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|BGCOLOR(AEEB9C):179 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:38:19 ID:3WgoLQiy0| ( ´∀`)「出撃~」 残りカウントは20を切った。 試合展開は敵側に有利がついており、逆転するのは難しそうだ。 しかしモナーはそれを分かっているのかいないのか、 切羽詰った様子も見せずに、いつもの幸せそうな表情でカードを動かしていた。 画面上でぶつかり合う兵士たちに頑張れー、と応援を送りつつ、 撤退していく武将をしっかりと確認していく。 ( ´∀`)「撤退したら自城に戻すモナ」 一枚、また一枚と復活待ちの武将が増えていく。 あとどれくらいで再出撃できるのかを計算しようとした時、 城門を破城槌で攻撃されるカットインが入り、そちらに気を取られる。 パリンパリンと、もともと相手より少なかった城ゲージがさらに削られていく。 勝負は既についたが、それでもモナーはカードを片付けない。 それどころかカードに手をそえて画面を凝視し続け、まだやる気を見せている。 しかしそれも虚しくタイムアップが訪れ、文字とBGMが敗北を告げてきた。 ( ´∀`)「あぁ、間に合わなかったモナ。モナーの負けモナー」 どうやら武将が復活するのをずっと待っていたようだ。 つぶやいてからようやくカードをケースにしまい、 たった一枚の排出カードと、君主カードを忘れずに引き抜いてから席を立った。 他の客が並んでいる訳ではないが、コンテニューはしないようだ。 ( ´∀`)「楽しかったモナ。また来るモナー」 忙しそうな店長にしっかりと挨拶をして、モナーは家路についた。 その顔はやはりどこか楽しげだった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):181 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:41:23 ID:3WgoLQiy0| 次の日の早朝、モナーは自転車をこいでいた。 彼の朝は早い。 それは老人のそれと同じ意味ではなく、小遣い稼ぎの新聞配達をするためだ。 元々早寝な彼にとって早起きは苦ではないため、もってこいのバイトかもしれない。 そして彼自身もそのように考えているようだった。 この仕事をやり始めてからもうかなりの期間が経ったが、 慣れた今でもモナーは最後まで順路帳をきちんと確認して配っていく。 不着や誤配を免れるためであるが彼はそれを無意識的に行っているため、 面倒だと思ったことはいっぺんたりとももなかった。 結果としてクレームを一つも起こしたことがないモナーの評価は悪くなかった。 朝の空が目覚めていくと共に部数が少しずつ減っていくのが彼の楽しみだった。 特に薄い暗がりが少しずつ明るんでいくその変化が一日の始まりを感じさせる。 ( ´∀`)(あの蒼空、極みはいずこであろうのう……) 特に意味はないが、彼の愛用しているLE諸葛亮のセリフを思い出してみる。 そのセリフの意味するところは理解していなかったが、 目の前に広がる空の蒼が澄んでいて、とても綺麗で合っているなと思った。 ( ´∀`)(今日は給料が入るモナ。       久し振りにブーン君と対戦してみるモナー) その思いつきがとても良いものだと自身でうなずきながら、自転車をこいでいく。 諸葛亮を軸にしたデッキを使って勝負してみようと決め、 手持ちのカードを頭に思い浮かべて構築していった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):182 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:44:08 ID:3WgoLQiy0| ( ´∀`)「ブーン君! いざ勝負モナ!!」 ( ^ω^)「おっおっお! 受けてたつお!!」 放課後、彼らはバーボンハウスへ遊びに来ていた。 ちょっとのん気そうに見える二人が声を掛け合い、試合前の握手を交わす。 そしてニッコリと笑い、気合の入れようを示した。 そんな大げさな振る舞いに、ギャラリーは多少うんざりとした。 ξ゚⊿゚)ξ「何これ。何かあんの?」 ('A`)「いや、普通に店内対戦してるだけだが」 異様なテンションの高さにはついていけないと呆れる二人。 金色の髪をツインテールにしている方がツン。 冴えない顔の作りをしている方がドクオだ。 この四人は今や三国志大戦を繋がりにしたゲーセン仲間と言っていいだろう。 仲間内で意識して盛り上げ役と引きとめ役に別れている訳ではないが、 これはこれで人間関係のバランスが取れているのだ。 