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|BGCOLOR(AEEB9C):854 :合作3戦目:2008/12/13(土) 21:09:09 ID:V2aO0opN0| 放課後。 学校からの帰路。 歩調を共にする二人の姿があった。 ξ゚⊿゚)ξ「寒い日が続くね」 ( ^ω^)「だおだお。もっと寒くなったらツンは凍っちゃうお」 ξ゚⊿゚)ξ「アイスじゃあるまいし」 ( ^ω^)「パーンパーン、パーンパーン、       パンパンパンパカパンパンパパパパパーン♪」 ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」 ( ^ω^)「パンの歌だお。知らないのかお」 ξ゚⊿゚)ξ「知らね」 ( ^ω^)「ツンは何のジュースが好きかお」 ξ゚⊿゚)ξ「私は冷麺が好き」 ( ^ω^)「ブーンは夏が好きだお」 ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ右手と左手はどっちが好き?」 ( ^ω^)「ブーンは右手の方が好みだお」 ξ゚⊿゚)ξ「私は左手~」 ( ^ω^)「ふむふむ、今日も空は青いお」 脈絡のない会話。 ツンはその中に彼の異変を少し感じ取っていた。 アホなのはいつものことだが、 今のブーンは喋っていないと落ち着かないといった様子だ。 その理由は、なんとなく想像がつく。 ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……今日バーボンハウス、行く?」 ツンは今ブーンが大尉昇格戦の真っ只中にいるということを知っている。 そしてそれをブーン自身もかなり気にしていることも。 もしかしたらゲームのことについて触れてもらいたくないのかもしれない。 そう思ったから、普段とは少し違う彼の言動を注意したりすることはなかった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):856 :合作3戦目:2008/12/13(土) 21:13:02 ID:V2aO0opN0| ( ^ω^)「行くおー。ツンに見ていてもらいたいお。       来てくれるかお?」 だがひいきにしているゲームセンターへ行くことをあっさりと認めるブーン。 むやみに他の話題ばかりを続けるのは、 触れられたくない核心がある訳からではないらしい。 今のブーンが全国対戦をするということは、負けられない試合に挑むということだ。 5試合中の4試合に勝利しなければ大尉に上がることはできない。 許されるのは1敗のみ。 だがそのような心の隙は即敗北に繋がってしまう。 そういった状況の中で、ついてきて欲しい理由が彼にはあるらしい。 選ばれたのがなぜ自分なのか、ツンは確認したいところである。 だが今は触れない方がいいかもしれない。 ブーンがそう望むならば、その通りにしてやろう。 ξ゚⊿゚)ξ「別に私ははじめから行くつもりだったし。       あんたの試合を見に行くんじゃないんだからね」 ( ^ω^)「おっお、ありがとうお」 言葉を額面どおりに受け取らずに礼を言ってきたブーンをはたいておく。 自分が気持ちを素直に話さない人だと分かっていると ブーンが言いたげなのがツンには気に入らない。 以前ならば心情を悟られることもなかったのに、 それなりに付き合いが長くなってしまったということだろうか。 ξ゚⊿゚)ξ(まぁ他に予定もないし、いっか) 最初から三国志大戦をやろうとしていたのは事実だ。 ブーンに追いつかれるかもしれない、という焦りもある。 だがもし、ブーンに追い抜かれたその時は―― ---- |BGCOLOR(AEEB9C):858 :合作3戦目:2008/12/13(土) 21:16:40 ID:V2aO0opN0| ( ^ω^)(勝てるかおー) 一方ブーンは授業中も大戦のことばかり考えてしまうくらいに、 余裕のない一日を過ごしていた。 だからこそツンに一緒に居てほしかった。 彼女がそばにいるというのは、なんだか心強い。 なぜそう感じるのか意識したことはない。 理由を考察するような人でもない。 ブーンは何かお守りのようなものを求めていたのかもしれない。 大事な一戦を前に験を担ぎたくなったのだろうか。 しかし彼は神社に赴いてお祈りをするような質ではない。 