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|136 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 12:52:40 ID:BhbGEd++0| ある日曜日の朝。 空には雲一つ無く、まさに快晴といえる日だった。 そんな気持ちの良い朝にも関わらず、最悪の目覚めで一日が始まった者がいた… ξ;゚⊿゚)ξ「…!」 恐怖で引きつった顔のまま、自分の布団から飛び起きる。 …ツンだった。 そのすぐ後に、ツンは『色々な事』を確かめるように辺りを見渡す。 見慣れた自分の部屋、最近買ったばかりのCD、そして机の上に置いてある三国志大戦のカード。 それらを確認したツンは、安堵の息を漏らす。 ξ;゚⊿゚)ξ「良かった…」 『今』であることを確認したツンは、その顔から恐怖の色が消えていく。 時計を見てみると、時間は朝の七時四十分。 いつもの起床時間より少し遅かったが、日曜日なので誰も咎める者はいない。 ツンは急いで着替えた後、リビングへ行って朝食を食べた。 いつも通りの光景、いつも通りの日常。 そして、お昼過ぎにはブーン達と三国志大戦で遊ぶために、ゲームセンターバーボンハウスへと赴くだろう。 一つ一つ確認できていくその事実に、ツンの心は和らいでいく。 ξ゚⊿゚)ξ(…まさか今頃また『あの夢』を見るとは思わなかったけど…      大丈夫、ここは確実に『今』だもんね…) |138 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 12:54:00 ID:BhbGEd++0| ◆ そしてお昼過ぎ、バーボンハウスにて… ξ゚⊿゚)ξ「はい、私の勝ちー!」 ('A`)「くっそー、また負けちまった…ツン、今日は調子良いなあ」 いつも通り、三国志大戦で店内対戦をしているお馴染みの面々。 今日はツンとドクオが対戦していたが、先ほどからドクオが三連敗している。 ξ゚⊿゚)ξ「ふふん、今日の私は負ける気がしないわね! 何ならもう一回やってみる?」 ('A`)「こうなったら絶対一矢報いてやる…行くぜ!」 意気込んでツンに再び臨むドクオ。 だが、結局試合はツンが勝ってしまった。 喜ぶツンに対して、四連敗に落ち込むドクオ。 そんな二人を遠目に見ながら、ブーンと店長が雑談をしていた。 (´・ω・`)「今日はドクオ君、思いっきりやられているねえ…」 ( ^ω^)「見たところドクオはいつもと変わりないみたいだし、今日はツンが絶好調なんだと思うお」 (´・ω・`)「それにしても、さっきからドクオ君が押されっぱなしだね…逆転の機会を何度も潰されてるよ」 ( ^ω^)「そういえばそうですね…今日のツンは何だか冴えてるお」 二人は気付いていなかったが、今日のツンはいつも以上の笑顔をしていた。 その理由は、ツンが見た『ある夢』が原因だった。 それは、ツンが久々に見た夢。 そして、長い間ツンが悩まされてきたもの。 その夢の原因は、ツンの小学校時代にまでさかのぼる… |139 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 12:55:09 ID:BhbGEd++0| ◆ それはツンが小学生時代の頃。 この頃のツンは今とは違い、『捻くれ者』という感じだった。 その行動が照れ隠しなのは今も昔も変わっていないのだが、その為の言動や行動の一つ一つにトゲがあったのだ。 もちろん、そんなツンにも友達はいた。 だが、その友人は全て一年生の頃に出来た友人達。 三年生に上がってからは、一人も新しい友人ができていなかった。 それも全て、ツンの言動と行動が招いた事。 つい余計な事を最後に言ってしまう為、出来るはずだった輪を自ら壊してしまう悪循環に陥っていた。 女子生徒「ねえねえツンさん、昨日のムーンS見た?」 ξ゚⊿゚)ξ「…え、あの……いや、別にそれはあまり見てないから…ちょっとわかんない」 女子生徒「あれ、そうなの? でも、その自由帖はムーンSのじゃない」 ξ;゚⊿゚)ξ「こ…これは、可愛かったからつい買っちゃっただけで、アニメを見ている訳じゃないんだから…」 女子生徒「えー、でも面白いよ? 今度見てみてよ、絶対はまるからー」 ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ、私は見ないから! 可愛くったって、別に話自体に興味がある訳じゃないんだから!」 女子生徒「え、でも…」 ξ゚⊿゚)ξ「しつこいわよ、私はこういうものはあまり見ないの!」 