中州の日々~亜鳥紫音 業務日誌~

天津正義の正体

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shion-atori

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トモエ=ヒカリを抱えて天津の研究所を訪れた俺達を見た天津正義は
突然涙を流し始めた。その後、ポツリポツリと自身のことについて話し始めた。

彼は人間ではなく、異界で滅びた古い種なのだそうだ。
「ソリッドの弟にしてヤマトの助手たる翠のアルフ、リキッド」
というのが彼の正式な名前らしい。正直、長い。
ヤマトという人物はトモエ=ヒカリの製作者なのだそうだ。
リキッドもその製作に携わっていたという。
リキッドは人造人間達の最初の反乱の際に、ヤマトによって
巨人三番艦ティンダロスの中に睡眠状態で保護されたのだという。
ティンダロスが次元移動に失敗し大破したことによって保存状態が解かれ、
昴とともに戦後すぐの日本に漂着したということらしい。
黒い人造人間によって世界が隔絶され、さらにその隔絶を脅かす要因を
排除するために外の世界を攻撃するであろうことが明白だったため、
彼らは持てる知識とこの世界の技術を融合させ、
黒に対抗するための黒、唐須を創り出した。
その最高傑作が律華なのだそうだ。
そしてまた、昴の特殊な技術を再現するために研究を重ねていた。
その結果生まれたのが天津の人造人間の始祖なのだそうだ。
その一方で研究が一部外に流出し、生まれたが佐伯だろう、と彼は語った。

天津正義という名前はこの世界に来てすぐに出会ったウィザードにもらったものだそうだ。
「天から降りてきて正しいことする人とその傍らに輝く一つの星となりなさい」
片仮名の名前はまだこの国には受入れられにくいから、とその人物は語ったらしい。

そのウィザードの名前を聞いて俺は耳を疑った。
三還泰三朗、ロンドンで俺を養ってくれていた母方の祖父だった。
ウィザードだったのか、どうりで俺が戦いに出ている時も平然としていたはずだ。
生き残る術も始めは祖父から教わった。ウィザードとしてではなく人間としてだが。
病気であっさり逝った祖父は、たしかにそういう気障な言い回しが好きだった。
多くの記憶は曖昧で、忘れていることもたくさんあるけれど、
俺はたしかに、あの優しくて面白い祖父が、とても好きだった。

トモエ=ヒカリの修復作業はかなり時間がかかるらしいが、シィルはもうすぐ
治ると正義は言った。

今日もここに泊めてもらうこととなった。
俺は、作業の合間合間に昔の祖父の話を正義からたくさん聞かせてもらった。

祖父が守った時代がある。俺はまた一つ、約束以外で戦うための力を得た気がする。


カテゴリ: [普通] - &trackback() - 2010年01月12日 23:47:21

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