H17.11.25 東京地方裁判所 平成8年(行ウ)第48号(第1事件)平成12年(行ウ)第4号(第2事件)

平成17年11月25日判決言渡 同日原本領収  裁判所書記官 
平成8年(行ウ)第48号 事業認定取消請求事件(第1事件)
平成12年(行ウ)第4号 収用裁決取消請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日 平成17年4月22日
           判          決
   当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
     主       文
 一 第1事件
別紙原告目録1記載の原告らの請求をいずれも棄却する。
 二 第2事件
  1 別紙原告目録2及び3の原告らの別紙裁決目録1記載の権利取得裁決の取消しを求める訴えのうち、原告イ、原告ロ及び同ハに係る部分をいずれも却下する。
2 別紙原告目録2及び4の原告らの別紙裁決目録2記載の権利取得裁決の取消しを求める訴えのうち、原告ニ、同ホ、同ヘ、同ト及び同チに係る部分をいずれも却下する。
3 別紙原告目録2及び3の原告らの別紙裁決目録1記載の明渡裁決の取消しを求める訴えをいずれも却下する。
4 別紙原告目録2及び4の原告らの別紙裁決目録2記載の明渡裁決の取消しを求める訴えをいずれも却下する。
5 別紙原告目録2及び3の原告ら(上記1の原告らを除く)の別紙裁決目録1記載の権利取得裁決の取消請求をいずれも棄却する。
6 別紙原告目録2及び4の原告ら(上記2の原告らを除く)の別紙裁決目録2記載の権利取得裁決の取消請求をいずれも棄却する。
 三 全事件
訴訟費用は、全事件を通じて原告らの負担とする。

【略称】
以下においては、次のとおり、各事項について略称を用いる。
第1事件原告ら   別紙原告目録1記載の原告らの総称
第2事件原告ら   別紙原告目録2ないし4記載の原告らの総称
被告東京都知事   第1事件被告東京都知事
被告収用委員会   第2事件被告東京都収用委員会
処分組合      第1事件の起業者である東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合
法  平成13年法律第103号による改正前の土地収用法
廃棄物処理法    廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)
本件事業      日の出町二ツ塚廃棄物広域処分場建設事業
本件事業認定    本件事業について、建設大臣(当時)が平成7年12月20日付けで行った別紙事業認定目録記載の事業認定
本件申請書     本件処分場建設事業に係る本件事業認定の申請書
本件起業地  本件事業認定の起業地
本件共有地     別紙物件目録1及び2記載の共有地の総称
評価条例      東京都条例第107号による改正前の東京都環境影響評価条例(昭和55年10月20日条例第96号)
本件処分場     日の出町二ツ塚廃棄物広域処分場
谷戸沢処分場    日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場
公害防止協定    日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場に係る公害防止協定
本件環境影響評価  本件処分場建設の実施が環境に及ぼす影響について、東京都環境影響評価条例に基づいて行った環境影響評価
保全検討委員会   日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場保全検討委員会
保全調査委員会   日の出町谷戸沢廃棄物広域処分場環境保全調査委員会
29号事件裁決   東京都収用委員会が平成11年10月4日付けで行った平成8年第29号事件の権利取得裁決及び明渡裁決の総称
29号事件権利取得裁決 29号事件の権利取得裁決のみを指す
29号事件明渡裁決   29号事件の明渡裁決のみを指す
30号事件裁決   東京都収用委員会が平成11年10月4日付けで行った平成8年第30号事件の権利取得裁決及び明渡裁決の総称
30号事件権利取得裁決 30号事件の権利取得裁決のみを指す
30号事件明渡裁決   30号事件の明渡裁決のみを指す
   本件収用裁決  29号事件裁決と30号事件裁決の総称   

【目  次】
第1 請求の趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
第2 被告らの答弁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
第3 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
 1 事案の骨子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
 2 法令等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
 3 前提となる事実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(1) 当事者等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2) 本件事業認定及び本件収用裁決に至る経緯・・・・・・・・・・・20
(3) 環境影響評価手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(4) 本件収用裁決申請・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(5) 本件収用裁決・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
第4 争点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
第5 当事者の主張の要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
第6 認定事実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
 1 本件事業認定申請に至る経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(1) 本件起業地選定の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(2) 環境影響評価書の作成及びその内容・・・・・・・・・・・・・・32
 2 本件事業認定申請の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
(1) 本件処分場の事業概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
(2) 本件処分場の主要施設概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
 3 谷戸沢処分場に関する環境調査等・・・・・・・・・・・・・・・・40
(1) 谷戸沢処分場の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
