から興味深げに冒険者達の様子を見つめているようである。
■■たち冒険者は酒を酌み交わしながらお互いの労を称え合った。艱難辛苦の道のりであった。
「‥‥とは言え、一体どこまで続くんだろう、この戦いは‥‥」
「地獄か‥‥いつの日か、この地に住まう魔族を一掃したいものだが‥‥」
世界に混沌をもたらしてきた元凶‥‥これまで世界の影で暗躍してきたデビルがジ・アースとアトランティスに侵攻を開始して久しい。
人類は地獄への逆侵攻へこぎつけたが、進めば進むほどに強力なデビルが登場してくる。
果てしない戦いの末に何が待っているのか‥‥まだその先を知る者はいない。今はただ、一つの勝利を祝うだけだ。

モレクを倒し、ディーテ城砦を占拠。
その勝利を祝う宴があちこちで開かれる。
配られる料理を食しながら、バードの笛やジプシーの踊りを堪能。久しく無かった穏やかな時間が過ぎる。
「――そんな浮かれ調子でいいと思っているのか!!」
喧騒を破る、強い恫喝が辺りに響いた。場の雰囲気が途端に凍る。
「我々は足がかりを築いただけだ! デビルはまだ残っている! 今だ、戦いの最中なのだぞ!!」
相手の演説はなお続く。
■■は肩を落とすと、歩み寄り、握った拳を相手に叩き込んだ。
「な、何をする!!」
「ご高説は立派。でもね、休める時には休まなきゃ。――体も、心もね。でないと、感覚が麻痺して大切なものを失うわ」
横から告げた同僚に、リル・リルは頷く。
はっとした表情の後、項垂れる相手。
気落ちするその肩を優しく叩くと、○○を掲げ、■■は宴の席へと誘った。

今はただ、次の戦いに向けて英気を――
■■たちは持ち寄った(item)などを使用して小さな宴会を開いていた。
こんな時に不謹慎といわれるかもしれない。でもこのくらいして息を抜かなければ、次の戦いには備えられない。
「よし、もう一杯!」
誰かが■■のカップに酒を注いだ。■■がそれあおると、辺りから歓声が上がる。
「いい飲みっぷりだね!」
そう言われて次々と酒を注がれてしまうのだから、ちょっと困ってしまう。このまま二日酔いにでもなったらどうしてくれよう。
それでもここに集った人達に笑顔が生まれ、それが明日への英気となるならば、これも良いのかもしれない――■■はそう思ってカップを傾けた。

今日の敵は明日の友。そんな言葉があるけれど、果たしてこの地獄と呼ばれる大地においてもそのような事があるだろうか。
続くのは闇の者達との戦。
頭上に広がる赤い空、それを覆う黒い雲。
光りの見えないこの地でも、いずれは戦が終わり血が流れる事もなくなるのだと、‥‥信じても良いだろうか。
「‥‥信じなければ、進めない」
■■は己に言い聞かせるように呟き、顔を上げる。
「何か、賑やかなのが一つ欲しいな」
前線での戦いから一時離れて体を休めている冒険者達の希望を受け、■■は「でしたら」と声を上げる。
周りにも声を掛け、楽を奏でましょう、舞いましょうと仲間を集う。
音楽は、いつだって、何処でだって、体一つで皆に笑顔を灯す術。今はこれが光りとなるように――■■はそう願いながら己の精一杯の光りを地獄に輝かせた。

がやがやがや‥‥
がやがやがや‥‥

その場は喧騒と飲食物の匂いに満ちていた。喧騒といっても戦いや怒号ではなく、笑いや談笑といったものだ。
そこは慰労会の会場。これまでの労をねぎらって明日への英気を養おうという者達の集まり。
「隣、良い?」
■■は上から降りかかってきた声に思わずスプーンを加えたまま、振り仰いだ。そこにはローブに身を包んだ魔法使い風の女性が立っていた。別段断る理由もないので頷き、少し場所を空ける。
「おいしそうなお酒が手に入ったから。誰か一緒に飲んでくれる人を探していたんだ」
女性は背中から酒の入ったボトルを取り出し、微笑む。こぽこぽとカップに注がれていく液体からは、上質なアルコールの香りがした。
「乾杯」
「乾杯」
■■は女性とカップを軽く鳴らし、そして酒を口に含んだ。

