ライオン創業者小林富次郎

クリスチャン人物伝~小林富次郎(1852-1910)~


 歯磨や石鹸の製造販売で名の知れた株式会社ライオンの創始者小林富次郎(1852-1910)は、とても熱心なクリスチャンで「法衣を着た実業家」とか「そろばんを抱いた宗教家」とも言われていました。

 小林富次郎がキリスト教に出会ったのは36歳、神戸に住んでいる時でした。ある劇場でキリスト教の演説会があり、彼は友人を誘って出席しました。ところが途中、この演説会を妨害しようとする若者たちが騒ぎだし、場内は一時騒然としてしまいます。

 そこに柔道の教師をしているというクリスチャンの大男が控え室から出てきたので、小林は、きっと腕ずくで暴徒をつまみ出すのではないかと成り行きを見守っていました。ところが、予想に反して大男は暴徒たちの前に出ていくと、ひたすら頭を下げて静かにしてくれと頼み込んだのです。
 これを見て、小林は「キリスト教というのはこういう宗教か」と深く感動し、熱心に教会に通うようになり、やがて多聞教会の長田時行牧師から洗礼を受けることになりました。

 その後、彼はマッチ製造の事業をはじめるために全財産をはたいて宮城県石巻に大規模な工場を建て、フランス製の機械を導入し、北海道でマッチの軸木になる木材を購入しました。
 ところが洪水によって一年分の原木がながされ、工場も水浸しとなり、再起のために日夜奔走するもうまく行かず、進退窮まった彼はついに自殺を決意し、ある晩、北上川の橋の上たたずみ身を投げようとしたその瞬間、彼の心に稲妻のように御言葉がひらめいたのです。

「およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせるのです。」(ヘブライ人への手紙12章11節)


 これは神戸の長田牧師が葉書の便りに書いて贈ってくれた御言葉でした。彼はこれによって自殺を思い止まり、再び事業と取り組む勇気を奮い起こし、東京の神田に石鹸やマッチの原料取次ぎの「小林富次郎商店」を開設。それがライオンへと発展したのでした。

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最終更新:2012年05月24日 18:12
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