もしこの二人まで加わっていたら他の客に迷惑になっていたかもしれない。 ('A`)「久し振りに二人で対戦するもんだからテンション上がってるんだろ」 ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん、まぁ勝負は見えてる気がするけどね」 ブーンは四品、モナーは七品という位に留まっている。 だがツンの主張はそんな数字に表れる部分のことを言っているのではない。 ブーンの実力を考えるとモナーに負ける要素はどこにも見当たらない。 彼の成長をそれなりに近くで見てきたが故の結論であったが、 そこにはもう一つ、彼に対する個人的な思いも含められていた。 意気揚々とやることは大切だが、どうせならば負けるよりは勝つ方が良い。 そしてそれは彼にとってもそうであって欲しいと思ってしまう。 贔屓にも似た、その強気な感情が彼女の原動力でもある。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):184 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:47:27 ID:3WgoLQiy0| だがドクオの目から見てもツンと同じ答えに行き着いてしまうのだ。 モナーは自分たちよりも先にこのゲームをやっていたはずだが、 何の理由かいっこうに上手いと思うプレイをあまり見たことがない。 バーボンハウスに訪れる上級大戦プレイヤーたちの技を見すぎて目が肥えた、 ということはないはずだが、それをかんがみても彼は下手な部類に入ると思う。 ( ´∀`)「これは良い勝負になるヨカーン」 ( ^ω^)「頑張るおー」 そんなことは一かけらも考えないのだろう、 モナーとブーンはわいわいと対戦を楽しんでいた。 無邪気なその様子は一見すれば微笑ましい。 彼らのように計算なしでノリ良くできれば、とドクオは思わないでもない。 (´・ω・`)「やぁ、いらっしゃい」 ξ゚⊿゚)ξ「あ、店長。こんにちは」 ('A`)「こんちはです」 (´・ω・`)「店内でもやってるのかい?」 そのようで、と関心なさげな雰囲気を装って相槌を打つ。 だがドクオとてバーボンハウスには遊びに来たのだ。 次あたりにでもブーンに対戦を申し込んでみようと考えた。 (´・ω・`)「ブーン君は魏、モナー君は蜀。いつも通りだねぇ」 SR曹操を中心にした求心デッキと、LE諸葛亮を中心にした八卦デッキ。 実質的に田豊亡き今、使い続けられるカードがあるということの羨ましさを感じつつ、 ドクオは新デッキの構築を試してみたいと思う。 最近よく頂上に載っている苦楽デッキのワラワラ感など自分に合っているかもしれない。 肝心のカードを持っていないのが問題だが、店長に相談して借りてみようか。 そんなことを考えながら店内対戦の様子を眺めていた。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):186 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:50:21 ID:3WgoLQiy0| ( ^ω^)「……」 伏兵処理、兵力管理、士気計算、展開予測、部隊運用。 その全てにおいてブーンはモナーを上回っていると分かった。 ブーンは知らないが、モナーの先日の全国対戦とまったく同じ試合運びだった。 勝敗要因を一言で言ってしまえば、単純な腕の差だろう、それがありすぎた。 試合前にテンションを上げていたこともあってか、 ブーンにはいささかつまらない内容の対戦となってしまう。 ( ´∀`)「負けてしまったモナー」 ( ^ω^)「おっおっお。ブーンの勝ちだおー」 しかしそんな気持ちを見せないように、モナーに合わせてきわめて明るい声で言った。 だがこんなにもモナーは弱かっただろうか、という思いを拭い去ることはできなかった。 ( ´∀`)「凄いモナー。何でそんなにできるんだモナー?」 ( ^ω^)「お? おー、何でって言われても……       開幕はグワッとやれば守れるし、上手くいけば攻めれるお。       中盤からは計略使ってギャーンと敵にぶつかればオーケーだお。       終盤も結局は中盤の繰り返しだお」 いつまでも同じ考えに引きずられるブーンではない。 それよりも楽しいことを頭に思い浮かべることの方がはるかに有益だ。 ( ´∀`)「なるほどー、四品にもなるとさすが考えることが違うモナー」 (*^ω^)「おっお! 褒めても何も出ないお!」 ( ´∀`)「僕の方が三国志大戦の先輩なのに、僕は全然だめモ、モナァ……」 ('A`)「おい、そこの調子乗ってるヤツ、次は俺と勝負だぜ」 モナーの言葉によってすぐに木に登ったブーンは、 続いて挑戦の意を表明してきたドクオに気を取られる。 