「次の戦いはどうなるのだろう?」
「さあ‥‥?」
急に水を向けられて、■■は料理を片手に首を傾げた。
これまでの戦いも熾烈だった。次の戦いも激しい戦いになることは予想に難くない。なにせ更に地獄の奥へと進んでいくのだから。
「また沢山の死者や怪我人が出るのだろうか」
「‥‥」
■■はその問いに答えられない。
男の言うとおり、沢山の怪我人も出るだろう。命を失う者も出るだろう。だがそれを肯定してしまうのも、なんだか『怖い』気がして。
「塞いでいても始まらない。今日は今までの苦労を称えて騒ぐんじゃ?」
「ああ、そうだったな、すまない」
■■の言葉に男は苦笑して、カップを掲げてみせた。■■も自身のカップを手に取り、男のカップへとぶつける。

カツン‥‥

木のカップ同士がぶつかり合う音が、宴会場の笑い声に混ざって消えて行った。

炊き出し・物資確保

前回参照
  • 炊き出しの場は~
  • 「腹が減っては戦は出来ぬと~

地獄での戦いが長引くと、不自由してくるのは新鮮な食材だ。
定期的に地上から運ばれて来るが、それでもこれだけの人数が何日、何週間も食べられるだけの食糧となると、かなりの量になる。
「はい、どうぞ」
差し出されたのはじっくりことこと煮込んだらしいシチュー。
木の匙で一口掬うごとに、体の中が温まってくるようだ。
体が温まると、気持ちも安らいでくるらしい。
「ふ‥‥」
■■は笑み零した。
周囲の者達も、恐らく■■と同じ事を考えたのだろう。あちらこちらで笑いが弾けている。
「ふふふ、ははは」
美味いシチューだ。笑いが止まらなくなる程に。
「あはは、こ、このシチューには何が入ってるんだ? ははは」
「ヒヨコ豆を干し肉と、砦の岩陰に生えてたキノコを入れました」
にっこり笑って胸を張った食事係の少女に、■■は笑い返した。
「そ、そうか。ふはは、じゃあちょっと、けけけ、い、医療班を呼んで来てくれないか」

それはきっと、皆が集中して働いていたから起きた失敗に違いない。
だが、しかし。
「なんで、こうなる前に気付かなかったのかなぁ」
誰かがぼやくのに、■■も思わず同意の返事をした。せずにはいられなかった。
なにしろ、彼らの前には保存食と木材と○○とポーションの壷と毛布と盾と、その他諸々で作られた小山が存在していたのである。
どこかで指示を出し間違えたのか、皆で変な幻でも見たのか、寄せられた物資を分けておくはずが混ざり合っていた。
「落ちたーっ!」
悲鳴に咄嗟に両手を差し出した■■の手に、ポーションの入った壷がうまい具合に納まって、皆が安堵の吐息を吐いている。

「地獄の中にあっても想像力は大事だと思うんだよね」
○○を手にした■■は目の前で力説される話の内容に呆気に取られている。なんでも良いから急いで持ってこいと言われたので従ってみたが、招集された先で行われていたのは闇鍋大会であった。
「カオスをもってカオスを制する、という訳だよ」
闇鍋を作っている当人は調理と錬金術双方のスキルに通じているらしい。この鍋の中身は食料として使う気なのか、それとも武器として使う気なのか。
まあ折角呼ばれたのだから無碍にするのも大人げない。溜息をひとつしてから紫色の煙が上る鍋の中に■■は○○を放り込むのであった。もちろん、どさくさに紛れて退避したのは言うまでもない。
結局あの鍋がどうなったのかに関しては■■が知ることはなかった。

「だから、甘い味の保存食に退魔の塩を混ぜると画期的な攻撃アイテムができるんだってば!」
さっきから力説している仲間に、■■はじとー、っとした視線を送る。そんな話は聞いた事がない。甘い味の保存食に退魔の塩を振り掛けたって‥‥。
「いやいや、常識を疑う所から始めようじゃないか」
常識を疑ったところでできるアイテムは甘い味の保存食の塩漬けだと思うのだが。それでも相手は一歩も引かないので面倒になった■■は甘い味の保存食の塩漬けを手伝う。
『画期的攻撃アイテム在中』と書かれた樽を1つ作った所で ■■は『画期的アイテム作成工房』から逃げ出す事に成功した。

