hanrei @Wiki H17. 9.16 大阪地方裁判所 平成16年(行ウ)第107号 消費税及び地方消費税無申告加算税賦課決定処分取消請求事件



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判示事項の要旨:
 消費税及び地方消費税について,その法定申告期限までに納付書を提出して納付をしたものの,同期限までに納税申告書の提出をしていなかった場合において,国税通則法66条1項1号及び同条3項に基づいてされた無申告加算税月賦課決定処分が適法とされた事例




主 文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税について,被告が平成15年9月30日付けでした無申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は,原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について,原告がその法定申告期限及び法定納期限である同年6月2日までに消費税等として総額247億7850万9700円の納付はしたものの,その申告書の提出をしていなかったとして,被告が,同年9月30日付けで,国税通則法(平成16年3月法律第14号による改正前のもの。以下「通則法」という。)66条1項1号及び同条3項に基づいて,納付すべき消費税等の税額に100分の5の割合を乗じて計算した12億3892万5000円の無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件処分」という。)をしたのに対し,原告が本件処分の取消しを求めた事案である。
 1 前提となる事実等
(1) 法令の定め
ア 通則法15条1項は,国税を納付する義務(源泉徴収による国税については,これを徴収して国に納付する義務)が成立する場合には,その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き,国税に関する法律の定める手続により,その国税についての納付すべき税額が確定されるものとする旨規定している。これを受けて,同法16条において,国税についての納付すべき税額の確定の手続については,① 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし,その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り,税務署長又は税関長の処分により確定する方式である申告納税方式(同条1項1号)と,② 納付すべき税額がもっぱら税務署長又は税関長の処分により確定する方式である賦課課税方式(同項2号)のいずれかの方式によるものとされ,このいずれの方式によるかについては,納税義務が成立する場合において,納税者が国税に関する法律の規定により納付すべき税額を申告すべきものとされている国税は申告納税方式により(同条2項1号),それ以外の国税は賦課課税方式による(同項2号)とされている。
イ 通則法15条2項7号は,消費税等の納税義務は,課税資産の譲渡等をした時に成立する旨規定しており,消費税法(平成15年3月法律第8号による改正前のもの。以下同様)45条1項は,事業者は,課税期間ごとに,当該課税期間の末日の翌日から2月以内に,同項各号に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない旨規定している。したがって,消費税は,申告納税方式により納付すべき税額が確定する国税である。
ウ 申告納税方式による国税の納税者は,国税に関する法律の定めるところにより,納税申告書を法定申告期限までに税務署長に提出しなければならず(通則法17条1項),同項の規定により提出する納税申告書は,期限内申告書という(同条2項)。これに対し,期限内申告書を提出すべきであった者は,その提出期限後においても,同法25条の規定に基づく税務署長による課税標準等及び税額等の決定があるまでは,納税申告書を税務署長に提出することができ(同法18条1項),同項の規定により提出する納税申告書は,期限後申告書という(同条2項)。
 納税申告書とは,申告納税方式による国税に関し国税に関する法律の規定により,① 課税標準(同法2条6号イ),② 課税標準から控除する金額(同号ロ),③ 純損失等の金額(同号ハ),④ 納付すべき税額(同号ニ),⑤ 還付金の額に相当する税額(同号ホ),⑥ 納付すべき税額の計算上控除する金額又は還付金の額の計算の基礎となる税額(同号ヘ)のいずれかの事項その他当該事項に関し必要な事項を記載した申告書をいう(同条6号)。消費税に係る納税申告書には,事業者は,消費税法45条1項各号に掲げる事項,すなわち,① その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等に係る課税標準である金額の合計額(課税標準額)(同項1号),② 課税標準額に対する消費税額(同項2号),③ その課税期間において同項2号に掲げる消費税額から控除をされるべき消費税額の合計額(同項3号),④ これを控除した残額に相当する消費税額(同項4号),⑤ その事業者が当該課税期間につき中間申告書を提出した事業者である場合には,同項4号に掲げる消費税額から当該申告書に係る中間納付額を控除した残額に相当する消費税額(同項6号)等を記載しなければならない(同条1項)。
 国税を納付しようとする者は,その税額に相当する金銭に納付書を添えて,これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に納付しなければならない(通則法34条1項)。この納付書には,納税者の納税地及び氏名又は名称,年度,受入科目,取扱庁名,納付の目的並びに金額(本税,加算税,利子税,延滞税の各別の金額とその合計額)を記載すべきものとされている(国税通則法施行規則6条)。
 期限内申告書を提出した者は,国税に関する法律に定めるところにより,当該申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に相当する国税をその法定納期限までに国に納付しなければならず(通則法35条1項),期限後申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に相当する国税の納税者は,その国税をその期限後申告書を提出した日までに国に納付しなければならない(同条2項1号)。消費税についても,消費税法49条は,同法45条1項による申告書を提出した者は,当該申告書に記載した同項4号に掲げる消費税額があるときは,当該申告書の提出期限までに,当該消費税額に相当する消費税を国に納付しなければならない旨規定している。
