hanrei @Wiki H17.10.26 福岡地方裁判所小倉支部 平成16(わ)1149,平成17(わ)134 虚偽有印公文書作成,同行使,受託収賄被告事件



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平成17年10月26日宣告 
平成16年(わ)第1149号,平成17年(わ)第134号虚偽有印公文書作成,同行使,受託収賄被告事件
            判        決
            主        文
       被告人を懲役3年に処する。
       この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
       被告人から金30万円を追徴する。
       訴訟費用は被告人の負担とする。
            理        由
(犯罪事実)
第1 被告人は,福岡県a郡b村村長として同村を統括代表し,同村発注の「A」建設工事に伴う備品購入契約等に関する入札の実施及び開札等の権限を有していたものであるが,同村助役として,上記建設工事に伴う備品購入契約等に関する指名業者選定権を有していたB,同村企画財政課長として上記建設工事に伴う備品購入契約等に関する事務を担当していたC及び船舶・航空機・家具装飾品の設計・製作及び販売等を業とする「D株式会社」E営業所員であったFらと共謀の上,上記建設工事に伴う4件の備品購入契約に関し,b村財務規則上は競争入札により契約しなければならないとされているにも関わらず,競争入札を行わず,不正の方法で同社E営業所と契約したことの発覚を防ぎ,かつ会計手続に備えようと企て,平成14年7月中旬ころ,同村大字cd番地所在の同村役場において,真実は,上記4件の備品購入契約に関して指名競争入札を実施していないのに,行使の目的で,
 1 指名伺に関する起案文書4通の立案日,契約内容,納入場所,設計金額及び業者名の各欄に,それぞれ別表1(略)記載の事項を記入し,指名競争入札に参加する業者を指名することの伺いをする旨の虚偽の記載をなした上,起案者欄に「C」と刻した印鑑を押捺するなどし,もって,公務員の職務に関し,虚偽の有印公文書4通を作成し,
 2 指名競争入札通知書4通の日付,契約内容,納入場所,入札日時,入札場所,開札日時,入札保証金減免の有無,納期,仕様書配布及び最低制限価格の各欄に,それぞれ別表2(略)記載の事項を記入し,指名競争入札が実施されることを指名業者に通知する旨の虚偽の記載をなした上,作成者欄に「福岡県a郡b村長G」と記名し,もって,公務員の職務に関し,虚偽の有印公文書4通を作成し,
 3 指名・入札結果表4通の事業名,場所,指名通知年月日,入札年月日,落札金額及び指名・入札結果(入札経過)の各欄に,それぞれ別表3(略)記載の事項を記入し,指名競争入札により,「D株式会社インテリア第二事業部」が落札した旨の虚偽の記載をなした上,回議欄に「C」と刻した印鑑を押捺するなどし,もって,公務員の職務に関し,虚偽の有印公文書4通を作成し,
同年8月22日ころ,上記b村役場収入役室において,上記各虚偽公文書を真正なもののように装って,b村監査委員Hらに提出して行使した。
第2 被告人は,平成7年5月から,福岡県a郡b村村長として,同村が発注する土木建築工事に関し,指名競争入札参加者の選定,入札の執行及び請負契約の締結等の事務を統括掌理する職務を行っていたものであるが,平成14年9月7日,e市f区gh丁目i番j号所在の「I」において,土木建築工事の請負等を目的とする「J株式会社K支店」営業課長であったL,同社九州支店営業副部長であったM及び同社のために営業活動を行っていたNから,同村が発注予定の土木建築工事である「O」建設工事の指名競争入札参加者として同社を指名選定し,受注の便宜を図ってもらいたい旨の請託を受けた後,平成15年1月24日,同区gh丁目k番l号所在の「P」1階所在の「Q」において,その謝礼の趣旨で供与されるものであることを知りながら,上記Nから現金30万円の供与を受け,もって,その職務に関し,請託を受けて賄賂を収受した。
(証拠)
 略
(法令の適用)
1 罰条   
  第1の行為のうち
   各虚偽有印公文書作成の点について
    いずれも刑法60条,156条,155条1項
   各虚偽有印公文書行使の点について
    いずれも刑法60条,158条1項,156条,155条1項
  第2の行為について  
   刑法197条1項後段
2 科刑上一罪の処理
  第1の各罪について,刑法54条1項前段(各虚偽有印公文書の一括行使),後段(虚偽有印公文書の各作成とその各行使との間),10条(以上を一罪として犯情の点で最も重い別表3番号2の虚偽有印公文書行使罪の刑で処断)
3 併合罪の処理
  刑法45条前段,47条本文,10条(刑の長期の点で重い第1の罪の刑に法定の加重)
4 刑の執行猶予
  刑法25条1項
5 追徴
