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はじめに

トロイの遺跡を発見したシュリーマンという考古学者は、語学の天才であるといわれる。彼の自伝「古代への情熱」によれば、彼は英語を6ヶ月でマスターし、そのほか18ヶ国語をマスター、一つの言葉を習得するのに3ヶ月しかかからなかったという。

どれだけの水準に達したことをもってマスターと呼ぶか、が問題であろうし、自伝であるから多分に自慢話的な要素が入っているとしても、すごい話である。

6ヶ月でマスター云々の話には眉をひそめる人も、彼が万人にお勧めするという語学習得法には、うならされることだろう。私も、うならされた。とても100年以上前の時代の人が書いたとは思えない。

いま日本で大流行の英語学習法、「シャドーイング」も既にシュリーマンが実践していたことが分かる。いや、ひょっとしてシャドーイングも昔の日本の通訳修行者たちが、シュリーマンの方法を参考にして編み出したのかもしれない。

ここでは、「古代への情熱」(岩波文庫)から、シュリーマンの語学習得法を学び、実際の応用可能性を考えたいと思う。

シュリーマン流語学習得法

シュリーマンは、異常な熱心をもって英語の学習に専念するうちに、あらゆる言語の習得を可能にする方法を発見した、と言っている。それは、次のようなものである。

  1. 非常に多く音読すること
  2. 決して翻訳をしないこと
  3. 毎日1時間をあてること
  4. つねに興味ある対象について作文を書くこと
  5. これを教師の指導によって訂正すること
  6. 前日なおされたものを暗記して、次の時間に暗誦すること




「そこで私は異常な熱心をもって英語の学習に専心したが、このときに緊急切迫した境遇から、私はあらゆる言語の習得を容易にする一方法を発見した。この簡単な方法とはまず次のことにある。非常に多く音読すること、決して翻訳をしないこと、毎日1時間をあてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日なおされたものを暗記して、次の時間に暗誦することである。私の記憶力は少年時代からほとんど訓練しなかったから、弱かったけれども、私はあらゆる瞬間を勉学のために利用した。まったく時を盗んだのである。できるだけ早く会話をものにするために、日曜日には英国教会の礼拝にいつも2回はかよって、説教を傾聴し、その一語一語を低く口まねした。どのような使い走りにも、雨が降ってももちろん、1冊の本を手に持って、それから何かを暗記した。何も読まずに郵便局で待っていたことはなかった。こうして私は次第に記憶力をつよめて、3ヶ月後にははやくも我が師テイラー氏とトンプソン氏の前で、いつもその授業時間には印刷された英語の散文20ページを、もしあらかじめ3回注意して通読していたならば、文字どおりに暗誦することができた。この方法によって私はゴールドスミスの『ウェイクフィールドの牧師』の全部とウォルター・スコットの『アイヴァンホー』とを暗記した。過度の興奮のために私はごくわずかしか眠れないので、夜中にさめているすべての時間を利用して、夕方に読んだことをもう一度くり返した。記憶力は昼間よりは夜ははるかに集中するものであるから、私はこの夜中にくり返すことは最も効果があることをしった。私はこのような方法をなんびとにも推薦する。」(村田数之亮訳・岩波文庫版『古代への情熱』)