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始めに

このページは、筆者が2004年夏のニューヨーク州司法試験(New York State Bar Exam)を受験し、合格した体験をもとに、必要な能力や、受験対策について考えてみるものです。New York Barに関しては、いつくか非常にすぐれた先駆的なサイトがありますが(Kaori's Law School & Bar Exam TipsNew York Bar Exam)、合格体験記の類は数が限られており、私の体験も、今後の受験者にとってなんらかの有益な示唆を含むのではないかと思い、記録に残しておくものです。


筆者のプロフィールについて

New York Barに関連する範囲で筆者について自己紹介します。私は2003年9月にワシントン州シアトルにあるワシントン大学ロースクール(University of Washington School of Law)に留学し、2004年6月に「持続可能な開発と法(Law and Sustainable International Development)」LLMプログラムを卒業、2004年7月のNew York Barを受験して合格しました。留学以前に、法務セクションに2年6ヶ月勤務した経験がありますが、日本の法曹資格は有していません。留学前の英語力は、TOEIC970、TOEFL(Paper-Based)620です。


出身ロースクールについて

ワシントン大学ロースクールは、US Newsのランキングで25位前後の、中堅ロースクールといったところです。「アジア比較法(Asian and Comparative Law)」「知的財産権法と政策(Intellectual Property Law and Policy)」という2枚看板のLLMプログラムがあり、ここだけ一点狙いで出願する人も多いようです。日本法の研究で有名であり、東京大学ロースクールとの合同授業プログラムもあります。2004年のNew York Barには、9人の日本人留学生がチャレンジし、夏3人、冬2人の5人が合格しています。


Bar Exam合格に必要な能力とは?

受験準備を始める5月以前の段階で、細かい法律の知識は要らないと思います。しかしながら、

  1. 英語力
  2. 事務処理能力
  3. 法律の素養

はいずれも必要でしょう。英語力については、最低限どれだけあれば合格可能性があるか、という点は他の能力との関係もありなんともいえませんが、しかし、実際のところ、日本人受験者の合否を左右するクリティカルな要素なのではないかと思います。ほとんどの日本人受験者は、司法試験その他の国家試験などで事務処理能力を磨いてきており、また法律の素養もあります。それが同じような準備をしたにもかかわらず、ある人は素直に点数が伸び、ある人は伸び悩んでいるのを見ると、英語力の差が関係しているのではないかと思うのです。

受験者の点数の差がはっきり具体的に現れてくるのがMBEです。MBEの点数が伸び悩んでいる受験者の中には、全然時間が足りない、という人がいます。私の場合、BarBriによるMBE模試の第1回目は、午前の部でペース配分を間違え、20問解き残してしまいましたが、午後はペースアップして全問解くことができ、受験者平均点104点のところ、113点でした。自分でやる2回目のMBE模試は時間内に全問解き、自己採点で138点でした。本番では、極度の緊張からか、午後の途中で突然息苦しくなるアクシデントに見舞われ、30分ほどトイレで休憩し、残り50問ほどをもうろうとした状態で解きましたが、奇跡的に終了2分前に全問解き終わりました。点数は伸びず素点で128点に終わりました。

この結果から判断すると、私の場合、一応ペース配分をコントロールして、時間内に全問解くだけの英語読解スピードを持っていたのだと思います。どのくらいのスピードかというと、例えば、英語雑誌TIME1冊を約4時間で読み終わるスピードです。日本にいた頃、TIMEを毎週カバーツーカバーで読み終わることをノルマにし、ほぼ1年間にわたってノルマを達成したことがあります。そのときの読書スピードが、1冊を約4時間でした。

ただし、アメリカ人学生でも時間内に解けない者や、時間ギリギリまで必死で解いている者がいるので、時間内に解き終わる速さは、英語力のみでなく、素早く正解にたどり着くという別の能力も大きく影響していると考えられます。


Bar Exam合格に必要な準備

ほとんどの人が、最大手予備校BarBriのお世話になると思いますので、BarBriの活用を中心に考えます。

BarBriのPaced Programは、非常によく出来ていると思います。しかし、日本人受験者でこの通りにできる人はいないと思われます。そこで、どう手抜きするか、考えなければなりません。

