hanrei @Wiki H17. 6.22 さいたま地方裁判所 平成15年(行ウ)第24号 行政処分取消訴訟



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判示事項の要旨:
1 名義貸しにより墓地の経営許可を受けていたことが,墓地,埋葬等に関する法律19条に定める墓地の経営許可の取消事由である「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」に当たるとされた事例
2 墓地の経営許可の取消処分を受けた者が,同一土地上について新たに第三者対してなされた墓地の経営許可の取消しを求める訴訟において,原告適格が認められた事例
3 墓地,埋葬等に関する法律10条1項の墓地の経営許可が適法とされた事例


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 1 被告さいたま市長が平成15年3月25日付けで原告に対してした墓地の経営許可の取消処分を取り消す。
 2 被告さいたま市保健所長が平成15年3月26日付けで宗教法人妙照界に対してした墓地の経営許可処分を取り消す。
第2 事案の概要
 1 事案の要旨
  本件は,原告が別紙1物件目録1記載の各土地(以下「目録1各土地」ということがある。)につき墓地,埋葬等に関する法律(以下「墓地埋葬法」という。)10条1項に基づき墓地の経営許可を受けていたところ,被告さいたま市長は,原告が墓地用地等の所有権を取得していないこと及び墓地の実質的な経営をしていないことを理由として,墓地埋葬法19条に基づき,原告に対してした上記墓地の経営許可を取り消し(以下「本件取消処分」という。),さらに,被告さいたま市保健所長は,目録1各土地の一部である別紙1物件目録2記載の各土地(以下「目録2各土地」ということがある。)につき宗教法人妙照界(以下「妙照界」という。)に対して墓地の経営許可を行った(以下「本件許可処分」という。)ため,原告が,本件取消処分
は理由がなく違法な処分であると主張して,被告さいたま市長に対し,本件取消処分の取消しを,また,本件許可処分も違法なものであると主張して,被告さいたま市保健所長に対し,本件許可処分の取消しをそれぞれ求めた事案である。
2 基本的事実関係(当事者間に争いのないか,証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)
 (1) 墓地の許可に関する事務
ア 墓地埋葬法10条の許可及び同法19条の許可の取消しに関する事務は,かつては埼玉県中央保健所長が行うこととされていたが,平成13年4月1日に知事の権限に属する事務処理の特例に関する条例2条(別表7項1号)に基づき知事の権限が埼玉県より浦和市に委譲され,同年5月1日の合併によりさいたま市に承継されたため,それ以降はさいたま市長が行うこととされた。
   イ また,新たな墓地の経営許可に関する事務については,さいたま市保健所長事務委任規則6条に基づき,平成14年4月1日以降はさいたま市保健所長に委任されることとなった。
 (2) 原告の墓地の経営許可
ア 原告は,平成7年7月24日,埼玉県中央保健所長に対し,次のような内容で墓地の経営許可の申請をした(乙1)。
目    的   墓地経営
名    称   X(以下「本件霊園」という。)
所 在 地   浦和市【以下省略】他
利用予定世帯数   2200基
なお,上記所在地の各土地はすべて学校法人明星学園(以下「明星学園」という。)他の原告以外の所有であったため,原告は,上記各土地を明星学園から買い受ける旨の売買契約書を添付して上記許可申請を行った。
イ 埼玉県中央保健所長は,平成7年8月16日付けで,原告に対し,上記各土地のうち,地方公共団体が所有する用悪水路及び堤部分を除いた部分(地積合計1万2433.17㎡)における墓地の経営を許可した(乙2)。
なお,上記許可に係る土地は,後に目録1各土地となっている。
 (3) 土地所有関係等
ア 本件霊園は,平成9年2月ころ完成した。
イ 原告は,明星学園の理事長A(以下「A」という。)らに対し,本件霊園における墓地の永代使用権(墓地使用権)の販売代金の返還及び墓地用地の明渡しを求める訴訟を浦和地方裁判所(現さいたま地方裁判所)に提起した(同裁判所平成10年(ワ)第842号)が,同裁判所は,平成12年4月14日,原告は単なる名義貸しであり,本件霊園の経営権はない旨判断し,原告の上記請求を棄却した(乙8)。原告は,上記判決を不服として東京高等裁判所に控訴した(同裁判所平成12年(ネ)第2733号)が,同裁判所は,平成14年4月17日,上記控訴を棄却し(乙9),同判決は確定した。
ウ そこで,明星学園は,明星学園所有の墓地用地を入札競売にかけたところ,平成14年8月23日,妙照界が上記墓地用地を取得した。
エ 本件霊園内にある旧赤道の土地(別紙1物件目録3記載の各土地。以下「目録3各土地」ということがある。)については,平成13年6月15日,都市計画法40条1項による帰属を原因として,さいたま市から原告に所有権が移転した(甲5)。
