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似たもの同士の心のカタチ

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匿名ユーザー

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冷たい雨が降りしきり、人の足跡さえも雨音が流していく静かな秋の夜の事。
クーは小気味良く聞こえてくる雨に耳をすませながらふと思う。何故このような状態になってしまったのかと。
今現在クーがいるのは自分の部屋。そこに一人の友達を連れて来たのまでは良かったのだが、
一体どこから狂ってしまったのだろう。

ヒート「んふふ…クー……何か、美味しそうだなぁ…」
クー 「(これは流石の私も危ういかも知れないな…)」

ヒートがクーを押し倒していて、彼女の両手を後ろで塞ぐようにして抱きしめている。
普段はうるさいくらいに叫ぶのに、クーにとっては今はヒートのいつもの叫び声がとても恋しい。
見上げるクーと見下ろすヒート。この状態は、今の二人の位置関係に当てはまるかのような構図だった。
少し潤った眼で、頬を朱に染めながらも扇情的な仕草でスキンシップをヒートは求めてくる。
下で組み伏せられているいつも通りの無表情は、この時だけは誰が見ても分かるような狼狽の感情を表面に滲ませていた。
少しもがいてみたが、想像以上にガッチリと固められていてピクリとも動けない。
クー 「(これがまな板の鯉という状態か。本当にピンチだ。助けてほしいぞ、男)」
ヒート「クーの体は柔らかいなぁ…んふふ。今のクーは、なんかえっちな雰囲気だ…」
クー 「気のせいだろう。私はいつも通りだ。…冗談なら、そろそろ止めてほしい所だが」
ヒート「可愛いなぁ、クー。うん、可愛いぞぉ…」
そう言ってクーの胸に頬ずりをする。子どもが母親に甘えているかのような、無邪気な笑顔でヒートは微笑んでいた。
クー 「ひゃっ!!…くすぐったいぞ、ヒート」
ヒート「んふふ……クー、大好きだぞぅ……」
クー 「ちょ、待て、ヒート、ほ、本当にくすぐったいから、や、止めてくれ…ンッ…」

この状況に何故二人は陥ってしまったのか、何故ヒートの様子がおかしいのか。
それは遡ること放課後のHRの終了時、帰り際にクーの近くに寄ってきたヒートの発言から始まった。

ヒート「クー!!!!今日は暇かあぁぁ!!!!!」
クー 「ん。今日は何も予定が入っていないから、まぁ暇だな。強いて言うなら晩御飯の準備くらいが忙しい」
ヒート「そうかぁぁ!!!!!ならばお前の家に遊びに行っても構わないか!!!!????」
クー 「構わないぞ。しかしどういう風の吹き回しだ?」
首を軽く傾げながらヒートに問う。何やら深く頷いてヒートは深刻そうな顔をして、少し上目遣いでクーを見た。
ヒート「…長くなるが構わないかぁ!!!???」
クー 「ん。問題は無い。私で良ければ力になろう」
ヒートはニカッと笑って、嬉しそうな顔をしながらクーに抱きつこうと突進して来る。
だが彼女が軽く身を反らして鮮やかに避けてみせると、奥の掃除用具入れに頭から突っ込んで行った。
そこから出てきたヒートは、頭には雑巾・足にはバケツとベタな状態で涙ぐんでいた。
ヒート「クー、つれないぞぉぉ!!!!!!」
クー 「すまなかった。で、どうしてなんだ?」
ヒート「私も今日暇だから、友達の家に行って遊びたかったんだぁぁぁぁ!!!!」
クー 「…長いと前置きしておいて、極めてシンプルだったな。
    いいぞ、是非私の家に来てくれ。遊べる物は何も無いが、晩御飯くらいはご馳走しよう」
ヒート「うおおぉぉ!!!!嬉しいぞ、クー!!!!!」
ヒートはニカッと笑って、嬉しそうな顔をしながらクーに抱きつこうと突進して来る。
だが彼女が軽く身を反らして鮮やかに避けてみせると、再び奥の掃除用具入れに頭から突っ込んで行った。
そこから出てきたヒートは、頭には雑巾・足にはバケツとベタな状態で涙ぐんでいた。
ヒート「…クー、つれないぞぉぉ!!!!!!」
クー 「すまなかった。では、まずは買出しにでも行くとしよう。着いてきてくれるか?」
ヒート「おぅ、了解だ!!!!」

