hanrei @Wiki H17. 5.13 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第464号 不当利得返還請求



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平成17年5月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成17年(少コ)第464号(通常手続移行)不当利得返還請求事件
口頭弁論終結日 平成17年5月6日
判         決
主       文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由 
第1 請求  
被告は原告に対し,金53万6025円及びこれに対する平成15年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨  
(1) 原告は,平成11年6月10日,被告から,東京都A所在の「B」のC号室を次のような条件で賃借した。なお,本件賃貸借契約は,平成12年9月30日,平成14年9月30日の経過により,それぞれ2年間更新された。

① 期  間  平成11年6月15日から平成12年9月30日まで
② 賃  料  月 額 53万円
③ 保証金   318万円
(2) 原告は,平成14年8月23日,被告に対し,本件賃貸借契約の解約を申し入れた上で,同年12月4日,本件物件を明け渡した。
(3) 原告は,平成14年12月27日,被告に請求されるまま,本件物件の原状回復費用として53万6025円を支払ったが,その原状回復費用の内訳をみると,①居間・食堂カーペット交換工事一式として21万7000円,②居間・食堂壁クロス貼替工事一式として29万3500円及び消費税相当額2万5525円の合計53万6025円ということであった。
(4) しかしながら,これらの内訳を見ると,原告が特に汚したり,損傷させた部位はなく,いずれも通常使用による経年劣化として,貸主である被告が負担すべき性質の費用であり,原告が支払義務を負うものでないのにかかわらず支払ったものである。したがって,被告は,法律上正当な理由なく,原告の支出により利得をなしたものであるからこれを返還すべきである。
2 被告の主張
(1) 本件賃貸借契約書の19条には,「原告は,本件賃貸借契約終了と同時に本件物件内の原告又は居住者所有の物品等一切を搬出し,原告の設置した内装造作諸設備等を収去し,本件物件を原状に修復して被告に明け渡す。ただし,原状回復工事については,原告は被告又は被告の指定する者に依頼するものとし,その工事に要する費用は原告の負担とする。」という原状回復特約がある。
(2) 原告は,この特約に基づいて,平成14年12月27日,本件物件の原状回復費用として,53万6025円を負担することを承諾していることは明渡時工事確認伝票(乙3号証)で明らかであり,被告は,既に解決済みの問題と認識している。
すなわち,原告と被告は,同日,この特約に基づき,原告が負担する本件物件の原状回復費用を53万6025円とすることに合意し,原告は,この合意に基づき同額の金員を被告に支払ったものである。したがって,この金員が不当利得であるとする原告の主張は全く理由がない。
3 原告の主張
乙3号証の原告の署名・捺印部分は原告の妻が署名し,押捺したものであるが,被告側からはこの書面の性質について何らの説明もなかった。また,原告は保証金の318万円の返還を求めていたが,被告担当者から,この書面に署名・押捺しなければ,それは返還されないといわれたので署名し,捺印したものである。
4 主たる争点
原告は本件物件の原状回復費用の負担を承諾したか。
第3 争点に対する判断
1 原告は,乙3号証について,被告から何らの説明を受けることもなく,書面の内容について認識のないまま,妻が署名捺印したものであるから無効であり,かつ,被告担当者から,この書面に署名・押捺しなければ,保証金318万円は返還されないといわれたので署名し,捺印したものであると主張する。
2 しかしながら,被告側の担当者である証人Dの証言によれば,①本件物件明渡しには,原告側からは,原告本人,妻,原告の実母が立ち会っていること,その際,被告側からの原告の居住に起因する汚れ,損傷部位の存在の指摘及び原告の費用負担による原状回復の必要性の説明に対し,原告が納得していたこと,②乙3号証を原告に郵送した際,D証人が電話で金額について説明したところ,原告が特に金額が高いとか,後で争うとはいってなかったこと,③さらに,最終的にD証人が原告の妻のところに乙3号証を受け取りにいったときにも,原告側から特に金額が高いとか,後で争うとはいわれなかったことが認められる。
3 2の事実及び本件訴訟が本件物件の明渡後2年余を経た後に提起された事実並びに弁論の全趣旨に照らしてみると,原告は原状回復義務の趣旨を正確に理解し,納得した上で,その合理的意思に基づき確定的に承諾して乙3号証に署名・捺印したものであると認められる。すなわち,原告は本件物件の原状回復費用の負担をすることを承諾していたものと認められるものである。なお,この署名・捺印が,たとえ原告の主張するように原告の妻が行ったものであったとしても,それは原告本人の指示によって行われたものであると認められるので,原告本人が署名・捺印したものと同様の法的効果を生じるというべきであり,この結論に差異をもたらすものではない。
よって,原告の請求は,本件物件の原状回復費用を原,被告いずれが負うべきかの判断をするまでもなく理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
東京簡易裁判所少額訴訟6係

裁 判 官   岡 田 洋 佑