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|BGCOLOR(AEEB9C): 752 名前:理想と現実1 本日のレス 投稿日:2006/08/11(金) 16:00:34 8aYzddvY | アンティークな家具が並ぶ、落ち着いた雰囲気の部屋があった。 壁にかけられた肖像画の前、グラスとボトルが置かれたデスクを挟み椅子に腰掛ける青年が居る。 (´・ω・`)「とりあえず兄さん、今日もお疲れ様……乾杯」 (`・ω・´)「ああ、お前の方こそお疲れ様だ弟よ……乾杯」 二人がグラスを手に持ち掲げると、管楽器のような澄んだ音が部屋に染み込むように響く。 グラスを重ねた二人は、それぞれ自分のグラスを口に運び傾ける。 (`・ω・´)「……うむ、美味い。体中に染み込むような美味さだな」 (´・ω・`)「そうだね……兄さん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」 (`・ω・´)「どうした? できる範囲で相談に乗ろう」 (´・ω・`)「僕達兄弟……二人とも店を持てたけど、最近お客様とズレを感じていてね」 そう呟くと青年はため息を一つ。向かいに座る青年も思い当たる節があるのか苦々しそうな表情を浮かべ、 (`・ω・´)「俺もそう思っていたところだ弟よ……つまりあれだな?」 (´・ω・`)「うん……」 (´・ω・)`・ω・)「「お客様が(僕・俺)の酒を飲んでくれない……」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C): 753 名前:理想と現実2 本日のレス 投稿日:2006/08/11(金) 16:01:41 8aYzddvY | 同じ声質の二人が同時に台詞を放つと、二人はため息をつき部屋に掛けられた肖像画を共に見上げる。 (´・ω・`)「爺さんの店はよかったね……」 (`・ω・´)「ああ……大人達が真剣に遊ぶ場、そこには興奮と悲しみと……そして美味い酒があった」 思い出されるのは祖父が経営していた店……紳士・淑女達がグラスを片手にカードやダイスに興じる社交の場。 二人はそれに憧れて、今店を持つようになったのだ。 (´・ω・`)「でも、この間綺麗なお姉さんが久しぶりにグラスを受けとてくれたんだ」 (`・ω・´)「よかったじゃないか……俺なんてとんと飲んでもらえないぞ」 (´・ω・`)「でもね……二杯目を用意しようとしたら、酔ってしまいそうだからと遠慮されたよ」 (`・ω・´)「ふむ……酔ってしまいそう、か。弟よ、俺はうすうす打開策が見えてきたぞ」 (´・ω・`)「! どうすればいいんだい兄さん!」 (`・ω・´)「まあ待て……まずは店に来てくれるお客様のことをよく思い出せ。爺さんの店との客との違いを」 (´・ω・`)「お客様の……ことを?」 兄の言葉に反応して、青年の脳裏に自分の店に来てくれるお客様のことが浮かぶ。 皆、楽しそうにゲームに興じる……若いお客様だ。 (´・ω・`)「! 爺さんの店よりも客層が若い!」 (`・ω・´)「ああ、よく気づいたな弟よ……そして、そのお姉さんが言った台詞を思い出せ」 (´・ω・`)「酔ってしまいそう……そうか、爺さんの時代に比べて酒に弱い人が多いのか」 (`・ω・´)「そういうことだ……確かにこの酒は美味い、だが」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C): 754 名前:理想と現実3 本日のレス 投稿日:2006/08/11(金) 16:03:03 8aYzddvY | 青年が手に持ったグラスをデスクに置かれたボトルに軽く当てる。と、澄み切った音が奏でられる。 (`・ω・´)「今の子達が、遊びに興じる際に飲むには強すぎる酒だ」 (´・ω・`)「見落としていたよ……そうだね、爺さんの時代とは違うんだね」 (`・ω・´)「迎合するわけではない……が、お客様が求めているものを提供するのは商売人の務めだ」 (´・ω・`)「最近の子は強い酒よりも軽やかな酒を……それも艶やかな」 (`・ω・´)「そう……つまり」 沈んだ表情だった二人の顔に笑みが生まれる。再度グラスを掲げると中の氷がカランと音を立て、 (´・ω・)`・ω・)「カクテルだ……!」 (´・ω・`)「ありがとう兄さん……相談してよかったよ。悩みが晴れた」 (`・ω・´)「いや。俺のほうこそ自分の間違いに気づけてよかったよ」 (´・ω・`)「早速明日から試してみるよ……これは絶対にうまくいく」 (`・ω・´)「俺もだ……。しかし今日は付き合ってもらうぞ? 新しい門出を祝おう」 (´・ω・`)「……あぁ!」 掲げたグラスを口元に運び、中に満たされた琥珀色の液体を飲み干す二人。 心なしか、壁に掛けられた肖像画の人物が笑っているように見えた。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C): 755 名前:理想と現実4 本日のレス 投稿日:2006/08/11(金) 16:05:26 8aYzddvY |   ――翌日、バーボンハウスにて (´=ω=`)「(……自分の理想を押し付けるのではなく、お客様が求めているものを……!)」 昼も周り、客足が盛んになってきた時刻、カウンターに立つ青年はシェイカーを握り締めていた。 そして店の扉が開かれた瞬間、静かに佇んでいた彼は打って変わって機敏な動きでシェイカーを構え。 (´・ω・`)「やあ。よう――」 (,,゚Д゚)「てんちょう、何しゃかしゃか遊んでるんですか。忙しいんだから仕事してくださいよ!」 (´・ω・`)「い、いやこれは……」 (,,゚Д゚)「いらっしゃいませー。ほら、店長もっ」 (´・ω・`)「い、いらっしゃいませ……」 (,,゚Д゚)「夏休みで人多いんですから、油売ってないでくださいよ」 (´・ω・`)「う……うん……」 そういって忙しそうに仕事に向かう青年の背中を見送りながら、彼は静かに肩を震わせていた。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C): 757 名前:理想と現実5 本日のレス 投稿日:2006/08/11(金) 16:06:44 8aYzddvY |   ――その日の夜、あるゲーセンにて。 深夜と言えど賑わいを見せる三国志大戦フロア、しかし今日は少し趣が違った。 四台ある筐体のうち、二台しか埋まっておらず、その二台の周りにギャラリーが立ち並んでいるのだ。 そのギャラリーに囲まれた二つの筐体に向かうのはサングラスを掛けた二人の青年。 (´●ω●)「…………」 (`●ω●)「…………」 (´●ω●)「兄さん……」 (`●ω●)「何だ……? 弟よ」 (´●ω●)「僕……駄目だったよ」 (`●ω●)「……お前は一度駄目だっただけであきらめるのか? 俺は……諦めないっ」 (´●ω●)「うん……僕、頑張るよっ」 そういった青年の頬を雫が伝う。それを見たもう一人の青年は指で雫を拭ってやり、 (`●ω●)「泣くな弟よ……男が泣くのは、負けたときだ」 (´●ω●)「……あぁ!」 その日、深夜の三国志大戦に二匹の鬼が現れたという――   ~fin~

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