大きな荷物が歩いていた。
否。
小さな少女冒険者が大荷物を抱えて歩いていた。
「手伝います」
思わず■■はその荷物を横から支え、声をかけた。すると少女は花がほころぶように微笑んで。
「ありがとう! たすかります!」
話を聞いてみれば、炊き出し所に持っていく食料や物資の類だという。それならば行き先は一緒だ。■■は荷物を持って少女と談笑しながら炊き出し所への道を歩む。
荷物が大きいので前が見えない少女の代わりに横についた■■が人にぶつからないように誘導してやる。そうして目的地についた頃にはうっすら汗をかいていた。
「ありがとう!」
荷物を下ろした後少女はぺこりと頭を下げた。
「これも一緒に」
■■は差し入れようとしていた○○も、彼女の荷物の上に乗せて差し出した。

地獄を進むにつれ、様々な世界の多くの国家と触れ合う事が多くなる。
そこで問題になるのが言葉の壁。そして、文化の壁だ。
「おい、お前。一体何を作っているんだ?」
○○を使っていた ■■へ、怪訝そうな声がかけられる。
どうも作ってる料理が奇妙な物に見えたらしい。不思議そうに料理を観察している。
これは自国の料理で、自分もよく食べていると■■が告げ、味見させるとようやく納得してくれた。
「世界は広い。いろいろな料理があるんだな」
感心したように相手は告げると、完成したら声をかけてくれと笑う。
これでひとまず客一人確保。食べてくれる相手が出来ると気の入り方も違う。
俄然はりきり、包丁を動かす■■だった。

「次の食材っていつ届く?」
■■が後方の仲間に声を掛けると、数時間後には届くはずだという答えが返る。ならば、それも届いてから今日のメニューを考えようと思う■■だったが、腹を空かせている冒険者は次々とやって来る。今の今まで前線で戦って来た彼らを待たせるのは忍びない。
「よし!」
ならばと手近にあった食材を二、三種類取り上げると、早速調理。
昨日の残りなども合わせて煮込めば、当初の材料からは考え難い量の雑炊が完成だ。鍋の中から食欲をそそる匂いを漂わせる料理に、休んでいた冒険者達も気付いて続々と集まってくる。
「おぉ‥‥やっぱり■■が一緒だと幸せだよ‥‥こんな場所でも、美味い飯にありつけるもんな」
そうして向けられる仲間の笑顔が■■の何よりの幸せだった。

「足りない足りない! 全然足りないよ!」
誰かが叫んでいる声が聞こえる。そんな声はそこかしこで聞こえていたが、■■には今叫ばれた女の声が耳についていた。
「(あ‥‥!)」
ふと思い出して荷物をあさる。
あった、○○だ。そういえば荷物の中にいれていたのを忘れていた。
「あります、ここにあります!」
■■は○○を手に女の元へかけ行く。
「ありがとう、助かったよ。また手に入れたらぜひ持ってきておくれ!」
女の笑顔に頷いて、■■は他所を手伝うべく駆け出した。

陣地作成

前回参照
  • 無鉄砲に突っ込んで行くだけでは~
  • 敵陣とその姿以外に~
  • 「重い‥‥」~
  • カン! カン! カン!~

ディーテ城砦、荒野――。
集まった■■たち冒険者は次なる戦いに、また今後のディーテ城砦攻略の準備を進めている。荒野に陣地を築き上げていく冒険者たちは、モレクの敗退を受けて後退したデビルの再侵攻に警戒を強めながら作業を進めていく。
壕を掘り、土を盛り、壁を築いて堅牢な陣地が日々完成していく。少しずつではあるが、陣地は拡大し、冒険者達は荒野を完全に制圧しつつある。
油断を許さない状況は続いている。ゲヘナの丘にはエキドナが姿を見せ、地獄の奥地からは新たな敵の援軍がやってきているという噂が流れている。
ようやく確保した荒野の陣地を確かなものにするため、冒険者達は今日も陣地を作り上げていく。