    原告は,平成14年7月22日,上記土地のうちさいたま市【以下省略】及び同【以下省略】の各土地の各10分の1をそれぞれB他4名に売り渡し,これらは原告他5名(以下「原告ら」という。)の共有となった(乙4)。
オ その結果,本件霊園内及びその周辺地のうち目録2各土地については妙照界の所有となり,本件霊園を取り囲み又は本件霊園内を横断する目録3各土地については原告又は原告らの所(共)有となった。
  その位置関係は概ね別紙2の図面記載のとおりであり,上記図面の赤線は本件霊園の外周である。
 (4) 本件取消処分に至る経緯
ア 埼玉県中央保健所は,原告に対し,平成12年9月20日に墓地の販売停止勧告,平成13年3月7日に同販売停止通知をし,さらに,さいたま市は,平成13年5月1日,原告に対し,同販売停止指導を行った。
イ さいたま市保健所長は,平成14年11月7日,原告に対し,墓地埋葬法18条1項に基づき関係書類の提出を求めたが(乙6),上記書類は提出されなかった。
 (5) 本件取消処分
ア さいたま市は,平成15年2月25日及び同年3月7日,原告に対し,行政手続法に基づき,聴聞手続を行った(乙19)。
   イ 被告さいたま市長は,平成15年3月25日付けで,原告に対し,原告は墓地用地等を取得していないこと及び墓地の実質的な経営をしていないことを理由として,墓地埋葬法19条に基づき上記原告に対する平成7年8月16日付けでした目録1各土地についての墓地経営許可処分を取り消した(甲1,本件取消処分)。
 (6) 本件許可処分
ア 妙照界は,平成15年3月19日,被告さいたま市保健所長に対し,目録1各土地の一部である目録2各土地について墓地の経営許可の申請をした。
イ 被告さいたま市保健所長は,平成15年3月26日付けで,妙照界に対し,上記各土地(地積合計7771㎡)における墓地の経営許可をした(甲2,本件許可処分)。
 (7) 本件関連法令
   ア 墓地埋葬法等
(ア) 墓地埋葬法1条は,墓地,納骨堂又は火葬場(以下「墓地等」という。)の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他の公共の福祉の見地から,支障なく行われることを目的とする旨定めている。
  同法10条1項は,墓地等を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならないとし,19条は,都道府県知事は,公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるときは,墓地等の施設の整備改善,又はその全部若しくは一部の制限若しくは禁止を命じ,又は10条の許可を取り消すことができると定めている。
(イ) なお,上述したように墓地埋葬法10条の許可及び19条の許可取消しに関する事務については,さいたま市長が行うこととされており,新たな墓地の経営許可に関する事務についてはさいたま市保健所長が行うこととされている。
イ さいたま市墓地,埋葬等に関する法律施行条例(平成13年5月1日条例第192号。平成16年12月27日条例第66号改正前のもの。以下同じ。以下「墓地埋葬条例」という。)
墓地埋葬条例2条は,墓地埋葬法10条1項の規定に基づく墓地等の経営の許可を受けようとする者は,次の各号のいずれかに該当する者でなければならない(ただし,市民の宗教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる場合は,この限りでない。)とし,1号に地方公共団体,2号に宗教法人法4条2項に規定する法人又は民法34条の規定により設立された法人(自己所有地に設置した墓地等を経営しようとするものに限る。)を定めている。
3 争点
 (1) 原告に対する本件取消処分の違法性の有無(争点1)
 (2) 原告に,妙照界に対する本件許可処分の取消しを求める法律上の利益があるかどうか(原告適格)(争点2)
 (3) 妙照界に対する本件許可処分の違法性の有無(争点3)
4 争点に対する当事者の主張
 (1) 争点1(原告に対する本件取消処分の違法性の有無)について
(原告の主張)
ア 開発行為許可
本件霊園の開設には,①都市計画法に基づく開発行為の許可,②墓地埋葬法の経営許可の2種の許可が必要であるところ,①については,浦和市長(当時)の開発許可に基づき原告が開発行為をなし,平成13年4月6日,工事完了検査がなされ,同月25日,開発行為の完了公告(都市計画法36条3項)がなされた。次いで翌26日同法40条の規定に基づき原告が開発した道路部分についてはさいたま市の所有となり,他方「従前の公共施設の用に供していた土地で国又は公共団体が所有するものは・・・開発許可を受けた者に帰属する」(同条1項)との規定により,従前いわゆる赤道と呼ばれていた目録3各土地は原告所有となった。
すなわち,本件取消処分は上記開発行為が適法に原告によってなされているとの行政庁の判断について特段の考慮を払っていない重大な瑕疵がある。
イ 本件取消処分の理由1(墓地用地等を取得していないこと)について
墓地用地については,土地売買契約を締結していた売主である明星学園に対して土地売買代金の支払を遅滞した事実はあるが,事態の解決を図っていた際に,一方的に明星学園所有地を第三者である妙照界に売却したにすぎず,売買代金の履行遅滞は売主が了解していたものであった。その解決を図るために訴訟を提起したのである。
