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【あきたこまち】俺とシュールの奇特な冒険【シュークリーム】


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Side シュー

蛍光灯の色褪せた光に浮かんだその姿は黒かった。
黒光りなんだぜ?ふふふふふ。
俺「とにかく逃げるぞ」
俺氏が腕を引っ張るが、私にはどうもこいつが憎めない。
黒光りだからか?
しゅるしゅると湯気を吐きながらこちらの様子を伺っている。
何事も先制攻撃だ!と㍉子辺りが言っていた気がした。
だからそれに倣おうと思ふ。
シュー「陰陽米を、喰らえ~」
ぱらぱらぱら
俺「……」
化物「……」
シュー「……うおっ、まぶし」
俺「お前は何をやってるんだ?」
シュー「こーね?五十センチの黄金比を確かめてみたの」
突然視界がブレた。
俺氏に首根っこを、猫みたいに捉まれ引かれたと理解した。
にゃー。
俺「あっぶねぇ……」
何やら驚いた表情をしている俺氏。
化物の方を見ると、そのモーションは腕を薙ぎ払ったような格好をしていた。
金属製の手摺がものの見事にへし折れていた。
シュー「馬鹿な事をやってないで逃げましょう」
俺「それ、俺のセリフ」
私達は化物に注意しながら、後部車両へと後退りをする。
化物「がああああぁぁぁ!」
叫びたい年頃なのかしら?
俺「怒ってるんじゃね?」
シュー「何故かしら」
俺「お前が米をぶつけた事以外に考えられない」
シュー「謝れ!どっちかって言うと私に謝れ!」
俺「大きい声だすなよ……」
化物「があああああぁぁぁ!」
言うが早いか、いや、遅いのか?化物は私達に狙いをロックオンさせて、その巨躯で迫ってきた。
俺「言わんこっちゃない」
シュー「諦めたらそこで試合終了よ」
俺「この場合人生の終了が近いよな」
たったかたったか
走れど走れど化物は追ってくる。
まあ、他に道も無いものね。
シュー「捕まったらどうなると思う?」
俺「運がよければ即死。悪ければ生きたまま解体」
シュー「残念ね。あなたの場合は女装させられるとか……」
俺「そんな事態になるよりは、すんなり殺されたいね」
似合うのに。
そもそも男である分際でこんな綺麗なのは反則だと思う。
私が俺氏の女装写真集でも出版して、その印税でお米王国でも建国しようか考えていると、
俺「行き止まり、か」
最後尾車両まで来ていたようだ。
袋の鼠ね。
でも袋に鼠を入れたら振り回すと思うの。
化物「があああああぁぁぁぁ!」
シュー「さっきからワンパターンな鳴き方ね」
俺「知性があるように思えないから。さて、どうする」
シュー「おなかが空いたわ」
俺「俺も同意見だ」
化物が大きく腕を振りかぶり、その鋭い爪を振り下ろす。
余裕を持って壁に身を寄せる。
ふふふ、あなたの冷たさがいいわ、壁君。
ばきぃ、と大きな音がして、後に残ったのは砕けた床。
電車の機械部分が覗いて見える。
俺「あんなの喰らったらミンチだね」
シュー「狂うちゃんが喜びそうね」
だるそうに言いながら、俺氏は何気ない動きで化物に近づき、丸太のような一撃を躱しざまに懐に潜り込む。
俺「そぉれ」
やる気の無い掛け声と共に、化物が投げ飛ばされる。
叩きつけられた化物に、そのまま飛び掛るように肘を打ち下ろす。
更に馬乗りになって顔面に一撃。
情けない悲鳴を上げながら化物は動かなくなった。
気絶したのだろう。
シュー「強いのね。やっぱり」
俺「んー?ああ、だるいから普段は動かないけどな。……って、何でそんな場所にいるんだ」
シュー「何か可笑しいかしら?」
私はただ、荷物を置く場所の網棚の上に居るだけだ。
匍匐全身のような格好でうつ伏せている。
シュー「その強さなら、佐藤さんにも勝てるんじゃない?」
俺「女に手を上げる趣味はないよ」
シュー「だから童貞なのね」
俺「……」
黙ってしまった。
それなりに気にしているのかしらね。うふふふふ。
シュー「私が貰ってやってもいいわよ?もちろん男に処女という純潔の花を散らしてからだけど」
俺「あれと穴兄弟になれと」
冗談なのに。
あなたは男に責められてる姿の方が似合うわ。絶対。