 期限後申告書の提出があった場合には,当該納税者に対し,同申告に基づき通則法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する(同法66条1項1号)。ただし,期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでない(同項ただし書)。また,期限後申告書の提出があった場合において,その提出が,その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは,その申告に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額に係る上記同法66条1項の無申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,当該納付すべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とするとされている(同条3項)。
エ 国税は,納付すべき税額が確定し,その納期が到来したときに納付するのが建前であり,その確定前又は納期到来前に納付がされた場合には,その納付は不適法な納付として過誤納金となるべきものである。しかしながら,このような納付をすべて過誤納金として法定の還付又は充当処理をすることは,かえって納税者及び税務官署にとって煩瑣である場合があり,既に納付すべき税額が確定しその納期が到来していないだけの国税や,近い将来において納付すべき税額の確定することが確実な国税については,納税者が当該国税として納付する旨を申し出る限り,適法な納付として扱うのが合理的である。そこで,通則法59条は,納付すべき税額の確定した国税で,その納期が到来していないもの(同条1項1号),及び最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税(同項2号)について納付する旨を税務署長に申し出て納付した金額については,「予納」として扱い,これを納付した者は,その還付を請求することができない旨規定している(同条1項)。
オ 道府県(地方税法(平成15年3月法律第9号による改正前のもの。以下同様)1条2項により都にも準用。以下同様)は,普通税として地方消費税を課するものとされる(同法4条2項3号)。消費税法45条1項4号に掲げる消費税額を課税標準として課する地方消費税を譲渡割といい(地方税法72条の77第2号),事業者の行った消費税法2条1項9号に規定する課税資産の譲渡等については,当該事業者(同法9条1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)に対し,道府県(当該事業者が内国法人の場合,その本店又は主たる事務所の所在地の所在する道府県(地方税法72条の78第2項5号))が譲渡割によって,地方消費税を課すものとされている(同法72条の77第2号,72条の78第1項)。
 譲渡割の徴収については,申告納税の方法によらなければならないとされ(地方税法72条の86),消費税法45条1項の規定により消費税に係る申告書を提出する義務がある事業者は,当該申告書の提出期限までに,当該消費税額,これを課税標準として算定した譲渡割額その他必要な事項を記載した申告書を譲渡割課税道府県の知事に提出し,及びその申告に係る譲渡割額を当該譲渡割課税道府県に納付しなければならない(地方税法72条の88第1項)。
 なお,譲渡割の賦課徴収は,当分の間,国が,消費税の賦課徴収の例により,消費税の賦課徴収と併せて行うものとされており(同法附則9条の4第1項),譲渡割の申告は,消費税の申告の例により,消費税の申告と併せて,税務署長にしなければならず(同法附則9条の5),また,譲渡割の納税義務者は,譲渡割を,消費税の納付の例により,消費税の納付と併せて国に納付しなければならない(同法附則9条の6第1項)。そして,譲渡割及び消費税の納付があった場合においては,その納付額を申告された譲渡割及び消費税の額にあん分した額に相当する譲渡割及び消費税の納付があったものとされる(同条2項)。また,譲渡割に係る延滞税及び加算税(その賦課徴収について消費税の例によることとされる譲渡割について納付される延滞税及び課される加算税をいう。同法附則9条の9において同じ。)も,譲渡割として,同法附則9条の4ないし9条の16までの規定が適用され(同法附則9条の4第2項),譲渡割に係る延滞税及び加算税並びに消費税に係る延滞税及び加算税並びにこれらの延滞税の免除に係る金額(以下「延滞税等」という。)の計算については,譲渡割及び消費税の合算額によって行い,算出された延滞税等をその計算の基礎となった譲渡割及び消費税の額にあん分した額に相当する金額を譲渡割又は消費税に係る延滞税等の額とすることとされている(同法附則9条の9第1項)。
  (2) 本件処分に至る経緯等
ア 原告は,消費税等につき納付義務を負う事業者である。
(当事者間に争いのない事実)
イ 原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの課税期間(本件課税期間)の消費税等の法定申告期限及び法定納期限は,同年6月2日であった。
(当事者間に争いのない事実)
ウ 原告は,本件課税期間の消費税等につき,平成15年6月2日,指定金融機関であるみずほコーポレート銀行(大阪営業事務部),UFJ銀行(大阪営業部)及び三井住友銀行(大阪本店営業部)の3行(以下「本件3行」という。)に対し,それぞれ納付書(以下「本件納付書」という。)を添えて,本件納付書記載の金額合計247億7850万9700円(みずほコーポレート銀行に137億2730万9700円,UFJ銀行及び三井住友銀行に各55億2560万円)を納付(以下「本件納付」という。)した。
(甲1号証の2ないし4,当事者間に争いのない事実)
エ 平成15年6月12日,北税務署の職員が原告の従業員に対し,本件課税期間の消費税等に係る申告書の提出の確認を行ったところ,原告が同申告書の提出を失念していたことが判明した。
