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魔少短編


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響き渡る爆音。
立ち込める粉塵の中に、この惨状を引き起こした人間が立つ。
その"人間"は、瓦礫を踏みしめながら魔幼の部屋に押し入った。
そして、彼女へと一直線に走り寄りつつ、甲高い声で宣言する。
「悪逆非道の限りを尽くす魔王め!☆ 
今この片翼の天使マジカルブリザードが成敗してくれる!☆ 覚悟ォ!☆」
右手に握り締めた木刀を振り上げ、脳天をめがけ稲妻の如く振り下ろす――!
――はずだった。
手元で起こった小さな爆竹程度の破裂音により武器を取り落としてしまい、柄に京都と
書かれたそれは地に落ちる前に魔幼に奪われ、いつのまに後ろに回られたのか、
ちょうど 『ひざかっくん』をする形で足を掬われた。
この間実に十秒。
転んだまま暴れる友人を足で押さえながら目をこすり、盛大な欠伸をして、彼女は囁い
た。
「……器物破損、住居不法侵入、暴行傷害未遂。
これはうちのかてーじじょーにより問題ないです。
木刀くらいじゃ当たったとしてもわたしにケガさせられないですし。
ただ、おっきな問題があります。
なんでしょう、答えは時計を見ればわかります。
……午後十一時
三十分。
よいこはねるじかんなのです。
明日学校で遊んであげますから今日はかえってくれませんか?」
足を離し、ね? と小首を傾げる。
対して魔少は立ち上がり、目を見開きながら不満も隠さず鼻先に指を突きつけた。 
「なにその応対!☆ ふざけてるの!?☆」
戸惑う魔幼に対し呆れかえったわ、と呟き続ける。
「まず勇者にしろ革命家にしろテロリストにしろ、
現れた相手が名乗ったら言うの、
『よくぞ幾多の試練を乗り越えてここまで来た。
何が望みだ、地位か、富か、好きな だけくれてやろう。我が配下に加わるならば』!☆
相手は答える、
『そんなものはいらない! 欲しいのはあんたの命だ』!☆
『命知らずな若造め、良いだろう。一ひねりにしてくれるわ』!☆
これが魔王というものでしょう!?☆」
「でもでも、うちは玄関で入場料払えば誰でもここまで入れますし、
住所だってタウンページ見れば載ってますし、
従業員さんにあげられるお給料は限られてるますし、
何よりそうそう人に暴力を振るっちゃいけないですよ?」
至極真っ当な反論である。
しかし、まともなだけの意見でこの暴走列車が止まるのならば苦労はいらない。
魔少は突きつけた指を更に近づける。
「わかってない!☆ 何もわかってないわ!☆
そもそも非常識の塊である魔王がそんな 常識的なことを言うのがおかしいのよ!☆
私たちは凡人とは違うはずでしょう!?☆ 超越的な存在のはずでしょう!☆」
「世間で生きるからには人としてまもらなければいけないルールというものがあるのです。
うちの人たちはみんな六法全書くらいはそらんじられるくらいにマナーをわきまえてますですよ?
学校は例外として、ここは人間が生きるところです。
わたしたちは細々と生きるべきなのですよ」
眠い目を擦りながら投げやりな風に説得する。
だからそんなのではネジが外れたこの女には通用しないのだ。
「あなたは魔道を歩む者としての美学ってものがないの!?☆
悪役三段笑いできる?☆
私はもちろんできるわよ、えへへへへ、ひっひっひっひっひ、ひゃーっはっはっはっはははは」がすん。
うやむやのうちに床に転がっていた木刀を拾い、
いい加減本格的に近所迷惑になってる馬鹿娘の後頭部をはたく。
「あっ、木刀なんかで殴ったらおばかになっちゃいますよぅ」
「大丈夫だ、こいつはビルの最上階から落ちてもショットガン零距離射撃喰らっても死なないような奴だから。
これ以上馬鹿にはならないだろうしな」
伸びている魔少を抱き上げる。
また飯を食べていないのか、やけに軽い。
帰ったら何か作ってやらないと。
「大変ですよね、魔少ちゃんちょっとだけ突飛な子ですから。
学校ではまだおとなしい方ですけれど。
いつもその子の面倒を見ているあなたは苦労性なのですかまぞひすとなのですか?」
 魔幼にそんな言葉を教えた奴をどうしてやろうか考えつつ答える。
「こいつがこうなっちまったことの片棒を担いじまったからな。
元々こいつが持っていた原因もあるんだが」
「贖罪……とでも言うのかしらぁ?」
 いい加減眠気が限界を迎えてしまったのか変身する魔幼。
「一番こいつの為になるのは更正させてやることなんだろうけど、人はそうそう変われな
いから。無茶できるうちはやるだけやらせた方が良いように思うんだ」
「それで周りにかかる迷惑はどう落とし前つけるつもりぃ? 例えば、あんまり眠くて思
わず交代してしまった私、とかね」
 意地悪く口を歪めて、にんまりとこちらの顔を覗きこんでくる。
「悪かったよ、安眠妨害しちまって。今度エクレールで奢るからってのはどうだ?」
 彼女は目を細めながらくすくすと笑った。
「はいはい、私はお菓子で買収される女よぉ。で、他には?」
「まぁ、こいつの面倒みなきゃならないから、命だけは駄目だけど、なんだってするさ。
本当にヤバイ相手ならな。俺達は多少痛い目見るくらいがバランス良いんだ」
 肩をすくめて答えた。魔少は白目を剥いてデロンとした顔で眠っている。
「恥ずかしい台詞ねぇ、よくもまあそんな眼でそんなことが言えるもんだわぁ」
 目を少し泳がせて、魔少の寝顔を見ながら俺は言う。
「まぁ、なんだ。……惚れちまってるからな、このわがままだけならお姫様な奴に」
「貴方も気持ちだけなら騎士のような人よ」
「茶化すなよ」
「茶化して無いわ」
 しばし見つめあって、どちらともなく笑い出した。
「むぅー、ここはどこ世界一可愛い私は誰……☆」
「あら、お姫様がお目覚めのようね」
 まずい、こいつの寝起きはやかましいし気絶させたのは俺だ。面倒になる前に魔幼に別
れを告げる。
「また明日」
「ええ、また明日」  
                         終わり