原告の所有する霊園の土地については,Bらの権利を確保する上で,Bらに持分移転登記したが,本件霊園の再開・正常化の目処がつき次第,原告の指示どおり,無条件かつ無償にて所有権移転に応じることは合意されている。
ウ 本件取消処分の理由2(実質的な経営をしていないこと)について
本件霊園の経営主体は原告であり,現実的には原告の委託を受けたCが経営を行ってきたものである。
石材店は経営主体が原告であることを確認した上で指定業者となったのであり,原告が単なる名義貸しでしかないのであれば,全体として3億6000万円に及ぶ建墓手数料前払金(本件霊園の開発費用に充てられた。)を支払うはずがない。その余の開発投資資金や土地購入代金の支払は上記3億6000万円の石材店支出に係る前払金と墓地の永代使用権の販売代金により順次支払われたものであり,この意味でも原告が経営主体でなかったとするのは事実誤認である。
また,平成14年11月25日,C及びAの連名で「今後は貴殿(原告)の指導の下霊園管理をしてまいります」等の謝罪文が差し入れられ,Aと原告との間で本件霊園の経営主体が原告であることが確認されているのである。
エ 取消処分の不明確性と裁量権の濫用
およそ人に不利益処分を課す場合の基準は明確たるべく,漠然たる不明確な基準をもって不利益処分を課すことが許されないことは,憲法31条の適正手続の保障から自明の法理であるところ,墓地埋葬法19条は,「都道府県知事は,公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるときは」「許可を取り消すことができる」と定めるが,この規定は憲法31条に違反する。
また,同条は,強制処分の内容として「整備改善」「使用の制限若しくは禁止」等の措置で目的を達しない場合に初めて取消処分を認めるものと解すべきであり,「都道府県知事が本条の規定に基づく命令を発する場合は,当該行政目的達成のための必要最小限の措置を命令すべきである」と解されている。
したがって,本件取消処分は裁量権を逸脱した違法がある。
(被告さいたま市長の主張)
 ア 墓地埋葬法の規定
   本件取消処分は,墓地埋葬法19条に基づく取消処分である。
   同条によれば,「都道府県知事は,公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」は,その墓地経営の許可を取り消すことができるとする。
   ところで,この「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要」な場合とはいずれも抽象的な概念ではあるが,その評価の根拠となる事実は,墓地経営の許可につき,何が必要とされているかという点から検討されなければならない。
 イ 墓地経営許可に当たっての要件
   まず,墓地は,利用者にとって永遠の安らぎの場所であり,その高い倫理性とともに,永続性のための組織や管理体制が十分にとられていることが必要である。
   また,宗教法人の名を借りたいわゆる名義貸しは,その経営・管理の安定性を欠き,その利用者に被害が及ぶものであり許されるものではない。
   さらに,墓地としての永年の使用を考えれば,その敷地は墓地経営を許可された者自らが所有していなければならない。
   当該墓地を経営するについてはその財務関係書類が作成されるとともに公開されていなければならない。
   以上は,平成12年12月6日付け厚生省生活衛生局長の「墓地経営・管理の指針等について」生衛発第1764号にも示されている。
 ウ 原告の状況
  (ア) 別件訴訟の判決において,原告は墓地を経営管理していないことが示されており,また,原告代表者自身も本件取消処分に先立つ聴聞手続において,経営に携わっていないことを認めている。
    原告が,名義貸しを行っていたことは,原告が自ら上記別件訴訟の控訴審において認めるところである。
  (イ) 原告は,墓地用地の所有をしていない。原告は,墓地経営許可に当たり,その墓地用地を買い取ると主張していたが,これまで約7年間を経過してもその所有権を取得できなかった。また,墓地の附帯建築物についても原告所有ではなく,さらに開発行為により取得した旧赤道部分の一部も第三者との共有になっている。
    (ウ) また,原告は,財務関係書類を作成していない。
エ 本件取消処分の適法性
  このような各事実はいずれも墓地経営の許可処分を「公衆衛生その他の公共の福祉の見地から」取り消すに十分な事由に該当する。
よって,これらを理由として,被告さいたま市長が行った取消処分は裁量の範囲を逸脱したものではなく違法な処分ではない。
 (2) 争点2(原告に,妙照界に対する本件許可処分の取消しを求める法律上の利益があるかどうか(原告適格))について
(原告の主張)
  原告は本件霊園の開発を適法にしており,そのような原告を排除して第三者である妙照界に対し墓地埋葬法に基づく墓地経営許可をなしたものであるから,原告は訴訟適格を有するというべきである。
  (被告さいたま市保健所長の主張)