 原告は,同月13日,被告に対し,本件課税期間の消費税等について,消費税の税額の計算として,課税標準額を2兆5386億6365万5000円,消費税額を1014億7538万8094円,控除過大調整税額を178万1795円,控除税額を519億2348万6148円,差引税額を495億5368万3700円,中間納付税額を297億3141万4800円,納付税額を198億2226万8900円等とし,地方消費税の税額の計算として,地方消費税の課税標準となる消費税額の差引税額を495億5637万8300円,譲渡割額(納税額)を123億8909万4500円,中間納付譲渡割額を74億3285万3700円,納付譲渡割額を49億5624万0800円等とし,消費税及び地方消費税の合計納付税額を247億7850万9700円とする確定申告書(以下「本件申告書」という。)を提出した。
(甲2号証,当事者間に争いのない事実)
オ 被告は,本件納付書の記載内容から,本件納付を本件課税期間に係る消費税等の予納として扱い,本件申告書の提出により確定した上記消費税等の税額に充当した。
(当事者間に争いのない事実)
カ 被告は,本件申告書の提出をもって,通則法66条1項1号及び3項により,期限後申告書の自発的な提出に当たるものとして,平成15年9月30日,原告に対し,本件課税期間の消費税等に係る無申告加算税として12億3892万5000円の賦課決定(本件処分)をした。
(当事者間に争いのない事実)
キ 原告は,平成15年9月30日,大阪国税局長に対し,本件処分について異議申立てをしたが,大阪国税局長は,同年12月15日,同異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。
(当事者間に争いのない事実)
ク 原告は,平成15年12月26日,国税不服審判所長に対し,本件処分について審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成16年4月16日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。原告は,同月23日,同裁決書謄本の送達を受けた。
(甲5号証の1及び2,弁論の全趣旨,当事者間に争いのない事実)
ケ 原告は,平成16年7月20日,本件処分の取消しを求める本件訴えを当裁判所に提起した。
(当裁判所に顕著な事実)
 2 争点
(1) 本件納付書の提出等を「瑕疵ある申告」とみなし,本件申告書の提出によって同瑕疵が治癒したものといえるか否か
(2) 本件納付を予納として扱ったことにより,加算税を賦課する根拠がなくなったものといえるか否か
(3) 本件について,通則法66条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められるか否か
 3 争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)(本件納付書の提出等を「瑕疵ある申告」とみなし,本件申告書の提出によって同瑕疵が治癒したものといえるか否か)について
(原告)
 本件においては,本件納付書の提出を「瑕疵ある申告」とみなすことができ,かつ,期限後申告書(本件申告書)の提出によって同瑕疵が治癒したものといい得るから,「無申告」には該当しない。したがって,本件処分は,通則法66条の解釈適用を誤ったものである。
 すなわち,無申告加算税は,申告義務違反に対し特別の経済的負担を課すことによって違反行為を防止し,申告納税制度の定着を図ることを目的とするものであり,一種の行政的制裁の性質をもつとされているが,その究極的な目的は税額の徴収の確保であり,申告義務違反に対する制裁もこの究極的目的のために設けられたものといえる。したがって,納税者に申告意思が認められ,かつ,現実に納税が果たされている場合に,単なる形式的な申告手続違背に対する制裁として無申告加算税を賦課することは,実質的には法の趣旨,目的を逸脱した法の運用であって,違法といわざるを得ない。
 これを本件についてみるに,原告は,法定申告期限及び法定納期限である平成15年6月2日に,本件納付書とともに所定の消費税等の税額を納付したものであるところ,納付書は,納税者が記入し,収納機関である銀行を経由して,記載の税額の納付済みを税務署長に通知することを目的とする書面であって,実質上税務署長に提出する書面ということができる上,申告書と主要な記載事項を同じくし,機能的に多くの共通性をもった書面である。本件納付書には課税期間,税目及び税額が記載されており,申告書に記載すべき事項を網羅するものではないとしても,本件納付書の提出及び納税の履行の事実によって,少なくとも税務当局は,原告が自発的な申告意思を有することについて認識し,あわせて,申告書に要求される主要な記載項目である課税期間,税目及び税額についてもこれを十分確認し得たはずである。したがって,たとい適式の申告書の提出を欠いていたとしても,実質的には本件納付書が申告書の機能の相当部分をカバーする役割を果たしたと見ることができるのであり,本件納付書の提出をもって税額の確定という申告の法的効果が生じるものとまではいえないものの,これを「瑕疵ある申告」とみなす余地は十分ある。
 さらに,申告書の提出忘れに気付いた原告は,直ちに自発的に期限後申告書(本件申告書)を提出したのであるから,実質的にはこれによって申告に関する上記「瑕疵」は治癒されるに至ったといえる。このように,実質的に申告書の機能の相当部分をカバーするに足りる納付書の提出と税額の納付が履行されている場合において期限後申告書が提出されたときは,納付書の提出を瑕疵ある申告とみなし,期限後申告書の提出によってこの瑕疵が治癒されたと解する余地があり,期限内申告の有無につきこのような実質に即した柔軟な法解釈及び事実認定の余地を認めることは,むしろ通則法66条の趣旨,目的に適合した運用と考えられる。
 このような観点からすれば,実質的には「申告書」の機能の相当部分をカバーするに足る納付書(本件納付書)の提出と税額の納付(本件納付)とが共に履行されたにもかかわらず,これを全くの「無申告,無納税」のケースと同列に,原告に対し無申告加算税を課した本件処分は,法の適正な運用を逸脱した違法な行政処分といわざるを得ない。
(被告)
 申告とは,納税申告書の提出によってする要式行為であり(通則法17条1項),納税申告書とは,申告納税方式による国税に関し国税に関する法律の規定により必要な事項を記載した申告書をいう(同法2条6号)。そして,国税に関する法律である消費税法45条1項は,1号ないし8号に掲げる課税標準,課税標準に対する消費税額,課税標準に対する消費税額から控除すべき消費税額,中間納付税額,納付すべき税額等を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない旨規定している。これに対し,納付書とは,国税を納付する場合に納付すべき税額に相当する金銭と共に日本銀行等の収納機関に提出する書面で,年度,税目,納付の目的及び税額等が記載されている。したがって,納税申告書と納付書は,その形式からしても,その提出先及び記載事項を異にする別個のものであることが明らかである。