(2) 公害防止協定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
(3) 細目協定による維持管理基準値・・・・・・・・・・・・・・・・41
(4) 事業認定処分前に行われた谷戸沢処分場に関する環境調査の結果・44
(5) 事業認定処分後に行われた谷戸沢処分場に関する環境調査及びその
 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
(6) 別訴鑑定の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74
(7) 本件鑑定の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75
 4 本件収用裁決の手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
(1) 処分組合による物件調書作成手続等・・・・・・・・・・・・・・76
(2) 審理手続の経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78
(3) 被告収用委員会による現地調査の実施・・・・・・・・・・・・・81
(4) 本件収用裁決の要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
 5 代執行の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
第7 第1事件についての判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
 1 事業認定の要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
 2 法20条1号該当性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
 3 法20条3号該当性(争点1、(2))・・・・・・・・・・・・・・・83
(1) 法20条3号の解釈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
(2) 本件事業によって得られる公共の利益・・・・・・・・・・・・・83
 ア 事業の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
 イ 本件事業によって得られる公共の利益・・・・・・・・・・・・85
 ウ 事業の必要性についての原告らの反論・・・・・・・・・・・・85
(3) 本件事業によって失われる利益 ・・・・・・・・・・・・・・・86
 ア 本件処分場の安全性審査方法・・・・・・・・・・・・・・・・86
 イ 本件処分場についての安全性審査・・・・・・・・・・・・・・87
(ア) 有害物質の漏出防止対策・・・・・・・・・・・・・・・・・87
(イ) 地質の安定性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
(ウ) 本件事業が環境に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・99
ウ 谷戸沢処分場の環境汚染問題・・・・・・・・・・・・・・・102
 (ア) 谷戸沢処分場の環境汚染問題の本件処分場についての安全性審
  査における位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102
 (イ) 原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103
 (ウ) しゃ水シートの補修・・・・・・・・・・・・・・・・・・103
 (エ) 地下水集排水管のデータの時系列変化・・・・・・・・・・103
 (オ) 本件事業認定処分前の各種データの評価・・・・・・・・・105
 (カ) 本件事業認定処分後の各種データの評価・・・・・・・・・106
 (キ) 小活・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109
 (ク) 原告らの主張の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・110
(ケ) 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・123
   エ 本件処分場から地下水汚染が始まっている旨の主張の当否・・124
(4) 本件事業認定の法20条3号該当性・・・・・・・・・・・・・125
 ア 得られる公共の利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125
 イ 失われる利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125
 ウ 得られる公共の利益と失われる利益の比較衡量・・・・・・・126
 3 法20条4号該当性(争点1(3))・・・・・・・・・・・・・・・126
 4 本件事業認定の手続違法の有無(争点1(1))・・・・・・・・・・127
(1) 起業地選定手続の瑕疵の主張の当否・・・・・・・・・・・・・127
(2) 環境影響評価手続等の違法の主張の当否・・・・・・・・・・・129
 5 法20条2号該当性(争点1(4))・・・・・・・・・・・・・・・130
(1) 法20条2号要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
(2) 本件事業認定処分の法20条2号該当性・・・・・・・・・・・131
 ア 起業者の意思・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
 イ 起業者の法的能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
 ウ 起業者の経済的能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132
 エ 起業者の実際的能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132
(3) 原告らの主張の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133
 ア 経済的能力の欠如の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・133
 イ 実際的能力欠如の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・133
(4) 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135
 6 第1事件の結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136
第8 第2事件についての判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136
 1 本案前の争点について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136
