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第十一話


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荒鷹「あ……」
化け物が、私をみていた。
その眼には深い闇が刻まれていて―――
荒鷹「私と、同じ…」
闇に心を囚われた人の眼だ。
そしてこの時、私はやっと自分がした事を思い出した。

荒鷹「日下さんと…ツンドロちゃんを…」
悪魔「ルルルルゥ…!」
悪魔が私に襲いかかる。でも、私はもう死んでも…
いや、死んだほうがいい。

友達の命を奪うなんて最低の最低だ。なにがあったとしても。
ドッ

ランダエタ「……」
荒鷹「ランダエタ、くん?…なんで」
ランダエタ君は私の前に飛び出して悪魔の一撃を代わりに受けた。
ランダエタ君の背中から突き出た爪が、私の目の前で止まっている。
荒鷹「…私は死ぬべきだったのに」
ランダエタ「それは違う」

ランダエタ「死ぬべき人間なんて本当はいないんだ」
ランダエタ「魂が堕落した汚れた人間は、この学校のどこにもいない」

ランダエタ「師匠が言ってた…言葉だ」
ランダエタ「だから…荒鷹さんは生きるべき…なんだ」
違う。私は汚れた人間なんだ。
必要のない人間なんだ。
荒鷹「でも…私は、友達を…」
ランダエタ「なら、生きて償えば…いい…」
ランダエタ君の息が細く、長くなっていく。
ランダエタ「死んだら駄目だ…荒鷹さんはみんなに…必要とされている」
荒鷹「そんなの…」
ランダエタ「俺も…まだ、死なない…」
そう言いながらランダエタ君は右腕を天にかざした。

―――師匠。恩返しの出来なかった馬鹿弟子をどうかお許し下さい。
あなたの教えてくれた技と魂のお陰で、俺は強くなれました。

―――兄さん。やっぱ兄さんの言う通り、俺は愚弟だったよ。
でも見てろ。俺はタダじゃ死なない。

―――日和。ありがとう、楽しかった。
これ以上はなにもいえない。

―――ついでに、ゆうや。日和を大事にしろよ。
もしも泣かせたらぶん殴ってやるからな。

これが、俺の全力で打つ、最期の拳だ…!
バキッ!!
悪魔の顔面にランダエタの拳が直撃し、ひたいの骨を砕いた。

そして、ランダエタは静かな笑みと共に消滅していった。

―――紅く染まる視界の中で、葬儀屋男は覚醒した。
自らの弱さが引き起こした惨劇が頭の中を巡る。

ああ…本当に馬鹿だ、俺は。
弱いからあいつを守れなかった。
弱いから闇に付け入られた。

強烈な打撃で蘇った葬儀屋男の思考を、再び闇が蝕み始めた。
理性を保てるのはあと五分、といったところだろうか。

葬男「…荒鷹さん、俺を殺してくれ」
最善策はこれより他にない。

……え?
葬男くんの声がした…ような気がした。
荒鷹「葬男くん、戻った…の?」
葬男「頼む、俺を殺してくれ」
葬男くんの顔は血で真っ赤に染められていた。
でも、その瞳は葬男くんの瞳。
悪魔の瞳ではない、大人びた瞳が私を見つめている。

葬男「もう、正気を保てない…早く俺を殺すんだ」
葬男「こんなことを頼んでしまって、すまない」
葬男くんは、本気なんだ。
私が、やるしかないんだ…!
私の視界の隅に拳銃が映った。
とっさに私は拳銃を拾いあげて葬男くんに向けてかまえ…引き金を引いた。
ダァン!

荒鷹「…はあ、はあ」
弾丸は大きくそれて壁に穴を穿った。
震えている。手も、足も、心も。
葬男「…銃口を俺の額に押し当ててくれ…」
怖い。人を殺すということが、とても怖い。
荒鷹「あ…あう…」
震えながら、葬男くんの額に銃口をぴったりと付けた。
引き金が重たい。ゆっくりと時間が流れていく。
葬男「そうだ…荒鷹さん、落ち着いて聞いてくれ…」
葬男くんは僅かに残った理性でなにかを教えようとしている。
葬男「闇の中で俺は黒幕を知った…」
葬男「荒鷹さんも知ってる人間だ…そいつの名前は――」
ダァン!

…まさか。
荒鷹「まさか…あの人が…」
私はその場にぺたん、と座りこんでしまった。
あの人がどうして……?
誰もいなくなった放送室で、ぽつりと呟いた。