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俺鮫希譚08

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匿名ユーザー

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デブ「ふひぃ、だ、だだだだ誰かやっちまえよぉ!!」

だが、銃で撃たれて立ち上がったその姿を見て、誰もが戦慄に慄いている
化け物

何らかのトリックを使ったのだろうが、それが脅威である事には変わらない
そして何より、奴は強い

遠巻きに見るデブの取り巻きも動けずにいる

俺「皆薄情だねぇ。豚小屋の主がピンチだってのに誰も助けないとは」
デブ「だだだだだ、だまr」
俺「ま、しょうがないか。だってお前が怖いんじゃなくて、お前のバックにいるのが怖くて集まってるだけなんだから」
デブ「!!」
俺「ま、それも今頃カタがついてるだろうけどな」
デブ「ど、どういう……」

デブが動揺したその瞬間、その左手がブレる
何かを投擲した

デブ「ぶひぃ!」

鮫子を掴んでいる手の手首に、細い何かが巻き付く
ワイヤー
ピアノ線か何かだと思う極細の紐が、デブと俺の奴を繋いだ

ぎちぃ、と引っ張るとそれにつられてデブが痛みで動く

俺「ほれ、出番だ」
友「お、おう」

今までのやり取りを見ていた俺に、急にご指名が掛かった
倒れている鮫子に走り寄る

制服のシャツを脱いで上から被せる
その姿を他の誰かの視線から守るように
酷い傷だ
きっと何度も痛めつけられたのだろう
不幸中の幸いとでも言っていいのか、貞操は無事なようだが……

だが、彼女の精神は犯された
それだけは間違いない

俺はデブを睨み付けた

俺「最後くらい格好良く一騎打ちで散れ」
デブ「ひ、ひいぃ!」

ぎりぎりと両手でワイヤーを手繰り寄せる
食い込むデブの手首には血が滲んでいる

デブ「ふ、ひぃ!し、死ねぇ!」
俺「……!」

デブは空いている手で、それまで隠し持っていたナイフを取り出し斬り付ける

斬ッ!!

紅い飛沫が、散った

デブ「ぶひぃ!!」

一瞬の出来事だった
斬り付けられた俺の奴は、左腕で斬撃を受け止め、右ストレートでデブの顔面を打ち抜く
転がるデブは、だけどワイヤーで繋がれているので倒れるに倒れられなかった

とゆーか、なんでお前は斬り付けられて制服の一つ破れていない?
そもそも今は炎天下の真夏だ
なのになんで制服の上着を着ているんだ

……なるほど、それがギミックか

俺「立てよ。まだお遊びはこれからだ。そして次が本気で、さらに次が最終決戦」
デブ「ひいぃぃ!!」

完全に戦意喪失しているデブに対して容赦の無い
そこで俺は立ち上がってこう言った

友「待ってくれ。そこから先は俺にやらせてくれ」

俺「好きにしてくれ」

ひゅん、と手首の動きだけでワイヤーを操り、デブの手から解く

デブ「ふぅひぃ……っ」

デブに近づき、その前に立つ
醜い
鼻から血を流し、頬は腫れて
こんな奴に鮫子が触られていたかと思うだけで反吐が出る

デブ「ふひっ!く、来るな……!」
友「てめぇが……」

その鮫子が痛めつけられ、あんな姿にされた
身体の傷は治っても、心に負った傷跡は残り続ける
痛む身体と拳に渇を入れる

友「これが……、ぼこぼこにされた俺の恨み!」

ぐべし

デブ「ぶぴぃ!」

脂肪の塊が、土埃を舞わせて転がった

友「これが……、最後まで鮫子を守れなかったあいつの悲しみ!」

どげし

デブ「ぴぎゃ!」

友「これが……、あんな姿にされた鮫子の痛みだッ!!」

ぐわし

デブ「ひぎぃ!」

俺「そしてこれが俺の鬱憤晴らし」

べき

デブ「ぶひぃ!!」

俺の奴の、綺麗なドロップキックが豚の顔に靴裏の跡を残した

豚野郎が完全に沈黙したと同時に、雑魚どもは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った
俺の奴はその姿を見るでもなく