まず、手を尽くして過去の講義ノートを入手されることを強くお勧めします。私の場合、友人を通じて3種類のノートを手に入れました。非常に似通っており、同じ底本から派生したバージョンと考えられます。もっとも新しいので2001年のものでしたが、2004年の受験にも十分使えました。私は講義の前にノートをプリントアウトし、ざっと目を通して知らない単語を調べることで予習とし、講義中は、ノートとにらめっこしながら講義を聴き、理解することに集中しました。ちなみに辞書は、やや高いですが、リーダーズ英和辞典と、英米法辞典の電子版をノートパソコンにインストールして、Jammingというオンラインソフトで一度に検索して使いました。英辞郎もいいですが、訳語の信頼性でリーダーズに劣ると思います。また、小型の電子辞書も持っていましたが、パソコンで辞書を引くのが一番早く、時間の節約になりました。講義の後は、すぐに講義ノートを見直し、理解を確実にするとともにおぼろげながらでも頭に入れました。次にMBE問題集を解いてみて、解説を読み、講義ノートの該当箇所を読んで確認し、マーカーで覚えていない知識を目立たせたりしながら、講義ノートの内容を頭にしみこませていきました。

日本人受験者にはBigを読む人はいないと思いますが、Miniはどうでしょうか。アメリカ人学生の中には、Miniを中心に知識をインプットしていく学生もいるようですが、私はMiniも一度も読んだことがありません。正確にいうと、New York Distinctionのページだけはちぎって使いました。過去の講義ノートは、スペルミスなどもちらほらありますが、非常によく出来ており、合格に必要な知識が十分入っていると思います。BarBriの講義は、例を豊富に使って説明しており、これだけで十分理解できるものです。読書スピードにハンディのある日本人学生の場合、講義ノート一本に絞って学習するのが効率的ではないでしょうか。講師が変わってしまって、講義の内容と過去の講義ノートが完全にマッチしないことがあります。私はそういう場合は、ハンドアウトを使ってノートを取ろうと試みましたが、結局、過去の講義ノートよりきれいなノートは出来ず、過去のノートを使って復習していくことになりました。

BarBriは、講義のまとめとして、Condense Noteなるノートを作ることを推奨しています。確かに、短時間で見直せるノートを作れば、試験直前期に絶大な威力を発揮しそうです。でも、私はうまくまとめられそうな気がしなかったので、最後まで講義ノートのままで行きました。講義ノートに載っている知識に無駄で削らなければならないものはほとんどないと思います。確かに、講師が説明に使ったたくさんの例が最後の頃には邪魔になってきますが、Ex)とか書いてある部分を読み飛ばすなどの工夫で少しでも早く回しました。

Essayについては、私は大幅に予定より遅れましたが、とにかくEssay問題集を、問題を読み、論点整理、アウトライン作成を15分で行い、同じく15分で模範解答を読んで確認する、という作業をしました。頻出ルールについては、模範解答から抜書きしてカードを作りました。最後は時間切れで、Essay問題集は70問ほどしか終わりませんでした。ちなみに、BarBriは、Essayの添削を5回してくれますが、私は一度も提出したことがありません。提出した人は、みな2点とか3点とかひどい点数が付いて返ってきたようですが、単に採点が辛すぎるだけのことのようです。精神衛生上悪いので、BarBriのEssay添削の点数は気にしないのが得策でしょう。

MPTについては、MBEやEssayの問題演習が遅れていたため、週末に2回ほど練習することしか出来ませんでしたが、それで十分でした。NewYorkMultiについては、BarBriの問題を解いてみましたが、正解率4割といったところでした。重箱の隅をつつくような細かい知識が出題され、対策のたてようがありません。BarBriも対策を立てる気があまりないようですが、それが正解でしょう。


勉強時間について

過去の合格体験記を読むと、1日に13時間、14時間勉強したというような、信じられないような話が出てきます。そこまで勉強できる人を心底尊敬しますが、私には真似できません。私は、自分の勉強時間は一体どのくらいだろうと、正確に記録をつけてみたことがあります。その結果、私がもっともよく勉強したのは、6月終わりから、7月中旬にかけてで、1日約10時間、週に55時間~60時間でした。

BarBriの授業が終わると、いよいよ最後のラストスパートになりますが、この頃には逆に勉強時間が減って、6~7時間になってしまいました。理由は、気が抜けたというのもあると思いますが、ひたすらノートを読んで覚えるという作業に、頭が拒否反応を示した、というのもあります。ノートを読むときに、根を詰めすぎたのかもしれません。


Bar Exam合格レベルとは?