ディーテ城砦、左門――。
集まった■■たち冒険者は次なる戦いに、また今後のディーテ城砦攻略の準備を進めている。城砦左門に陣地を築き上げていく冒険者達は、モレクの敗退を受けて後退したデビルの再侵攻に警戒を強めながら作業を進めていく。
左門の建造物を生かしながら、冒険者達は陣を組み上げ、堅牢な陣地が日々完成していく。少しずつではあるが、陣地は拡大し、冒険者達は左門を完全に制圧しつつある。
油断を許さない状況は続いている。ゲヘナの丘にはエキドナが姿を見せ、地獄の奥地からは新たな敵の援軍がやってきているという噂が流れている。
ようやく確保した左門の陣地を確かなものにするため、冒険者達は今日も陣地を作り上げていく。

ディーテ砦中央門にて、■■達は陣地の作成を行なっている。
地道な作業だ。だが疎かにしてはいけない作業である。これを疎かにしては次の戦いに支障が出る。次の戦いに挑む為の陣地作成なのだから。
「ふぅ‥‥」
流れる汗をぬぐうのも何度目だろうか。
中にはこの作業に不満を零す者達もいる。だが■■は黙々と作業を続けた。
この地道な作業が次の戦いを有利にする――それを分からない者達も入るという事が少し悲しい。
だが、共にこの作業に従事している者達の殆どは■■と同じ様に黙々と作業を続けていた。
キラリ、光る汗が、その地道な作業が進んでいる証だった。

「これくらい積み上げたらいい?」
いつまたデビルが襲撃してくるとも限らない。■■を中心とした面々は防御柵を作り上げていった。何もない地獄の荒野において柵を作る材料を調達するのも困難だ。炊事を担当している班から食料輸送用の麻袋を受け取ると■■はそれに土を詰めて土嚢を作っていく。
「それにしても気味が悪い土だなあ」
仲間の一人が土を手に取り指でこねる。ぬるっとした感覚がまるで血糊を想像させて思わず指を鎧に擦りつけてそれを拭った。

どこに陣地を置くのが良いだろう。
周囲を注意深く探索する■■の目にふと映ったのは、岩山の間にぽっかりと空いた窪地だった。
あそこはどうだろう‥‥そう思いつつ岩山を降りていく、その途中。
「!!」
頭上から何かに襲い掛かられて間一髪避けた■■、同行していた仲間が援護し事無きを得る。
「此処も敵襲有り、だな」
「あぁ‥‥ありがとう」
助けてくれた仲間に感謝しながら、陣地を置く場所選びも容易ではないと再認識。
■■は仲間達と共に再び歩を進め始めた。

「女だからって馬鹿にしないで!」
甲高い声がディーテ砦左門で陣地を作成している者達の間に響いた。
「?」
■■がその声の出所を探すと、どうやら陣地作成に疲れた男達が頑張っている女性をからかっているようだった。
陣営整備という地味な作業に飽きたのだろう、だからといって女性をからかって良いという道理にはならない。
「馬鹿なことをしていないでさっさと作業を済ませてしまいましょう」
「私をからかっているだけ時間の無駄よ!」
■■が庇うように間に入ると、女性は強く出た。
「あと少ししたら休憩にしようと思うんだけど?」
後方からかけられた声に男達が振り向くと、そこには差し入れらしい物を持った冒険者達が立っていた。
「よし、じゃあやっちまうか!」
男達はそれを見て三々五々に散って行く。現金だ。
「ありがとう! 私達も作業を続けましょう!」
女性に礼を言われ、■■は作業を再開した。

モレクを倒した事により、デビルたちは退いたが、いつ城砦を取り返そうと攻め込んでくるか分からない。
その時に拠点としてきちんと機能するよう、陣地の確保が急作業で行われる。
城砦のあちこちから運び込まれるたくさんの資材。それらは瞬く間に陣地の作成の為消費されていく。
■■も○○を用いて、城砦の補強を手伝っていたが。
「これは一体!?」
城砦の一角、巨大な壁に神や天使を讃える宗教画を見つける。
「つたない腕ですが、少しでも魔よけにならないかと‥‥。それに、デビル好みの景色ばかりなのもつまらないじゃないですか」
作業をしていた絵師に問うと、相手は笑ってそう告げる。
確かに宗派は違っても、この異形の風景が塗り替えられるのはありがたい。
■■は絵師を労うと、軽くなった足取りで作業に戻った。

