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鳴海流馬、自殺。
「
神は去り、現実は空想になり、俺は僕に戻った。
寂寞とした現実にはもう僕の生きる場所はなかった。
辛くても苦しくても何もないよりは遥かにましだよ。
ノルンさん、波間さん、ロキ、今まで僕に楽しみを与えてくれてありがとう。
何もないことに耐えられなかった僕を許してください。
もし生まれ変わっても僕はまたロキとして生まれたい。
またみんなに会えるから。また楽しい日々に会えるから。
あばよ、つまらない世界。
また会おう、素晴らしき世界。
」
たったこれだけの遺書が、流馬の生きた軌跡だった。
巫女さんから話を聞いた時には何の冗談かと思った。
アースガルドがなくなっても、本土で楽しくやっていると思っていた。
深宮で別れる時、またどこか世界の危機で会うだろどうせ、と笑っていたのに。
ノルンに連絡を取ると忙しい中でもすぐに会う算段をつけてくれた。
喪服のような黒い衣装のノルン、本人は偶々だと言っていたがきっと違う。
彼女は深宮を出てからの流馬について語ってくれた。
ヴァルキリー達とともにアグニーが去ってしばらく後、
あいつはレーヴァンテインを喚び出すことができなくなったらしい。
そして神がいなくなったと言い、やがてウィザード能力を失ったそうだ。
空を見上げる回数が増え、理不尽なことや自信過剰なことを言わなくなった。
そしてあいつは二人が目を離した隙に消え、とある海岸の崖下で見つかった。
堕ちたのだ。崖の上に折れた木刀と遺書を残して跳んだのだ。
嗚咽で途切れ途切れになりながら、それでもノルンは最後まで話してくれた。
全てを語った後、癒してあげられなかったと彼女は泣き崩れた。
俺はあいつの何を知っていたのだろうか。いや、知っていたはずだ。
それはきっと、自殺ではなかったのだ。
きっとあいつは取り戻そうとしたのだ。
飛べた自分を、楽しかった日々を、なくしたものを。
飛べればきっと全て戻ってくる、そう信じたのだ。生まれ変わろうとしたのだ。
きっとこれは、流馬らしい前向きすぎる最期だったのだ。
それでもやはり、俺は流馬に生きていて欲しかった。
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