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「この花々達も一応生きているのね。」


四季のフラワーマスター"風見 幽香"は鈴蘭の花々を見つめそう呟く。

彼女が初めに居た場所は無名の丘。彼女の主な行動拠点の太陽の畑とは正反対の位置で、鈴蘭が群生する小高い丘である。
今でこそただの鈴蘭畑であるが、昔は名無しの幼子を鈴蘭の毒気で安楽死させ間引きにくるような場所でもあった。
実際今も毒気が漂っている。


「バトル・ロワイアル…ね。惜しむらくはごっこ遊びなことだけど精々楽しませて貰うとしましょうか。」


さらっと怖いことを呟く彼女も当然のことだが例の本は読んでいる。
『バトル・ロワイアル』――閉鎖された環境で最後の一人になるまで殺し合う、というもの。
知ったのは花畑にその本が捨てられていたという不本意な理由ではあったが、その内容は彼女に黒い笑みを浮かばせるものだった。
ただ流石に彼女も長く生きた妖怪である。幻想郷でこんなことが起これば人妖のバランスが崩れてしまうことは百も承知。
それにまだあの子達は見ていきたいしねぇ、と…どこぞの紅白と黒白を思い浮かべながら日常に戻るはずだった。

……が、それがこれである。
あのスキマ妖怪や山の神はいけ好かない存在ではあるが、今回ばかりは感謝した。


「さて、そろそろ出ないと毒が回っちゃうわね。」


反面この初期配置には怒りを覚えたが、軽いハンデだと思って流すことにした。
本来はすぐ出ようと思えば出れたが、ふと気になることがあり留まった自分が悪いのもある。


彼女は四季のフラワーマスターという二つ名の通り、花を愛し自然を愛する妖怪である。
そんな彼女が気になること「この世界の木々花々はどうなっているのか」。
そんなこんなで鈴蘭の花々を観察していたのだが、どうやら生きてはいるようだ。うっすらと漂う毒気でも分かる。
本来の自然のような生気は感じないが、生きてはいる。例えるなら、あの冥界の亡霊(生きてる?)や竹林の蓬莱人だったりそのようなものだろうか?
まぁあれだけの協力者がいればこれくらいのことは余裕なのかもしれない。
自分の立場がないことに少々むくれつつ無駄な時間を過ごした事を後悔し、この鈴蘭畑を離れることにした。
幸い彼女の見える範囲で花畑は途切れていた。出ようと思えばすぐ出れる。


「どうしようかしらね。少し毒も抜きたいからまずは――




幽香が鈴蘭の花々を観察し始めた頃、
場所としてはすぐ近くに居た古明地こいしは胸を躍らせていた。なにせよ恋焦がれる殺戮が当たり前のように行えるのだから。
あの『バトル・ロワイアル』のように。

彼女は元より死体をエントランスに飾ったり、先ほどの恋焦がれる殺戮など所々危険性はあるのだが何よりも危険なのがその能力である。
『無意識を操る程度の能力』――他の者に存在を感知されなくなる他に、その行動を読まれにくくなる。
つまり感知されない限り相手に気付かれることなくナイフを突き立てることも出来ることになる。さらに行動が読めないため下手な心理戦は通用しないだろう。
実際姉のさとりは『心を読む程度の能力』だが、心を読むことができず相性は最悪である。

最もそれだけに体力の消耗がそこそこあったり制限はあるのだが。


「持ち帰れないのは残念だけど、あっちで死なないのなら好き勝手にしていいよね?あ、お姉ちゃんをやっても面白そうだわ。」


姉すらその対象である。とりあえずまずは武器の確認をすることにした。
自分の能力があればある程度の殺生能力がある武器があれば当たりである。


「えーと…ナイフだね、これ。」


出てきたのは少々大きいナイフであった。
だが自身の能力で接近が容易い彼女にとってはこれで十分である。


「流石に何もできないようなものが出たら困ったし助かったわ。そろそろ人を探さないと。」


まぁすぐサヨナラになるけどね。と付け加え近くをうろつく。
すると広い花畑に出た。幻想郷ってこんな場所もあったんだ、と思いつつ花々を観賞していたが


「……ってこんなことしてる場合じゃないわ。」


流石に楽しみすぎたのかちょっと時間が経ってしまった。
人を探さないと人を探さないと・・・居た。
緑の髪に赤のチェック柄の服を着た妖怪さん・・・かな?私と同じように花々を観賞しているようだ。
まずサヨナラしてもらうのはあの人に決定、そうと決まればあとは気付かれないように近づくだけである。
ちょうどその妖怪さんもここを出るところのようで、背中を向け歩きだした。

(私が分からないとはいえ可愛そう。でもどうせ死なないんだし、運が悪いと思って諦めてね?)