女子生徒「…そう、わかったわ…」 一事が万事、こんな状態だった。 その『自分に合わない事を全て突っぱねる』とも取れるような行動は、周りの人間から避けられる元となっていたのだ。 それは年が過ぎる毎に強くなり、次第に以前からの友人も少しずつ離れていくようになった。 しかも悪いことに、自分から他人へのコミュニケーションの取り方がぎこちなかった。 素直ではない性格が、ここにもデメリットとして表れてしまったのだ。 あまりにつっけんどんな態度を取り続け、それでいて自分からの『自主的な感情表現』が苦手。 そして遂にクラス内からは『あいつとは関わらない方が良い』と影で囁かれるまでになってしまった。 ツンと仲が良かった友人達も、ツンと一緒にいると同じように陰口を言われる事に耐えかね、一人また一人とツンの周りから消えていった… |140 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 12:56:37 ID:BhbGEd++0| …そして小学校五年、最後のクラス編成の年。 ツンの入ったクラスは三分の二以上が『一度同じクラスになった人』だった。 仲の良かった友人も殆どが離れてしまい、ツンはほぼ孤立状態となっていた。 …ツンは寂しかった。 友人達が殆どいなくなり、しかも新しい環境になる筈だったこのクラスは知り合いばかり。 それも、ツンをあまりよく思っていない連中ばかりだった。 ならばせめて、新しい友達を一人位作りたい。 気兼ねなく話せる相手がどうしても欲しい。 それは、これまでの寂しさに段々と耐え切れなくなったツンの正直な気持ちだった。 しかし… ξ゚⊿゚)ξ「あ、あの…私…」 女子生徒「…あ、ごめん…ちょっと今からトイレ行って来るから…」 ξ;゚⊿゚)ξ「え…ちょっと、あの…」 ツンにとって初対面の人に話しかけようとするも、皆そそくさとその場を去ってしまう。 まるでツンと関わるのを避けているかのようだった。 一体何故なのか…初対面の人が自分を避ける原因が全くわからないツン。 |142 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 12:58:39 ID:BhbGEd++0| その時だった。 少し離れた場所から、ツンにとって衝撃的な言葉が聞こえてきたのだ。 男子生徒A「…あそこにいるツンっているだろ? あの子とはあまり関わらない方がいいよ」 男子生徒B「どうして? 別に見た目普通だし、特に性格も悪くないように見えるんだけど…」 男子生徒A「ところが性格に問題大有りなんだよ。とにかく空気の読めない奴でさ、妙にひねてて…       はっきり言って、あいつと一緒にいると気分を悪くするだけだから近付くのはやめとけ。       俺は去年も同じクラスだったけど、あの酷さは半端じゃないぜ…」 男子生徒B「…そ、そうなんだ…わかったよ」 何と、元同じクラスだった人がツンの悪い部分を教えていたのだった。 しかも悪いことに、新しい人達のほぼ全員にその話が行き渡ってしまっていた。 新しい友達を作りたい…そのツンの願いは、わずか一週間で潰される事になった… 完全にクラス内で孤立状態になってしまったツン。 疎外されるという事を初めて味わったツンは、ショックから立ち直れなかった。 家に帰ると家族には元気な顔を見せるものの、それは空元気だった。 夜になると寂しさと悲しさが一斉に襲ってくるようになり、それはツンを長きに渡って苦しめた。 そして更に、ツンは『自らによって』更に追い込まれることになる。 |143 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:01:32 ID:apoxOEL10| ◆ ある夜、ツンは気が付くと不思議な場所に立っていた。 見渡す限りの荒野。周りには岩ばかりで何も無い。 そして何より、近くに生き物の気配が全く無かった。 ξ゚⊿゚)ξ「…何、ここ…どこなの…?」 自分が何故ここに立っているのか、それすらもわからない。 何故、自分は一人だけでこんな場所にいるのだろうか。 家に帰りたくても、場所がわからないから帰りようが無い。 その不気味さと孤独さが、ツンの心を少しずつ侵食していった。 ξ;゚⊿゚)ξ「どこなのここ…誰かいないの? お父さん…お母さん? 誰か……!」 叫んでも全く返事は無い。 聞こえてくるのは、自分の体に当たる風の音だけだった。 目標も無い場所で一人立ち尽くすツン。 まさにそれは、孤独を絵に描いたような状態だった。 ξ゚⊿゚)ξ「…とりあえず歩こう。 