勉強していていまいち分からないのが、Bar Examの合格レベルです。BarBriによれば、

  • Essay5点平均、MBE素点120点で合格。Essayが6点平均なら、MBE100点でも合格する。Essayが4点平均なら、MBE140点必要。
  • Essayは差がつかず、受験者の得点は4点から6点の間に集中する。
  • したがって、MBEで140点取れば、まず合格できる(MBEで140点とって落ちた者を知らない、とまで言う)。

ということです。これが、日本人にも当てはまるのかどうか、本当に日本人の書いたEssayでもアメリカ人の学生と差がつかず、4~6点の範囲に入るのか、気になるところです。

私は、MBEの素点は128点しかありませんでしたので、上の計算式では、Essayで平均4.6~4.7点必要だったことになります。合格したからには、それに近い点数を取ったのでしょう。そこで、その私のEssay答案の実態がどのようなものであったか、書いてみます。

答案は、IRACで書くことになっています。私はあらかじめパターンを決めておき、それにそって機械的に答案を書きました。すなわち、問いごとに、書き出し及びセンテンスの数は、

Issue: The issue is....(1センテンス)
Rule: Under the New York law(又はCPLR),(1~2センテンス)
Application: In this case,(3~4センテンス)
Conclusion: Therefore,(1センテンス)

です。全ての答案このパターン一本やりです。答案のボリュームとしては、大問1問ごとに、500語から750語の間だったろうと思います。英語を書くスピードは、私の場合、英文日記を書くと1時間に1500語がせいぜいといったところですから、Essay1問に30分書く時間があるとして、最大で750語だろうということです。

体裁は整えました。問いごとに(1)、(2)、(3)とナンバリングをすること、IRACは段落を分けて、改行が見やすいようにはっきりと字下げして書き出すこと、1行おきに書くこと、などです。

Issueは、ほとんどスポッティングできました。1問だけ何の問題か全く分からず、山勘で書いた答案がありました。おそらく間違えたと思います。

Ruleは、きちんと書けると印象がいいと思いますが、残念ながら、直前の知識詰め込みが甘く、あいまいにしか覚えていないものばかりでした。ルールの内容は思い出せるのですが、文言が出てこないのです。喉まで出掛かっているのに思い出せず、やむを得ず別の表現で言い換えたりして情けない思いをしました。General Ruleを書いてから、例外を書く点については、そうできるときには努めてそうしました。

Applicationは、事案に書いてあることをなるべくもらさず論じるように努めました。BarBriのMarino講師によれば、Applicationに配点の半分が割り当てられているのではないかとのことです。

Conclusionは、シンプルに一言で結論を述べるだけです。

ちなみに、全ての小問・問いについて、一通り論じました。つまり、白紙答案は作っていません。

こうして見てみると、私も全然たいした答案は書いていません。特にRuleについては、ちゃんと暗記していなかったために苦労しました。しかし、直前に膨大な量の知識を、もっぱら読むだけでインプットしなければならないので、表現についてはうろ覚えになるのもやむを得ない気がします。とにかく、Ruleについて自分の表現で書いても(中学生の作文のようになりましたが)、それが致命傷にならなかったことは確かです。


おわりに

以上長々と思ったことを書きました。私も、New York Barの準備はこれまでの人生の中で一番集中的に勉強した、といえるほどで、たいへん苦しいものがありました。アクシデントもあり、合格したのは運が良かった以上の何物でもありません。ですが、振り返ってみると、時間的に可能なことを見極めて、手を広げすぎなかったことが良い結果につながったと思います。この拙文が、これからNew York Barを受験される方にいくらかでも役に立てば幸いです。