そしてこいしはそのままその妖怪に近づきナイフを突き出そうとした。




――パンッ






「あれ~おかしいなぁ?どうして分かったの?」
「……初対面の相手には挨拶したほうがいいんじゃない?」


いつの間にかナイフが弾かれていた。どうして分かったのかは分からないけど一旦距離を取らないと。
弾かれたナイフを咄嗟に回収し、弾いた彼女から距離を取る。
あぁそういえば挨拶しないといけないんだったっけ、最後に挨拶してあげないと。


「初めまして。私は古明地こいしって言うの。そしてさようなら。」




――(あれをなんとかしないとね。)」

何故幽香はこいしが分かったのか。それはここが花畑であることが原因だった。

いくらこいしの能力があるとはいえ隠せないものがある。それは自然である。
幽香は花々を観察している時点で少し花畑に違和感がある場所に気付いていた。
不自然に花が凹んでいる部分があったのである。この無名の丘はそこそこ広いとはいえ幽香は初期位置から特に大きな移動をしていないため誰かが来たのは分かった。
幸いにもこの時点で攻撃してこないことから相手は遠距離武器ではないようだ。弾幕もあるが一撃必殺には向いていない。
そういえば河童の発明に光学迷彩スーツなるものがあった。そうだとしたら厄介だが、居ることが分かればあとは気配を探れば動きが分かる。
……はずだったが不思議なことに感じない。少し困ったがまぁ大きな問題ではない。
こういう相手が狙うのは大抵決まっている。隙を作り誘えばいい。

となるとやることは一つ。もう見るものは十分見た。相手がいるであろう方向に背中を向け歩きだす。
あえて隙を見せ、その間に自分を見ているであろう相手に気付かれないようにディパックを手探りで探る。
……これがいいわね。そして――




――パンッ

まず第一段階完了。古明地こいしと名乗った妖怪は私を殺す気のようだ。そりゃバトロワ ごっこ であれば当然。
(とはいえ私に挑むとはいい度胸だわ、少し教育してやらないとね。)


「あら、わざわざありがとう。私は風見 幽香。よろしくね、アンスリウムな妖怪さん。」




戦い自体はこいしの一方的に攻撃しているだけで幽香は防御に徹するだけだった。

武器自体はこいしはナイフ、幽香は警棒でリーチでは勝っているはずである。
だがあっちから攻撃してくる気配は一向にない。弾幕で牽制しても簡単に避けられ意味を為さない。
攻撃自体は軽くあしらうことから戦い慣れている相手なのは分かった。にしてもあまりにも動きが不自然だ。
表情も笑顔のままで何を考えているか分からない。これはお前が言うなと言えるものだが。

もしかしてこんな場に来てまで殺せないような生温い考えの妖怪?
だとすると失笑ものだが、この防御力が厄介であることには変わりない。このままでは体力が削られ続けるだけ。
せめてナイフのリーチが長ければもうちょっと強気に攻めれたのだがそれは叶わない。
悔しいけど最悪ここは退かないといけないかな?と考え始めた時である。


ぐらっ……


「あ、あれ?」


不意に視界が歪む。なんとか立て直すも体が言うことを聞かない。
おかしい、特に何かをされた覚えはないのに。もしかしたらそういう能力の持ち主?
何はともあれこの状況で戦うことは流石に無理。ここは退いて


「つーかまえた。」


終わった。完全に捕まった。元からこれが狙いだったんだ。
もう私終わっちゃうのかな。もっと楽しみたかったのに。残念だな。
そのまま警棒が振り上げられ……



こつん



「いったぁー………あれ?」
「あー体がだるい。いいからさっさと出るわよ。」
「え、いやお姉さん。殺さないの?」
「鈴蘭畑で自滅するような馬鹿なんて殺す価値もないわ。」


思いっきり馬鹿って言われた。ひどい。
さっきまで殺そうとしてたお姉さんに引っ張られ花畑から出る。しばらくすると体が楽になってきたことからどうやらこの体の不調はあの花畑にあるようだ。
もしかしてあのお姉さんはそれを知っていたのかな?