途中から元気のなくなったモナーには気付けなかった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):188 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:54:33 ID:3WgoLQiy0| 1回しか対戦し終わっていないが、喉が渇いてしまった。 飲料自動販売機でドクターペッパーの350ml缶を購入し、 店内脇にある自動ドアから出て、路肩に腰を下ろした。 隣接している喫茶店wktkに入ってもよかったのだが、 まさか缶ジュースだけを席で飲む訳にもいかないだろう。 携帯電話を取り出し、三国志大戦携帯サイトへアクセス。 最新出陣記録から先ほどの大戦内容の情報を読み出す。 突撃階数や迎撃回数はデッキ構成に差があるので比較しづらいが、 相手の撤退数に比べてこちらは3倍近い数字が出ているのが特に顕著だった。 続いて君主カード情報ページへと移る。 負けが多く、50%にも満たない勝率。 気にしたことはないが、これではこの連勝記録も褒められたものではないのだろう。 並んだ×の多さが何だかとても虚しいものに感じられた。 (´・ω・`)「モナー君、休憩かい?」 ほうきとちりとりを手にした店長が店から出てくる。 これから店周りの掃除をするのだろう。 バイトにでもやらせればいいのに、とモナーは思った。 消沈していたモナーはそれには答えず、ショボンの行動をボーッと見ているだけだった。 シャッシャッ、と歩道を掃く音に混じって車のエンジン音がたまに響いた。 ( ´∀`)「店長さん……」 (´・ω・`)「はい?」 ( ´∀`)「店長さん、モナーは弱いモナ?」 普段は聞くことのできないくらいに力のない声色。 さすがにショボンはほうきを操る手を止めた。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):190 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 20:57:19 ID:3WgoLQiy0| (´・ω・`)「あぁ、ブーン君に負けてしまったのかな?」 ( ´∀`)「それもあるけど、それだけじゃないモナ……」 モナーが手にしている携帯電話に気付いたショボン。 なるほど、きっと負けがこんでるのだろう、とあたりをつける。 いつもと変わらない表情。 なのに悲しげに見えるのは気のせいではないだろう。 (´・ω・`)「えっと、そうだねぇ……でも、どうしてだい?」 強くはない、と本音を口にすることへの躊躇から答えるのに窮したため、 まずはそんなことを言い出した理由を聞いてみようと思う。 ( ´∀`)「僕はブーン君より先に始めたモナ。       だけど今じゃブーン君の方がはるかに先を行ってるモナ。       それに比べて僕は……」 言葉を飲み込んでしまうモナー。 悔しいのか、呆れているのか、もしくはその両方か。 ( ´∀`)「僕には開幕でグワッとやって守ったり攻めたりできないモナ。       中盤で計略を使ってギャーンと敵を倒すこともできないモナ。       ずっとやってきてまだこんな調子なら、きっと上にいく才能がないモナ」 擬音が具体的に何を意味しているのか全くもって分からないが、 諦めを携えた瞳で語るモナーには手を差し伸べたくなってしまう。 (´・ω・`)「モナー君、人には向き不向きというものがあるんだ。       君に三国志大戦が向いていない、と言ってる訳ではないよ。       比べてしまえば君よりもブーン君の方が合っていたんだろうね。       けど彼と自分を比較して落ち込む、なんてことはしちゃいけないさ。       君には君の楽しみ方がきちんとあるはずだよ」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):192 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 21:02:11 ID:3WgoLQiy0| ショボンの言っていることは分かる。 しかしモナーは首をふるふると横に振った。 疑問を持ってしまっている今の自分にはあまり納得がいかない考え方だ。 ( ´∀`)「僕はアルバイトをしてるモナ。       それで貰ったお金をたくさん三国志大戦に使ったモナ。       でも残ったのはこの酷い数字と少しのカードくらいモナ。       こんな成績しか出せないならやらない方がいいモナ」 過去を振り返って、愚かな行為をしていたと感じているのだろう。 強くなれなくてもずっとゲームを楽しんできたモナーのことをショボンは知っている。 だから今の彼はいつもとは違う人に見えた。 