(1) 原告適格の有無について(争点2(1))・・・・・・・・・・・・136
 ア 29号事件裁決の取消訴訟の原告適格・・・・・・・・・・・136
 イ 30号事件裁決の取消訴訟の原告適格・・・・・・・・・・・136
 ウ 原告イの原告適格・・・・・・・・・・・・・・・・・136
(2) 明渡裁決の取消しを求める訴えの適法性(争点2(2))・・・・・141
 2 本件事業認定の違法性の承継の有無(争点2(3))・・・・・・・・144
 3 本件収用裁決固有の違法性の有無(争点2(4))・・・・・・・・・144
(1) 土地調書、物件調書作成手続の瑕疵の主張の当否・・・・・・・144
(2) 権利者の意見を述べる権利の侵害の主張の当否・・・・・・・・147
(3) 被告収用委員会の審理不尽の主張の当否・・・・・・・・・・・150
(4) 立木や工作物の権利者の認定が誤っている旨の主張の当否・・・151
(5) 法47条2号、48条2項違反の主張の当否・・・・・・・・・153
(6) 小活・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・153
第9 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154
(別紙)
【当事者の主張の要旨】
第1 本案前の主張(第2事件)・・・・・・・・・・・・・・・・・・156
 1 原告適格の有無(争点2(1))・・・・・・・・・・・・・・・・・156
  (1) 被告収用委員会の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156
  (2) 第2事件原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157
 2 明渡裁決取消請求の訴えの利益の存否(争点2(2))・・・・・・・157
  (1) 被告収用委員会の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158
  (2) 第2事件原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・161
第2 本案の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・162
 1 本件事業認定処分の手続違背等の違法について(争点1(1))・・・163
  (1) 原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163
   ア 設置場所の選定手続の違法性・・・・・・・・・・・・・・・163
   イ 環境影響評価手続の違法性・・・・・・・・・・・・・・・・166
  (2) 被告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・170
 2 本件事業認定処分の法20条3号、4号違反の主張について(争点
  1(2)(3))・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・175
  (1) 原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176
   ア 主張の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176
   イ 本件処分地の立地の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・176
    (ア) 水源地であること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176
    (イ) 環境容量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177
   ウ 谷戸沢処分場の危険性・・・・・・・・・・・・・・・・・・177
    (ア) 意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177
    (イ) 地質の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177
    (ウ) 谷戸沢処分場に搬入された廃棄物の危険性・・・・・・・・179
    (エ) しゃ水シートの破損・・・・・・・・・・・・・・・・・・180
    (オ) 周辺に飛散した焼却灰・ばいじん・・・・・・・・・・・・189
   エ 本件処分場の危険性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189
    (ア) 脆弱な地質構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189
    (イ) 地質構造から見た本件処分場の危険性・・・・・・・・・・191
    (ウ) 被告らの主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・192
    (エ) 本件処分場の汚水漏れ・・・・・・・・・・・・・・・・・194
   オ 被告らの主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・・195
    (ア) 危険性判断の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・195
    (イ) 被告らの本件処分場が必要不可欠であるとの主張に対して・196
  (2) 被告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・196
   ア 主張の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・196
   イ 本件事業によって得られる公共の利益・・・・・・・・・・・197
    (ア) 事業の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・197
    (イ) 事業計画の妥当性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・198
    (ウ) 事業計画の科学的安全性・・・・・・・・・・・・・・・・199
    (エ) 本件事業が環境に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・203
    (オ) 谷戸沢処分場に関する環境調査結果・・・・・・・・・・・207
    (カ) 鑑定書の調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・208
   ウ 本件事業によって失われる利益・・・・・・・・・・・・・・210
    (ア) 私的な利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210
    (イ) 公的な利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210