大切な人が側にいればそれだけで自らの力になるのがブーンである。 勝利の女神のような存在、それが彼にとってのツンだった。 ツンは強い。 大戦を通じて再会してから、余計にそう思うようになった。 ゲーム上でももちろんそうだし、人間的にも魅力的だ。 表面では好意的とは言えない言葉で当たってくることもあるが、 裏にはしっかりとした思いがある。 その思いに気付くことができれば、キツイ言葉も受け入れられるようになる。 ブーンが尊敬するのは彼女の弱い心を見せないという強さだ。 自分は感情に流されやすい方だ。 そしてそれをすぐに顔に出してしまう。 だからだろうか、いつでも気丈に振る舞えるツンをうらやましく思う。 一生そんな風にはなれないだろう。 だがそんな彼女にもうすぐで追いつけるかもしれない。 彼女の三国志大戦での位は大尉で、証は8だ。 あと二勝で称号だけは同じになる。 そう思えばヤル気が出ない訳がなかった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):860 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:20:22 ID:V2aO0opN0| ゲームをやる上で目標がいくつかできた。 自分だけの称号を手に入れたいというのもその一つだ。 少し前に店長にそれを問われた時は、とりあえず大尉になると宣言した。 その裏にはツンと同じになりたいという気持ちが少なからずあったのかもしれない。 それが実現した時のことを考えるとついつい陽気になってしまう。 やはり自分は心に正直に生きることしかできないようだ。 2人はそれぞれに思いを抱きつつ、同じ方向へ歩いていく。 幼馴染であり、旧友であり、互いに恋慕しあう間柄だ。 彼らにとっても重要な意味を持つ大尉昇格戦、その3戦目が始まる。 【ブーン軍】――1品 デッキ:LE曹操・旧R徐晃・UC曹仁・UC楽進・C郭皇后 【アグリアス軍】――大尉 証3 デッキ:R太史慈・UC関平・UC甘寧・R?統・UC厳顔 ( ^ω^)「二色だお」 (´・ω・`)「水使い君主がこのデッキで頂上に載ったことで有名になったね」 ξ゚⊿゚)ξ「普通の号令デッキ対決とは違う楽しみがあったわね」 ( ^ω^)「確かにブーンのともちょっと違うデッキだお」 バーボンハウスに入るといつも通りに店長が出迎えてくれた。 ブーンが昇格戦に突入していることを彼も知っているため、 セコンドについてくれるようだった。 この二人がいてくれれば鬼と金棒を手にしたようなものだ。 ( ^ω^)(どっちが鬼でどっちが金棒なのかは黙っておくお) ---- |BGCOLOR(AEEB9C):862 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:23:39 ID:V2aO0opN0| 敵と対峙してみた時の第一印象は、どこか頼りないというものだった。 号令計略を持つカードが一枚も入っていないし、 士気消費の大きな計略も一つしかない。 高武力は二枚ともが弓兵なところがさらに弱そうに見える。 これでよく頂上対決に載ったものだと改めて思った。 軍師陳羣の奥義選択を再起興軍にするブーン。 右の知勇兼陣で基礎能力を底上げするのも悪くはない選択肢だが、 敵デッキ構成の意味をよく把握していない場合は予想外の全滅という事態が怖い。 トラックボールをさっと左に動かし兵略を選んだ。 戦場は真ん中に岩が設置されており、その岩を中心にして部隊を二つに分けた時、 機動力の低い軍勢は地形が邪魔をして部隊運用に支障をきたすことがあるが、 全て騎馬で構成されているブーン軍にはそのような憂いは無用であろう。 ( ^ω^)(もしかしたら開幕から一発取れるかもしれんお) 左に徐晃・郭皇后、右に曹仁・楽進を配置したところで曹操をどうするか悩む。 敵が開幕から端攻めしてくる可能性を考えると、伏兵を端に置くのは博打に近い。 ゆえに自城近くに配置して、伏兵の力で守備を固めるのがいいかもしれない。 だがそんな戦術論よりもブーンがよりどころとした言葉があった。 ツンの左手が好きという会話が無意識の内にブーンの思考ベクトルを決める。 ( ^ω^)「左にするお」 (´・ω・`)「どうしてだい?」 ( ^ω^)「左手が好きだからだお」 ξ゚⊿゚)ξ「さっき右手が好みって言ってたじゃん」 ( ^ω^)「そうだおー」 だから左を選んだのだ。 