 また,納税申告書は,その提出により申告納税方式による国税を納付すべき税額が確定する(通則法2条6号,16条1項1号及び17条1項)という法的効果を有する。これに対し,納付書は,国税の納付手続の履行を書面により明らかにするために,国税を納付するときに金銭に添えるものとされている(同法34条)にすぎず,通則法上,納税申告書と同様の法的効果を有するものとは到底認められない。そもそも,申告納税制度を採る消費税等においては,申告書の提出によって初めて納付すべき税額が確定し,租税債務となるところ,原告は,法定申告期限までに,被告に消費税等の確定申告書を提出しなかったことから,原告の消費税等の納付すべき税額は,法定申告期限においていまだ確定しておらず,原告は,同日において具体的な租税債務を何ら負っていない。すなわち,原告が行った本件納付は,租税債務の消滅としての納付にはなり得ない。
 さらに,納付という行為には,租税債務の消滅となる納付,誤納金となる納付,予納とされる納付があるところ,いずれの納付も,国税の収納機関に,納付書に記載された金額に相当する金銭に納付書を添えて払い込むことから,納付書はいずれの納付にも用いられる書面である。納付書によって国税の納付手続の履行が明らかにされ,税務署長は,だれから,いつ,いくら納付されたか,その納付の目的となった税目,課税期間等を認識することはできるが,納付書の記載内容から,その納付額が,「確定された納付すべき税額」であると判断できるものではない。これに対し,申告書の提出は,納付すべき税額を確定させる法的効果を有することから,申告書が提出されることによって初めて,税務署長はその納付が確定された納付すべき税額の納付であると判断することができる。
 このように,本件において原告が提出した本件納付書は,申告書とは全くその機能及び法的効果が異なるものであり,また,それは,金融機関に提出されたものであって,納税申告書の提出先である税務署長に提出されたものではなく,消費税等の申告書の記載事項を満たしているものでもない。
 したがって,原告が納付書の提出をしたということと申告とは明らかに異なるものであって,これをもって「瑕疵ある申告」とみなすことは到底できない。
 また,原告自身,本件納付書の提出をもって申告を行ったものと認識していたとは到底認められない。
(2) 争点(2)(本件納付を予納として扱ったことにより,加算税を賦課する根拠がなくなったものといえるか否か)について
(原告)
 本件における納期限内の税額の納付は「予納金」に該当し,期限後申告書(本件申告書)の提出によって予納時にさかのぼって本税に充当の取扱いがされているから,本件申告書に形式上納付すべき税額が記載されていたとしても,期限後申告書の提出によって納税義務が確定すると同時にその納税義務は上記予納額の充当により予納時にさかのぼって消滅し,期限後申告書の提出時には加算税の課税金額である通則法35条2項の規定により納付すべき消費税額(同法66条1項)は既に存しないことになる。したがって,本件では,仮に同法66条1項に該当するとしても,もはや無申告加算税を賦課する余地は存しなかったというべきであって,その意味においても本件処分は違法といわざるを得ない。
 すなわち,被告は本件納付を本件課税期間に係る消費税等の予納として扱っているところ,通則法基本通達59条関係4によれば,国税の予納をした場合において,その国税に延滞金が課されるときは,その延滞金の終期は予納をした日とするとされている。この通達の趣旨は,期限内申告書や期限後申告書の提出の時期とは無関係に,予納した時点に予納金が国税に充当されたものとして取り扱い,翌日以降の延滞税は課されないということである。本件においても,期限後申告として取り扱われているにもかかわらず延滞税が課されていないのは,本件納付が予納金として扱われ,かつ,同通達にしたがって本件納付日において本件納付額が本件課税期間に係る消費税等の税額に充当されたことを示している。
 そして,延滞税の納付に係る同法60条1項2号及び無申告加算税の賦課に係る同法66条1項は,いずれも,同法35条2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき国税(税額)という全く同一の基準金額をもとに税額を計算することとしている。とすれば,延滞税算定の基礎となる金額が本件納付日において原告の予納によって消滅している以上,無申告加算税算定の基礎となる金額も本件予納によって消滅していると解すべきである。
 したがって,本件が同法66条1項1号に該当するとしても,無申告加算税算定の基礎となる同法35条2項の規定により納付すべき税額がゼロであるため,結局原告に無申告加算税は課し得ないことになる。
(被告)
ア 通則法35条2項1号は,期限後申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額については,期限後申告書を提出した日までに国に納付しなければならない旨規定しているから,同法66条1項が規定する同法35条2項の規定により納付すべき税額とは,期限後申告書に納付すべきものとして記載された税額,すなわち,期限後申告書の提出によって納付すべきものとして確定した具体的な租税債務の額を意味している。通則法上,予納が認められている趣旨は,納税者及び税務官署にとって煩瑣な事態が生ずることを避けるため,一定の場合に,納税者が納付を申し出たものを適法な納付として扱うのが合理的であるという,いわば事務処理上の便宜に基づくものであり,これは申告書が提出されて初めて納付義務が確定するという申告納税方式までをも否定する趣旨ではない。したがって,申告納税方式を採る消費税等においては,原則どおり,申告書が提出されて初めて,当該申告書に記載された消費税等の税額が確定し,当該消費税等の納付義務が確定するのであって,申告書提出前の納付すべき税額が確定する前に生じてもいない租税債務が消滅することはあり得ず,予納がされているからといって,その時点で具体的に確定もしていない租税債務が消滅するものでもなく,また,同法35条2項の規定により納付すべき税額が予納時にさかのぼって消滅するものではないと解すべきである。本件納付は予納として取り扱われているものの,税額はあくまで期限後申告書の提出により確定したものであり,その時に予納額がその確定税額に充てられたことになる。したがって,予納がされた場合であっても,期限後申告書に納付すべきものとして記載された税額が存在すると認められ,同法66条1項の要件を満たすというべきである。