いつもでも立っていても…仕方が無いもん…」 意を決したように歩き出したツン。 何も無い荒野を、ゆっくり一歩一歩進んでいった。 しかし、どこまでいっても景色に変化は表れない。 草木の一本や小動物の一体でもいそうなものだが、それすらも現れる気配が無かった。 ツンの心にどんどん広がる、恐怖感と孤独感。 しかし、ツンは止まることなく進み続けた。 |144 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:02:46 ID:apoxOEL10| その時だった。 ツンの視界がいきなり闇に覆われた。 慌てて目の周りを触るツン。 そこには、ざらざらとした目隠しのようなものがくっついていた。 ξ;゚⊿゚)ξ「な…何よ、これ…っ!」 顔にくっついている目隠しのようなものを、何とかして取り除こうとするツン。 しかし引っ張っても剥がそうとしても、全く取れる気配が無かった。 視界が塞がれた上、まだ荒野の真ん中に立っている状態のツン。 いよいよツンの心は、恐怖と絶望に支配され始めた。 ξ;゚⊿゚)ξ「何で…何でこんな事になってるのよ…どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ…!」 孤独感から来る、どうしようもない寂しさと恐怖。 近くに頼れる者は一人もおらず、全く知らない場所に自分だけ。 それだけでも心が押しつぶされそうだったツンに、更に追い討ちがかけられた。 …ツンの後ろから、妙な音が近付いてきたのだ。 それは人ではない足音、そして妙に荒い息のような音。 更にそれ以外にも妙な音も混じっていた。 ξ;゚⊿゚)ξ「な、何なの、何なのよ一体! 嫌だ…嫌よ、こんなの嫌…っ!」 混乱するツン。 しかし、その間にも不思議な足音は少しずつツンに近付いてくる。 耐え切れなくなったツンは、音と逆方向へと走って逃げ出した。 視界は不思議な目隠しに遮られ、全く見えない。 しかしそんな事はおかまいなしに、ツンは音の逆方向へと走り続けた。 …だが、音はしつこく追い続けてくる。 得体の知れないモノから、必死で逃げ続けるツン。 もはやツンの心は、恐怖に完全に支配されていた。 |145 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:04:07 ID:apoxOEL10| ξ;⊿;)ξ(助けて…助けて! 誰か…誰でもいいから助けて…!) 必死で逃げ続けるツンだったが、途中で体にある変化を感じた。 足から地面を踏んだときの抵抗感が急に消えたのだ。 空を切る右足。それと同時に、体が前のめりに倒れこむ。 体が宙に浮いたと思ったその瞬間、視界を遮っていた目隠しが急に消える。 ξ゚⊿゚)ξ「取れ……!?」 目隠しが取れたと思った次の瞬間、ツンの目に入ってきたのは暗い谷底。 自分が谷底へ向かって自由落下していると気付いたのは、数秒経ってからだった。 ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘……嘘でしょ……?」 暗く、最深部が全く見えない谷底へと自由落下し続けるツン。 その状況をはっきりと理解した時、ツンは無意識に叫んでいた。 ξ;⊿;)ξ「…嫌ああああああぁぁぁああぁぁぁぁあぁっっっ!!!!!」 底へと近付くにつれ、ツンを暗闇が包み始める。 それはまさに、恐怖と絶望の象徴のような闇だった。 なす術も無く落下していき、ツンは完全に暗闇に包まれた。 そして… |147 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:05:12 ID:apoxOEL10| ◆ ξ;゚⊿゚)ξ「………うあぁっ!」 布団から飛び起きたツン。 そこは先程までいた荒野ではなく、見慣れた自分の部屋。 体中から汗が流れ出ており、着ていたパジャマはびしょ濡れになっていた。 ξ;゚⊿゚)ξ「夢…だったの…? 何だったのよ…あれは…」 時計を見ると、時刻は五時四十分。 やはり先程まで見ていた夢が原因なのか、いつもより一時間以上も早く起きてしまった。 流石にまだ眠気が残っていたので、もう一度布団に入りなおすツン。 …だが、横になった瞬間に先程の夢が頭の中に蘇る。 『孤独』というものの怖さ、そしてその先にある不安と絶望。 その全てがツンの頭を駆け巡り、なかなか離れてくれない。 寝ているとその怖さが襲ってくるので、結局ツンは時間まで起きている事にした。 ξ゚⊿゚)ξ「…私、やっぱり…独りが怖いの…かな…」 ツンは普段は強気だが、その根幹はとても弱く繊細。 