ツンが好きと言った左手を。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):864 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:27:10 ID:V2aO0opN0| 開幕。 相手はこちらから見て左手に部隊を集めてきていた。 (´・ω・`)「当たったね」 ( ^ω^)「おっお」 ξ゚⊿゚)ξ「まぐれよ、まぐれ」 真ん中悪地形を十分に活かすなら、こちらの機動力の高さを利用する以外ない。 戦力を二つに分け、相手の部隊を左右に振り続ける作戦だ。 敵がその揺さぶりに耐えられなくなった時に隙は生まれるはずだし、 もし分けた戦力の片方を敵が無視するようなら攻城はもらったものだ。 どちらにせよブーンにとって有利な展開となるはずだ。 だがデッキを見た第一印象を思い出してみると、 かつて見た開幕乙系デッキの印象もある。 ならば開幕は守りに徹した方がいいのかもしれない。 まして敵には全体号令計略がないのだから、 カウントが進めば進むほどこちらは有利に試合を運べるに違いない。 だが今日はツイているという予感がある。 運命の女神と呼ぶのは恥ずかしいが、心強い味方が側にいてくれる。 それは積極的な部隊運用をしてみようという気にさせてくれる。 ( ^ω^)「攻撃あるのみじゃー」 ξ゚⊿゚)ξ「なぜ田豊?」 カウントが99を切ったと同時に、 ブーンは迷わずに右手から曹仁・楽進を敵城へ一直線に攻めさせた。 しかしアグリアス軍はそちらへ厳顔を回しただけで、 それ以外の部隊はそのまま進軍の姿勢を崩さずに向かってくる。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):866 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:30:36 ID:V2aO0opN0| 画面左手の状況を確認しておくと、 徐晃・郭皇后・曹操に敵対するは太史慈・甘寧・関平である。 敵の?統がどこに隠れているのかは分からないが、 アグリアス軍はブーンの曹操が目の前にいるとは考えていないのだろう。 関平が槍を振り回しながら曹操の伏兵との距離をゼロにしていった。 <天は我に味方せり!> 騎馬使いにとっては天敵この上ない槍兵に伏兵を踏ませることに成功する。 知力6の関平は即死することはないが、乱戦と突撃で落とすことができるだろう。 だが今度は敵の太史慈と甘寧が前線へと上がり、関平を生かそうと画策してくる。 弓兵と言えど前に出られてはブーン軍の突撃から関平を守る盾となる。 ブーン側も関平を逃したくはないので、左手にいる全ての部隊のラインを上げた。 <まんまとかかったな> だがその時?統の伏兵が機能し、徐晃が撤退寸前まで追い込まれてしまう。 ( ^ω^)「ヤバイお!!」 先ほど敵が関平をかばったのと同じように、ブーンも徐晃を生かす為にカードを動かす。 だが徐晃が騎馬オーラを出す前に敵の弓兵の追撃で撤退してしまった。 これで左手の戦局はブーン軍の劣勢となってしまう。 曹操・郭皇后の前に立つのは太史慈・甘寧・?統・関平の四部隊。 関平は瀕死だが、他の三部隊は兵力に十分な余裕がある。 このままでは弓兵の後ろで揚々と募兵されてしまうだろう。 そして兵力が回復した関平が前線に戻ってくるとブーン側はさらに劣勢となる。 (´・ω・`)「これはちょっとヤバイね」 ξ゚⊿゚)ξ「開幕取られちゃうわよ?!」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):868 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:34:08 ID:V2aO0opN0| ブーンの考えが至らなかったのは、 戦力を分ければ一小隊の持つ力の減少に繋がるという点においてだった。 確かに攻城を決めるという点では先手を取っている。 厳顔に邪魔されてはいるが、楽進・曹仁の二部隊が敵城攻めを行っているのだから。 だがその多少の城ダメージを犠牲にして、 一点集中突破を目論んでいた敵の意図通りに戦場は動いていたのだ。 このまま行けばブーンの守城部隊は全滅し、 相手に与えたものより大きなダメージを被るだろう。 