イ 原告は,通則法基本通達59条関係4が国税の予納をした場合の延滞税の終期を当該予納をした日とするとしていることを挙げて,延滞税算定の基礎となる金額が本件納付日において原告の予納によって消滅している以上,無申告加算税算定の基礎となる金額も本件予納によって消滅していると解すべきである旨主張する。しかしながら,通則法59条は,申告よりも先に納付がされ,その後,申告がされた場合に,還付加算金を加算するなどして還付又は充当しなければならないとすると,納税者及び税務官署にとって煩瑣な事態が生じるため,それを避けるという事務処理上の便宜のために設けられた規定であり,このように還付加算金が加算されない以上,延滞税も課されないとするのが,上記のような納税者及び税務官署にとっての煩雑な事務処理を避けるという同条の趣旨に沿った解釈というべきである。また,国税の納付遅延に対して延滞税が課されることとの権衡を考慮して,還付金等に対しても一種の利子として還付加算金が課されることになっているところ,予納額には還付請求を認めず(同法59条1項),還付加算金が加算されないのであるから(同条2項,同法58条1項参照),この場合に延滞税を課すことは還付加算金との権衡を失することになり,予納がある場合には,予納がされた日を延滞税の計算の終期とすることが延滞税と還付加算金との権衡上相当であると解される。通則法基本通達59条関係4は,このような同法59条の趣旨及び延滞税と還付加算金の権衡という理由から注意的に明らかにされたものにすぎない。すなわち,申告納税方式を採る消費税等においては,あくまで申告書が提出されて初めて当該消費税等の納付義務が確定し,その時に予納額がその確定税額に充てられることになるのであって,通則法基本通達59条関係4は,そのような申告納税方式を前提とした上で,上記記載の理由から,延滞税の計算上,その終期を予納した日としたにすぎない。本件においては,法定納期限日に,期限後申告による確定税額と同額の予納がされていたことから,上記通達に基づき,延滞税の計算上,法定納期限の翌日からその国税を完納する日(延滞税の終期)までの期間がゼロであるとして,延滞税が課されなかったものである。このように,上記通達は,申告よりも前の納付日において予納額をもって税額に充当されたことを示すものではないのであるから,同法66条1項にいう同法35条2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額が本件納付日に消滅したと解することはできない。
(3) 争点(3)(本件について,通則法66条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められるか否か)について
(原告)
ア 本件においては,無申告加算税の適用除外条項である通則法66条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められる。
 同法66条1項ただし書の「正当な理由」の有無を判定するに当たっては,期限内申告書の不提出につき制裁を課すことが無申告加算税制度の趣旨,目的に照らして相当といえるか,広く本件をめぐる諸般の事情を対象に取り上げて検討すべきである。
 すなわち,無申告加算税の立法の趣旨ないし目的は,直接的には,申告義務の違反に対して特別の経済的負担を課すことによって,その義務の履行の確保を図り,申告納税制度の定着を促進することにあるといわれているが,これは中間的目標であるにとどまり,究極的には税額の徴収を確保することを目的としていることはいうまでもない。したがって,本件のように申告書及び納付書は作成され,それに基づく税額も法定納期限内に納付されたが,申告書の提出だけを失念したというような,申告意思の存在は明らかで,しかも既に徴税目的は達成されているようなケースに関しては,行政上の制裁として無申告加算税を賦課すべき正当性,必要性が全く存しないことは明白であり,本件のような場合は,当然同法66条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められる場合に該当するものというべきである。
 しかるに,従来,上記「正当な理由」について,例えば災害,交通・通信の途絶等により法定申告期限内に申告書を提出することができないケースのように,納税者の責めに帰すことができない外的事情がある場合に限定的に解釈されてきたように思われるが,このように狭く解すべき合理的根拠はない。この点,同法11条には「災害その他やむを得ない理由」により申告等の行為をすることができないと認められる場合の期限延長に関する措置が定められており,これは適用の対象を災害等納税者の責めに帰し得ない外的事情が存する場合に限定する趣旨であるかのように受け止められやすいが,これは一定の事由に基づく一般的措置を定めることを目的とした同条の性質によるものである。これに対し,同法66条1項ただし書は,個別納税者を対象とし,個別の「正当な理由」の有無にしたがって,個別に加算税賦課の可否を決定することを趣旨とする規定であるから,同条の「正当な理由」が上記のような外形的事情に限定される必然性はなく,さらに広く納税者個別に「正当な理由」に該当する事情の有無を検討するのが規定の趣旨に適うというべきである。
イ 通則法66条の定める無申告加算税は,行政上の制裁の一種に属するところ,本件においては,本税である消費税等の納期限内に正規の納付書に基づき正確に計算された税額の納付が行われ,被告により予納として受け入れられた上,遅滞なく自発的に期限後申告書が提出されたことにより,それまでの外形上の瑕疵は補完されているのであり,行政制裁としての無申告加算税における保護法益,すなわち,納期限において申告に基づき当然実現するものとして予定されている国税の税収確保の観点から見れば,税収は実質上確保されており,原告の納税意思は明白であって,実質上上記の保護法益を侵害するところも,また侵害するおそれすらも存しなかったことは明白である。そうだとすれば,本件は,実質上は同条の保護法益を侵害するものではなく,したがって,実質的違法性を欠くものとして,制裁の対象から除外されるべきことは,制裁法理上当然というべきであり,まさに,同条1項ただし書にいう「正当な理由」に当たるものというべきである。また,行政制裁の一般原則の一つである罪刑均衡の原則に照らしても,本件のように原告に巨額な制裁を課す本件処分は,この罪刑均衡の原則に大きく違背し許されないものであることは明らかである。