   エ 原告ら主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・・・211
    (ア) 管理型最終処分場の危険性一般論に対する反論・・・・・・211
    (イ) しゃ水工の危険性に対する反論・・・・・・・・・・・・・211
    (ウ) 谷戸沢処分場による環境汚染の主張に対する反論・・・・・212
    (エ) 本件処分場による環境汚染の危険性の主張に対する反論・・226
 3 法20条2号違反の主張について(争点1(4))・・・・・・・・・229
  (1) 原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・229
   ア 処分組合の廃棄物処理場についての管理能力の欠如・・・・・229
   イ 処分組合の遵法意識、財政管理能力の欠如・・・・・・・・・230
  (2) 被告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・231
   ア 起業者としての意思を有すること・・・・・・・・・・・・・231
   イ 起業者としての能力を有すること・・・・・・・・・・・・・231
   ウ 原告らの主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・・233
 4 本件収用裁決の違法性の有無について(争点2(3)(4))・・・・・・238
  (1) 第2事件原告らの主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・238
   ア 事業認定の違法と収用裁決における違法の関係・・・・・・・238
   イ 起業者の手続違反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・238
   ウ 起業者の意見を述べる権利の侵害・・・・・・・・・・・・・241
   エ 被告収用委員会の審理不尽・・・・・・・・・・・・・・・・242
   オ 立木や工作物の権利者の誤りについて・・・・・・・・・・・244
   カ 法47条2号、48条2項本文違反について・・・・・・・・245
  (2) 被告収用委員会の主張・・・・・・・・・・・・・・・・・・・246
   ア 事業認定の違法性は収用裁決には承継されないこと・・・・・246
   イ 調書作成手続の瑕疵の主張に対する反論・・・・・・・・・・247
   ウ 審理不尽の主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・253
   エ 立木や工作物の権利者の認定を誤っている旨の主張に対する反論
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・257
   オ 法47条2号、48条2項違反の主張に対する反論・・・・・259
【事業認定目録】
【裁決目録】
【物件目録】
【当事者目録】
【原告目録1】
【原告目録2】
【原告目録3】
【原告目録4】
(別表)
 別表1ないし21

           事実及び理由
第1 請求の趣旨
1 被告東京都知事が、平成7年12月21日付けで東京都告示第1430の2号をもってした別紙事業認定目録記載の事業認定処分を取り消す(第1事件)。
2 被告東京都収用委員会が別紙原告目録2、3及び4記載の原告らに対して平成11年10月4日付けで行った本件収用裁決をいずれも取り消す(第2事件)。
第2 被告らの答弁
 1 第1事件
   原告らの請求をいずれも棄却する。
 2 第2事件
(1) 本案前の答弁
   ア 原告ロ(原告目録3の288番)、同ハ(原告目録3の314番)及び同イ(原告目録3の117番)の別紙裁決目録1記載の各裁決の取消しを求める訴えをいずれも却下する。
   イ 原告ニ(原告目録2の1番)、同ホ(原告目録2の4番)、同ヘ(原告目録2の7番)、同ト(原告目録2の9番)及び同チ(原告目録2の11番)の別紙裁決目録2記載の各裁決の取消しを求める訴えをいずれも却下する。
   ウ 第2事件原告らの別紙裁決目録1及び2記載の各裁決の取消しを求める訴えのうち明渡裁決の取消しを求める部分をいずれも却下する。
(2) 本案の答弁
  第2事件原告らの請求をいずれも棄却する。
第3 事案の概要
 1 事案の骨子
   本件は、被告東京都知事が本件事業の事業認定処分をしたことについて、第1事件原告らが、本件事業認定処分には、当該事業が法20条2号、3号、4号の要件に該当しないものであるにもかかわらず事業認定処分をした違法がある旨主張し、その取消しを求めた事案と(第1事件)、被告収用委員会が、本件事業用地取得のために本件収用裁決をしたことについて、第2事件原告らが、本件事業認定処分の違法性は被告収用委員会の裁決にも承継されることに加え、本件収用裁決の固有の瑕疵を主張して、その取消しを求めた事案(第2事件)である。
 2 法令等
(事業認定関連)
  (1) 法20条は、事業認定庁が事業の認定をすることができるための要件を規定する。そのうち、法20条1号は、「事業が法3条各号の一に掲げるものに関するものであること」と規定し、法3条27号は、土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業の一つとして、「地方公共団体が設置する産業廃棄物処理法による一般廃棄物処理施設」を規定する。
  (2) 同条2号は、起業者が事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であることを、同条3号は「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」を、同条4号は「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること」を、それぞれ、規定する。
(収用裁決関連)
  (1) 法47条は、収用又は使用の裁決の申請が以下の各号の一に該当するときその他この法律の規定に違反するときは、収用委員会は、裁決をもって申請を却下しなければならない旨規定する。
   一 申請に係る事業が第26条第1項によって告示された事業と異なるとき
   二 申請に係る事業計画が第18条第2項第1号の規定によって事業認定申請書に添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき
  (2) 法47条の2第1項は、「収用委員会は、前条の規定によって申請を却下する場合を除くの外、収用又は使用の裁決をしなければならない。」と規定し、同2項は、「収用又は使用の裁決は、権利取得裁決及び明渡裁決とする。」旨規定する。 
(環境影響評価)
  (1) 評価条例(乙22)
   ア 同条例は、環境影響評価及び事後調査の手続に関し必要な事項を定めることにより、事業の実施に際し、公害の防止、自然環境及び歴史的環境の保全、景観の保持等について適正な配慮がなされることを期し、もって東京都民の健康で快適な生活の確保に資することを目的とするもの(1条)であり、第2条3号別表に掲げる事業でその実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるものとして東京都規則で定める要件に該当するものを対象事業として規定する。