自分で撒いた種とはいえ、孤独な状況に陥った事が耐えられなかったのだ。 仲の良い友達も殆どいなくなってしまい、クラスで話せる人もいなくなった。 それは全て、自分の行動と言動に原因があるという事も認識するようになってきた。 …だが、気付くのが如何せん遅すぎた。 このままでは、これから二年間は孤独感に耐えながら学校生活を過ごしていかなければいけない。 |149 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:06:13 ID:apoxOEL10| ξ>⊿<)ξ「嫌…それは嫌…!」 どうにかして、皆と気楽にコミュニケーションを取れる状態に戻りたい。 しかし、どうすればいいのかが思い浮かばなかった。 まだ少し眠っている頭を回転させつつ、ようやく出した手段は… ξ゚⊿゚)ξ「…恥ずかしがらずに、もっと皆と共通の話題を喋れるようにしようかな…」 それは、この時点でのツンが考え出せる精一杯のものだった。 そして決意を新たに、ツンは学校へと向かった。 友達を増やす為に、以前のように皆と楽しく話す為に。 だが、現実はそう上手く事が運ばなかった。 ツンを毛嫌いしている人は最初から話す気が無く、あまり話をした事が無い人にはツンの出す話題を逸らすような態度を取られたのだ。 朝に考えた作戦は、ものの数時間で失敗してしまった。 その日、ツンはどうしたら良いかを考え続けたが…結局、最後まで良い案は浮かばなかった。 それから二ヶ月、ツンは度々あの悪夢に悩まされ続けた。 クラスで孤立する寂しさ、そしてこのまま改善できなかったらどうしようという不安感。 そして何より、その二つが合わさった事による恐怖感がツンを襲ってくる。 そのうちツンは、少しずつ自分の殻に閉じこもるようになった。 いくら自分から皆に話を持ちかけようとしても、すぐに拒否されてしまう。 皆とコミュニケーションを取る事自体に『恐怖感』を覚えるようになってしまったからだ。 ならば、いっその事話なんか無理にしない方が楽だ。 ツンの考えがネガティブな方向に傾き始めた、その時だった。 そこに、一つの救いの手が差し伸べられたのだ。 |151 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:08:32 ID:Rkbgd29D0| ある日の昼休み、ツンが廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。 それは、昔からとても馴染みがある声だった。 ( ^ω^)「おいすー、ツン。こんな所を歩いてどうしたんだお? こっちには教室は無いお」 ξ゚⊿゚)ξ「知ってるわよ…別に、そんな事どうでもいいじゃない…」 (;^ω^)「…ツン、何だかいつもと様子が違うお? 一体どうしたんだお?」 ξ-⊿-)ξ「別にどうもしないわよ…」 声をかけてきたのは幼馴染のブーンだった。 ツンは、仲の良いブーンの前だけでは落ち込んだ顔をしないようにと決めていた。 当然、自分がクラス内で孤立している事も伝えていない。 だが精神的に参ってしまっていたツンは、もはやそれさえも実行する気力を失ってしまっていた。 (;^ω^)「いくらなんでも暗すぎだお…二週間前に会った時とは別人だお…」 ξ-⊿-)ξ「私だって、たまにはこういう時もあるわよ…      もういいでしょ、私ちょっと休んでくるから…」 ふらふらとした足取りで再び歩き出すツン。 そんなツンの姿を見て、ブーンが急にツンの腕を掴んで引っ張った。 ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ…ちょっと、何をするのよ!」 ( ^ω^)「…ツン、是非とも今すぐ来てほしい所があるんだお!」 ツンに向かって話すブーンの目は真剣だった。 ツン自体は、そんなのは面倒だと思っていたのだが… ブーンの真剣さに断るわけにもいかず、ツンは仕方なく了解した。 ξ゚⊿゚)ξ「…わかったわよ…で、どこへ行くの?」 ( ^ω^)「こっちだお!」 |153 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:10:05 ID:Rkbgd29D0| そういうとブーンはツンの腕を掴んだまま、近くにある階段を上り始めた。 そのまま最上階まで上ったブーンは、屋上への扉を開ける。 この学校は特定の活動を屋上の広場で行う事があるので、扉は常時開放されているのだ。 もちろん転落防止の為に、隙間が無い透明な落下防止板と網が柵に設置されている。 