ウ ちなみに,不納付加算税に関する通則法67条1項ただし書にも,無申告加算税と同様に「正当な理由」に関する定めが設けられているが,これに対しては,平成12年7月3日付けの国税庁長官による「源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(以下「本件事務運営指針」という。)において,災害,交通・通信の途絶その他法定期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるときなど従来の先例を受けたもの以外に,「偶発的納付遅延等によるものの特例」として,法定納期限の翌日から起算して1か月以内に納付され,かつ,その直前1年分について納付の遅延をしたことがないこと等一定の要件を満たしている場合には「正当な理由」があると認められる場合に該当するものとして取り扱うべき旨の運営指針が示されている。このような運営指針は,同法67条1項本文を形式的に適用した場合の不合理さを調整するものとして,もとより妥当なものであって,徴税当局も必ずしも限定的解釈に固執するものではないことを示しているといえる。そして,不納付加算税に関してこのような運用を妥当とする以上,無申告加算税に関しても同様の柔軟な考え方に立った運用が可能なはずであって,この両者の間に差異を設けることは,むしろ公平に反する取扱いといわなければならない。
エ 以上のように,本件においては,通則法66条1項ただし書の「正当な理由」があると認められる場合に該当するものとして取り扱われるべきケースであったにもかかわらず,実際には同ただし書は適用されず無申告加算税が賦課された。本件では,原告は,申告書を作成の上法定納期限内に本件課税期間に係る消費税等の税額を全額納付済みであるにもかかわらず,申告書の提出を失念し,提出が法定申告期限より11日遅れたというだけで,12億3892万5000円もの無申告加算税が課されている。申告を促し,これによって終局的には税額の徴収を確保しようとする無申告加算税の目的にかんがみれば,上記のような巨額な賦課処分には何らの合理性,妥当性をも見いだすことはできず,本件処分は,行政目的を逸脱し比例原則に抵触する違法な課税処分というほかない。
(被告)
ア 申告納税制度は,納税者の自主的申告に租税債務確定の効果を認め,これに基づいて納付,徴収の手続を進めることを予定した制度であり,申告がなければ税額は確定しない。よって,この申告の意義は重要であって,申告の適正を担保するため,行政制裁として,申告書を期限内に提出しない者に対して無申告加算税が課税されるものであり,このような趣旨から,無申告加算税は,法定申告期限までに申告書の提出がなかったという客観的な事実があれば,正当な理由があると認められる場合(通則法66条1項ただし書)を除いて一律に課されるものである。
 ここにいう「正当な理由」とは,期限内に申告書が提出されなかったことが真にやむを得ない事情をいうのであり,具体的には,災害,交通・通信の途絶等により期限内に申告することができなかった場合,通常であれば期限内に到達すべき期間前に発送したと認められるにもかかわらず,通信機関の事故により期限内に到達しなかった場合のほか,例えば,税務職員の申告指導に不行届きがあった場合,税務職員が納税者の主張を認めるような発言をした場合が,「正当な理由」に当たるとされている。
 このように,「正当な理由」が認められるためには,期限内に申告書が提出できなかったことについて,原告の責めに帰することのできない真にやむを得ない事情が必要とされている。
イ 原告は,法定申告期限までに申告書及び納付書は作成され,それに基づく税額も法定納期限内に納付されたが,申告書の提出だけを失念していたというような,申告意思の存在は明らかで,既に徴税目的は達成されているケースに関しては,「正当な理由」があると認められる場合に該当する旨主張する。
 しかしながら,予納をしていたからといって,法律上,申告義務が免除されているものではなく,本件で申告書の提出を妨げるような事情は何ら認められないのであって,原告の主張するような上記事由はそもそも申告書を提出できなかったことの「正当な理由」にはなり得ない。
 原告が申告書を提出しなかった理由は,要は「失念していた」ということに尽きるのであって,原告が申告書の提出に当たり当然払うべき注意義務を怠ったことは明らかであって,「正当な理由」に該当するような原告の責めに帰すことのできない真にやむを得ない事情があったものとは到底認められない。
 この点,原告は,本件納付が予納として取り扱われたことが「正当な理由」の有無の判定において特に重要な意味を持つとするが,原告が行った本件納付は国税の予納であり,それ自体に租税債務の確定ないし消滅の効果は存しない。また,予納額は,申告書の提出によって確定した納付すべき税額と必ずしも同額ではなく,申告書の提出によって初めて確定した税額に充当され,充当された額の範囲で租税債務が消滅する。すなわち,予納は,その納付に適法性をもたせているものの,申告納税制度における税額確定の意味は全くない。また,予納によって納税者の納税の意思がうかがえるとしても,納税者の申告の意思や納付すべき税額が終局的に明らかになるわけではない。
 無申告加算税は,申告納税制度が,納税者の自主的申告に租税債務確定の効果を認め,これに基づいて納付,徴収の手続を進めることを予定した制度であり,申告がなければ税額は確定しないことから,この申告の意義の重要性にかんがみて,期限内申告の適正を担保するための行政制裁として,申告書を期限内に提出しない者に対して課税されるものである。
 そして,本件納付額(予納額)と期限後申告書の提出によって確定した納付すべき税額が同額であったことは,申告書の提出後に判明するもので,あくまで結果論にすぎない。
 このように,申告がなければ税額は確定せず,予納されていた金額がいくらであろうと,その金額は税額の確定に何ら影響を与えるものではないことから,予納の制度趣旨,法的効果,無申告加算税の制度趣旨,目的に照らせば,原告の主張する本件をめぐる諸般の事情は,「正当な理由」に該当し得ない。
ウ また,原告は,無申告加算税の立法趣旨ないし目的は,究極的には税額の徴収を確保することを目的としているところ,本件のように申告意思の存在は明らかで,しかも既に徴税目的は達成されているようなケースに関しては行政上の制裁として無申告加算税を賦課すべき正当性,必要性が全くない旨主張する。
 しかしながら,申告納税制度の下では,たとい納付があったとしても,申告書が提出されなければ,納付すべき税額が確定せず,過誤納金の還付の問題となるのであり(申告書の提出があって初めて税の納付があったと判断することが可能となる。),いまだ究極的な徴税目的が達せられたとは認められない。したがって,納付がされていても,無申告である場合には,なお申告の適正を担保するための行政制裁である無申告加算税を課す必要性,正当性は十分に認められる。