   イ 同条例は、事業者は、対象事業を実施しようとするときは、知事があらかじめ定める環境影響評価に係る技術上の指針(技術指針)に基づき、当該対象事業の実施が環境に及ぼす影響について調査等を行い、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した環境影響評価案及びその概要を作成し、規則で定める時期までに知事に提出しなければならないと規定する(9条1項)。
    一 事業者の氏名及び住所
   二 対象事業の名称、目的及び内容
    三 評価書案の作成前に代替案を検討した場合にあっては、その経過
    四 調査の結果
    五 環境に影響を及ぼす地域並びに環境に及ぼす影響の内容及び程度
    六 環境の保全のための措置
    七 環境に及ぼす影響の評価
    八 対象事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で当該対象事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれのある地域
    九 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
   ウ 同条例は、予測及び評価の項目について、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭、日照阻害、電波障害その他の公害、植物、動物その他の自然環境、史跡、文化財その他の歴史的環境、景観等について、既に得られている科学的知見に基づき予測及び評価を行うことが可能なもののうちから選択するものと規定する(10条)。
   エ 同条例は、知事は、提出された評価書案を前記イ五の地域を管轄する市町村長等に送付するとともに許認可権者に通知し(12条)、市町村長等の意見を聴いた上、当該対象事業に係る関係地域を定めて評価書案の概要を公示するとともに評価書案を縦覧に供し(13条、16条)、審査意見書を東京都環境影響評価審議会に諮問する旨規定する(14条)。
   オ 同条例は、事業者は関係地域に対する説明会を行い(17条)、知事は、都民から意見書の提出を受けるほか(18条)、関係区市町村の意見を求め(19条)、公聴会を開催し(20条)、事業者に各意見に対する見解書を提出させ(21条)た後、審査意見書を作成し(22条)、これを受けて、事業者が環境影響評価書(23条)を作成して知事に提出する旨規定する。
(環境基準等)
  ア 環境基本法16条に基づく環境基準
    環境基準の意義
    環境基本法(平成5年法律第91号)16条は、政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定める旨規定し、同条を受けて、下記のような基準が定められている。 なお、環境基準のレベルは、維持されることが望ましい基準として設定されるもので、人間の健康等の維持のための最低限度としてではなく、それよりも更に進んだところを目標としてその確保を図っていこうとするものであるから、許容限度または受忍限度という性格のものではなく、より積極的に維持されることが望ましい基準をいうものであると解されている。
   (ア) 水質環境基準
     環境基本法16条に基づく公共用水域の水質汚濁に係る環境上の条件につき、人の健康を保護し及び生活環境(同法2条3項で規定するものをいう。)を保全するうえで維持することが望ましい基準として「水質汚濁に係る環境基準」(昭和46年環境庁告示59号。乙54別添4。以下「水質環境基準」という。なお、同基準は、旧公害対策基本法下で定められた基準であるが、環境基本法の施行に伴う関係法律整備法(平成5年法律第92号)2条により、環境基本法16条1項の規定により定められた基準とみなされる。この点は、下記(ウ)の土壌環境基準についても同じ。)が定められている。具体的な基準値は別表1の基準値1記載のとおりである。
   (イ) 地下水質環境基準
環境基本法16条に基づく水質汚濁に係る環境上の条件のうち、地下水の水質汚濁に係る環境基準として「地下水の水質汚濁に係る環境基準」(平成9年環境庁告示10号。乙54別添7。以下「地下水質環境基準」という。)が定められている。具体的な基準値は別表12の基準値1記載のとおりである。
   (ウ) 土壌環境基準
 環境基本法16条に基づく土壌の汚染に係る環境上の条件について、「土壌の汚染に係る環境基準」(平成3年環境庁告示46号。以下「土壌環境基準」という。)が定められている。具体的な基準値は別表13の基準値のとおりである。 
  イ ダイオキシン類対策特別措置法7条に基づく基準
ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)7条は、ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む)及び土壌の汚染に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を定める旨規定し、同条を受けて、「ダイオキシン類による大気の汚染、水質汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準」(平成11年環境庁告示68号。乙54別添27。以下「ダイオキシン基準」という。)が定められている。具体的な基準値は以下のとおりである。
(ア) 大気 0.6pg-TEQ/m3 以下
(イ) 水質 1pg-TEQ/L以下
(ウ) 水底の底質 150pg-TEQ/g以下
(エ) 土壌 1000pg-TEQ/g以下(土壌にあっては、環境基準が達成されている場合であっても、土壌中のダイオキシン類の量が250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施することとする。)
  ウ 水質汚濁防止法3条1項に基づく「排水基準」
    水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)2条2項1号又は2号の要件を備える汚水又は廃液を排出する施設を設置する工場等から公共用水域に排出される排出水(同法2条5項)を規制する同法3条1項の排水基準について、排水基準を定める総理府令(昭和46年6月総令35号。乙54別添2)が定められている(以下「排水基準」という。)。具体的な基準値は乙54別添2別表第1(第1条関係)のとおりである。
  エ 水道法4条に基づく基準
水道法(昭和32年法律第177号)4条は水道により供給される水についての水質基準を定め、その具体的な基準について省令に委任している(昭和53年厚生省令第56号、平成4年厚生省令第69号。以下「水道基準」という。)。具体的な基準値は、別表5の基準値1及び基準値2のとおりである。
  オ 下水道法8条に基づく基準
    下水道法(昭和33年法律第79号)8条は、公共下水道から河川その他の公共の水域又は海域に放流される放流水の水質の基準を定め、具体的な基準値については政令に委任している(昭和34年政令第147号。以下「下水道基準」という。)。具体的な基準値は、別表1基準値2(生活環境に係る項目と一般項目部分)のとおりである。
  カ 廃棄物処理法に基づく基準
   (ア) 判定基準