妙照界に対する墓地経営許可処分は,原告を排除するためになされた処分ではない。仮にその許可処分が取り消されたとしても,当然に原告に対する墓地経営許可の取消処分が取り消されるものでもなく,原告において墓地経営ができるものではない。
したがって,原告において妙照界に対する墓地経営許可処分の取消しを求める訴訟適格はない。
 (3) 争点3(妙照界に対する本件許可処分の違法性の有無)について
  (原告の主張)
ア 条件
本件許可処分は,既存墓地の経営主体変更による新規の許可であるが,本件においては,①霊園用地は墓地経営許可を取得した者が所有していなければならず(墓地埋葬条例2条),②さいたま市墓地等許可事務処理要綱では経営者の基準として,さいたま市に主たる事務所を置く宗教法人であるべきとされており,③墓地埋葬法の許可に先行する開発行為許可により,霊園の開発がなされ,本件霊園内には他人名義の建物(管理棟)が存在している等の特性がある。
イ ①について
開発行為の許可に当たり,許可権者は,①につき本件霊園用地が原告名義の土地に囲繞されている事実を意識的に看過している。
そして,妙照界が墓地経営許可に当たり提出した管理運営計画においても本件霊園内に他人名義の土地が存在することを認めており,この事実は霊園用地が自己所有地でなければならないとする墓地埋葬法,墓地埋葬条例に違反していることは明らかである。また,妙照界は,上記管理運営計画で,本件霊園開園後,土地所有者と協議を持ち解決を図るべく努力をする旨約しているが,現在まで協議がなされた事実はない。
ウ ②について
妙照界は,埼玉県東松山市所在の宗教法人であり,上記②の基準を満たさないことは明らかである。
エ ③について
妙照界は,管理棟について上記管理運営計画で,建物所有者と協議をもち適正な立退料での取得により解決を図るべく努力をする旨約しているが未解決のままである。
  (被告さいたま市保健所長の主張)
ア 本件許可処分に至る経緯
原告の墓地経営許可は取り消さざるを得ない状況にあったが,一方で,上記許可が取り消されることにより,本件霊園の墓地の永代使用権者の権利を保護し,混乱を避けなければならなかった。
そこで,当時の処分権者であった埼玉県中央保健所長は,本件霊園の経営を行い得る者が埼玉県内にいるかどうかを検討していた。
このような状況において,平成13年5月1日に処分権者が埼玉県中央保健所長よりさいたま市長へ移行し,平成14年4月1日にさいたま市長よりさいたま市保健所長へ移行した。
そして,平成14年8月ころ,本件霊園の墓地用地の大部分を取得した妙照界より本件霊園の経営を行いたいという申出があった。
イ 許可処分の裁量と要件
    (ア) 墓地経営に際しては,「都道府県知事の許可を受けなければならない」とされ(墓地埋葬法10条1項),経営許可に関し許可権者に幅広い裁量が与えられた規定となっている。
 そして,許可権者は,公衆衛生その他公共の福祉を十分に勘案した上で許可を行わなければならないとされている。
(イ) 墓地埋葬条例では,墓地経営を許可するにつき,大きく分けて次の3つの要件が必要とされている。
すなわち,①宗教法人であること(同条例2条),②墓地を設置した土地が自己所有地であること,③各施設が基準を満たしていること(同条例4条)という3点である。
ウ 本件許可処分の適法性
そして,経営許可の申請をした妙照界は,上記条例の3要件を全て満たしていた。
     さいたま市保健所長は,本件霊園の使用者保護のためを考え,平成15年3月26日付けで,墓地の経営を妙照界に許可した。
ところで,旧赤道部分は,当時,原告らの所有となっており,被告さいたま市保健所長は,その部分については墓地経営許可をしなかった。
ただ,本件霊園の現況は,旧赤道部分が明確に区分されているわけではなく,旧赤道部分は原告によって既に個人の墓地として使用され,墓石が置かれている状況であった。また,妙照界においては,許可に当たって,旧赤道部分について自ら解決する旨の誓約書も提出していた。
なお,さいたま市墓地等許可事務処理要綱では,経営者について「さいたま市に主たる事務所を置く宗教法人」であることが望ましいとするところ,この要綱は単にさいたま市の内部方針を定めるものであり,外部に対して何らの法的意味を有するものではない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
基本的事実関係に加え,証拠(適宜掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 (1) 本件霊園の経営等(甲9,11,乙3,7,8)
明星学園は,目録1各土地に霊園を開設するために,Dにその企画開発を依頼し,Dは,霊園開設のための都市計画法の開発許可及び墓地埋葬法に基づく経営許可を取得するためには宗教法人の協力が必要不可欠と考え,原告にその協力を依頼した。
原告は,奉納金等の名目で名義貸料2000万円を取得し,金銭的な負担は一切負わないという条件で,本件霊園開設のために必要な都市計画法の開発許可及び墓地埋葬法の経営許可の申請のために必要な契約書等の作成に協力することとした。
