決してあきらめない(その1)

ヨハン早稲田キリスト教会 文書宣教部


弁護士 佐々木 満男

■本文は“恵みの雨”連載記事「あらゆる問題は解決できる」の98年12月号の原稿です。



1.ゆだねる


問題を解決するために重要なことは「決してあきらめない」ことです。交渉でも裁判でも、多くの場合最後まで決してあきらめない人が勝ちます。そこで勝敗にこだわって、絶対に妥協や和解をしない人が出てきます。そういう人は毎日朝から晩まで問題の解決にとらわれてしまいます。「なにがなんでも勝つんだ」と歯を食いしばって頑張り続けます。

こうなると「意地」が先行して、相手に対する憎しみが増して心の平安や喜びが失われていきます。その結果問題が有利に解決したとしても、それ以上に大きな犠牲が払われてしまうことになります。

しかしキリストを信じる者は問題の解決を「主にゆだねる」ことができます。「主は私にかかわるすべてのことを、成し遂げてくださいます」(詩篇138篇8節)の御言葉を信じることができるからです。

ところが日本語の「ゆだねる」という言葉のニュアンスから、「主にゆだねる」のではなく、「状況にゆだねる」という間違いをすることが多くあると思います。これは、「状況の流れにまかせる、結果はどうなってもよい、私はなにもしない」という無責任に陥ってしまいます。

私たちが「ゆだねる」のは、「主にゆだねる」のであって、「状況にゆだねる」のではありません。「主にゆだねる」とは「主に完全にまかせて、主の導きに完全に従う」ことを意味します。言い換えれば、「主が解決して下さる」ことを「決してあきらめない」ということです。



2.ある遺産相続事件


今から四十年前にYさんの父親がなくなり、大きな土地(山林)が遺されました。長男であったYさんは父親からきちんと相続財産を分配するよう頼まれていました。相続人が多数いたために、とりあえず、相続人全員の共有とする登記がなされました。ところが、土地が遠隔地にあったこともあって、その後二十年間放置されたままでした。

その間に一部の相続人が死亡してその親族が引き継いだり、土地の価格がどんどん高騰したため、分割して処分したいと申し出る相続人が出てくるようになりました。そこでYさんがこの土地の状況を調べたところ、町当局によって無断で土地全域にわたって植林されていることがわかりました。

Yさんの依頼で私は一緒に現地を訪問して調査しましたが、登記簿上も土地の境界線がはっきりしていなかったため、村人たちが勝手にその土地を自分たちの所有地として使っているではありませんか。

私たちは祈りつつ、時間をかけて村人たちを説得し、町役場の理解を取り付け、なんとか境界線を確定するところまでこぎつけることができました。しかし、土地上の植林はどうすることもできません。結局、町当局に土地を買い取ってもらう以外に解決方法がありませんでした。

その後Yさんの献身的な努力にもかかわらず、処分方法や処分価格についての町当局や相続人全員の合意をとりつけることができず、問題は完全に暗礁に乗り上げてしまいました。

そして次々に相続人が亡くなってその親族が引き継いだり、バブル崩壊後の土地価格の値下がりから早く処分するようにとせかされたり、Yさん自身も高齢になっていつ天に召されるかわからないというように、情勢はさらに悪くなっていきました。

しかしYさんはキリストにすべてをゆだねていましたので、「いつか必ず主が解決して下さる日が来る」と信じて、決してあきらめることなく、誠意を尽くして話し合いを続けました。

そうしたところ、最近になって急に町当局が本件の問題解決に積極的に乗り出してきたのです。十数人に及ぶ相続人の一人一人を説得し、町議会で妥当な金額による買収を議決してくれました。こうして当事者全員が納得する形で土地の売買が成立したのです。相続開始から問題解決までに実に四十年かかったわけです。

Yさんはふり返ってみて、苦しい事も多かったけれども、主が時間をかけて解決して下さったことに非常に感謝しています。この問題の解決を絶えず主にゆだねて、勝利を信じつつ平安な日々を過ごせたこと、親族一同にキリストの福音を宣べ伝えることができたこと、問題の解決を現実に見て、主が生きておられるという確信を深めることができたこと等々にです。



3.ネバー・ギブアップ


第二次世界大戦でドイツ軍の猛攻撃によって降伏寸前まで追いつめられたイギリスは、「正義は必ず勝つ」との神に対する不動の信念を持ちつづけたウィンストン・チャーチルの指揮によって、大逆転勝利を得ることができました。

戦後はじめての大学の卒業式に招かれたチャーチル首相は、卒業生全員に向かって、非常にゆっくりとしかし重々しく語り始めました。

 ネバー・ネバー・ネバー・ギブアップ!
 ネバー・ネバー・ネバー・ギブアップ!
 ネバー・ネバー・ネバー・ギブアップ!

そう言い終わるとチャーチル首相はそのまま退場してしまいました。長時間にわたる熱弁を期待していた聴衆はあっけにとられていましたが、やがてその意味するところがわかり、会場には割れんばかりの拍手と歓声が止まなかったということです。

問題を解決するためには百万語をもってあれこれと方法論を語るよりも、「ネバー・ギブアップ!」(決してあきらめるな!)の一言の方が有効である場合が多いのです。


神の御旨を行って約束のものを受けるため、あなたがたに必要なのは、忍耐である(ヘブル10章36節)



最終更新:2012年04月21日 22:40
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