     廃棄物処理法(昭和45年法律第137号)12条は、事業者が自ら産業廃棄物を処理する場合には政令で定める処理基準に従わなければならない旨規定し、同条を受けた廃棄物の処理及び清掃に関する施行令(昭和46年政令300号)6条が処理基準を定めているところ、同条に基づき有害な産業廃棄物に係る判定基準について、「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令」(昭和48年総理府令第5号。乙54別添3。以下「判定基準」という。)が定められている。具体的な基準値は、別表9の基準値のとおりである。
   (イ) 技術基準
     廃棄物処理法8条の2第1項1号による一般廃棄物の最終処分場の技術上の基準について、「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」(昭和52年総理府厚生省令第1号。乙54別添21。以下「技術基準」という。)が定められている。具体的な基準値は、別表6の基準値(人の健康保護に関する項目部分)のとおりである。
3 前提となる事実
  次の事実は当事者間に争いがなく、又は後掲各証拠及び弁論の全趣旨からこれを認めることができる(証拠によって認めた事実は、認定事実の後に該当証拠をかっこ書きする。)。
(1) 当事者等
 ア 原告ら
   原告らのうち、第1事件原告らは、本件共有地について共有持分を有し、本件事業認定の取消しを求めている者であり、第2事件原告らは、本件共有地について共有持分(原告イについては、本件共有地上の立木についての所有権)を有すると主張し(ただし、原告らの一部の者の権利の存否については争いがある。)、別紙原告目録2の原告らは本件収用裁決(29号事件裁決及び30号事件裁決)の、別紙原告目録3の原告らは29号事件裁決の、別紙原告目録4の原告らは30号事件の裁決の取消しをそれぞれ求めている者である。
 イ 処分組合
  (ア) 処分組合設立の経緯
    三多摩地域に所在する32市町村(当時)は、昭和55年1月時点において、市町村が単独あるいは一部事務組合方式で自ら最終処分場を確保しているのは、半数の16市町村であり、残りの16市町村は、三多摩地域外で最終処分を行い、このうち民間の最終処分場に投入しているところが12市町村という状況にあった。また、最終処分場を確保していた16市町村においても数年のうちに満杯となりその先の目途が立っていないところが大部分であった(乙2・2頁及び5頁)。
    このため、三多摩地域の32市町村が参画する東京都市町村連絡協議会は、このような状況を改善するため、三多摩地域の廃棄物最終処分を適正に行うため、共同して広域最終処分場を建設し管理すること、広域最終処分場の建設及び管理運営組織は、三多摩地域市町村を構成員とする組織として、その組織形態は、一部事務組合とすること等を内容とする「三多摩地域廃棄物広域最終処分基本構想」(乙2)を策定した。
 そして、上記基本構想を実現するため、昭和55年11月1日、三多摩地域の25市2町が、地方自治法284条1項の規定(平成6年6月法律第48号による改正前)に基づき、被告東京都知事の許可を得て、一部事務組合である処分組合を設立した(乙3)。
(イ) 処分組合は、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、田無市、保谷市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村町及び瑞穂町の25市2町(本件処分当時は26市1町。「以下組織団体」という。)をもって組織し、組織団体が処理すべき一般廃棄物の最終処分を広域的に行うため、最終処分場の設置及び管理に関する事務を共同処理するものである(乙3)。
(2) 本件事業認定及び本件収用裁決に至る経緯
 ア 谷戸沢処分場の開場と本件事業認定申請に至る経緯
    処分組合は、処分組合規約に基づき最終処分場を設置することとし、昭和56年4月25日、日の出町谷戸沢地区の広域処分場設置につき同町の基本的同意を得、同年12月28日、同町と処分場設置に係る基本協定を締結した(乙4)。そして、所定の手続を経た上、昭和57年7月26日、東京都西多摩郡日の出町大字平井において谷戸沢処分場の建設に着手し、昭和59年4月1日、同処分場を開場し、廃棄物の埋立を開始した(乙4)。
    谷戸沢処分場は、廃棄物の埋立容量が260万m3 で、当初計画した埋立期間は昭和59年4月から平成9年3月までの13年間であったが、平成3年度末までには160万m3 の埋立が終了し、残容量は100万m3となる一方、平成2年5月に処分組合が各組織団体に対し、今後の搬入予定量についての調査を行った結果によれば、平成4年度から同処分場の埋立終了予定時である平成8年度までの5年間の搬入予定量は154万m3であって、残容量を大幅に上回り、このままでは平成7年度半ばにも同処分場が満杯になってしまうことが予想された(乙5)。そこで、処分組合は、平成5年4月、三多摩地区廃棄物減容(減量)化基本計画を策定し、各組織団体に、搬入する廃棄物の量を一律35%減容することを義務付け、谷戸沢処分場の平成8年度末までの延命化を図るとともに、平成9年度から10年以上使用可能な第二処分場を開場することとし、平成9年度からの供用開始を目標に、東京都西多摩郡日の出町大字大久野字玉の内地内に第二処分場(本件処分場)を建設する事業(本件事業)の計画を立案するに至った(乙1)。
 イ 本件事業認定申請
   起業者である処分組合は、平成7年9月29日、被告東京都知事に対し、法16条に基づき、本件処分場建設事業に係る本件事業認定申請書(乙1)を提出した。
 ウ 土地の管理者及び関係行政機関の意見の聴取
   処分組合は、平成7年9月14日、本件起業地内の都道(法面部分の一部)及び水路の管理者である東京都知事、町道及び治山施設の管理者である日の出町長、電柱の支線等管理者である東京電力株式会社並びに鉱業権の管理者である日開企業株式会社に対して、当該各土地についての意見を求め、同月18日ないし20日、各管理者から本件起業地に編入することに支障がない旨の意見を得た(乙24の1ないし6。法18条2項4号)。
処分組合は、同年7月19日、本件起業地内の森林について森林法10条の2第1項の許可を必要としない開発行為の協議を被告東京都知事との間で行い、被告東京都知事は、同年8月17日、森林法の規定に適合している旨の回答をした(乙25の1)。
処分組合は、同年8月2日、本件起業地内の山林、原野及び保安林の土地の区画形質を変更する行為について東京における自然の保護と回復に関する条例51条5項の規定に基づき被告東京都知事との間で協議を行い、同月21日、被告東京都知事はこれに同意した(乙25の2)。
処分組合は、同年9月12日、本件起業地内の保健保安林について、起業地に編入することについて当該土地の管理者である被告東京都知事に対して意見を求め、被告東京都知事は、同月19日、支障がない旨の回答をした(乙25の3)。
処分組合は、同年7月26日、本件起業地内の砂防法指定地内において本件処分場の設置に必要な工作物の建設を行うことについて被告東京都知事に対して許可を求め、被告東京都知事は、同年9月26日、砂防指定地取締規則2条の規定に基づき、これを許可した(乙25の4。法18条2項5号)。
   エ 事業認定申請書の送付及び縦覧
被告東京都知事は、平成7年10月2日、起業地が所在する日の出町の町長に対し、本件申請書及びその添付書類の写しを送付した(乙10、法24条1項)。
日の出町長は、同年10月4日、本件事業の認定に係る起業者の名称、事業の種類及び起業地を公告し、同日から同月18日までの2週間、本件申請書及びその添付書類の写しを公衆の縦覧に供した(乙11、法24条2項)。