余計なことには惑わされずにいつも奔放だった彼はどこにいってしまったのだろうか。 (´・ω・`)「あの蒼空、極みはいずこであろうのう」 ショボンは顔を上げ、空を仰ぐ。 その言葉とは裏腹にオレンジ色に染まった空が広がっている。 何を思ってそのセリフを口にしたのだろうか、モナーには分からない。 (´・ω・`)「仕えると決めた君主に夢を実現させてやれなかった時。       そして夢半ばで倒れなくてはいけなかった時。       彼はどんな思いだったんだろうねぇ。       王朝の復興、そして天下統一を成し遂げられなかった彼は、       忠誠を尽くしきることができなかったと自分を責めたかもしれない。       そんな彼の気持ちをおもんばかると僕はいつも切なくなってしまうんだ」 彼、とショボンが指した人物のことはモナーにもよく分かった。 三国志きっての名軍師、誰もが一度は憧れる智謀の持ち主、 その名を知らぬ者はいない英傑中の英傑、諸葛亮孔明。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):193 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 21:06:44 ID:3WgoLQiy0| (´・ω・`)「でも彼は彼の人生を生きた。       それは恥じるべきことじゃない。       後悔したのは自分に正直でいたからだ。       あれ、勝手に人の気持ちを想像して勝手に意見するなんておかしいかな」 自分の言ったことがおかしかったのだろう、ふふ、と息を漏らした。 (´・ω・`)「後悔してもいいじゃないか。       後悔しているその時は見えないものを忘れずに思い出せるならね」 ( ´∀`)「モナーは何を忘れてるモナ……?」 モナーがショボンの言った意味を考えようとした時。 ( ^ω^)「おっおっ! モナーここにいたのかお!」 ξ゚⊿゚)ξ「知らない間にいなくならないでよね」 ('A`)「一人で帰ったのかと思って探したぜ」 自動ドアが開き、バーボンハウス内から級友たちが顔を見せた。 ('A`)「何だよモナー、俺の勇姿見てなかったのかよー。     せっかくブーンに勝ったってのに、お前が証人になってくれなきゃさぁ」 ( ^ω^)「ちょっと待てお!       嘘は良くないおドクオ。勝ったのはブーンだお?」 ('A`)「出たよ~負け犬の遠吠え。やだねー。     ま、認めたくないのは分かるけどよ」 ( ´∀`)「……」 仲間のいつものテンションについていけず困惑するモナー。 しかしそんな様子に気付いているのかいないのか、彼らは思い思いに語りかける。 ( ^ω^)「それじゃあ今度はちゃんとモナーに見てもらうお!」 ('A`)「あぁ、ブーンがこてんぱんに負ける様をな」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):195 :ゲームセンター名無し:2008/06/18(水) 21:10:02 ID:3WgoLQiy0| ξ゚⊿゚)ξ「モナー、まさかブーンに負けていじけてたんじゃないでしょうね。       槍が多いアンタの方が有利なんだからシャキっとしなさい       ほら、戻るよ!」 ( ´∀`)「え……でも……」 ξ゚⊿゚)ξ「いいから。同じ蜀使いとして情けなくないようにしてあげる」 ( ^ω^)「じゃあブーンは騎馬を教えるお」 ('A`)「じゃあ俺は伝説の蜀ワラデッキを伝授するぜ」 (´・ω・`)「ふふ」 ワイワイと喋り続けるブーン達の側でショボンが嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。 それでようやく店長の意図を理解する。 彼らに囲まれて、心に沸き上がってくる暖かいものに触れた。 その意味するところ。 ( ´∀`)(……僕は今、楽しいモナ!) 楽しみ方には勝敗以外の側面があることを忘れていた。 一つの結果だけが全てではないことを忘れていた。 大切な人の繋がりが生まれていたことを忘れていた。 そしてモナーは、自分には数字以外のものがきちんと残っていると思い出したのだ。 ( ´∀`)「分かったモナ、ちょっと休憩してただけモナ。       じゃあお言葉に甘えて色々と教えてくださいなモナー」 いやこれからも残し続けていこう。 例え目標にたどり着けなくても、立ち止まらない限り得るものはあるのだから。 ( ´∀`)b「店長さん、ありがとうございましたモナー」 (´・ω・`)b「お礼は孔明先生に頼むよ」 そしてモナーは再び仲間の輪の中へと戻っていった。 その笑顔はどこまでも蒼く澄み渡っていた。 ----

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