そして,原告は,平成7年4月12日,明星学園の所有地を買い取る意思がないにもかかわらず,墓地埋葬法の経営許可を取得するために,明星学園との間で,明星学園の所有地を10億円で原告が買い取る旨の内容虚偽の土地売買契約を締結し,また,同年6月14日,Dとの間で,原告が都市計画法の開発許可及び墓地埋葬法の経営許可を取得した後は本件霊園の管理運営の一切をDに委託し,墓地使用料,建墓に関する権利,管理費等を収受する権利等はDに帰属する旨の本件霊園運営管理委託契約を締結した。
その後,原告は,都市計画法の開発許可,墓地埋葬法の経営許可の申請を行い,それぞれ許可を取得し,本件霊園の起工式が行われ,原告は,上記名義貸料のうち500万円をDから受領した。
明星学園,D及びAは,平成7年11月1日,明星学園とAが本件霊園の完成に必要な今後の工事を行うこと,原告と指定石材店の承認を条件として,原告とDとの間で締結した上記本件霊園運営管理委託契約で定めたDの地位を明星学園及びAが譲り受けること等を内容とする合意書を作成した。
本件霊園の造成工事請負契約が平成7年11月27日に原告とEとの間で2億8840万円で締結され,管理棟の工事請負契約が平成8年4月1日に原告とFとの間で8900万円で締結され,上記各工事が施工されたが,上記各代金の支払や目録1各土地の賃料等は,明星学園理事長Aの個人資金及び指定石材店からの前払金並びに本件霊園の墓地の永代使用権の販売代金等によって賄われ,原告は,一切の金銭的出費をしていない。
そして,原告,明星学園及びAの間で,平成8年12月21日,Aが将来設立する新たな宗教法人に原告の本件霊園の許可名義を移行すること,原告の名義貸料として前記名義貸料の支払のほか,本件霊園の20区画分の墓地の永代使用権を販売する権利の譲渡をすること,200軒の檀家を目標に努力すること等を内容とする覚書を作成した。
本件霊園は平成9年2月に完成し,本件霊園の管理組合によって霊園内の墓地の永代使用権の販売が行われた。
(2) 墓地用地等の所有権(乙8,9)
 その後,原告は,明星学園の理事長Aらに対し,本件霊園における墓地の永代使用権の販売代金の返還及び墓地用地の明渡しを求める訴訟を浦和地方裁判所(現さいたま地方裁判所)に提起した(同裁判所平成10年(ワ)第842号)が,同裁判所は,平成12年4月14日,原告は単なる名義貸しであり,本件霊園の経営権はない旨判断し,原告の上記請求を棄却した。原告は,上記判決を不服として東京高等裁判所に控訴した(同裁判所平成12年(ネ)第2733号)が,同裁判所は,平成14年4月17日,控訴を棄却し,同判決は確定した。
 その結果,原告は,本件取消処分当時までに,旧赤道部分の土地(目録3各土地)以外の墓地用地及び本件霊園附帯建物等についての所有権を取得できないこととなった。
 そして,被告さいたま市長は,平成15年3月25日,原告に対し本件取消処分を行った。
(3) 妙照界の申請等(甲1,2,乙8,11,12)
妙照界は,平成14年8月23日,明星学園所有の墓地用地を入札競売により取得したことにより,目録2各土地を所有することになった。
そこで,妙照界は,平成15年3月19日,被告さいたま市保健所長に対し,目録2各土地について墓地の経営許可の申請をした。
妙照界は,上記申請に際し,目録3各土地について,指定石材店の権利放棄の交渉,共有地権利確保による共有地分割請求,法的に可能なあらゆる手段等の方法で所有権を取得すべく最大限の努力を払い,既存墓地永代使用権購入者の保護に努める旨約した誓約書,永代利用者名簿を取得し,墓地経営者変更の説明会を開催するとともに,永代利用者の保護及び相互理解に努める旨約した誓約書,墓地の永代使用権を購入した善意の墓地の永代使用権者を引き続き霊園利用者として永代に渡り保護する旨約した誓約書,本件許可処分対象地を転売及び賃貸借等の対象とせず妙照界の霊園として管理運営することを約した誓約書,旧赤道上に墓地の永代使用権を取得している15件に対し,墓地経営許可取得後,永代利用者が希望する場合改葬工事を開始し
,それに伴う改葬費用は全て妙照界の負担とする旨約した誓約書を,それぞれ被告さいたま市保健所長に提出した(乙11)。
そこで,被告さいたま市保健所長は,同年3月26日,妙照界に対し,本件許可処分を行った。 
(4) 本件霊園の状況(甲16ないし21,G)
 本件取消処分及び本件許可処分当時から現在(口頭弁論終結時)に至るまでの本件霊園内及びその周辺地のうち目録2各土地については妙照界の所有であり,本件霊園を取り囲み又は本件霊園内を横断する目録3各土地については原告又は原告らの所(共)有である。その位置関係は概ね別紙2の図面記載のとおりであり,上記図面の赤線は本件霊園の外周である。
  すなわち,本件霊園内には妙照界所有地及び原告又は原告ら所(共)有地が存在しており,妙照界が本件許可処分によって許可を受けている土地は上記妙照界所有地のみであり,本件霊園内を経営許可を受けていない原告らの所(共)有地が取り囲み又は横切る状態となっている。
 また,本件霊園自体は完成し,墓地の永代使用権の販売もなされ,原告又は原告らの所(共)有地である本件霊園の一部を含めて既に墓石が建立されている状態にある。
2 争点1(原告に対する本件取消処分の違法性の有無)について