下手をすればこの攻防の後に落城ということも十分ありうるほどだ。 (´・ω・`)(僕ならこの戦力差でも左は防げる。       右上の二部隊を撤退させずに何発攻城取れるかに専念するかな) 店長は冷静に打開策を考えるが、ブーンにそのレベルの策を求めるのはまだ早い。 今の悪い状況に持ち込んだことについて反省するのが先だ。 ( ^ω^)「あなどったブーンが悪かったのかお……」 攻城部隊を自城へ戻し、守りに専念するべきか。 それとも城壁の殴り合いに持ち込んでしまうか。 自分の力量を把握していないと、どちらを選択すればいいか分からない。 まして今は大尉昇格戦中なのだ。 ここの判断を間違えたために敗北してしまっては追い込まれてしまう。 ( ^ω^)「店長、どう戦ったらいいんだお!」 (´・ω・`)「そうだねぇ、堅実に曹仁・楽進を戻して……」 思わず店長にアドバイスを求めてしまうが、途中で店長の口が止まる。 ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよ店長」 (´・ω・`)「……いや、分からなくなってね」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):870 :合作6戦目:2008/12/13(土) 21:37:38 ID:V2aO0opN0| 分からない訳がない、とツンは思う。 経験ではショボン店長がこの中で一番勝っているのだ。 彼が判断できないようなレベルの難しい状況にはなっていないはずだった。 ξ゚⊿゚)ξ(私なら無理はしないで最初から守りに徹したかな。       攻城を取るチャンスはこれからいくらでも作り出せるから) 店長が迷うなら自分が口出ししてしまおうか。 先手は取ったのだから部隊を戻して防御に回るのが正解だろう。 店長は部隊運用だけで自城を守れるという考えのようだが、 何なら神速戦法を使ってしまってもいいとツンは思う。 ( ^ω^)「仕方ないお! いったん引くお!」 だがツンが助言する前にブーンはカードを動かしにかかる。 曹操・郭皇后を自城に戻し、攻城を決めた楽進・曹仁も退却させようとした。 だが敵の厳顔がしっかりと突撃も決めていたようで曹仁は撤退、 楽進の兵力も程よく減っていて、守りの戦力にはあまり期待できなくなった。 弓兵が城に張り付いたその後ろで無敵槍によるけん制をしてくるアグリアス軍。 ブーンは部隊の入れ替えを駆使して、何とか落城は防いだ。 ξ゚⊿゚)ξ「序盤失敗かー。まとまらなかったから守りが弱くなっちゃったね」 ( ^ω^)「むむむ……作戦失敗だお」 城ゲージはブーン6割、アグリアス軍8割といったところで中盤を迎える。 ( ^ω^)「まぁいいお! 逆転できない差がついた訳じゃないはずだお」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):871 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:01:52 ID:V2aO0opN0| 部隊の復活・兵力回復が整い、戦場の中央あたりで再び敵とかち合うことになろう。 これからは士気を使った戦いになっていく。 ブーンは中盤以降は有利に進められるはずと憶測している。 計略を使用すれば武力上昇では負けることはないからだ。 カウントもまだまだ残っている。 焦らなくても逆転はいくらでも可能だ。 だがブーンが気になるのは店長の言動だった。 最善のアドバイスがあればここまで被害が拡大することもなかったはずだ。 序盤のミスが負けに繋がるということはよくあることだ。 一発のダメージが致命傷になりかねない。 欲をかかずに先制攻城を決めた時点で守りに入っても良かったかもしれない。 機動力の差では断然にこちらが勝っているのだから。 だが、敵の狙いは攻城力の差で勝つことなのではないか。 アグリアス軍は最初からそれを狙っていたのではないか。 迷いのない敵部隊の動きがそんな考えを呼び起こす。 真ん中悪地形をブーンがその機動力でもって最大限に利用することを逆手に取り、 割かれた戦力の一方を全力で撃破する。 そんな推測はあながち間違いではなく、ブーンは完全に裏をかかれたのだ。 ( ^ω^)(でも、なら部隊を分けなければ負けないかもしれないお) 今度は一丸となって岩の横道を駆け上がっていく。 <そのまま倒れるがいい> だがブーンの考えはまたしても成功しない。 右側から攻めたブーンの部隊に?統の連環の計を決められてしまった。 ξ゚⊿゚)ξ「敵の思う壺ね。ブーンのデッキの力が活きてない」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):873 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:07:30 ID:V2aO0opN0| 戦力を分ければ一方を突破され、 もし片側から全部隊で進軍してくるようならまとめて足を止められる。 当初は真ん中悪地形がブーン側に有利に働くと考えていたが、 今は邪魔者のように居座られている感じしか受けなかった。 岩がなければ求心を打った後に散会することもできたかもしれないのだ。 泥沼にはまってしまったかのように、身動きも思考も沈んでいった。 ( ^ω^)「て、店長ー! どうしたらいいんだお!」 (´・ω・`)「え、ここは――」 いつもやっていたようにショボンはブーンに適切な道を示そうとした。 しかしやはり、その時頭に浮かぶもう一つの考えがあった。 さきほども同じような考えに思考を潰されてしまった。 果たして助言はどこまで与えればいいものなのだろうか、と。 スキルは断然に彼より自分の方が上回っている。 きっとこれから口にしようと思ったことは不利な戦局を打開することになろう。 この試合の勝敗だけを見るならそれでいいかもしれない。 だがそうすることは本当に彼の為になるものではないのかもしれない。 自分自身で最善手を思い浮かべ、実際にカードを動かし、 力のなさに嘆き、負けて反省しなければ強くはなれない。 他人のアドバイスだけを頼りにするようなことでは上に立つことはできないのだ。 (´・ω・`)「そうだね、たまには自分で考えたらどうだい?」 ξ゚⊿゚)ξ「店長?!」 (´・ω・`)「いつも僕に頼ってばかりで、君は本当に戦う気があるのかな」 ( ^ω^)「なに言ってるお? これは大尉昇格戦なんだお?!」 ブーンが画面から目を放し、ショボンの真意を知るために表情を確認する。 だがショボンは、それが何か? とも言いたげな表情だった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):875 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:11:02 ID:V2aO0opN0| 確かにこれは負けらなれない大事な試合だ。 だが本当に価値のある勝利を手にするためにはここで負けることも必要なのだ。 ショボンはブーンには答えず、筐体の画面に彼の注意を戻させた。 そこではただでさえ敵より少ない城ゲージがさらに減っていく様子が映し出されていた。 ( ^ω^)「あぁっ! もういいお! 店長のバカ!」 (´・ω・`)(確かに辛いことを言ったかもしれない。でもバカは酷いと思うんだ……) 店長にアドバイスをもらえなかったブーンは、 敵の猛攻を防ぐ手立てを自分で考えなくてはならなくなったが、取れる手段も少ない。 連環の計にかからなかった部隊で攻城妨害するくらいしかなすすべがなかった。 楽進と神速戦法を使った徐晃の奮闘によりブーンの城ゲージは残り20%となる。 そして戦いは終盤へ。 ( ^ω^)「全滅させてくれた方がありがたかったお……」 ξ゚⊿゚)ξ「再起あるしね。でも敵も個々はそこまで強くないし。       それに向こうは再起じゃないのかもね」 適当なところで切り上げた敵の動きは再起系奥義を温存している時のそれではなかった。 (´・ω・`)「でも安全策と言えばまぁ安全策かな」 とは言え、この攻撃力は舐めてかかってはいけない代物だ。 開幕乙デッキが持つ突破力を中盤以降も発揮できるのが水使いデッキなのかもしれない。 回復計略・連環計略を駆使すれば、粘り強さまで持てる。 もちろんプレイヤーの力がなければ守備がままならないが、 一点に集中させた攻撃力は号令デッキにも負けていない。 戦場全体を把捉する強さではなく、 槍の突きのように鋭く敵陣を崩壊していく強さ。 その攻撃をいなす武器がなければこのデッキは攻略不可能となる。