 原告の主張は,要するに,「納付さえしていれば,申告をする必要はない」というに等しいのであって,このような主張は消費税等について申告納税方式を採用している我が国の租税制度と明らかに矛盾する独自の見解にすぎない。
 また,原告が法定申告期限内に申告書提出の意思を有していたか否かや,実際に申告書が作成済みであったか否かということについては,個々の納税者について課税庁が客観的に判断し得る事柄ではないし,同じく申告書の提出の失念についても,単に忘れていただけなのか,意図的に申告書を提出していないのかを客観的に区別することは困難であって,これらの事情は,「正当な理由」の判断に何ら影響を与えるものではないというべきである。たとい申告書を作成済みであったり,あるいは申告書の提出を失念していたという場合であっても,現に申告書の提出がされない以上は,申告により納税義務を確定させるという申告納税制度の目的を達し得ないことは明らかだからである。
エ さらに,原告は,本件事務運営指針において「偶発的納付遅延等によるものの特例」が示されているから,無申告加算税についても同様の柔軟な考え方に立った運営が可能なはずである旨主張する。
 しかしながら,本件事務運営指針は通則法67条に関する事務運営指針であって,源泉徴収による国税(同法2条1項2号)(以下「源泉所得税」という。)に関するものである。源泉所得税の納税義務は,源泉徴収をすべきものとされている所得の支払のときに成立し(同法15条2項2号),納付すべき税額は,納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで自動的に確定する(同条3項2号)(以下「自動確定方式」という。)のであって,申告行為を要しない。そのため,納付が遅れれば,必ず不納付加算税が徴収される。また,源泉所得税の納期限は,源泉徴収をすべきものとされている所得を支払った月の翌月10日までとされており(所得税法181条ほか),そのため納期限は毎月到来する一方で,必ずしも納付義務が毎月発生するものとは限らず,その納付義務は不定期かつ頻繁に生じることとなる。そして,徴収納付制度は,効率的かつ確実に租税を徴収するため,国の徴収義務を代替させている側面を有する。これらのことから,源泉所得税の徴収義務者に過重な負担とならないよう「正当な理由」の存否について判断されるべきであり,偶発的納付遅延が不納付加算税の「正当な理由」に当たると解することは相当である。
 したがって,無申告加算税における「正当な理由」に,原告が主張するような申告書提出の偶発的遅延を含まないとすることは,行政庁の恣意的解釈ではなく,各条文の立法趣旨,目的に即した,「正当な理由」の合理的解釈にほかならない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件納付書の提出等を「瑕疵ある申告」とみなし,本件申告書の提出によって同瑕疵が治癒したものといえるか否か)について
(1) 国税についての納付すべき税額の確定手続として申告納税方式と賦課課税方式があること,消費税については,消費税法45条1項により,事業者は,課税期間ごとに,当該課税期間の末日の翌日から2月以内に,同項各号に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならないとされており,申告納税方式により納付すべき税額が確定する国税であること,申告納税方式による国税の納税者は,国税に関する法律の定めるところにより,納税申告書(期限内申告書)を法定申告期限までに税務署長に提出しなければならず(通則法17条1項),期限内申告書を提出した者は,国税に関する法律に定めるところにより,当該申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に相当する国税をその法定納期限までに国に納付しなければならないこと(同法35条1項),消費税についても,消費税法49条により,同法45条1項による申告書を提出した者は,当該申告書に記載した同項4号に掲げる消費税額があるときは,当該申告書の提出期限までに,当該消費税額に相当する消費税を国に納付しなければならないものとされていること,これに対し,期限内申告書を提出すべきであった者は,その提出期限後においても,通則法25条の規定に基づく税務署長による課税標準等及び税額等の決定があるまでは,納税申告書(期限後申告書)を税務署長に提出することができ(同法18条1項),期限後申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に相当する国税の納税者は,その国税をその期限後申告書を提出した日までに国に納付しなければならない(同法35条2項1号)こと,期限後申告書の提出があった場合には,当該納税者に対し,同申告に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課す(同法66条1項1号)が,期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでなく(同項ただし書),また,期限後申告書の提出があった場合において,その提出が,その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを了知してされたものでないときは,その申告に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額に係る上記同法66条1項の無申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,当該納付すべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とするとされている(同条3項)ことは,前提となる事実等(1)アないしウ記載のとおりである。また,道府県の普通税としての地方消費税(譲渡割)の徴収方法や,譲渡割の賦課徴収が当分の間,国が,消費税の賦課徴収の例により,消費税の賦課徴収と併せて行うものとされ(地方税法附則9条の4第1項),譲渡割の申告は,消費税の申告の例により,消費税の申告と併せて,税務署長にしなければならず(同法附則9条の5),譲渡割の納税義務者は,譲渡割を,消費税の納付の例により,消費税の納付と併せて国に納付しなければならない(同法附則9条の6第1項)こと,譲渡割及び消費税の納付があった場合においては,その納付額を申告された譲渡割及び消費税の額にあん分した額に相当する譲渡割及び消費税の納付があったものとされ(同条2項),また,譲渡割に係る延滞税及び加算税も,譲渡割として,同法附則9条の4ないし9条の16までの規定が適用され(同法附則9条の4第2項),譲渡割に係る延滞税及び加算税並びに消費税に係る延滞税及び加算税並びにこれらの延滞税の免除に係る金額(延滞税等)の計算については,譲渡割及び消費税の合算額によって行い,算出された延滞税等をその計算の基礎となった譲渡割及び消費税の額にあん分した額に相当する金額を譲渡割又は消費税に係る延滞税等の額とすることとされている(同法附則9条の9第1項)ことは,前提となる事実等(1)オ記載のとおりである。
