主の導きに従う No.3

主の導きに従う No.3


弁護士 佐々木 満男

■本稿は〝恵みの雨〟連載記事「あらゆる問題は解決できる」の98年11月号の原稿です。


1.常識に反する神の導き

問題を解決するために主の導きを祈り求めていくときに、主から「○○をしなさい」という明確な指示が与えられることがあります。多くの場合、合理的に考えて「なるほど」と納得がいきますので、主の指示どおりに実行して問題が解決されることを体験できます。

けれども場合によっては、私たちの常識に反するような指示がなされることもあります。そこで、神の御旨と人の思いの葛藤が始まります。神はご自身のかたち(イメージ)に人を創られました。(創世記1章27節)それは人に自由意志を与えられたということです。人に自由意志がなければ、単なるロボットにすぎず、神との間に自由に愛し合う関係を持つことはできません。

ですから、人は自分の意志によって神の指示を拒絶することができます。拒絶できるにもかかわらず、自分の意志によって神の指示(導き)に従うことが、神にとって大変うれしいことなのです。そうすれば人は神から真の幸いを受けるのです。イエスさまも、ご自分の願いではなく、神の御心に忠実に従って十字架にかかってくださいました。


2.エチオピア人の難民ビザ事件

エチオピアの軍事独裁政権による反政府クリスチャン部族に対する迫害と弾圧を逃れて日本に来た方(Mさん)の政治難民ビザ申請のお手伝いをしたことがあります。法務省にいろいろな資料を提出して本人も時間をかけて熱心に惨状を説明しました。その結果担当官は十分納得してくれたのですが、上司の決裁で難民ビザ発給は拒絶されてしまいました。

やむを得ず、難民を受け入れてくれそうな国々の大使館を回りましたが、どこでも門前払いです。私の事務所で働いていたカナダ人の弁護士に相談したところ、ちょうどその時彼の父親であるカナダの牧師が来日しているので会ってみたらどうかと言われました。面会した結果、牧師はMさんに心から同情して、「私が保証人になります。仕事も探してあげるから、すぐにカナダへの移民申請を出しなさい」と言ってくれました。前にカナダ大使館からも門前払いをされていたのですが、これはきっと神の計画にちがいないと思って、移民申請を提出したら、受理されたのです。

その後トントン拍子に手続が進んで、2週間もすればカナダ行きのビザがおりるところまできました。そんなある日、Mさんから「どうしても相談したいことがあります」と言われて面会しました。「実は、ビザの申請書に事実でないことを書いてしまいました。主に祈るたびにそのことが気になって平安がありません。大使館に行って正直に話したいと思うのですが、どうでしょうか」と言うのです。

不実の記載そのものは小さな事でした。まずカナダに入国してから次のビザ申請の時にでも修正すれば済むようなことです。「小さいことですから入国後に訂正したらどうですか。今大使館に申し出たら、他の重要部分の記載の真実性も疑われてしまうでしょう。ビザがおりなくなるリスクが大いにあります。そうなるとこれまでの数年間の努力が水の泡になってしまいます。もう他には移民できそうな国はないのですから」と警告しました。しかし、「それにもかかわらず、主が正直に告白するように導いておられるのでしたら、それに従うのがベストだと思います」とクリスチャンとして申し上げざるを得ませんでした。

Mさんは数日間非常に悩んで苦しみましたが、ついに主の指示に従う決心をして大使館に行って、不実記載を告白し、謝りました。案の定、カナダの移民ビザは拒絶されてしまいました。Mさんは主の導きに忠実に従ったのだから、主は必ずビザ発行を許可して下さると信じていましたので、この結果に非常に失望しました。日本出国の最後の可能性がなくなってしまったのです。それからは祈ることもやめてしまい、教会にも行かなくなってしまいました。

悶々として数ヶ月たったとき、法務省から1通の手紙が届きました。それは「1カ月以内に国外に退去せよ」という強制退去命令でした。Mさんがエチオピアに強制的に送還されたら、ブラックリストに載っていますので空港でそのまま逮捕されて処刑されてしまう危険がありました。

Mさんはますます絶望的になりました。しかしもはや祈るしかありません。最後の頼みの綱を「軍事独裁現政権の打倒」にかけて再び祈り始めました。それはまことに命を懸けた激しい祈りでした。涙とともに叫びながら断食をして祈り、夜を徹して祈り続けました。仲間のクリスチャンたちも加勢して祈りました。そうしたら神の奇蹟が起こったのです。

強制退去期限一週間前に突然現職の独裁者大統領が国外に逃亡してしまいました。その数日後に反政府勢力によって現政権が打倒されてしまったのです。

Mさんは安全に祖国エチオピアに帰り、首都アジスアベバで喜んで暮らしています。


3.主の計画は完全

Mさんの当初の願いどおり、カナダへ移民していたらどうでしょうか。Mさんの命を懸けたあの激しい祈りはなかったと思います。主はすべてを掌握しておられます。人の目に一つの解決の門が閉じられたと見えるときは、実はもっと良い別の解決の門が開かれているのです。ただし、その門は人の目には見えませんので、ただ主を信頼するほかないのです。


「主の山に備えあり」(創世記22章14節)

あなたがたの会った試練で世の常でないものはない。神は真実である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることはないばかりか、試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えてくださるのである(Ⅰコリント10章13節)。


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最終更新:2012年05月24日 18:37
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