 (1) 墓地埋葬法10条1項は,墓地等を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならないとし,同法19条は,都道府県知事は,公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるときは,墓地等の施設の整備改善,又はその全部若しくは一部の制限若しくは禁止を命じ,又は10条の許可を取り消すことができると定めている。
   同法は,許可・取消の各要件を具体的に定めてはいないが,これは,墓地等の経営が高度の公共性を有するとともに,国民の風俗感情,宗教活動,各地方の地理的条件等に依存する面を有し,一律的な基準による規則になじみ難いことに鑑み,都道府県知事の広範な裁量に委ねる趣旨に出たものと解される。そして,墓地埋葬法は,墓地等の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他の公共の福祉の見地から,支障なく行われることを目的とするものであるから(同法1条),同法19条にいう「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」は,墓地の永続性及び健全な経営の確保,利用者の利益の保護,周辺の生活環境及び地理的条件との調和等を総合的な観点から判断すべきものである。
   ところで,墓地埋葬法10条1項の墓地の経営許可の申請は,当然,墓地を経営しようとする者の申請に限定されるが,さらに墓地埋葬条例2条は,墓地埋葬法10条1項の経営許可を受けようとする者は,原則として地方公共団体又は自己所有地に設置した墓地等を経営しようとする宗教法人又は公益法人に限定しているところ,原告が墓地経営の許可を埼玉県中央保健所長から受けた平成7年当時においても,行政実務上同様の運用が行われていたと推認される。このように,許可申請の主体を限定している趣旨は,墓地の永続的管理の必要性とともに,墓地の健全な形成を確保するため過度に営利を追求しない運営が求められることにあると考えられる。 
   そして,墓地の経営許可における名義貸し行為は,名義を貸した者が形式上経営の許可を受けることによって,名義を借り受けた者が何ら行政上の手続を経ることなく実質的に墓地を経営することになるのであるから,無許可で墓地経営を行うことを助長し,隠ぺいする行為であって,上記のような法の趣旨を潜脱するものというべきである。また,実質的にみても,名義貸し行為が行われると,名義を借りた者が実質的な経営者として墓地の永代使用権の販売等により利益を得ることになる一方,墓地利用者とのトラブル等の最終的な責任は何ら資金力のない名義を貸した者が負うことにもなり,最終的には墓地利用者の利益を害するおそれもある。
   とすれば,そのような名義貸し行為によって何ら法的手続を経ないで墓地の経営を行うことは,特段の事情がない限り,それ自体墓地の永続性及び健全な経営の確保を著しく害するおそれのあるものというべきである。
 (2) これを,本件についてみると,原告は,明星学園やDらとともに墓地埋葬法の経営許可取得のために名義を貸し,その対価として2000万円を受け取る旨約し,実際に,墓地用地を原告が取得する意思もないのに明星学園との間で虚偽の売買契約書を作成し,それを墓地の経営許可の申請書に添付して墓地の経営許可を取得している。そして,本件霊園の管理運営についてもD若しくはDの地位を譲り受けた明星学園又はAに一切を委託していたものであり,原告自らが本件霊園の管理運営を行っていたものではない。また,本件霊園の建設費用についてもAや指定石材店からの出費によるもので原告自らは全く出捐することがなかったにもかかわらず,名義貸料の一部を原告は現に受け取った。さらに,その後も原告は墓地用地の大部分を取得する
ことができず,上記墓地用地は最終的に妙照界の所有地となっている。このような事実に鑑みると,原告は目録1各土地における墓地経営をする意思はなかったのみならず,このような名義貸し行為を利用して原告自らの利益を得ることを図り,本件霊園の管理運営については一切をDや明星学園らに任せ,目録1各土地所有権の確保も全く図れなかったのであるから,原告の名義貸しに関する一連の行為が,墓地の永続性及び健全な経営の確保を害するおそれのある行為であることは明らかである。
   とすれば,このような原告の行為は,墓地埋葬法及び墓地埋葬条例の趣旨を没却するものであり,墓地の永続性及び健全な経営の確保を著しく害するものであって,墓地の永続性の確保,利用者の利益保護の観点からみて公共の福祉を害するものというべきである。
したがって,墓地埋葬法19条の「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」という墓地の経営許可の取消要件に該当するといえる。
(3) この点,原告は,本件取消処分の違法性として,本件取消処分の理由がないことに加え,①本件取消処分は,適法に開発行為が原告によってなされたという点に考慮を払っていない重大な瑕疵があること,②墓地埋葬法19条は,基準が不明確であり,憲法31条に反すること,③本件取消処分は裁量権を逸脱していることを主張する。