(2)ア (1)記載のように,消費税等は,申告納税方式により納付すべき税額が確定するものであり,税務署長に提出すべき納税申告書には,消費税法45条1項1号ないし8号に各記載の事項,すなわち,課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等に係る課税標準である金額の合計額(課税標準額)(同項1号),課税標準額に対する消費税額(同項2号),その課税期間において同項2号に掲げる消費税額から控除されるべき消費税額の合計額(同項3号),これを控除した残額に相当する消費税額(同項4号),その事業者が当該課税期間につき中間申告書を提出した事業者である場合には,同項4号に掲げる消費税額から当該申告書に係る中間納付額を控除した残額に相当する消費税額(同項6号)等,さらには,消費税額を課税標準として算定した譲渡割額等(地方税法72条の88第1項)を記載しなければならない。
イ この点,原告は,本件においては,本件納付書の提出と本件納付をもって「瑕疵ある申告」とみなすことができ,かつ,期限後申告書(本件申告書)の提出によって同瑕疵が治癒したものといい得るから,「無申告」には該当しない旨主張する。
 しかしながら,そもそも,納税申告書は,申告納税方式による国税に関し国税に関する法律の規定により課税標準,課税標準から控除する金額及び納税すべき税額等の事項等を記載した申告書をいい(通則法2条6号),その税務署長への提出によって納付すべき税額が原則として確定する法的効果を有するものである。これに対し納付書は,国税を納付する場合に,国税の納付の手続の履行を書面により明らかにするため,納付すべき税額に相当する金銭に添えて,日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に提出する書面であって,年度,税目,納付の目的及び税額等が記載されるものであり,課税標準や課税標準から控除する金額等は記載されない。本件納付書も,税目として消費税及び地方消費税の,また,納期等の区分として,平成14年4月1日から平成15年3月31日までの期間(本件課税期間)に係る確定申告である旨の各記載がされるとともに,納付金額として,本税として本件3行分で合計247億7850万9700円を納付する旨の各記載がされた上,収納機関としての本件3行に提出されたものであって,ア記載の消費税等に係る納税申告書に記載すべき事項である課税標準額や課税標準額に対する消費税額,これに対し控除されるべき消費税額の合計額とこれらを控除した残額に相当する消費税額,同額から中間納付額を控除した残額,あるいは,地方消費税に係る譲渡割額等の記載がされていないものである。
 このように,納税申告書と納付書とは,その機能及び法的効果が全く異なるものである。したがって,本件納付書をもって本件課税期間に係る消費税等の納税申告書とみることは到底できない(なお,原告自身,本件納付書をもって納税申告書に当たるものとまで主張するものではない。)。
 また,本件納付は,いまだ納税申告書が提出されていないため本件課税期間に係る消費税等の税額が確定していない段階でされた納付であって,過誤納金に該当すべきところ,被告により通則法59条1項2号に該当するものとして,同消費税等の予納として扱われたものにすぎない(前提となる事実等(2)オ)。すなわち,当該税額も確定していない段階でされた本件納付それ自体が同消費税等に係る租税債務を消滅させるものではなく,後に本件申告書が提出されたことにより初めて本件課税期間に係る消費税等の税額が確定され,その額が本件納付に係る金額と同額であったことなどから,本件納付に係る金額の全額が上記確定された消費税等の税額に充当されたにすぎないのである。
 さらに,そもそも,消費税等のように申告納税方式により納付すべき税額が確定するものとされている国税等については,納税義務者によって法定申告期限内に適正な申告が自主的にされることが納税義務の適正かつ円滑な履行に資し,税務行政の公正な運営を図る上での大前提となるのであり,納税申告書を法定申告期限内に提出することは,正に申告納税方式による国税等の納税手続の根幹を成す納税義務者の重要な行為であるといわなければならない。そのため,このような納税申告書の期限内提出の重要性にかんがみて,通則法は,納付すべき税額の確定のための納税申告書の期限内提出という納税義務者に課された税法上の義務の不履行に対する一種の行政上の制裁として,納付すべき税額をその法定納期限までに完納すると否とにかかわりなく,無申告加算税を課すこととしているものと解されるのである(同法66条1項,3項)。
 以上の諸点にかんがみれば,たとい本件課税期間に係る消費税等の全額に相当する金額が本件納付書を添えてその法定納期限までに収納機関に納付(本件納付)された上,法定申告期限のわずか11日後に本件申告書が提出されているとしても,法定申告期限内に提出すべきものとされている納税申告書と見ることはおよそできない本件納付書の提出及び本件納付書の提出を受けて予納として扱われたにすぎない本件納付をもって「瑕疵ある申告」とみなした上,法定申告期限後に本件申告書が提出されたことをもって上記「瑕疵」が治癒したものと解することは,上記説示のような申告納税方式により納付すべき税額が確定するものとされている国税等の納税手続における納税義務者による法定申告期限内の納税申告書の提出の重要性をないがしろにし,申告納税制度を定めた法の趣旨を没却するものというべきである。
 以上から,本件納付書の提出及び本件納付を「瑕疵ある申告」とし,期限後申告書(本件申告書)の提出によって同瑕疵が治癒したものとして,本件は「無申告」には該当しないとする原告の主張は理由がない。
2 争点(2)(本件納付を予納として扱ったことにより,加算税を賦課する根拠がなくなったものといえるか否か)について
(1) 被告が本件納付を本件課税期間に係る消費税等の予納として扱い,本件申告書の提出により確定した上記消費税等の税額に充当したことは,前提となる事実等(2)オ記載のとおりである。
 この点,原告は,期限後申告書(本件申告書)の提出によって予納時にさ