がたんごとんがたんごとん……
慣性が前方に働く感覚。
どうやらブレーキが掛かっているみたいだ。
俺「おいおい、こんな場所で止まるのか?」
俺氏の意見ももっともだ。
こんな場所で止められても、炊飯が出来ないわ。
がしゃん!
大きな音がして振り返る。
まさかと思ったが、徐々にスピードが落ちてきた窓の外。
あの化物が張り付いて窓ガラスを粉々にする作業に精を出していた。
ご苦労な事だ。
俺「言ってる場合じゃないだろ」
構える俺氏。
だが……
化物「がああああぁぁぁぁ!」×3
俺「……」
流石の彼でも無理そうね。
割れた窓からぞろぞろと、化物ご一行がご招待されてきた。
シュー「逃げましょう」
俺「賛成。……って、うお!はえぇ!」
私は匍匐全身で網棚を渡る。
途中途中の切れてる部分すら無視。
俺「この、超異次元不思議生命体め」
硬質の床を踏みながら後を付いてくる俺氏。
その後ろには化物ご一行様。
化物「がああああああぁぁぁ!」×5
あら、増えたわね。
がしゃんがしゃんと、次々に硬化プラスチックが割られて侵入してくる化物達。
俺「厄年?」
シュー「厄年」
何かを納得する私達。
がしゃん!一層大きな音を立てて私達の前方に現れたのは、一回りか二周りほど大きな化物だった。
どうでもいいけど挟み撃ちね。
シュー「死んだかしら」
俺「これはもう駄目かも知らんね。だがまあ、生き残る手段は無くも無い」
シュー「命あっての物種」
俺「逃げるが勝ち」
シュー「命あっての米種」
俺「言うと思った。それ、最初の化物が割った窓から逃げれ」
シュー「外の方が危険じゃなかしら」
俺「かも知れないけど、ここで殺されるよりは生き延びる確率が上がるんじゃないかな」
シュー「三米くらいね」
俺「何それ」
シュー「単位」
俺「じゃ、俺が先に行くわ」
シュー「レディーファースト」
俺「男女平等」
シュー「失礼。あなた女の人だったわね」
俺「……女には手を上げないと言ったが、お前だけは全力で殴らせろ」
シュー「お先に失礼」
俺「待ちやがれ!」
私は夜の闇に支配された電車の外へと身を投げ出した。


side other

一寸先すら判別できない程の濃い闇の中、一組の男女が走っている。
俺「何処に逃げればいいんだ?」
駆けながら男。
シュー「自分の殻とかどうかしら」
ムーンウォークをしながら女。
俺「って何でそれで早いんだ!」
シュー「あら、体得するのに時間を要したのよ?」
俺「そんなものに要した時間はどうでもいい。なんでそれで早いかが問題なんだ」
シュー「知らないのね。この歩き方だと反重力が作用して摩擦力が軽減されるの」
俺「それは素晴らしいな。あとで俺も練習しとくよ」
シュー「それがいいわ」
軽口を言い合いながら走る二つの影。
だが、その小さき影に迫る狂影多数。
どれも血に餓えた眼を輝かせて。
その先頭に立つ影が一番大きく。


俺「さーて、いい加減腹も減ったぜ」
シュー「そうね。米分が切れそうだわ」
俺「ん?」
シュー「どうかした?」
俺「いま、あっちに光が見えた気がしてな」
どれどれ、と女が辺りを見回すが、それと思しきものは見えなかった。
シュー「幻覚じゃないかしら」
俺「まだ根にもってやがるのか」
美しい男は舌打ちしながら、もう一度光が見えた方向を確認する。
俺「をいナレーター!美しいとか付けるな!」
何故この声が聞こえるのでしょう?
俺「やっぱり見えた。こっちだシュー氏」
シュー「まあ、私には見えないのだが、俺氏を信じて付いていくぞ」
狂影の化物を引き連れながら、二人は走る。
男が見つけた光は希望となるのか?
または更なる狂気を呼ぶ絶望となるか?
二人の駆ける先には、一軒の館が待ち構えていた……。

続く