スーパーでは、今日が特売の日。その日のタイムセールを狙って主婦が殺到していて、ちょっとした混雑が出来ていた。

ヒート「凄い熱気だな…私も何か燃えてきたぞぉぉぉ!!!!!!」
クー 「別に燃えなくて良いんだぞ。私達はただ食材を買いに来ただけだから、あの集団に混ざる必要は無いだろう」
ヒート「しかしクー、どうやら食品売り場でセールがあってるみたいだぞ!!」
それを聞いたクーは鞄の中からおもむろにメモ帳を取り出して、凄い速さで何かを書き始めた。
書き終えるとビリッと紙を破いて、ヒートの眼前に差し出す。
ヒート「これが今日の晩御飯に必要なものだ。それはあの群集の中に埋もれていて、とても私には奪取が困難だ。
    君には君の、私には私の戦場がある。…任せてもいいか、ヒート?」
ヒートは眼に炎をたぎらせて、力強く頷く。そして次の瞬間にはオバサンの群れの中へ駆け出していた。
遠くから聞こえる叫び声とオバサン達の怒号に耳を傾けながら、クーはゆっくりと帰りを待つことにした。

そして数分後、髪の毛と制服がグシャグシャになったヒートが帰って来る。
もみくちゃにされたのがよく分かる程に心身共にボロボロだったが、任務は完璧にこなしていた。
ヒート「ううぅ…主婦の恐ろしさを身を持って体験してしまったぞぅぅぅ……」
クー 「お疲れさま。あの人ごみは私が苦手なモノの一つでな。助かったぞ、ありがとう」
クーはゆっくりと功労者の服の汚れを取り払い、髪の毛を整えてあげる。
すると少しだけ気持ち良さそうな顔をして、ヒートはニカッと可愛らしい八重歯を見せてクーに笑顔を見せた。

二人はバーゲンで安売りをしていなかった分の食材を買いに、スーパー内をうろついていた。
カートを押すクーは何を考えているのか分からないような顔をしているのに対し、ヒートは何故かとても上機嫌にしている。
ヒート「えへへぇ、何か嬉しいぞぉ♪」
クー 「どうした?何か良い事でもあったのか?」
ヒート「こうやって二人で何かをする機会が私達には少なかった気がしないか?
    私は今、こうしてクーと何か出来るという事が凄く嬉しいぞぉぉ!!!!!」
クー 「…そうだな、私も嬉しい。意外とこういうのも悪くないんだな」
無表情を標準とする顔に柔らかい笑顔が浮かび上がる。冷たい仮面は温もりで静かに解けていく。
彼女の優しい微笑みは、とても清楚で綺麗だった。
ヒート「…!!!今、笑ったな!クー、笑ってくれたな!!!!!」
クー 「?? 無意識だったからよくは分からない。…だが、多分笑ったと思う。君と一緒だと楽しいからな」
ヒート「うおおおおぉぉ!!!!感激だぁぁぁ!!!!!私にもクーの表情が分かったぞぉぉぉ!!!!」
そしてヒートはクーの腕を掴んで、自分の両腕で抱きしめた。
カップルで女が男に甘える仕草をまさか自分が受けるとは夢にも思わなかったので、
クーは少しポカンと面食らったような顔を浮かべた。
ヒート「よし!このまま歩こうじゃないか!!!」
クー 「…買い物がやりにくいぞ」
ヒート「何、気にするな!!うわっはっはっはっは!!!!!!」
そう高らかに笑っているヒートの顔は紅かった。その事に気付いていないクーは、行為を受け入れたまま歩き出す。
すると何故か耳まで朱に染まり始めて、フシュフシュと今にも煙を上げそうだ。
それは心が燃えていたからなのか、はたまた別の理由か。それは彼女にしか分からない。

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