「お姉さんはこれからどうするの?」
「これからどうするも何も休むわよ。何も理解できてない妖怪にふっかれられたせいで余計な体力消耗しちゃったし。」


どう考えても私のことです。本当にありがとうございました。
にしても本当にお姉さんの考えが分からない。私はお姉ちゃんじゃないから当然だけど。
さっきの言葉から全く殺す気がないわけではないみたいだけど、私を殺す気はないみたいだ。
いずれにせよ体が万全じゃないから、しばらくはこのお姉さんと居ないといけないか。
仕方ないしお姉さんを倒すことは諦めて大人しくしよう。本当はこんなはずじゃなかったんだけどなぁ。


「まぁこのままじゃ暇ね。折角だし話し相手になってくださる?」
「別にいいけど・・・。」


いくら仮初の空間だとしても、さっきまであなたを殺そうとしたのになんて呑気なんだろう。
閉じた心の中でそう思った。




――そしてさようなら。

ずいぶんな挨拶をされた時点で殺そうと幽香は決めた、……はずだったのだが。この始末。
拍子抜けした彼女はすっかり最初に決めた殺意がなくなってしまっていた。
元からこの鈴蘭畑の地形効果は生かす気だったが、こうもあっさり嵌るとは。

疲れた体ほど毒はその体を蝕んでいく。幽香が自分から動かなかったのは下手に動いて疲れを溜めたくなかったからだ。
もし自分から攻めて倒しあぐねた場合その分毒の進みは早くなる。
まだこのバトロワごっこは始まったばかり。最初から無駄な消耗はしたくなかった。
あっちも少なくともそれを理解して行動していたと思っていたのだが、本当に何も知らなかったうえに何も考えてなかったらしい。


こいしというさっきまで自分を殺そうとしていた少女と話しながら幽香はこの先の事を考えていた。
折角だからいつもは戦えないような相手と戦いたいのが本音である。
この場所なら幻想郷のしがらみなどなく、心置きなく戦えるだろう。本来の全ての力で戦えないのは残念だがそこは割り切る。
一番分かりやすい相手で言えば、紅い館の吸血鬼などが当てはまるか。姉は勿論だが妹のほうも居るらしい。もし会うことがあればどんなものか楽しみである。
他にも自分が認める人間である、霊夢や魔理沙。いつぞやの懐かしい魔法使いもいる。
何より一番の獲物は……この主催である八坂神奈子。主催いえどもそれは例外ではない。むしろそのような高みにいる奴を引きずり下ろすのが面白い。
楽しむ要素は十分にある。


「あれ?お姉さーん。聞いてる?」


(そういえば結局殺さなかったけど、この子はどうしようかしら。)
あっさりとした幕切れではあったものの実際戦う場所が花畑じゃなかったら幽香も危なかった。
仮に急所を外れたとしても大きなダメージを受け、そのまま押されていた可能性も高い。
こいし本人の経験が浅かっただけで十分に強敵の部類に入る相手だ。だからと言って今更トドメを刺すのも幽香のプライド的に忍びない。
というか流石の幽香でもそれは可哀そうだと思う。
……まぁ毒も抜けてないし後で考えましょう。とりあえずその問題は先送りにした。


「あぁごめんなさい。聞いているわ。続けて?」



【B-2 無名の丘付近 朝】
【風見幽香】
[状態]:疲労(小)、鈴蘭の毒(小)
残り体力(85/100)
[装備]:特殊警棒
[道具]:オーブ×2 支給品一式
[思考・状況]
基本方針:強者と戦いたい。主催も例外ではない。
1.ひとまずは休んで毒を抜く
2.この子どうしようかしら

【古明地こいし】
[状態]:疲労(中)、鈴蘭の毒(中)
残り体力(60/100)
[装備]:軍用ナイフ
[道具]:オーブ×2 支給品一式
[思考・状況]
基本方針:恋焦がれる殺戮がしたい
1.お姉さんと話して暇つぶし


※無名の丘では鈴蘭の毒が充満しています。

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