だが、そのおかげで屋上からの風景を楽しむことが不可能になっている。 しかしブーンは、安全対策がしてあるエリアには向かわずに貯水タンクや排気口のあるエリアへと向かった。 ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン、何でこんな危ない所へ連れてくるのよ!       これ、先生に見つかったら怒られるわよ!?」 ( ^ω^)「大丈夫大丈夫…ほら、着いたお!」 ブーンが連れてきた場所。 それは、三つの貯水タンクに囲まれて外側からは死角になっている場所だった。 当然このような場所に生徒が来ることは想定されていないので、近くの柵に目障りな落下防止板も無い。 太陽の光も丁度邪魔されずに差し込み、絶好の場所となっていたのだ。 ξ゚⊿゚)ξ「へえ…良い感じの所ねー」 ( ^ω^)「三ヶ月前位に見つけたんだお!        もし先生がチェックしに来ても、あそこにある隙間から抜け出せば絶対に見つからないんだお。        実際に一回試したことがあるから、そこは保障するお!」 ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりチェックしに来るんじゃない…まあ、ブーンらしいわね」 ツンが言葉を発し終わったと同時に、ブーンはその場に仰向けに寝転がった。 ( ^ω^)「ツンもここで寝転がってみるお!」 ξ゚⊿゚)ξ「嫌よ、服とか髪が汚れるじゃないの」 ( ^ω^)「寝てもらわないと、ここに連れてきた意味が無いんだお。        とりあえずそこにティッシュとハンカチを敷くから、これで…」 ξ;゚⊿゚)ξ「…あー、わかったわよ…寝転べばいいんでしょ」 |154 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:11:18 ID:Rkbgd29D0| ブーンの勢いに負けて、ツンもその場で仰向けに寝転がる。 空には、抜けるような青空と小さな白い雲が見えた。 ゆっくりと空を見ていると、ブーンが寝ながらゆっくりと話し始めた。 ( ^ω^)「僕はここで空を見ながら日向ぼっこするのが好きなんだお。        暖かくて気持ちが良いし、何より空を見ていると凄く安心するんだお」 ξ゚⊿゚)ξ「…安心?」 ブーンの横顔をみるツン。 青空を見たまま、ブーンは更に話を続けた。 ( ^ω^)「何だか不思議なんだけど、空をずっと見ていると不思議な安心感が来るんだお。        どう言えばいいのか少し迷うんだけど…『とても頼れる大きな存在』に包まれてるって感じかお?」 ξ゚⊿゚)ξ「へえ、ブーンもなかなか詩人なのねー」 ( ^ω^)「茶化さないでくれお…ツンも気を楽にして、もう一度空を見てみるお。        多分、僕が言っていることがわかると思うお!」 ξ゚⊿゚)ξ「ふーん…?」 ツンは言われた通り、改めて青空を見つめた。 美しい青と白のコントラストが目に入ってくる。 視界の殆どが空の風景で埋め尽くされ、ツンは無意識に言葉を発した。 ξ゚⊿゚)ξ「…空って、広いのね…」 当たり前にある空。 しかし、ツンは空というものを特に意識してじっくりと見た事が殆ど無かった。 特にここ数ヶ月は落ち込んでいたせいもあり、空自体を見る機会も少なかった。 改めて見た大きな空に、ツンは思わず感嘆の声を上げた。 |157 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:12:44 ID:Rkbgd29D0| ξ゚⊿゚)ξ「不思議ね…何だか本当に心が落ち着くというか…ほっとするわ。     それにまるで…何だかお母さんに抱かれているような安心感が…」 ( ^ω^)「…空は、気分が落ち込んでいるとなかなか見る事が難しい景色だお。       だから僕は、一日に一回は必ず空を見上げることにしているんだお。       気分が落ち着くし、心がほぐれて笑顔になれるし…」 ξ゚⊿゚)ξ「あんたは年中笑顔じゃないの…」 (;^ω^)「…ま、まあ僕の場合はあまり普段と変わらないだろうけど…       でもツンは表情に変化が出てるお。さっきとても良い笑顔をしていたお」 ξ゚⊿゚)ξ「え…?」 ブーンの一言に驚いたツン。 自分はいつの間に笑っていたのだろうか。 つい先程まで、自分は深く落ち込んでいた筈。 空をただのんびりと見ていただけなのに… そんな考えが、ツンの頭を駆け巡った。 ( ^ω^)「さっきのツンは、まるで別人だったお。       いつもの笑顔が消えたツン…言っちゃ何だけど、人を寄せ付けない感じだったお。       