――――――ストン
「なんだ?」
郵便受けからそんな音が鳴った。
思えばこれが、戦いの始まりだったのかもしれない。
オレの名は橘瑩。たかが50mを走った程度で足がつってしまった高校2年生だ。
玄関へ行き、先ほどの音がした郵便受けを見る。中には一通の手紙。
「こんな時代に手紙とは・・・」
時代錯誤もいいところだ。そう思いつつ、封を切る。
『こんにちは、久しぶりです。ってもう覚えてないかもしれませんね。
僕はあの日からずっと、あなたのことを思い続けています。
しかしこれが実らない恋だということは、十分に分かっています。
だけどもう一度会いたい。会って話がしたい。
そこで、こんな方法をとりました。』
・・・・・・こりてねえようだな。
この文字の形を見るだけでも、ヤツを思い出す。
我がマイシスター、雪音を恐怖へ陥れた、憎い野郎を。
そして、次の瞬間、理性が飛びそうになった。
『雪音さんを少し預かってます。』
・・・・・・なんだと?
一体いつさらわれたんだ?
今日を振り返る。
雪音とは今日、朝に校門で別れたきり、顔をあわせてない。放課後もオレ一人で帰ってきたことから、またなんとか委員会とかいうのに出席してるのだろうと思った。
それが甘かったか。オレがそばにいなかったせいで・・・・・・雪音は・・・。
「つーか普通に犯罪だろコレ」
よく考えれば雪音は誘拐されたわけだ。このままいけばポリがなんとかするだろう。
だが、こうしてる間にも雪音は・・・・・・。
「ん? 裏へ続く?」
ふと見ると手紙にはそう記していた。それに従い、裏面を見る。
『まずは、勇者公園へ行ってください。~瑩クン命より~』
そう書いてあった。
犯人が残した唯一の足跡。
これがただ単にオレを踊らすためだけに書いてあるのかもしれない。
それでもオレの中に、選択肢は一つしかなかった。
「上等じゃねえか・・・・・・」
ここでじっとしてるよりは動いた方がいい。オレは勇者公園へ向かった。
・・・・・・・・・
勇者公園。ここはトイレが臭い、というか危険だということで有名な公園だ。このトイレへ挑むものは勇気ある者になれるという。
「さて、来てやったぞっと」
いつも通りの風景、いつも通りの公園、いつも通りクソうるさいクソガキども。特に変わった点は・・・・・・
「って、あれ?」
よく見ると滑り台に、なにやら白い紙が異常なほどキレイに結び付けられていた。
「芸術の域だなこれ・・・」
ちょっとだけ感動した後、それに手をかける。意外にもスルッとほどけた。そして綺麗に折り目のついたこの紙を広げる。
『僕の言葉を信じてくれたんですね。嬉しい限りです。
次はゲームセンター、「亀のゲーム屋」へ行ってください。~瑩クン命より~』
なるほど、そういうことかい。コイツはやたらとオレで遊びたいようだな。つまりは、この指令らしきものをクリアしていけば、ボスのところへ辿り着けると。
「某スーパーM男ワールドみたいだなしかし」
そしてオレは、指令(?)通り、亀のゲーム屋へ向かう。
「ストーカーよ、雪音は絶対に渡さない!」
後ろではガキがケラケラ笑っていやがった。野郎め。
最終更新:2006年05月13日 02:03