  刑法197条の5後段(既に費消されて没収できない。)
6 訴訟費用の負担
  刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
 本件は,福岡県a郡b村村長であった被告人が,同村助役,同村企画財政課長らと共謀の上,同村が計画していた温泉施設「A」の建設工事(以下「本件工事1」と言う。)に伴う備品購入に関し,同村の財務規則に反して,本来行うべき指名競争入札を行わず,Dとの間で不正に購入契約を締結したことを隠蔽するために,実際に指名競争入札を行ったかのような虚偽の指名伺に関する起案文書等の公文書を作成した上,これらを真実なもののように装って,同村の監査委員らに提出して行使したという虚偽有印公文書作成,同行使の事案(第1)及び,同村村長として同村が発注する土木建築工事に関し指名競争入札参加者の選定等の事務を統括掌理する職務を行っていた被告人が,Jの営業課長らから,同村が発注予定の土木建築工事(以下「本件工事2」と言う。)の指名競争入札参加者として同社を指名選定し,受注の便宜を図ってもらいたい旨の請託を受け,現金30万円を収受したという受託収賄の事案(第2)である。
 まず,第1の犯行について見ると,b村企画財政課長のCは,本件工事1のうち,装飾工事等の設計が遅れており,指名競争入札を実施すれば,「A」の開業に影響が出ることを懸念し,助役のB及び村長の被告人に対し,本件工事1に伴う備品購入に関し,同村の財務規則に反して指名競争入札を行わず,Dとの間で不正に購入契約を締結し,その発覚を防ぎ,かつ会計手続に備えるために,実際には行わなかった指名競争入札を行ったかのように関係書類を整えたい旨申し出た。B助役は,「仕方ない。その方法しかないだろう。」「村長に相談して許可を取ってくれ。」などと承認し,被告人も,「仕方ないな。開業を遅らすわけにいかん。そのようにやってくれ。」などと承認した。そして,被告人は,C課長,B助役らと共謀の上,指名競争入札を行ったかのような内容虚偽の公文書を作成した上,これらを同村の監査委員らに提出して行使し,指名競争入札手続の公正を担保するための重要な公文書の信用性を損なった。被告人は,Cから申し出を受けた不正手続を承認したばかりでなく,自らも決済印を押すなど,犯行において重要な役割を果たした。
 次に,第2の犯行について見ると,Nは被告人の親しい知人,LはJの営業担当者,MはLの上司であったが,被告人は,N,L及びMから,飲食店での接待を受けた挙げ句,b村が発注する本件工事2について,Jが落札・受注できるように,指名競争入札参加者として同社を指名選定し,同工事受注の便宜を図ってもらいたい旨請託され,これを承諾した。被告人は,村長としての権限や立場を利用して,独断でJを指名業者に加えるなどして,Jに本件工事2を受注させるために格別の便宜を図った。その結果,Jは,本件工事2を落札・受注することができたが,被告人は,その謝礼の趣旨で,MとLがJにおいて準備した現金の一部である30万円をNを通じて受け取り,「すまんなあ。」などと礼を述べた。このように,被告人は,知人やJの営業担当者らの働き掛けを受けて,公正に行われるべき指名競争入札手続において,一業者であるJの利益を図り,不公正な取り計らいを積極的に行い,その謝礼として本件賄賂を受け取ったもので,業者との癒着を露呈させた看過し難い犯行である。
 被告人は,本件各犯行当時,b村の村長であり,自ら率先して範を示し,廉潔・公正に村の行政を執行し,村役場の職員を指導・監督すべき職責を負いながら,村長としての立場や権限を利用して本件各犯行に及び,村に財政上の損害を与えたばかりでなく,村政に対する村民の信頼を著しく損ない,村政を混乱させた。本件各犯行による社会的影響は大きく,被告人の行為は強い非難に値する。 
 これらの情状によれば,被告人の刑責を軽視することはできない。
 他方,被告人は,本件各犯行をすべて認め,反省の態度を示していること,本件第1の犯行は,村の一大事業である「A」の開業を遅らせたくないとの動機もあったこと,被告人は,これまで長年にわたりb村の村議会議員及び村長職を務め,同村のために尽くしてきたこと,被告人は村長職を始め公職をすべて辞任したこと,被告人は財団法人法律扶助協会に対し30万円の贖罪寄附をしたこと,被告人には禁錮刑以上の刑に処せられた前科がないこと,74歳と高齢であることなど,被告人のために酌むことのできる情状もある。
 そこで,以上の情状を総合考慮し,被告人に対し,主文のとおり量刑し,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
(求刑 懲役3年,金30万円の追徴)
 平成17年10月26日
    福岡地方裁判所小倉支部第2刑事部

      裁判長裁判官   若  宮   利  信


          裁判官   出  口   博  章


          裁判官   佐  藤      卓