まるで自分から関わることを拒否しているみたいな…」 ξ゚⊿゚)ξ「………」 まさにその通りだった。 事実、ブーンに話しかけられた時もツンはブーンと関わることを面倒だと思っていた程だ。 しかし今は… ( ^ω^)「…だからここに連れて来たかったんだお。       ここに来て空をゆっくり見れば、笑顔が戻ってくるから…       ツンにあんな暗い表情は似合わないお、やっぱり今みたいな優しい笑顔が一番だお!」 |158 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:14:32 ID:Rkbgd29D0| ブーンが言い終わると同時に、ツンはブーンの手を握った。 そして今まで全く発することが無かった、素直な感謝の言葉を発した。 ξ゚⊿゚)ξ「…ありがとう、ブーン。      今日は…素直に感謝するわ…おかげで見つからなかった『鍵』が掴めたかもしれない…」 ( ^ω^)「鍵? どこかで宝箱でも見つけて、開けられなかったのかお?」 ξ゚⊿゚)ξ「ふふ…そうね、ある意味『宝箱』かもしれない。全部ブーンのおかげよ、本当にありがとう」 (;^ω^)「な、何だかわからないけど…良かったお!」 ツンはブーンにお礼を言った後、教室へと戻っていった。 その顔からは、先程までの険しい雰囲気が無くなっていた。 そこにはツン本来の表情…優しい笑顔がいっぱいに広がっていた。 それを証明するかのように、ツンは教室に戻ってすぐ、とあるクラスメイトから声をかけられた。 女子生徒「あれ…ツンさん、妙に良い笑顔だけど…何か良い事あったの?」 先程とは全く違う雰囲気になったツンに戸惑うクラスメイト。 だが、ツンはそのまま『素直に』言葉を返した。 ξ゚ー゚)ξ「うん、とても良い事があったわ…それもついさっき、ね」 ツンの凝り固まっていた心をほぐしたもの。 それはブーンの言葉と、どこまでも広がる青空だった。 心が開放されたツンは、少しずつクラスメイトとのコミュニケーションが増えていった。 それに伴い、わずかではあるが友達も戻ってきたのだった。 中学に進んだ後、素直になれない性格が少しだけ復活してしまい、 現在のような性格に落ち着いたのだが…それはまた別のお話。 |161 :青空 -ツンの記憶-:2008/02/22(金) 13:16:43 ID:OET6P9iu0| ◆ ξ゚⊿゚)ξ(結局あれから、私も一日に一回は空を見上げるようにしたのよね…      ブーンのあの言葉が無かったら、こうやって今友達と楽しく遊べていなかったかもしれない…) ちらりと待機席付近を見るツン。 そこには、いつものように笑顔を絶やさないブーンが店長と共に立っていた。 ξ゚⊿゚)ξ(相変わらず良い笑顔をしてるわね。      私もブーン程とは言わないけど、いつも良い笑顔でいられるようにしたいわね…) 朝、久しぶりに小学生の時の悪夢がフラッシュバックしたツン。 しかし、もうあの時のようにいつまでも夢の内容を引きずらなくなった。 落ち込んだら空を見る。それが笑顔を保ち、心を落ち着かせる秘訣。 更に今は昔と違って、楽しく話せて遊ぶ事ができる友人がこれだけいるのだ。 皆のおかげで、自分は本当に幸せになれた… ツンは改めてそう思った。 (;^ω^)「あのー、何か用ですかな…?」 じっと自分を見つめるツンに対して、不安げな声で質問するブーン。 その様子を見て、少しだけ笑いながらツンはブーンに言葉をかけた。 ξ゚⊿゚)ξ「ねえブーン、対戦しない? ドクオはもう疲れたってやめちゃったけど、私はまだやり足りないから」 (;^ω^)「むむむ、今日のツンは何だか絶好調だし…しかし、それでも挑むのが男だお!」 ξ゚⊿゚)ξ「決まりね、じゃあ遠慮なくいくわよ?」 ( ^ω^)「よーし、返り討ちにしてやるお!」 この日は雲が少なく、抜けるような青空だった。 今日も色々な人が空を見て、心を癒していくだろう。 何かに疲れたら、一度空をゆっくり見てみるといいかもしれない。 とても大きい安心感が、そこにはあるのだから。 |162 :ゲームセンター名無し:2008/02/22(金) 13:19:32 ID:OET6P9iu0| 以上です。 今回も登場人物の過去話という感じにしてみました。 しかし前回書いた孟徳の過去話もそうでしたけど、私はどうも重い話にしてしまう傾向がありますねorz ちょっとした短編でしたが、ゆるりと読んで頂ければ幸いです。 では、お目汚し失礼致しました。

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