   オ 利害関係人の意見書の提出
被告東京都知事は、平成7年10月26日、法25条1項により利害関係人から提出された意見書を集約したところ、1254件の意見書の提出があり、それらの全てが賛成意見となっていた(乙13)。
 カ 本件事業認定の告示
   被告東京都知事は、同年12月14日、法20条の規定により、別紙事業認定目録のとおり本件事業の認定を行い(乙14)、同月21日、法20条の規定に基づき本件事業の認定をした旨を、東京都告示第1430の2号をもって告示した(乙28、法26条1項)。
また、被告東京都知事は、処分組合に対し、本件事業を認定し、告示した旨通知する(乙29)とともに、建設大臣(当時)に対し、本件告示をした旨報告した(乙30、法26条1項、2項)。
   キ 起業地表示図面の縦覧
被告東京都知事は、平成7年12月20日、起業地を表示する図面の閲覧場所を日の出町役場とした旨、日の出町長に対し通知した(乙27、法26条の2第2項)。平成8年1月5日、日の出町長から被告東京都知事に対し、「平成7年12月21日に公衆の縦覧を開始した」旨の平成7年12月21日付け報告が送付され、被告東京都知事はこれを受理した(乙31)。
ク 補償等についての周知
  処分組合は、平成7年12月、起業地において、土地所有者及び関係人が受けることができる補償等の内容を提示する(乙77の1ないし3)とともに、上記内容を記載した書面を土地所有者及び関係人に配布した(法28条の2)。
(3) 環境影響評価手続
 ア 評価書案の作成
   処分組合は、平成6年10月7日、本件事業について環境影響評価書案を作成し、被告東京都知事に提出した(評価条例9条1項)。
 イ 関係地域の決定
   被告東京都知事は、同月21日、関係地域の決定を行い、処分組合に通知した(評価条例13条)。
 ウ 関係地域及び評価書案の公示及び縦覧
被告東京都知事は、同年11月7日、評価書案の概要を公示し、同月8日から12月7日までの間、評価書案の縦覧を行った(評価条例16条)。
   エ 説明会の開催
     処分組合は、同年11月15日から同月18日までの間、合計4回にわたり説明会を開催した(評価条例17条)。
   オ 都民の意見書の提出
被告東京都知事は、評価書案について、都民からの意見書を受け付けた(乙35・529頁ないし677頁、評価条例18条)。
   カ 関係市町村の意見
     被告東京都知事は、関係市町長に対して、評価書案の内容について、環境保全の見地からの意見を求めた(乙35・678頁及び679頁、評価条例19条)。
   キ 公聴会の開催
被告東京都知事は、同年12月23日、公聴会を開催し、平成7年2月3日、その記録を処分組合に送付した(評価条例20条)。
   ク 見解書の作成
処分組合は、平成7年3月28日、都民から提出された意見書、関係市町長の意見及び公聴会で出された意見に対する事業者の見解を明らかにする見解書を作成し、被告東京都知事に提出した。被告東京都知事は、見解書を受理の上、同年4月4日に見解書の概要を公示し、さらに同月12日から同年5月1日までの間、見解書を縦覧に供した。
処分組合は、同年4月23日から26日の間、4回にわたり説明会を実施した。同年5月19日には、都民の意見書1077件及び関係区市町村長の意見2件が被告東京都知事あて送付された。また、同日東京都環境影響評価審議会の答申が被告東京都知事あてに行われた。
   ケ 審査意見書の作成
   被告東京都知事は、評価書案について、環境の保全の見地から審査し、その結果に基づく意見を記載した審査意見書を作成し、処分組合に送付するとともに、その写しを関係市町長に送付した(乙35・719頁ないし721頁、評価条例22条)。
 コ 評価書の作成
処分組合は、平成7年6月6日、評価書案と見解書について出された意見と被告東京都知事の審査意見に基づいて評価書案に検討を加え、評価書(乙35)及びその概要(乙23の2)を作成し、被告東京都知事に提出した(評価条例23条)。
サ 評価書の公示、縦覧
  被告東京都知事は、同年6月15日、評価書の概要を公示し、同月16日から30日までの間、評価書を縦覧に供した(乙23の1、評価条例24条)。
(4) 本件収用裁決申請
 ア 処分組合は、平成8年12月13日、被告収用委員会に対し、法39条1項及び47条の2第3項の規定に基づき、本件事業に係る本件土地について、本件収用裁決の申立てを行った。
 イ 被告収用委員会は、同年12月24日以降、法42条1項及び47条の4第1項の規定に基づき土地所有者及び関係人に対する通知を行った。
また、被告収用委員会は、平成9年1月8日、本件土地が所在する日の出町の町長に対し、法42条1項及び47条の4第1項の規定に基づき、本件申請に係る書類の写しを送付した。
日の出町長は、平成9年1月9日、送付された書類について、法42条2項及び47条の4第2項の規定に基づく公告を行い、同月23日までこれを公衆の縦覧に供した。
   ウ 被告収用委員会は、同年2月3日、法45条の2の規定に基づき、裁決手続の開始を決定し、同月27日付け東京都公報においてその旨公告した。また、同月3日、被告収用委員会は、法45条の2の規定に基づき、本件共有地に係る裁決手続開始の登記の嘱託を行った。
(5) 本件収用裁決
  被告収用委員会は、平成11年10月4日、法47条の2の規定に基づき、本件収用裁決(丙1及び2)を行い、同月6日以降、法66条3項の規定に基づく裁決書正本の送達及び法施行令5条2項の規定に基づく公示送達及び同令5条3項及び4項の規定に基づく掲示を行った。
第4 争点
本件の主な争点は、以下のとおりである。
 1 本件事業認定の適法性(第1事件)
(1) 本件事業認定手続の違法の有無
(2) 本件事業認定の法20条3号要件該当性
(3) 本件事業認定の法20条4号要件該当性
(4) 本件事業認定の法20条2号要件該当性
 2 本件裁決の適法性(第2事件)
  (1) 本件収用裁決の取消しを求める原告適格の有無
(2) 本件各明渡裁決の取消しを求める訴えの利益の存否
(3) 本件事業認定処分の違法性の承継の有無
(4) 本件収用裁決固有の違法の有無
第5 当事者の主張の要旨
当事者の主張の要旨は、別紙「当事者の主張の要旨」のとおりである。
第6 認定事実
証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。なお、各項目の該当箇所に認定の根拠となる証拠を付記している。
 1 本件事業認定申請に至る経緯
  (1) 本件起業地選定の経緯
    処分組合が本件起業地選定において行った調査の概要は以下のとおりである(乙21、41、甲42)。
   ア 平成元年度における既往文献資料等に基づく調査
処分組合は、平成元年度、土地利用及び防災・保全規制等の地図情報や地形図、厚生省の最終処分場実態調査結果等の資料を用い、昭和55年に合意決定された「三多摩地域廃棄物広域最終処分基本構想」に定められた用地選定の原則に基づき、三多摩地域全域を対象に、廃棄物広域処分場の適地を選定する調査を行ったが、その概要は次のとおりであった。
    (ア) 三多摩地域の全域から、①市街地等の物理的に建設不可能な地域、②法的規制がかけられ、法解除が難しい地域、③水道水源として指定されている地域、及び④大規模な既存施設が立地あるいは既に認可されている地域を廃棄物処分場の建設が不可能あるいは困難な地域として除外した結果、青梅市、日の出町、五日市町、八王子市及び町田市を建設可能地域として設定した(乙21・6頁ないし16頁)。