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):877 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:14:59 ID:V2aO0opN0| ( ^ω^)「でも完全に負けだお」 (´・ω・`)「……」 店長はブーンが諦めたと思った。 この負けは自分のせいだとさえ考えた。 助言しなかったことを悔いているのではない。 頼りにされるのは上級者として嬉しいことなのだから。 だが同時に自立するように促すのも役割の一つである。 それを果たせなかった自分が悪かったのだ。 彼はもう初心者ではない。 今後は以前と同じように接することもなくしていかなくてはならないだろう。 そのためにこの敗北は胸に刻みつけておかねばなるまい。 ξ゚⊿゚)ξ「……」 ツンは複雑な気持ちだった。 この後ブーンになんと声をかけたらいいのか分からなかった。 まだ大尉昇格戦が終わった訳ではないと慰めればいいのか。 最悪昇格戦に失敗したとしても次のチャンスはいくらでもあると励ませばいいのか。 だが今日のブーンの意気込みを思い出せば適当ではない気がする。 ブーンはこの試合に勝つことを自分に見てもらいたかったに違いない。 そして勝利の喜びを分かち合いたかった。 言葉で聞いたのではなかったが、自分にもそうしたいという気持ちがある。 だから一緒についてきたのだ。 だが次第に無表情になっていくブーンを見れば、ツンはどんどんと言葉を失っていった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):879 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:18:00 ID:V2aO0opN0| ( ^ω^)「……」 ブーンは考えていた。 先ほど店長が言った言葉の意味を。 この試合だけで2回も店長にアドバイスを求めたが、 実はそうするまでもなく、自分には攻略法が見えるのではないか。 だから店長はわざとあんなことを言ったのではないか。 攻略法、すなわち敵デッキの弱点を見つけ出すこと。 この圧倒的劣勢からでも逆転できる戦術を生み出すこと。 それは今の自分でもできるというのが店長の言葉の真意であるはずだ。 熱心なプレイヤーを見捨てるような店長ではない。 でなければ尊敬などできようものか。 ( ^ω^)(分からない……分からないんだお。       でも何か、糸口が見えてる気がするんだお……) 今日の記憶を巻き戻す。 寝坊して、小テストがダメダメで、午後の授業は眠たくて、 大戦のことばっかり考えていて、ツンと歩いて話をして、 変なデッキが相手で、左手が見事に当たって―― ( ^ω^)(やっぱりツンだお!) その時、ブーンの中に思い出される何気ない一言たち。 ξ゚⊿゚)ξ(――れは序盤失――まとまらなかった――弱くなっちゃっ――) ξ゚⊿゚)ξ(逆に――う壺ね。ブーン――デッキの力が活きてな――) ξ゚⊿゚)ξ(再――るしね。――敵も個々はそこまで強くない――) やっぱりツンを連れてきて、良かった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):881 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:21:29 ID:V2aO0opN0| 天啓のように閃いた打開策が彼の脳裏をひた走った。 ( ^ω^)「これだお!」 まとまらなければデッキが持つ真の力は発揮できない。 試合展開の中でブーンが学んだことである。 だがこれはブーン側だけに当てはまることではなかった。 逆にこちらのデッキ力を強め、相手のデッキの力を弱めることができれば…… そこにブーンの逆転のチャンスが眠っている。 上手く敵の戦力をばらけさせること。 つまり、敵の武将たちをまとまらせずに、個々の力だけで戦わせれば勝てる。 今回ならば一対一の状況を五つ作り、うまく戦いの場を広げさせられれば、 総合武力的に勝っているブーン側が負けるはずがない。 ツンが何気なくこぼした言葉がブーンの中でパズルのように組み合わされ、 新しい戦法を授けてくれた。 その方法とは、求心をかけた全五部隊による敵城への一斉攻城である。 全ての部隊の攻城を一つも通さずに阻止しようとすれば、 一対一の状況が難なく五つ出来上がってしまう。 