しかし,①については,都市計画法に基づく開発行為許可と墓地埋葬法に基づく墓地の経営許可はその目的・趣旨,要件,内容等を異にするものであって,適法に開発行為の許可を得ているからといって墓地埋葬法19条所定の墓地経営許可の取消事由が認められる場合にその取消しに関する処分権限が制限されると解することはできない。
また,②については,たしかに,墓地埋葬法19条の「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」との要件はやや抽象的であることを否めない。
しかし,先に述べたとおり,墓地等の経営は高度の公共性を有するものであり,行政庁は,国民の宗教的感情,公衆衛生その他公共の福祉を十分に勘案の上,施設の整備改善命令,許可の取消し等の権限を行使すべきものであり,その判断は行政庁の広範な裁量に委ねられている部分が多いというほかはない。また,乙16及び弁論の全趣旨によれば,墓地の経営者,設置場所,墓地等の施設の基準について墓地埋葬条例で一定の基準が定められ,原告が墓地経営許可を埼玉県中央保健所長から受けた平成7年当時においてもほぼ同一の運用基準に沿って実務の運用が行われていたと推認される。そして,墓地埋葬法19条所定の不利益処分が課される典型的場合は,経営者,墓地等の施設等の基準が条例等に定める基準に適合しなくなった場合と解され
る。そこで,上記のような墓地埋葬法19条の趣旨や墓地埋葬条例を参酌すれば,墓地埋葬法19条の不利益処分を課す場合の「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」との要件は一応具体的に推測し得るから,同条の規定がやや抽象的であるとしても憲法31条に違反するとまではいえない。
また,③については,原告の一連の行為が墓地埋葬法等の趣旨を没却するものであることは前記のとおりであり,取消処分を行うことについて何ら裁量権の逸脱はない。
したがって,原告の主張はいずれも採用できない。
 (4) 以上のとおりであり,墓地埋葬法19条の「公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるとき」に該当し,被告さいたま市長が原告に対してした本件取消処分は適法というべきであり,この点に関する原告の主張は理由がない。
3 争点2(原告に,妙照界に対する本件許可処分の取消しを求める法律上の利益があるかどうか(原告適格))について
 (1) 行政事件訴訟法(平成16年法律第84号改正後のもの。以下同じ。)9条1項は,取消訴訟は,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができるとし,同条2項は,裁判所は,処分の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては,当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとし,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反
してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとすると規定している。
   そこで,被告さいたま市保健所長が行った妙照界に対する本件許可処分について,処分の名宛人ではない原告がその処分の取消しを求める法律上の利益を有するかどうか以下検討する。
  (2) 妙照界に対する本件許可処分は,目録2各土地について墓地の経営を許可したものであるが,原告は,妙照界に対する本件許可処分がなされる以前に,目録2各土地を含む目録1各土地の墓地の経営の許可を受けていたものである。
 たしかに,妙照界に対する本件許可処分の取消判決があっても,当然には原告に対する本件取消処分が取り消されることにはならないが,妙照界に対する本件許可処分が取り消されることによって原告は目録2各土地について経営許可を受け得る地位につくこととなる。
すなわち,墓地埋葬法は,墓地を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならないとし(同法10条1項),上記許可を受けた墓地の区域を変更しようとする場合にも同様とされており(同条2項),墓地の経営は許可を受けた区域においてのみ許されるものであり,仮に墓地の経営許可が既になされている区域と同一の区域について別の者から墓地の経営許可の申請があった場合には,その申請は形式的に不許可となる蓋然性が高い。そして,原告は妙照界に対する本件許可処分がなされる直前まで目録2各土地を含む目録1各土地について墓地の経営許可を受けていた者であって,妙照界に対する本件許可処分が取り消されなければ,原告は改めて目録2各土地における墓地の経営許可を申請し許可を得ることが事実上不可能な状
態にあるといえる。
また,原告に対する本件取消処分が取り消されたにとどまるときは,同一土地上に原告と妙照界の2つの墓地の経営許可処分がなされた状態となり,被告らとしては,いずれかの処分を取り消さざるを得なくなるが,この場合,後になされた妙照界に対する本件許可処分が当然に違法となり取り消されるべきと解することはできず,原告は本件取消処分が取り消されれば必ず満足するという関係にはない。