ディーテ城砦確保。
広大な都市の一部を占拠したに過ぎないが、足場ができたのは喜ばしい。
ただ、デビルたちの使用する建造物であるが故か、人には向かない構造も多々ある。
使用に耐えうるように、急ピッチでリフォームが行われる。
「ったく、なんでこんな所に階段がある」
「つっかえ棒だらけだな。動きづらい‥‥」
「壁が壊れている。いっそ壊してそっちと繋げるか」
あちこちから悲鳴と疑問と指示が飛び交いながら、着実に作業は進んでいる。
■■も彼らに負けじと、スコップを用いて陣地作りに専念した。

偵察

前回参照
  • 情報。敵の陣形、戦力。~
  • 赤い空、禍々しい雲。~

「あれってインキュバスだよな‥‥」
共に偵察を行っていた仲間――地球出身の冒険者の声に、■■が何気なくそちらを見遣ると、確かに視線の先にはインキュバスの姿があった。しかも一体ではなく、同タイプの女性型サッキュバスが隣に並んでいた。普段は霧のような姿をしている連中が、獲物を前にしているわけでもないのに人型を取っているとは珍しい事もあるものだ。
■■はそう冷静に状況を分析していたのだが。
「‥‥なんかさぁ、あいつらが並んでると不倫中の上司と部下がラブホに入っていくみたいだな。あるんだぜ、ああいう岩壁に似せた趣味の悪い建物」
「‥‥」
まったくの意味不明ではあったが、とりあえずしょうもない事を言っているのだろう事はニュアンスで察する■■だった‥‥。

城砦は占拠したが、デビルたちが奪われた物を取り返しに来る事は容易に予想できる。
ゲヘナの丘のエキドナもどう動くつもりか分からない。
デビルの動きを事前に察知しておく。それは重要な任務だった。
(「あれは‥‥デビル?」)
その最中、デビルらしき影を見つけ、■■は身を潜める。
距離は遠い。だが、ある程度力のあるデビルなら即座に転移してくる可能性もある。
仲間は近くにおらず、もし戦闘になれば■■一人でやらねばならない。
万一を考え、○○を握る手に力が入る。
そのまま様子を見守っていると、相手はこちらに気付く事無く退いていった。
恐らく、向こうも偵察だったのだろう。とすれば、奴らは城砦を諦めてはいない。
隙を見せれば、いつ攻撃が来るか‥‥。
■■は急いで報告に戻った。

概ね荒野と左門は制圧した。ゲヘナの丘にはエキドナが現れているが、デビルの新たな侵攻は見受けられない。
散発的な抵抗はあるにせよ、小悪魔が飛んできて冒険者たちの様子を観察していくくらいだ。
戦場跡や城砦方面に踏み進む冒険者達にデビルたちの囁きが時折入ってくる。
「‥‥どうやらあの方達がやってくるらしい‥‥モレク将軍の敗退にさすがのあの方達も本腰を上げて人間達を迎え撃つらしい‥‥」
「恐ろしい‥‥あの方達を呼び起こすとは‥‥人間など一撃で粉砕されるだろうて‥‥」
しばしば飛び交うデビルたちが口にする「あの方達」と言う言葉に、■■たち冒険者は新たな敵の出現を予測する。
ここは地獄、神々に反抗した者達が落とされた場所。モレクも実在する神話の魔神であった。地獄の深部には更なる強力な悪魔王達がいると言われるが‥‥。
「あの方達」とは一体‥‥?

ディーテ城砦中央門――。
偵察に向かった■■たち冒険者はデビルの集団を目撃する。デビルに押された中央門は攻略するには至らず、城砦中央門は敵の勢力が盛り返している様子であった。
「‥‥ゲヘナの丘では女神エキドナが人間たちの攻勢を跳ね返している。あの方達が来るまで、何としても持ち堪えるのだ‥‥!」
「人間たちめ‥‥まさかモレク将軍を倒すとは‥‥この地獄で祈りの力だと‥‥! なぜに奴らの思いを止めることが出来ない!」
「ふふ‥‥焦るな、思いの力があろうと、あの方達の前には人間など吹けば飛ぶ存在よ‥‥!」
「そうだ‥‥あの方達の前に、奴らの思いの力も潰えよう‥‥!」
だが、デビルたちにはやや焦りの色が伺える。モレクの敗退は予想外であったようだ。
ざわめくデビルたちの様子を後に、■■たちはその場を離れた。