しかしこの方法にも問題はある。 敵が冷静に1部隊ずつ落としていき、 カウンターを狙うとなると逆にピンチを迎えてしまう。 敵が攻城する番になったときにブーンの部隊は足並みが揃わないからだ。 だがブーンには文字通りの奥義がまだ残っている。 再起興軍。 復活カウントを減らしてくれる兵略があれば撤退のタイミングがいかにずれていようとも 敵のカウンターに十分間に合わせることができる。 左を選んでなければ、こうはできなかった。 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):884 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:24:58 ID:V2aO0opN0| 自城から出撃させる段階で、戦力を分散させておく。 岩地形を挟んで左右から一部隊ずる中央地帯を抜け、 先方は後続を敵陣内で待ち、後続は先方につかず離れずの位置から後を追った。 ある種無謀すぎるこの策が成功したのは、 敵が残りを連環の計でしのごうと考えていたからだ。 だが?統の計略範囲には常に一部隊しか存在しなかった。 これでは計略を打つことは決してできない。 だがそれよりも局面を決定付ける要因があった。 それはアグリアス軍が一試合の中で次々と変わる戦法に対処しきれなかったということ。 しかも終盤での逆転に通ずる布石となった序盤・中盤戦におけるブーンの部隊運用は 見事に失敗に終わっていたのだから、それも無理はないだろう。 たった数分で成長を見せたブーンを素晴らしいと言うほかない。 相手からしてみれば脅威であっただろうが。 覇者の求心。 適度に部隊が落ちたところで再起興軍。 そしてもう一度覇者の求心へ。 敵は最後にしてこの単純な攻めに耐えられずに一つ、また一つと撤退していった。 ( ^ω^)「これで逆転勝ちだお!!」 <俺の戦は至弱より始まり、至強を倒すに至る!> (´・ω・`)「お見事だったよ、ブーン君」 ( ^ω^)「店長!」 (´・ω・`)「よく敵のデッキの威力を弱める展開に持っていけたね。       この勝利は今までの勝利より大変に価値のあるものになったよ」 ( ^ω^)「おっおっお~! 店長アドバイス止めてくれてありがとうだお」 (´・ω・`)「ブーン君たちももうアドバイスを乞うだけの初心者ではない。      自分で考え、それを自分で行動する。それが上達への道さ」 ---- |BGCOLOR(AEEB9C):886 :合作6戦目:2008/12/13(土) 22:29:05 ID:V2aO0opN0| そういえば今まで店長に頼りすぎていたかもしれない、とブーンは思う。 何かがある度に店長に聞いて教えてもらっていた。 今はもうあの頃の初心者ではない。 ( ^ω^)「確かにそうだお。初心者から上級者にランクアップしてやるお!」 (´・ω・`)「その意気、その意気!」 ξ゚⊿゚)ξ「中級者の位置がごっそり抜けている件について」 ( ^ω^)(でも勝ったのは正直ツンにヒントをもらったからだお) 冗談で大きいことを言ってしまったが、 ツンの言う通り、まだ上級者になろうなどというのは気の早いことなのだろう。 だが目指すはやはり上級プレイヤーになることだ。 そのために成すべき道が分かっただけ今日は良しとしよう。 ξ゚⊿゚)ξ「店長が途中で何も言わなかったのは、そういうことかー。       まぁ最後のは戦法というには単純だけどね。よく逆転したんじゃない?」 それに、控えめに、だけど少し嬉しそうに褒めてくれるツンを見れた。 それが何より嬉しかった。 ( ^ω^)「ツン、ありがとうだお~」 ξ゚⊿゚)ξ「は? 何がよ」 ( ^ω^)「ツンのお陰で勝てたお。お礼の言葉が尽きないお」 ξ゚⊿゚)ξ「別にアンタのために来たんじゃないし。私もさっさと証増やそっと」 (;^ω^)「酷いお……」 これでブーンの大尉昇格戦は三勝負けなしとなった。 残り二試合の内、たった一勝するだけで念願の大尉への昇格を果たすことができる。 ストレートで称号を獲得してしまうのか。 それとも追い込まれてしまうのか。 もしくは悔しくも再挑戦するはめになってしまうのか。 運命の分かれ道、その第四戦目はまた後日ということになる。 ----

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