(3) そうすると,原告が自らの墓地経営許可の取消処分の取消しを求める場合はもちろん,原告に対する本件取消処分の取消しを前提としなくても,原告としては妙照界に対する本件許可処分の取消しを求める法律上の利益があるというべきである(なお,最高裁昭和43年12月24日判決・民集22巻13号3254頁参照。)。
  したがって,妙照界に対する本件許可処分の取消しを求める本件訴えについて原告適格に欠けるところはないというべきであり,これについての被告さいたま市保健所長の主張は採用できない。
4 争点3(妙照界に対する本件許可処分の違法性の有無)について
(1) 墓地埋葬法10条1項は,墓地等を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならないとしており,上記許可の要件は,前述の同法19条の取消しの場合と同様に,墓地の永続性及び健全な経営の確保,利用者の利益の保護,周辺の生活環境及び地理的条件との調和等を総合的な観点から,国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他の公共の福祉に適合するかどうかを判断すべきである。
  (2) そこで,妙照界に対する本件許可処分をみると,上記のように原告に対する本件取消処分によって目録1各土地について墓地の経営主体が存在しない状態になったが,その当時,既に本件霊園は建設され,管理棟等の附帯建築物が建築されており,本件霊園の墓地の永代使用権が販売され,ほとんどの墓地に関して墓石が建立されていたこと,また,かつて明星学園他の所有地であり原告が所有権を取得することのなかった目録1各土地の大部分の土地については,妙照界が競売によりその所有権を取得した状況にあったことが認められる。
 そのような本件霊園の状況に鑑みると,早期に本件霊園の経営をなし得る主体を確定させ,本件霊園の管理運営を任せることによって,本件霊園の墓地利用者の利益を図る高度の必要性があったといえる。そして,本件霊園内の主要土地である目録2各土地の所有権を有しており,本件の一連の名義貸し行為に関係しない宗教法人である妙照界に対して墓地の経営を許可した本件許可処分は,国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他の公共の福祉に適合するものということができる。
 そうすると,墓地埋葬法の許可要件に反するところはなく,その他,墓地埋葬条例に反するところもない。
(3) この点,原告は,概ね,①霊園用地は墓地経営許可を取得した者が所有していなければならないにもかかわらず,本件霊園用地が原告名義の土地に囲繞されていること,②さいたま市墓地等許可事務処理要綱によれば,経営者はさいたま市に事務所を置く宗教法人でなければならないにもかかわらず,妙照界は埼玉県東松山市所在の宗教法人であること,③本件霊園内には他人名義の建物が存在していることを理由として本件許可処分の違法性を主張する。
しかし,①については,たしかに,原告の指摘するように本件霊園には原告又は原告らの所(共)有する目録3各土地が存在しており,妙照界に対して墓地の経営の許可をしてもそれらの他人所有地が本件霊園内に存在することにはなるが,上記各土地については本件許可処分はなされていない上,妙照界からは被告さいたま市保健所長に対して,上記各土地の取得に努める旨の各種誓約書が提出されているし,そもそも,上記各土地は原告又は原告らの所(共)有であるから,本訴又は原告が提起した別訴が係属している最中に妙照界が上記各土地の所(共)有権を原告又は原告らから買い受けることができなかったとしてもやむを得ない。そうすると,本件霊園が完成し,大多数の墓石が建立されている状態においては,本件霊園内の一部の土地が原
告又は原告らの所(共)有であったとしても,目録2各土地における墓地経営についてはその各土地を所有している妙照界に許可することについて国民の宗教的感情,公衆衛生その他の公共の福祉に反するところはないというべきである(なお,本件霊園内に他者の所有地が横切っている状態は,墓地利用者の保護の観点からも望ましいものではないことは確かであり,今後,原告らと妙照界が話し合い,墓地利用者に不測の損害や不便をかけないよう本件霊園の墓地用地全体の所有関係を墓地埋葬法の趣旨に沿う方向で確定させることが望まれる。)。
 また,②及び③については,それ自体では許可処分の違法事由となるものではなく,原告主張の事実を考慮したとしてもこれまでの判断を左右するものではない。
 したがって,原告の主張①ないし③を考慮しても本件許可処分を違法ということはできない。
(4) 以上のとおりであり,被告さいたま市保健所長の妙照界に対する本件許可処分は適法であり,この点の原告の主張も理由がない。 
5 結論
  以上の次第であり,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第4民事部

   裁判長裁判官    豊   田   建   夫    


   裁判官 富   永   良   朗


   裁判官 松   村   一   成