俺「ほっとけ。主要な奴は捕捉してある」

とだけ言って
俺はもう限界だった
立っているだけで充分ツライ
錆びた機械に背を預け、息を吐く

これで、終わった
約束、守れたよな……

近づいてくる足音に、目を開ける
そこにはやる気の無い目があった

俺「このくらいの傷なら綺麗消える」

その目は、鮫子という私を見る目ではなく

――ただの被害者を見る目だった

憐れみの色すら浮かべない
ただそこにあるという悲劇を見て、ただそこにあるという風景を見ている

優しい言葉を掛けてくれるとか、心配してくれるとか、怒りを感じてくれるとか

そんな期待を、私はしていた、のだろう、か……
私は、何を、勘違いしていた、のだろう、か

鮫子の様子を見た俺の奴がこっちに来る
何か気の利いた言葉でも掛けたのだろうか
此処からでは遠くて聞こえない

友「……へへっ、やったな」
俺「ああ、そうだな。お前は良くやったよ」
友「そう、かな……」
俺「うむ、今日の『格好良いおぶざべすと』をあげよう」

いるかよそんなん

俺「だがな」

がすっ!

衝撃が襲って、気が付くと地べたにくっついていた
痛みが後から走り、身体を硬直させる

俺「己の力量も把握せずに突っ込むなぞ、ただの自殺行為だ。失望させるな」
友「……」

俺「過信でもしていたのか?あの日、ぼろぼろになったお前は、俺のこう言ったよな」
友「……」
俺「『強くなりたい』と。何があったかは聞かなかったが、そう思う発端があったんだろうよ」
友「……」
俺「理由はどうでも良かった。だがお前の目が本気だと物語っていた。だから俺は手解きを多少してやった」
友「……」
俺「それなのに、お前は、こんな事がしたかったのか?」
友「……ッ!」
俺「そうじゃないだろ?お前が本当にしたかった事は」
友「……」
俺「強くなりたいって、どんな奇麗事を並べたってただの暴力だ。正義を掲げるのは自由」
友「……」
俺「この世は理不尽だ。力が欲しいのは判る」
友「……」
俺「だからってよ。……だからって、お前まで堕ちる必要はないんだぜ?」
友「……!!」
俺「お前の幻想【ゆめ】に力はいらないはずだ」
友「……」
俺「力が要らない守り方ってのも、今度教えてやろう。……汚い役目は、俺が背負う」
友「!!」

……やっぱり、俺はこいつには敵わない

重たい豚を引き摺って工場の外へ出る

男「や」
俺「……なんでこいつがいるんだ?」
軍「すまない俺殿」
男「なんか軍師さんがごにょごにょしてたからね。理由を聞いてみた」
俺「……」
軍「ほ、本当に申し訳ない!」
俺「……いや、お前らが男に聞かれて隠し事なんて出来る訳ないからな」
男「?何の事?とりあえず俺君が引き摺ってる、その、辛うじて哺乳類に見えなくも無い汚いのは何?」
俺「お前も言うね。これが今回の騒動の発生源」
デブ「……」
男「うわぁ……。相変わらず容赦ないね。ハムみたいに紐で縛られてる」
軍「で、この醜いのをどうするのだ?」
俺「船に」
軍「了解。船に」
男「船とな!」
俺&軍「きっと楽しい船に。ふふふふふ」

俺「だが船に入れる前にやる事がある」
男「船って何?ねぇ何?」
軍「私達が調べた事が本当なら、鮫子殿はこいつを殺す権利があってもいいと思う」
俺「だな……」

軍「ああ。……鮫子の彼氏を轢き殺すよう命じたのは、こいつなのだからな」

俺「……起きろ」
デブ「……ぶひ?」
軍「貴様には一切の権利が無い。黙秘は死。虚偽は死。全ての因果が死だと思え」
デブ「ぶひぃ!!」
軍「この写真の男に見覚えはあるな?」
デブ「……」
軍「俺殿、指を折れ」
俺「ギャグ?」
デブ「ぶひぃ!ああああ、ありますあります!!」
軍「素直に言えば痛い目は見ない。こいつを殺すように命じたのもお前だな?」
デブ「…・・・」
俺「手が滑った」
デブ「ぶひいいいぃぃぃ!!ぼぼぼぼぼ、僕様ですはいいぃぃぃぃ!!」
男「だから船って何いいいぃぃぃぃ!!」

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