更に、廃棄物処分場としての面積(標準用地面積約40ha)、容量(標準埋立容量は約300万ないし400万m3 )及び地形状況(候補地の地形が沢状であること、沢入口の地形が締切堰堤築造に適していること等)の2条件を満たす候補地として、27箇所の候補地を抽出した(乙21・17頁)。
(イ) 厚生省の最終処分場実態調査結果等に基づき、処分場として一般的に具備すべき項目として、①面積・容量条件(評価の基準となる容量は、300万m3 ~400万m3 。なお、以下のかっこ内の数値は、いずれも評価の基準となる数値を示す。)、②地形からの造成の難易(沢状で、かつ、面的に拡がりを持つ地形で地形の勾配が50~60パーセント)、③堰堤の施工性(堰堤高は40m未満、堰堤長は160ないし190mであるか否か、また、堰堤下スペースは約1ha)、④既存道路との近接度(200~400m程度)及び道路幅員(5~6m程度)、⑤下水処理区域との近接度(100m未満)及び⑥家屋との近接度(100~150m)を評価項目とし、前記27箇所の候補地について比較、評価した結果、10箇所の候補地を選定した(乙21・21頁ないし23頁)。
(ウ) 前記(イ)の評価項目の他に、①搬入道路及び管理道路の施工性(搬入道路延長1000~1500m、搬入道路標高差100~150m、管理道路延長300~400m)、②管理棟や水処理施設等の施設配置計画及び③雨水放流のための河川との近接度(600~900m)の評価項目を追加した上で、前記10箇所の候補地の相対評価を行い、比較評価した結果、評価の高い5箇所を有力候補地として選定した(乙21・25ないし28頁)。
  なお、上記5箇所の候補地は、以下のとおり、青梅市3箇所、日の出町2箇所であった(乙21・29頁、乙41・2-5、2-6。なお、以下の5箇所の「日-1」等の記号の表記は、乙41によるものであり、同記号の後の()内の「青梅市-3」等の表記は乙21によるものである。)。
日-1(青梅市-3) 青梅市畑中一丁目及び駒木町二丁目内
日-2(青梅市-2) 青梅市駒木町一丁目及び長渕八丁目内
日-3(日の出町-1)本件起業地
日-7(日の出町-2)日の出町平井地内
青-5(青梅市-1) 青梅市二俣尾一丁目内
(エ) そして、上記(イ)及び(ウ)の評価項目に、①自然環境条件(各種水源との近接度、地形・地質、動植物)、②社会環境条件(交通網整備度、中間処理施設との近接度、漁業権、地域整備効果)、③生活環境条件(水質、悪臭、騒音、振動、災害)、④文化保護条件(史跡・名勝・天然記念物、埋蔵文化財包蔵地)の条件項目を追加し、評価基準と項目相互の重要度に基づき、候補地ごとに比較評価し、候補地5箇所の順位付けを行った(乙21・31頁ないし35頁)。
その結果、本件起業地の評価点が最高点で順位も第1順位となった(乙40、江川証人調書40項ないし42項)。
   イ 現地調査を主体とした平成2年度ないし3年度の調査
処分組合は、平成2年度から3年度は、前記5箇所の候補地について、地形・地質や環境等の専門家による現地予備調査を踏まえ、①現地踏査(地形の造成の難易、障害物の有無、湧水量の多少等)、②地形・地質概要調査(基礎地盤の強度と透水性、地滑り・崩壊の有無及び斜面の安定性等)、③環境影響事前調査(注目すべき動植物の確認、植生の自然度等)、④効率性調査(搬入道路及び管理道路の施工性、中間処理施設との近接度及び搬入ルート等)、⑤跡地利用の可能性(周辺の既存計画の有無、候補地の位置と造成斜面の方向、公共整備効果等)及び⑥現地における建設計画への障害の確認を評価項目として、上記5箇所の候補地の相対評価を行い比較評価した(乙21・31頁ないし35頁)。
その結果は、処分組合から委託を受けて予備調査を行ったパシフィックコンサルタンツ株式会社の調査報告書(乙41)によれば、上記5箇所の候補地について、上記評価項目毎に点数評価(最高点5点最低点1点)し、これに各評価項目の重要度(1から3)の点数を乗じて算出した採点数を合計した総得点で比較すると、青梅市の3箇所は、「日-1」が221点、「日-2」が209点、「青-5」が198点であり、日の出町の2箇所は、本件起業地が244点、「日-7」が235点という評価であり、本件起業地が最高点であった(乙41・2-5、2-6)。
同報告書(乙41)による本件起業地の具体的な評価内容は、以下のとおりである。
    (ア) 埋立容量が390万m3 と大きい。
    (イ) 現地の状況
      地形の形状は、入り組んだ尾根筋が多数存在しているため、沢状を呈しており、かつ、面的に広がりをもつ。地形勾配は、5箇所の候補地を相対的に比較して、平面的に起伏は最も少ない。
      堰堤両岸の尾根筋はやや狭まった状況にある。堰堤両岸の尾根の勾配はやや緩やかである。堰堤工事は大規模となる。
      5箇所の候補地を相対的に比較して、処分場施設の配置位置は谷筋であるため、造成工事は大規模となる。処分場建設の配置位置は民間会社の火薬倉庫があり、スペースが狭いため、造成工事はやや大規模である。
      造成工事における障害物の影響としては、高圧線の問題はない。民間会社の火薬倉庫が存在するため、撤去・移設が必要となる。
      5箇所の候補地を相対的に比較して、湧水量は少ない。
      尾根を利用したハイキングコースは存在し、その利用頻度は高い。
      周知文化財は存在しない。
処分場の施工性からみると、その他の候補地と比較して優れる。
    (ウ) 地形・地質
      亀裂に富むが、硬質な中生層(砂岩、泥岩)よりなり、東側の一部に密実な礫層が分布し、基礎地盤としては充分な強度を持つ。
      基礎地盤は全般に難透水性であるが、一部の破砕帯や礫層が透水経路となる可能性がある。
地滑り等はなく、全般に斜面は安定している。一部の風化帯等で小規模崩落の可能性はある。
築堤材の入手方法としては、計画敷地内の礫層を利用できるが、分布が限られる。
施工性の難易からみると、軟弱地盤はなく、走行性はよい。硬質岩のため、掘削はやや効率が悪い。
地形地質条件は十分満足する。
    (エ) 環境
陸上植物については、現存植生は、スギ・ヒノキ植林が大半を占めており、植物相は豊富なものである可能性は低い。
陸上動物については、キツネ、タヌキ、アナグマが記録されており、トウキョウサンショウウオの生息がある。
水生動物については、魚類の生息の可能性はほとんど期待できず、ヘビトンボの生息の可能性がある。
環境条件は問題ない。
(オ) 建設の効率性
周辺地形は5箇所の候補地を相対的に比較して、やや緩やかである。道路周辺は家屋がない。搬入道路及び管理道路新設の施工延長が最も短く、かつ、標高差はないため工事は小規模である。
路線等の障害物がない。
主要地方道から処分場までの区間は既存道路がなく、搬入道路及び管理道路の新設工事は、地形が緩やかで家屋がない等のため建設の効率は概ね良い。中間処理施設からの輸送コストは標準であり、車両搬入は2ルートである。
(カ) 跡地

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最終更新:2005年12月14日 17:22
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